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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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別れと裏切り

 パチッ!パチッ!……。

 ……パチッ!……。

 どこかで、火が燃える時の木がはじける音がする……。

 ……あれ?今夜って野営してたっけ?

 ふと目を覚ます……見知らぬ部屋の中だ。

 周りを見回すと、みんなが丸まって寝ている……、俺が眠りにつく前の光景と一致する。

 そうだ、昨晩はソランの屋敷に泊めてもらったんだっけ。

 で、ソフィアと話し込んでいるうちにみんなが寝てしまい……なんか焦げ臭い。

 それから、さっきからぱちぱちと弾ける音……。

 しかも室内の温度が上がってきている。……これは!


 「みんな、起きろ!屋敷が燃えている!」

 「んー、なぁにぃ?……まだ……夜中ですよぉ……ふぁー……。」

 ミリィが起きるが、完全に目が覚めてないようだ。

 「ミリィ、火事だ!すぐ逃げるぞ!」

 火事という言葉に反応し、完全に目を覚ます。

 「大変!急いで逃げないと。」

 「ミリィは身の回りの物頼む。俺はリィズとソラを起こす。」

 幸い、火の周りはそれ程早くない。逃げ出す準備くらい十分できるだろう。


 「リィズ、ソラ、起きろ!火事だ!逃げるぞ!」

 「んーん……にぃに、まだ、朝じゃないっすよぉ……。」

 「……おにぃちゃん……ボクまだ眠いよぉ……。」

 急に起こされたためか、まだしっかりと覚醒していない。

 ……仕方がないか。

 「ファルス、エアリーゼ、二人のサポートを頼む!」

 ソラの背中から翼が、リィズには耳と尻尾が生える。

 精霊化していれば、二人の意識がなくてもファルスとエアリーゼの意思で体は動かせるが……何か違和感がある。


 「おにぃちゃん、なんか変だよ。ファルスの意思が感じられない。」

 「私もそうっす。エアリーゼの意思が感じられないっす。」

 精霊化によるエネルギーの活性化で、二人は完全に目が覚めたようだが、今度は精霊たちの異変を訴えてくる。

 いつもなら、俺が頼むとファルスも、エアリーゼも一声かけてくるが、今回はそれがなかった。

 俺が感じた違和感の正体は、精霊たちの反応がない事だった。

 二人の話によれば、精霊化していると一体になった感覚で、意識の共有と言いうか、精霊が何を感じているのかがわかるそうなんだが……。

 「力は流れてくるけど……ただそれだけ……ファルスはどこ行っちゃったの?」

 「……細かい事は後だ、とりあえず、ここから逃げるぞ。」

 「レイさん、荷物はまとめたから、何時でも行けるわ。」

 タイミングよくミリィが声をかけてきた。


 「よし、じゃぁ行くぞ!」

 俺はドラグーンを取り出し、窓に向けて撃つ。

 ダンッ! ダンッ! ダンッ!

 パリーンッ!

 ガラスと窓枠が粉々に飛び散り、出口が出来る。

 「飛び降りるぞ!」

 俺達は窓から飛び出し、中庭に降り立つ。

 屋敷を振り返ると、半分ほどが炎に包まれている……燃え落ちるのは時間の問題だろう。

 「他の人は大丈夫なのかしら?」

 ミリィが心配そうに言うが……。

 「他人の心配をしてる場合じゃなさそうだ。」

 「囲まれてるっすね。」

 リィズが言う。

 「あぁ。」

 俺が感知できただけでも30人はいる。

 「とりあえず、俺とソラが銃をぶっ放して、囲いに穴をあける。そこから突破して……森の方へ向かうんだ。」

 「了解っす。」

 「わかったわ。」

 「ソラ、準備は良いか?」

 「ボクの方はいつでも大丈夫。」

 「よし、じゃぁ、合図したら、……あのあたりにぶちかませ。いいか……3,2,1……今だ!」

 俺の合図と同時にソラのワルサーが火を噴く。

 囲んでいる連中から動揺が伝わる。立て続けに俺もドラグーンでぶっ放す。

 使用する弾はナパーム弾だ。周りがこれだけ燃えているんだから、火種の一つや二つ増えても問題ないだろう。


 動揺している所へ、リィズが突っ込んでいく。

 ミリィがその後を追う。

 「ソラ、ミリィたちに続け。」

 「お兄ちゃんはどうするの?」

 「援護しながら後を追う。後ろは気にせず走れ!」

 「わかった!」

 ソラが、ワルサーを撃ちながら駆けていく。

 俺も援護射撃をしながら後を追う。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「クソッ。しつこい奴らだ。」

 俺達は、森まで逃げて来たものの、追跡者を撒けずにいる。

 とりあえず、しばらくは大丈夫だろうが、このままでは取り囲まれるのは時間の問題だろう。

 「にぃに、転移陣は使えないんすか?」

 リィズが聞いてくる。

 俺もそれを考えていた所だ。

 「俺の魔力が封印されてなきゃ使えるんだが……。」

 俺の魔力は魔人により封印され、外部に干渉できなくなっている。

 身体強化とか、触れた状態でのエンチャントなど力づくで一部の魔法が使えるだけというのが現状だ。

 まぁ、普通は一切魔法が使えなくなるほどの強力な封印なので、使えるだけありがたいと思わなければならないのだろうが。

 

 転移陣の魔法は、魔法陣を描き、魔力を流し込むことによって、対になる陣へと転移する物だが、現在の俺では、専用の道具を使って描いた魔法陣に魔力を流し込まないと使用できない。

 取り囲まれているこの状況で、悠長に魔力を流すなんてことはできないだろう。

 必要量の魔力が溜まる前に捕まるのがオチだ。

 ……待てよ?あの方法なら……。

 俺はふとあることを思いつき、それを実践すべく、魔法陣を地面に描いていく。

 「にぃに、何か思いついたっすか?」

 「あぁ、と言っても一時凌ぎにしかならないだろうが……。」

 複雑じゃない魔法陣なので、それ程時間がかからずに描き終える。

 ポイントとなる部分に魔晶石を埋め込んでいく。

 「あとは、魔力を流し込むだけだな……。」

 俺は魔力を陣に流し込みながらみんなの方を見る。


 「リィズ、ソラ、ファルスとエアリーゼはどうだ?」

 「相変わらず反応なしっす。」

 「力の出し入れは出来るみたいなんだけど。……なんか、しゃべるのを邪魔されている感じ。」

 「ミリィはどうだ?他の精霊達も同じか?」

 「そうねぇ、一応お願いはできるんだけど、向こうからの反応がない……一方通行って感じで、何か気持ち悪いわ。」

 「何か……で邪魔されているんだろうな。局所的な結界か、封印か……。」

 封印だと厄介だが……。

 「結界ならこの場を離れれば問題ないし、封印だとしても……上級精霊を抑えるほどの封印なんてそう簡単に出来るものじゃない。一時的なものと考えていいだろう。」

 「おにぃちゃん、ボク、またファルスの声が聞こえるようになる?」

 「あぁ、時間がたてば元通りになる。今も、ファルスの力は感じるんだろ?どのような状況でも、ファルスはソラを守ろうとしているんだ。ソラもファルスを信じてやれ。」

 「うん、わかった。ボク、ファルスを信じる。」

 あとで、ファルスの為に歌うんだというソラ。

 

 「さて、時間がないからこの先の事を相談しよう。……昨日俺がソフィアと話していた内容、どこまで聞いていた?」

 「なぜか急に眠くなって……あまり覚えていないわ。」

 「私もそうっす。」

 「ボクも……。」

 飲み物か、食べ物に何か混入されていたのだろうか?

 昨日あれだけリンガードが危ういと力説してたのにな……完全に油断してた。


 俺は、手短に、昨日の俺の仮説を3人に説明する。

 「……だから、今俺達が追われているのも……そう言う事なんだろうな。」

 「リンガードは敵って事っすね。」

 「とりあえずはな。でも、まぁそんな事はどうでもいいんだ。それより今は……この魔法陣を使ってこの場から脱出する。」

 俺は、今魔力を溜めている魔法陣の事を説明する。

 「これは転移の魔法陣を応用したもので、別の場所に転移する。必要魔力が少なく対になる陣もいらない。代わりに距離は短く、場所も選べない。転移後はバラバラになっている可能性もある。」

 だから今後の予定を……と伝える。


 「転移後はみんな一緒でもバラバラでも、構わずアルガード王国を目指すんだ。そして、なんとしても聖女の元へ行ってくれ。」

 「聖女っすか?」

 なぜ聖女が……と疑問気なリィズ。

 「説明するには時間がない。いいか?聖女にあったら『地球』『日本』『USO』『レイフォード』『星野彼方』……この5個のキーワードを伝えてくれ。このキーワードのどれか一つでも反応したら、必ず力になってくれる。特に……可能性は低いが最後のキーワードに反応したら……それは「絶対的な味方」だ。俺の代わりに守ってやってほしい。」

 「俺の代わりって……にぃにも一緒じゃないんすか?」

 「俺は皆を送った後、奴らを足止めして時間を稼ぐ。それから移動するからちょっとの間離れることになるな。」

 少しの間だけだ……と優しく伝える。

 「だったら私も残るっす!にぃにを守るっす!」

 「ダメだ……リィズは先に行ってほしい。」

 「何故っすか?私じゃにぃにを守れないっすか!……私はまだ足手纏い?……にぃにを置いていくなんて……やだよぉ……。」

 俺は泣き出すリィズをそっと抱きしめる。

 「足手纏いなんかじゃないさ。リィズの事は頼りにしているよ。」 

 「だったら……。」

 「だからこそ!……リィズに行ってほしいんだ。ミリィを、ソラを……そして聖女を守ってやってほしい。」

 しばらくの沈黙の後、リィズが俺を見上げる。

 「……聖女様は、にぃににとって大事な人……なんすね……。」

 涙で潤んだ瞳がわずかな光を反射している。

 「……ありえないくらいに可能性は低いけどな。でも、もしそうなら……お前らと同じくらい大事な人だよ。」

 俺はリィズを見つめ返し……そっと唇を近づける。


 どれくらいそうしていただろうか?……長い時間だったようであり、一瞬の出来事だったかもしれない。……俺はリィズから唇を離す。

 リィズは頬を染め、自分の唇に手をあてている。

 俺は気恥ずかしくなって顔をそむける。

 「さ、さぁ、そういう事だから、みんな脱出の準備を……。」

 準備なんてないんだが……。


 そんな慌てふためく俺に、ミリィが近づいてくる。

 「リィズばっかりずるいですわ。」

 そう言って、ミリィが俺の首に手を回し顔を近づけてくる……。

 ミリィの顔を見ると真っ赤に染まっていて、どこかすねたような表情で……可愛い……。

 俺は自然とミリィの唇に吸い寄せられていく……。


 俺とミリィが離れると、服の裾を引っ張る子がいた……ソラだった。

 「ボクは?」

 ソラがじっと見つめてくる。

 俺はソラに顔を近づけ……おでこにキスをした。

 流石にソラの唇にキスは……背徳感半端なく……無理だった。

 「ぶぅー、ボクだけおでこ……。」

 「ハハハ……ソラは、もう少し大きくなってから……な。」



 俺達がそんな事をしている間にも、包囲網は狭まってくる。

 「いよいよ時間が無くなってきたな。魔力は十分たまったし、今から送るよ。」

 そう言って、俺は3人に魔法陣の上に乗るように促す。

 「じゃぁ、ほんの少しの間、お別れだ。」

 「すぐ……すぐ合流できるんですよね?」

 ミリィが聞いてくる。

 「あぁ、すぐに追いつくさ。だが、俺を待たなくていい。転移したらすぐアルガードに行くんだ。」

 ミリィが頷く。


 「おにぃちゃん、本当に大丈夫?」

 ソラが心配そうに聞いてくる。

 「大丈夫だよ。それに何かあったら助けに来てくれるんだろ?」

 「ウン、ボク真っ先に駆け付けるよ。」

 「その時はみんな一緒に来てくれよ。」

 ソラが大きくうなずく。

 

 「リィズ、一応これを持って行ってくれ。」

 俺はリィズに龍笛を渡す。

 「何かあったら、ランに助けを乞え。」

 「これはにぃにが持っていた方がいいんじゃ?」

 「さすがに、ここにランを呼べないからな。……いざという時は躊躇うなよ。」

 リィズは堅い顔で……それでも頷いてくれた。


 「アルガードも味方じゃない。今後、どう事態が転ぶかわからないから気を付けてな。最悪、聖女を連れて精霊の森かダーちゃんの祠へ隠れることも考慮してほしい。」

 俺はそう告げると、魔法陣を起動する。

 魔法陣が光に包まれる……。

 「レイさん……。」

 「にぃに……。」

 「おにぃちゃん……。」

 三人の声が途切れていく……。

 光が収まると、そこには割れた魔晶石が転がっているだけだった。

 「やっぱりこの石じゃ3人が限界か。」

 ……この様子では、三人も国境手前までは辿り付けていないかもな。


 「そうすると、やっぱり時間を稼ぐ必要があるか……。」


 ………向こうで光が見えたぞ!………

 …………あっちの方だ………

 ……こっちだ、こっちに誰かいるぞ………


 俺達を探している奴らの気配が段々近づいてくる。

 とりあえず、少し距離を離そう。


 さて、どうするか……

 ひと暴れするのもいいが、ソフィアやダビットたちの事も気になるしな。

 わざと捕まって事情を確認するのもありか……。

 でもそうすると問題が……

 俺はグリムベイブルを出し、懸念事項について調べてみる。

 「なるほどね。これなら無駄にならないか。」

 俺はアイテムを取り出し、調べたとおりに次々と処理をしていく。

 最後に残ったのは一振りの銅の剣……さっき拾ったものだ。

 俺はこの銅の剣の表面に魔力コーティングを施す。

 これで少しは切れ味がよくなったはず。

 今、俺の手元にあるのはこの剣のみだ。

 これで捕まっても、取り上げられるのはこの剣のみで済む。

 

 ………向こうで音が聞こえたぞ!………

 ……こっちだ、見つけたぞ!………


 都合よく見つけてくれたようだ。

 俺は、飛び出してきた哀れな犠牲者を切り伏せ、そのまま開けたところへ飛び込む。

 周りを数十人の兵士たちが取り囲む。

 ……ここまでの様だな。

 それでも俺は油断なく、周りを警戒する。


 「そこまでよ!大人しく捕まりなさい!」

 兵士たちの中から出てきて声をかけたのは……エミリアだった。


 「レイフォード。貴方をソラン卿殺害及び家屋破損の罪で逮捕します。また、国家に対する反逆行為の疑いもあります。……大人しく裁かれてくださいね。」

 エミリアは俺を見て不敵に笑った……。


ヒロインズと別れてしまいました。

無事再会できるのか……出来るといいなぁ。

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