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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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聖女 -1-

 香奈美ちゃん登場。

今後、どのように彼方たちと絡んでいくのか……。

 白い闇の中を漂っている。

 私はもうすぐ目覚める……あれ?誰かと話していなかったっけ?……記憶が曖昧だ。

 必ず見つける。もう一度会うんだ……誰と?……意識が混濁している。

 ただ、もう一度会って今度こそはっきりと言うんだ……その想いだけはわかる。これが私の根本になる……。

 意識がかすれていく……必ず会いに行くから……待っ……てね……セ………イ……。


 ……ん……ふぁぁー……。

 目が覚める。……まだ眠い。

 夢を見てた気がするけど……。

 ……ところで、ここはどこ?……頭がぼんやりしてハッキリしない。


 「ナミ!・・・私の事わかる?・・・・・・。」

 目を開けると、私を覗き込んでいる顔が間近にあった。


 「・・・お・・・ねぇちゃ・・・ん・・・」

 声がかすれてうまく出せない。

 ・・・・・・この人、おねぇちゃん?いや、私に姉は居ない。

 ・・・でも・・・おねぇちゃんだ・・・。


 「ママー、ナミが目を覚ましたよー!」

 目の前の人・・・姉のメイが母を呼ぶ。

 「あぁ、良かったよ。いきなり倒れるからびっくりしたよ。どこか痛い所とかは無いかい?」

 年の頃は30前後だろうか?妙齢といっても差し支えのない女性が声をかけてくる。

 ・・・・・・この人がお母さん・・・・・・違う、私の母は・・・・・・でもこの人はお母さんだ。


 「お、・・・お腹・・・すいた・・・」

 私の口から出た言葉はそんなだった。


 現状を整理してみよう。

 私は出されたスープをゆっくり咀嚼しながら考える。

 混乱しそうな時は順番に物事を整理していけば良いとセンパイが言ってた・・・・・・センパイって誰?

 ・・・・・・ダメだ、混乱してる・・・・・・。


 まず、私は……ナミ……違う……か……香奈美……私は……水上……香奈美……。

 でもナミでもある……。

 ここで頭の奥の方で何かがカチリとはまる音がした。


 そうだ、私は水上香奈美……この世界のナミの魂と融合した。

 だから香奈美でありナミでもある。

 目の前にいるのは母親のエレナと姉のメイ。

 私・・・・・・ナミは農作業のお手伝い中に暑さで倒れた・・・・・・。

 よし、大丈夫!


 「ママ、心配かけてごめんなさい。」

 心配そうに私を見ているエレナに声をかける。

 「……大丈夫そうだね。作業はいいからゆっくり休んでいなさい。」

 そう言って私が食べ終えた食器を持って部屋を出て行くエレナ。

 「何かあれば呼ぶんだよ。」

 メイもそう言って部屋を出ていく。


 ナミの家は農家だ。

 といってもこの辺一体が農村なので殆どの家が農家なのだが。

 さて、私はどうやら転生出来たらしいが、この後はどうすればいいのかな?


 このままぼーっと生きてると、近所の農家に嫁いで一生を終える事になる。

 それじゃ何のためにこの世界に来たのか分からない。

 私はここで彼方センパイと出会うんだ。その為にはどうすればいいか考えなくては。


 彼方センパイを捜すには……やっぱり冒険者になるしかないかな?

 でも冒険者登録出来る様になるためには後3年という時間が必要だから……。

 ……こういう時は、とりあえず、お風呂に入ろう。

 さっぱりしたいからね。



 …………異世界、舐めてました。

 まさか、お風呂がないとは……。

 川で水浴びをするか、水を汲んできて体を拭くのが普通だなんて……。

 よし、決めた!

 まずはお風呂を作るのよ!

 すべてはそれからだわ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「ふぅ……やっと完成したわ。」

 念願のお風呂が出来た。

 ここまで来るのに1ヶ月かかった……本当に長かった!


 「へぇー、これが『お風呂』なのね。」

 ニエラが珍しそうにキョロキョロしている。

 彼女は私の協力者だ。

 こんな大掛かりなモノ、私一人で出来っこない。

 だから、私は協力者を探すことから始めたのだ。



 お風呂を作ろうと決めた私は、まず、この世界の常識……特に美容について……を探ることから始めた。

 もし、ここが「奇麗になる」事に対して、無頓着もしくは禁忌に触れるような事であればこっそりと事を運ばなければないからだ。

 ちなみに、もし万が一「禁忌に触れる」事であっても諦める気はなかった。

 彼方センパイに会った時、薄汚れた私を見せるなんてとんでもない事だ。

 好きな人には奇麗な私を見てもらいたい……それは地球が丸いのと同じぐらい常識なのよ。


 幸いにもこの世界での美意識については、私の常識と何ら変わりがなかった。

 ただ、技術が追い付いてないだけ……だったら私が技術革新しようじゃないか。

 自重?……何それ?おいしいの?……奇麗になる、可愛くなる事以上に大事な事なんかないわ。

 彼方センパイ……レイにぃの時か……も言ってた「可愛いは正義!」だって。


 調べて分かったことだが、この世界にも「お風呂」はあった。

 ただ、貴族とかお金が有り余っている所にしかないらしく、庶民の間に広まってないだけの様だった。

 この世界の「お風呂」の事は良く判らないけど、私の知ってる「お風呂」を作っちゃえば問題ない。

 要は湯舟があって、そこにお湯を張ればいいだけの話。


 ただ、ここで問題が起きたのね。

 おうちの中に場所がないのよ。お風呂場のスペースがない。

 中になければお外で……って、お外で作ろうと思ったら建物から作らないといけない。

 あー、でも露天風呂もいいかも?

 でも、丸見えは困る……いくら何でも、私の肌を彼方センパイ以外に見せる気はないよ。


 この問題を解決したのが、ニエラだった。

 正確に言えばニエラの彼なんだけどね。

 ニエラの彼……ボイスは大工兼職人だった。


 「ニエラの彼って、小屋作れるんでしょ?、ちょっと紹介してくれないかな?」

 私は、ニエラに彼の紹介を頼んだんだけど……。

 「ナミ、アンタ、人の男に色目を使う気?」

 ……何言ってんだ?コイツ?

 私があんな男に興味あるわけないじゃない。

 そう素直に言ったんだけど……なぜか怒っちゃったのよねぇ。

 

 「お風呂」があれば「綺麗になれる」そうすれば彼は「惚れ直す」かも?

 というようなことを散々説明してようやく紹介してもらうのに三日かかった。

 

 「あなたがボイスね。お願いがあるんだけど聞いてくれるかしら?」

 「ニエラ、こいつメイの妹だろ?ガキに付き合ってる暇ないんだけどな。」

 ……私は必死にこらえたわ。もし役に立たなかったら、ニエラの前で恥をかかせてあげよう。


 「そうなんだけど……一応話を聞いてあげて。」

 お願い……とニエラが少し甘えた感じで言うだけで、ボイスの態度が急変する。

 「まぁ、ニエラがそういうなら……で、なんだい?聞くだけは聞いてやる。」

 ……はぁ、ニエラにベタ惚れなんだね。

 こういう奴には……。


 「……ここだけの話なんだけど……ゴニョゴニョ……。」

 表向きは「ニエラが綺麗になる協力を」という話をしたんだけど、こっそりと「お風呂に入るニエラを見たくない?」と持ち掛けてやったら、二つ返事で協力を約束してくれたわ。

 男なんてそんなもんね。

 まぁ、実際には覗けないようにするんだけど……そこまで正直に話す必要はないわね。


 ボイスの協力を取り付けた事により、私の計画は一気に進んだんだけど、ここでいい意味での想定外なことが起きたの。


 まずは、ボイスの事。

 彼は、意外にもそれなりに腕のいい大工であり、職人だった。

 私の「なんとなくこんな感じ」という結構曖昧なイメージを伝えるだけで、しっかりとしたものを作ってくれた。

 イメージ通りの物を作ってもらうのにもっと苦労するかと思っていただけに、これは嬉しい誤算だった。

 「ボイス凄いね!」って、思わずニエラを抱きしめちゃったけど……ニエラに怖い目で睨まれた。 


 二つ目は、私……というよりナミの事ね。

 ナミの記憶を辿ってわかった事なんだけど、ナミって元々魔法が使えたらしいのね。

 ただ、それを周りには隠していて、こっそり森のおばばの所に習いに行ってたらしい。

 まぁ、エレナやメイにはバレバレだったらしいけど。


 ボイスが建物を作っている間に、私はナミの記憶を頼りにおばばの所に行って魔法を教えてもらった。

 おばばが言うには、私の魔力量が急激に増大して、魔力の流れもスムーズになってるんだって。

 私の魂と融合したのが原因なのかな?

 

 魔力で水の分子の動きを活性化させることにより、お湯を沸かすことが簡単にできることを知って私のお風呂計画は更に前進した。

 おばばは、そんなことは普通出来ないっていうけど……出来ちゃうんだからいいよね?

 まぁ、一応普通に薪をくべてお湯を沸かす機能は用意したけどね。


 そして三つ目……私のチート能力。

 これは、他人には絶対バレたらいけないことだ……能力を知った時、私はそう思った。

 向こうの世界にいた時は、よく聞く「チート能力」って言葉だったけど、よく理解していなかったのよね。

 実際、チート能力持っている人なんていなかったわけだし……。

 ただ、実際にチート能力というものを目の当たりにすると……。

 ないわー。これ絶対ヤバいわー。

 もう、そうとしか言いようがない。

 

 私の能力は「他の力を借りる事」……これだけじゃ良く判らないよね。

 簡単に言えば「他人の能力……ゲーム風に言うならスキル……が使える」ってこと。

 発動条件は「協力をお願い」して相手が「承諾」してくれること。

 相手が承諾すると私の持つ本……普段はどこにあるのか私も知らない……にその能力が書き込まれる。

 複数の能力は同時に使えないけど、一度書き込まれた能力は永久に使えるっぽい。

 しかも、奪うわけでなく借りるだけだから、相手には何の影響もない。貸したという自覚もない。


 これって、使い方次第ではすごく便利な力……そしてズルい力。

 だってね、その人が一生懸命努力して覚えたことが、簡単にできちゃうんだよ。

 今回の場合、ボイスが「協力してくれる」と言った時点で、ボイスの出来ること、みんな私にも出来ちゃう。正直、ここでボイスがいなくなっても困らない。

 ボイスが一生懸命覚えた大工の技、職人の技……今の私は同じようにできる。

 まさしく「チート=ズル」だよね。


 しかも、この能力、相手の承諾って強制でも効果あるのね。

 つまり、脅して協力させてもいいのね。

 さらに……人だけじゃないのよ……これが怖い所だわ。


 チート能力を知った私は、ある仮説を立てた。

 そしてその仮説が正しいかどうかを知るために、森に来た。

 「えーと……あ、いたいた。」

 慎重に辺りを探って、目的の一角ウサギを見つけた。


 一角ウサギは基本温厚な性格で、気配探知の能力を持っている為、中々捕まえることが出来ない。

 また、怒らせたり、攻撃されたりすると、その角から電撃を発し、相手を動けなくして逃げ去るという中々厄介なモンスターだ。

 

 一角ウサギを見つけた私は、そっと魔法を唱える……。

 『万物の根源たるマナよ』『光のロープとなりてその身を縛めよ!』……

 『光の拘束(バインド)!』

 一角ウサギを光が取り巻く。

 光がそのまま一角ウサギを縛り上げる。

 

 「うまくいったわ」

 私は一角ウサギに近づく。

 そしてナイフを突きつけ、言葉に魔力を乗せて話しかける。

 「あなたの力を貸してほしいの。その「気配を探知する力」と「電撃を放つ力」を。」

 一角ウサギに触れるか触れないかまでナイフを近づけ目をのぞき込む。

 「力を貸してくれるなら、すぐ自由にしてあげる。でも貸してくれないなら……。」

 ナイフを握る手に力を込める。

 一角ウサギは怯えたようにうなずく。

 ・・・・・・よかった、こっちの意思は伝わったみたい。

 私が一角ウサギの戒めを解くと、あっという間に森の奥へ消えていった。

 

 「ブック!」

 私は能力の本を取り出す。

 中を見てみると……。

 『気配探知』 『電撃波』

 二つの能力が書き込まれていた。


 能力を使うのは簡単。

 本に書き込まれた言葉を呪文として唱えるだけ・・・・・・こういう風に。

 『電撃波』

 私の掌から電撃が走り、前方の木にあたる。

 仮説通り・・・・・・意志さえ通じれば、モンスターの能力でさえも使う事が出来る。

 それなりに魔力は消費するみたいだけど、充分ね。



 そして今、私の目の前に念願のお風呂がある。

 「本当に作れたのね。」

 びっくりして固まっているのは、姉のメイだ。


 メイにはシャンプーとかボディソープとか入浴剤を作るのを手伝ってもらった。

 作ると言っても、ゼロから作った訳ではない。

 そんな知識は持っていない。

 今あるものをもっと洗浄力を増すよう 

にしたり、言い香りがするように改良しただけだ。

 

 改良に必要な素材を集めるのを手伝ってもらったり、どういう素材があるかを教えてもらったり、メイの知識はおおいに役立った。

 そのお礼として、お風呂の一番乗りに招待したのだ。


 「ニエラ、お姉ちゃん、早く入ろ!」

 私は二人を誘って早くも服を脱ぐ。

 お風呂を目の前にして我慢なんか出来るものか!

 ちなみに、建物の周りには落とし穴が、建物の壁には電流が張り巡らせてある。

 更に入り口には男性を遮断する結界が張ってある。

 この結界はおばばに教えてもらったものだ。

 昔から男というものはしょうがない存在だったらしい。


 このお風呂は、近くの川の水を濾過して流し込み、排水はやはり濾過して川に流す仕組みで循環している。

 薪を炊き続ければ24時間風呂も可能だが、今回は入る前に私がお湯を沸かした。

 お湯には薬草と香草を溶かし込んであるので美容にも健康にもいいはず。


 私は早速湯船につかる・・・・・・。

 これよ・・・・・・この為に私は頑張った!

 「ふぃー、幸せ~。」


 メイもニエラも入ってくる。

 二人ともピカピカに磨き上げて、みんなをビックリさせよう。

 メイは素材がいいから、男共が集まってくるに違いない。

 ニエラは・・・・・・、まぁボイスへのご褒美だね・・・・・・正直ボイスには勿体ないと思うけどね。

 そう思いながらニエラを改めて見る・・・・・・大きい。


 「えいっ!」

 ニエラの胸を揉みしだく。

 「キャッ!いきなりなにするのよ!」

 「なんかムカついた。」

 そう言って更に揉む。

 「アン・・・・・・ダメ・・・・・・。」

 ニエラが色っぽい声を出す。

 「ええんか、ここがええんか・・・・・・。」

 つい調子に乗って更に揉みしだいていく。

 「いい加減にしなさい!」

 ・・・・・・お姉ちゃんに叩かれた。


 その後、三人で洗いっこして、メイとニエラを磨き上げ、ついでに私も磨いてもらった……、お風呂から出る頃には、少しのぼせてしまった。


 お風呂の建物から出ると、落とし穴に嵌まっている男たちがいた。

 ……ご愁傷様。


 ちなみにニエラやメイを見た村の女性たちが、こぞってお風呂に入りたがったので、入浴料を取って開放することにした。

 父さんをはじめ男子禁制ではあるが。


 ちなみに入浴料は銅貨2枚、薪や薬草を持ち込んでくれる人は銅貨1枚である。

 魔力もタダじゃないのだ。

……お風呂作っただけで終わってしまいました。

当初はもっと先に進むはずだったのですが……

彼方たちと出会うのは当分先になりそうです

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