表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
34/153

領都目指して……

 「……。」

 リィズが、ミリィとソラを見つめてる。


 「ねぇ、にぃに……。」

 リィズが二人から目を離さずに話しかけてくる。


 「どうしたリィズ?」

 「ワタシ最近思うっすけど……、ワタシの影、薄くなってきてないっすか?ソラとキャラが被って、いらない子になってないっすか?」

 「何を考えているかと思えばそんな事……。」

 くだらん、と一蹴するが……。


 「くだらなくないっす!私にとってはキャラ生命にかかわる重大案件っす!」

 ……十分くだらないと思うぞ。


 「いいか、お前とソラは全然キャラ被ってないぞ。」

 仕方がないので、リィズを諭すことにした。


 「そうっすか?でも年下妹キャラで被ってると思うっす……。」

 「……ソラはな、確かに妹キャラだ。『ロリ系ボクっ娘妹キャラ』という奴だな。」

 リィズの言う事は間違いではないが……。


 「やっぱり妹キャラなんすね……。」

 「それに対し、リィズお前は『元気系下っ端残念キャラ』だ。全然違う!」

 そう、全然違うのだ!


 「残念キャラって……。かえってショックっす。」

 「まぁ、わかりやすく言えばソラは『守ってあげたいキャラ』リィズは『イジってあげたいキャラ』だな。」

 うむ、我ながら的を得ているといえよう。


 「何なんすかそれは!私の立ち位置そんなんだったんすか!!」

 「知らなかったのか?……初めて知る事実、という奴だな。」

 「ひどいっすぅっ~~~~~~~~……。」

 リィズが走って行ってしまった……。


 「あのぉ……レイさん。私もキャラが……。」

 聞こえない。何も聞こえない。

 レイファと被ってミリィの影が薄くなってるなんてことは、俺の口からは言えない。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「……出来た。」

 ここは、ミンディアの宿屋の一室だ。

 俺達は、まだミンディアに滞在している。

 周りが騒がしいこともあり、さっさとこの街を出たいのだが……。


 (できたの?出来たの?早く見せなさいよ!)

 翠色の光が飛び交う……。

 すべてはコイツ……風の精霊・エアリーゼの所為だ。

 リィズの事が気に入ったエアリーゼが、自分の依り代を作れと煩く、しかも出来た物についてデザインがダサいとか、色が気に食わないとか文句をつける始末。


 先日、ようやくエアリーゼの気に入るものが出来たのだが、今度はリィズに拒否られた。

 仕方がないので作り直したのだが……。


 「なぁ、エアリーゼ。」

 (なによ!)

 「この間のアレ、リィズは何が嫌だったのかわかるか?」

 (……わからないわ。アレは、あなたにしては会心の作だったと思うわよ。)

 「そうだよなぁ……。」

 いったいどこが気に入らないんだろうと、先日作ったものを取り出す。

 「我ながら、いい仕事したと思うんだけどなぁ。」

 (そうね、今見直しても、これはリィズちゃんによく似合う……リィズちゃんの為だけに出来ていると思うわ)

 「一体、何が気に入らないんだろうな。この『ネコ耳カチューシャ』と『ネコ尻尾』……。」

 (ほんとにね……。)

 謎は深まるばかりだった……。


 

 結局、エアリーゼの依り代として、以前作った指輪とブレスレットを改良したものをリィズに贈った。

 指輪にはエアリーゼの精霊石の欠片をはめ込み、リング部分はかなり精密な紋様を彫り込んだ。

 一見精密なデザインに見えるが、実は魔法陣の一種だったりする。

 ブレスレットの方もメインの石を精霊石に変え、周りの小石も最高級の魔結晶に変えてある。

 また、リングと同じくデザインに見せた魔法陣を彫り込んである。

 かなり精緻なデザインの為、エアリーゼも満足してくれた。


 同じく、ミリィとソラの分も作り直した。

 基本デザインはみんな一緒にしてある……変えると、後が面倒なんだよ……。

 

 ソラのネックレスにはファルスの精霊石を仕込んであり、ブレスレットには光の精霊達の分の精霊石を仕込むことになった。

 精霊の森でソラと契約したい、ソラの力になりたいという精霊は数多くいたが、全てファルスが却下していた。ファルスはソラを独占したいらしい。

 しかし、独占は許さないという勢力も強く、最終的には、ファルスの管理の下でなら、ソラに近付いてもいいと言うことで落ち着いたらしい。

 ファルスからは、自分以上に影響力が強くならないような仕様にして欲しいと要望があった。


 ミリィに関しては、早々に思考を放棄した。

 近寄ってくる精霊の数が半端ないのだ。

 下級・上級問わず、我先にとミリィにアピールをしてくるので収拾がつかないのだ。

 結局ミリィのアクセサリーにつける精霊石には指向性を持たせず、汎用性を重視した。

 変わりに付けれるだけの精霊石を埋め込み、数を多くしている。


 アクセサリーに仕込んだ魔法陣は、周りのマナを取り込みやすくするもので、魔力の流れをスムーズにしたり、消費量を減らす効果がある。

 こういう知識はグリムベイブルがあってこそ出来るものであるが、最近グリムベイブルの使い方が、生産時の参考書になっているのが気になる。

 俺のチート能力って、こんな使い方でいいのだろうか?

 ……まぁ、深く考えたら負けだな。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「レイフォードさん、あなたの旅の無事をお祈りしていますわ。

 「あぁ、ありがとう。またな。」

 俺達はレイファに見送られ、ミンディアの街を後にする。


 「レイさん、レイファさんを残していって良かったのでしょうか?」

 ミリィがそんな事を言ってくる。

 「良いも悪いも、レイファにはミンディアでやることがあるからの仕方がないだろ?」

 レイファはミンディアの巫女だ。中央神殿からの許可が無い限り、長期間の移動など簡単に出来ない。

 あれでいて神殿組織は面倒くさいのだ。

 

 「封印解くときには呼ぶし、いざとなったら、中央のエライ人に金積めば何とかなるだろ。」

 「にぃにが黒いっす。」

 「それにな・・・・・・」

 リィズのツッコミは無視して続ける。

 「放っておいても、向こうから絡んでくるよ。ミルファースは、何かを隠している。」

 

 「まぁ、ワタシとしてはこれ以上、にぃにのオンナが増えないのは大歓迎っすけど。」

 「増えちゃダメなの?」

 賑やかなのは楽しいよとソラが言う。

 「いいすか?新しいオンナが、にぃにの膝の上にのったら、ソラはどうするっす?」

 そんなソラにリィズが質問を投げかける。


 「・・・・・・お兄ちゃんの横に行く。」

 「左右は私とねぇねがいるっすよ?」

 「・・・・・・。」

 「更にもう一人増えて、にぃにの背中を取っちゃったらどうするっす?」

 考え、黙り込むソラに追い討ちをかける。

 

 「・・・・・・お兄ちゃん、これ以上女の人、増やしちゃダメです!」

 ・・・・・・俺の方に来た。

 「そうそう、ソラの言うとおりっす!」

 我が意を得たり!とばかりにリィズが追従してくる。

 「いや、増やしている訳じゃ・・・・・・。」


 (ソラ・・・・・・後一人は確実に増えますので、今のウチにレイ殿を落としておくのです。)


 ・・・・・・ここでファルスが特大の燃料を投下しやがった。


 「にぃにー、どういう事っすか!」

 俺が知りたい・・・・・・。

 「そんな事・・・・・・。」

 言い掛けたとき背後で殺気を感じる・・・・・・。

 恐る恐る振り返ると・・・・・・。

 「どう言うことですか?」

 笑顔のミリィがいた。

 ・・・・・・笑顔なのに怖いっす、ミリィサン・・・・・・。

 

 ・・・・・・ファルスが言うには、封印解呪に月の属性を持つ者が必要であって、遅かれ早かれ出逢うことになるのだという。

 ……何か、まだ隠してる気もするが……まぁ、ミリィもリィズも納得したみたいなので、いいだろう。

 これ以上薮を突っついてたまるか。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「あー、見事なまでテンプレ展開だな。」

 「にぃに、何言ってるかわからないっす。」

 俺達の前方には、馬車を襲っている盗賊団がいた。


 旅している途中で盗賊に襲われている馬車を救う。そして、そこから新たな展開が広がる……あまりにもベタなシチュエーションだ。

 「とりあえず、無視するか?」

 「ダメですよレイさん。困っている人を見たら助けてあげなくては。」

 「いや、俺は「助けてくれますか? Yes/No 」の選択肢では『No』を選ぶことにしているんだけど……。」

 「にぃに、何言ってるかわからないっす……。」

 リィズが呆れたように言う。


 「いいっすよ、あの程度ならワタシ一人で十分っす!」

 (あ、リィズちゃん、だったら、だったら新しい機能、試そー。)

 突然エアリーゼが出てきて、リィズに話しかける。


 「新しい機能ってなんすか?」

 (そこの人に依り代作ってもらったから、リィズちゃんに私の力を貸し与えることが出来るようになったのよ。簡単に言えば私の力をリィズちゃんが取り込んでパワーアップするの!)

 「それは面白そうっすね!いいっすよ。」

 リィズが乗り気になっているが……いやな予感しかしない。


 (じゃぁ、力を求めて……私と一つになるイメージで……)

 「こう……かな?」

 リィズが翠色の光に包まれる……。

 ソラが、ファルスの力を借りる時と同じような感じだ。


 「力が溢れてくるっす!ちょっと行ってくるっす!」

 光が収まった後、エアリーゼの力を取り込んだリィズが盗賊団に向かってかけていく……速い!

 風の精霊だけに速さ関連に特化しているのだろうが……。

 リィズが、盗賊に飛び掛かり、双剣で斬りつけたかと思うと、あっという間に別の盗賊に斬りかかり……次の瞬間には離れたところへ距離を取る。

 変幻自在・縦横無尽に動いて盗賊団を圧倒する……その動きは野生の動物……それもネコ科の動物を連想させるしなやかで力強い動きだ。

 

 形勢の不利を悟った盗賊団は一目散に逃げだす……あとが面倒なので見逃してやった。

 「もう大丈夫っすよ!」

 戦闘を終えたリィズが襲われていた馬車の人たちに声をかける……が、そこには誰もいなかった。

 馬車もあっという間に逃げて行ったのだった。

 

 唖然としているリィズに声をかける。

 「まぁ……その、なんだ……・とりあえず、エアリーゼ、グッジョブ!」

 俺はエアリーゼに対し親指を立てて見せる。

 (でしょー!最高でしょー!もっと褒めていいのよ!)

 「あぁ、最高だ。そんな事まで出来るとは……脱帽だよ!」

 (いやぁ……アンタの創造性のお陰よ。私一人の力じゃないわ。)

 俺とエアリーゼはお互いを褒め称えあう。


 「あのぉ……にぃに、何を言ってるんすか?」

 俺とエアリーゼの会話に何やら不穏なものを感じたらしいリィズが、恐る恐る訊ねてくる。


 「リズ姉、ズルい。可愛い。ファルス、ボクにもアレやって!」

 (無理言わないでください……ソラは今のままで十分可愛いですから)


 「何?何なんすか!」

 ソラとファルスの会話で、余計不安になったらしいリィズが慌てる。

 そして、助けを求めるようにミリィの方へ視線を向けるが……。


 「あぁ……リィズ可愛い……ギュってしたい……。でも嫌がられたら……、でも可愛い……。」

 見悶えていた。


 「何なんすか!なんだって言うんすか!」

 リィズがパニック寸前になっている……仕方がない、本当はもう少し眺めていたかったが……。

 

 「リィズ、これ……。」

 俺はリィズに手鏡を渡してやる。

 「コレで何するっすか・・・・・」

 リィズは鏡を受け取り……覗き込んだ途端……

 「なんすかー!!これは!!!」

 奇声を上げた。

 

 リィズの今の姿……頭……髪の毛から覗くフサフサの三角耳……お尻から生えているフサフサ尻尾……。

 そう、エアリーゼが自分の力を使って作り出したネコ耳・ネコ尻尾だ。

 触った時の感触まで完璧に再現している。

 俺はリィズの頭を撫で、耳をモフモフしながら「リィズ、可愛いよ」と囁いてあげた。


 「に、に、にゃぁーーーーーーーーー!」

 リィズは奇声を上げて走って行ってしまった。

 「あ、リィズ……触りたかった……。」

 タイミングを逃し、モフモフに触れる事の出来なかったミリィがショックで項垂れていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「もぅ!ひどいっす!」

 リィズがまだ怒っていた。

 「まぁまぁ、エアリーゼも悪気があったわけじゃないんだし……。」

 (そうよ!私は常にリィズちゃんの為に!)

 「確かに、あの力はすごかったすが……。」

 でもでも……とまだ納得できないようだ。

 「宿屋で落ち着いたら、好きなモノ食べさせてやるから機嫌直せって。」

 俺達は近くの宿場町に来ていた。

 今はリィズの機嫌を取りながら商店街を見回っている所だが……


 (リィズ、気づいているか?)

 (にぃにも気付いていたっすか?結構うまく気配を消しているっすよ。)

 (巻いてもいいが目的がわからないからな……。)

 (捉まえるっすか?)

 (そうだな……あの角を曲がって仕掛けよう!)


 実は、街に入ってから俺達をつけてくる気配があった。

 とりあえずミリィとソラには宿の手配を頼んで別行動しているのだが、こちらについてきたところを見ると、俺かリィズを狙っているのだろうが……。


 俺達は、さりげなく角を曲がると同時に上方へジャンプして身を隠す。

 俺達の後を追って角を曲がった人影は、俺達の姿を見失いオロオロし出す。

 小柄で深くフードをかぶっており、男か女かもわからない。

 リィズが気配を消して後ろに降り立つ。

 同時に俺が人影の前に姿を現す。

 「俺達に何の用だ!」

 目の前の人影は、咄嗟に振り向いて逃げ出そうとするが、そこにはリィズがいる。

 「逃がさないっすよ!」

 リィズが腕を掴み、後ろに捻る。

 「さぁ、顔を見せてもらうっす!」

 リィズがフードを剥ぐ。

 そこに現れたのは、まだ幼い女の子の顔だった。


 ただ……。

 「……ネコ耳?」

 彼女の頭には可愛い三角耳がついていた……。

 

リィズの新境地です。

ネコ耳可愛い。

この後はケモミミ王国へ向かいます……たぶん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 超くだらないんだけど猫尻尾ってどうやって付けるんだろ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ