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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
30/153

勇者とドラゴンとミンディアの巫女 後編

 「ドラゴンバスター?」

 また怪しい名前が出てきたな。


 「えぇ、勇者様一行が街に来ていた時に、たまたま滞在していた商人が……。」


 *-*-*-*-*-*-*-*-*


 「あんたらが、勇者様御一行でっしゃろか?探しましたで。」

 酒場で寛ぐ勇者一行の前に一人の男が現れた。


 「何だ、お前は!怪しい奴め。」

 勇者一行の中の騎士風の男が誰何する。


 「おーこわ。騎士はん、そんな睨まへんと話聞いてや。ワテは見ての通り、商人やっとります。勇者様は『神託』のお話は聞かれたん?」


 「何のことだ?」

 勇者が、商人を名乗る男に問いただす。


 「先日、ここの巫女はんが『神託』を受けたんや。そん中で『ドラゴンが災いを起こす、解決できるんは勇者様』と言われたんや。せやさかい、勇者様を探しておったんやで。勇者様こそ、この街を救う英雄やねん。どないか助けておくんなはれ。」

 商人が言うには勇者がドラゴンを倒せばこの街が救われるらしい。


 「いいじゃないか、ドラゴンを倒せば街の人も助かるし、俺たちの名声も上がる。断る理由ないだろ。」

 勇者が安請け合いをするが、他のメンバーはあまり乗り気ではないらしい。


 「勇者様、相手はドラゴンです。いくら我々でも、そう簡単には退治できないと思うのですが?」

 仲間の魔道師が、諫めに入る。が、そこに商人が口をはさむ。


 「どうでっしゃろ?ワテ、たまたま『ドラゴンバスター』ちゅう武器を持っていますわ。これは、ドラゴンの堅い鱗も易々貫くちゅうスグレモノの武器やねん。本来やったら300万Gのトコを100万でお譲りいたしますわ。」

 

 「いいじゃないか、それを貰おう。」

 「毎度、おおきに!」

 勇者が、何も考えずに商品を受け取る。商人はほくほく顔だ。

 

 「ちょっと待ってください。いくらなんでも100万Gという大金を持ち合わせてはおりません。」

 僧侶風の男が、勇者を止める。

 「金がないのか?何とかならないのか?」 

 金がなければ買えないな・・・・・・とドラゴンバスターを返そうとする勇者を、商人が押しとどめる。

 「せやけど、勇者様達でも『ドラゴンバスター』なしでは、ドラゴンと戦うんは厳しいでっせ。ここは街の人に協力を仰いではどないでっか?自分達の為でもあるさかい、快く協力してくれることでっしゃろ。」

 街の人たちからお金を集めればいいと商人は言う。


 「そうだな。我々が戦いに行くんだ。協力するのは当たり前の話だな。」

 騎士風の男がそういう。魔導師は、そこまでしなくても……とつぶやくが反対はしない。


 「じゃぁ、カストーレ、そのように話を纏めてくれ。ミテルダークも手伝ってやれ。俺は、メイルゥと一緒に先に食事してるからな。」

 勇者はそう指示して魔導師・・・・・・メイルゥとともに店に入っていった。

 残された騎士風の男……カストーレと僧侶風の男……ミテルダークは商人と共に街の実力者の元へ向かうのだった……。


 *-*-*-*-*-*-*-*-*


 「……というわけで、街の支配人の指示で近隣の村民に至るまで財貨の供出を余儀なくされましてですね……今はいいですが、このままいけば冬を越せない村民が出てくるかも……。」

 困りました……とレイファが言う。

 

 「……。」

 俺は言葉も出なかった。


 「……。飢餓の原因って勇者じゃねぇか!」

 どう考えても勇者の所為だろ。突き詰めれば、『神託』なんかをよこしたミルファースの所為かもしれんが。

 (レイ殿……あまりミルファース様を悪く言わないでおくれ。)

 ファルスがミルファースをかばう……。上司をかばう部下の思いやりってやつか……。


 (……あとでお仕置きを受けるのは我じゃからのぅ……)

 思いっきり、自己的な理由だった。


 「あ、でも、ドラゴンさんが原因じゃないとは言い切れないのでは?」

 レイファがそういうが、俺にはわかる……すべては勇者(笑)の所為だ。


 「いや、俺にはこの先の展開が読めるぜ。大方ドラゴンは偶々そこにいたか、何らかの用事があっただけで、この街とは一切関係ないはずだ。そこに自称勇者が喧嘩を吹っ掛ける。まぁ、本来なら、気にも留めない存在だろうから勇者たちだけが吹っ飛ばされてそれでおしまいなんだろうが……。」

 あれで、変なツキを持っているからなぁ……あの自称勇者。


 「何らかの偶然か何かが働いてドラゴンを怒らせる羽目になるんだよ……きっと。

で、ドラゴンバスターの借金の所為で生活が苦しくなったところに加えて、怒ったドラゴンが田畑を焼き払うかなんかするんだろうなぁ。……収穫が減少して冬が越せなくなる奴ら続出……というわけだ。」


 「うぁぁー、目に見えるっす!」

 リィズも同意してくれる。


 「まさか……そんな事……。」

 レイファは信じられないようだ。


 「レイファさん……、時には真実を見つめる勇気が必要ですよ。」

 ミリィがやさしく諭す。


 「でも……そんな……。」

 まだ信じられないようなので、とどめを刺してやることにした。


 「ミルファースがあんな無茶をしてまで、俺達を引き留めたのが証拠だ!」

 「!!…そんなぁ……。」

 レイファが、がっくりとうなだれる……。

 しばらくそっとしておいてやろう。

 


 「とりあえず、村の財源立て直しについては後で考えるとして……。」

 「急いで勇者を追いかけるっすね。」

 俺の言葉をリィズが引き継ぐ。


 「手遅れにならないうちに急ぐぞ!」

 俺達は北のヤムロ山脈に向かうことになった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「ねぇ、おにぃちゃん。ドラゴンさんと戦うの?」

 ソラが不安げに聞いてくる。

 それも仕方がない事だろう。ドラゴンの強さはダーちゃん……ダークネスドラゴンとの戦いで良く判っている。

 あれは、生半可なことで戦える相手ではない。


 「いや、できれば話し合いで済ませたいな。」

 そのためにも、勇者に追いついて止めなければ……。


 「ただなぁ……。」

 「レイさん、何か気になる事でも?」

 俺のつぶやきを、ミリィが聞き咎め、訊ねてくる。


 「いや、ミルファース様が出て来たってことが引っかかるんだよなぁ。」

 「どういうこと?」

 聞いてくるミリィに、俺は、自分の中の疑問を整理しながら説明する。

 

 「あの場では、あえて言わなかったが、今回の事って、ぶっちゃけ勇者が失敗しても、ドラゴンを怒らせてこの辺一帯が焼け野原になるってだけだろ?」

 「だけって……大事ですわ。」

 レイファがそう言ってくるが……。


 「確かにこの辺に住む奴らには大事かもしれない。でも……それだけの事なんだよ。」

 「それだけって……どういう……。」

 ミリィも、まだ理解が追い付かないらしい。


 「んー、どういえばいいかな……、前住んでいた教会の裏庭にアリの巣があったの覚えているか?」 

 「あ。覚えてるっす。私が水を流し込んであげた、あのアリの巣の事っすね。」

 リィズが答える。後、そんなことしてたのか、アリさん可哀そうだからやめてあげて。


 「そう、そのアリの巣が、ミリィが可愛がっていた牝牛によって掘り返されようとしている。掘り返されたら、アリたちは家を失う……さぁ、どうする?」

 「どうするといわれても……放って置くっすね。」

 ……レイファだったら?と話を振る。

 「そうですね、助けてあげたいですが、どう手を出せばいいかわからないので見守るしかないですね。」

 ……まぁ、妥当な答えだろう。普通は放置か静観か・・・・・だよな。


 「つまりそう言う事なんだよ。」

 「急に話が飛んだっすね。」

 「いや、飛んでないよ。遠くの小さなアリの集落があってもなくても、あまり関係ない・・・・・・だろ?」

 「そうっすね……。」

 「神様から見て、広い世界の小さな町の人間の集落なんて、俺達から見たアリの巣と一緒だってことだ。」


 「わかったわ。だから「それだけの事……」なんだね。」

 「そう言う事っすか。」

 「神様から見れば小さい存在ですからね……。」

 ようやく理解が出来たらしい。ここでもう一つの疑問だ。


 「じゃぁ、そんなどうでもいいアリの巣が掘り返されないように止めなきゃならないとすると、その理由は何が考えられる?」

 「アリの巣に隠した宝物がバレるっす。」

 「牛さんが大怪我しちゃう。」

 「アリの巣と一緒に何かが埋まっていて爆発する……とかですか?」

 

 そんなところだろう……というか、リィズ宝埋めたんかい!……今度掘り返してみよう。


 「色々あるだろうが、直接、間接的に関わらず『俺達が被害を受ける』場合、アリの巣を守ることになるよな。つまり、俺達が神様だとすれば……。」

 「今回の事は、神様達にとって都合の悪い結果になるってことなのね。」

 「理解出来たっす。」


 「ただ神々が困るような事というのが想像つかん……。そこのところどうなんだ、ファルス?」

 俺はさっきから黙って聞いているソラ……ファルスに声をかける。


 「……。おにぃちゃん……ファルスが引っ込んじゃったよ。」

 ……逃げたな。という事はやはり何か知っているってことか。


 「ファルスからおにぃちゃんに伝言『じょーほーろーえいはお仕置きされるのじゃ』だって。」

 ……まぁ、今はいいだろう。とりあえずは勇者に追いつくことだな。


  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「レイさん、この先を抜けたところにドラゴンさんがいるそうです。」

 小鳥さんありがとね……と、ミリィがお礼を言うと、その鳥は飛び立っていった。


 「かなり近道できたみたいですが、結局追いつけなかったですね。」

 レイファがそういうが……もともと初動で何日も差があったのだ、追いつける方がおかしい。

 俺としては勇者がどうなろうが知ったことではないが……


 「頼むからドラゴンを怒らせていないでくれよ……。」

 俺がそう願った途端、奥の方から地響きとともに大気を揺るがすかのような咆哮が聞こえてきた。

 間違いない、ドラゴンの咆哮だ。

 「チッ……これがフラグってやつか!……先に行く!」

 「レイフォードさん、お待ちください。」

 駆けだそうとする俺をレイファが引き留める。


 「天高くおわします神々よ、真理の源たる絶対神ユングフィー、恵みの源たる豊穣神ミルファースが僕たる我レイファの名に於いて祈りを捧げます。この者に加護を承らんことを、炎の力、水の癒し、風の流れ、大地の恵み、四聖を司りし神々、戦女神ミルトラングに願い奉ります。・・・・・・レイフォードさんに祝福を!」

 『万物の加護(プロテクション)


 レイファの神聖魔法により、俺に加護がかかる。

 精霊魔法の加護と違い、体内から力が湧き出てくるようだ。

 流石は本家本元といったところか。

 

 「レイファ、助かる!」

 俺はレイファに礼を言って、駆け出す。

 後方ではリィズたちも加護を受けているだろう。

 先に行って場を纏めておかないとな。


 茂みを抜け出した先は開けていた。

 清らかな水を湛えた泉がありそのそばにドラゴンがいる。

 やや褐色がかかった赤い龍……レッドドラゴン……いや、フレイムドラゴンか。

 ドラゴンの前方……ちょうど俺との間辺りに勇者御一行が倒れていた。

 

 俺はゆっくりとドラゴンに近づく……。

 

 「マダ、イタカ!ワレノ怒リ、受ケ取ルガイイ!」

 そして、ドラゴンがブレスを吐く動作をする。

 ……マズいな、このままブレスを吐かれると、勇者たちが焼かれる……別に問題ないか。

 

 「待ってくれ!俺はそいつらとは別だ!、貴方と話がしたい。」

 それなりに知性的なドラゴンであってくれよと願う。


 後方からリィズたちが追い付いてくる。

 俺は彼女たちを制し、ドラゴンに相対する。


 「もう一度言う!貴方と話すためにここに来た!どうか話を聞いてくれ!」

 俺は声の限り叫ぶ。

 ここで話し合いの糸口を見つけないといけない。

 目の前のドラゴンは見たところ若竜と老龍の間ぐらいだ。

 今の俺達では敵わないだろう。


 「ニンゲン如キガ、我ト話ス、ダト。先ニ卑怯ナ攻撃シテキテ、今更何ヲ話ストイウノダ。」

 ……クソッ、アイツら何やったんだ?

 

 「あ、そうだ、にぃに。ダーちゃんが「もし他のドラゴンと会ったときこれを見せるといい」って。」

 そう言って、リィズが暗褐色のメダルのようなものを渡してくる。


 「俺達は争いに来たんじゃない!、これを見てくれ!」

 俺はリィズから預かったメダルのようなものを掲げてみせる。」


 「何ヲ……ソ、ソレ八……。ニンゲン、ソレヲ何処デ手ニ入レタ?」

 「知り合いのダークネスドラゴンから預かったものだ!」

 「フム……話ヲ聞コウ……。」

 どうやら最悪の事態は免れたようだ。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「まずは、先に謝らせてくれ。あいつらがかなり非礼な事をしたんだろ。申し訳なかった。」

 詳しいことは知らないが、勇者たちが悪いに決まっている。だから先に謝っておくべきだ。


 「ウム、謝罪を受け入れよう。」

 目の前の美女……ドラゴンの化身だ……が快く謝罪を受け入れてくれた

 

 ある程度年数を経たドラゴンは「人化の術」を使って人型になれる。

 本来の姿では大きすぎて動きにくいため、人型を好んで使うドラゴンも大勢いるらしい。

 今はやはり大きすぎて話すのも大変だという事で人型になってくれている。


 「あんなものを持っているから、一応警戒していたのじゃが……咆哮だけで気絶するとは情けない奴らじゃ。」

 勇者たちはドラゴンの最初の咆哮で気絶してしまったらしい。

 目覚めて騒がれても面倒なので、ミリィに頼んで眠りの精霊の魔法をかけてもらっている。


 「あんなものって?」

 ドラゴン……この姿の時は『ラン』と呼んでほしいといわれた……に聞いてみる。


 これじゃ!と言って一振りの大剣を見せてくれる。

 「お主らの間では「ドラゴンバスター」と呼ばれておるそうじゃが……。」

 「あぁ、なんでもドラゴンをたやすく傷つける事の出来る武器だとか。」

 「たやすくか……間違いではないんじゃがのぅ……。」

 ランが遠い目をする。酷く懐かしいものを見る目だ……。


 「これはな、ドラゴン族の呪いを封じた武器じゃ。太古の魔術師が多数のドラゴン族の苦痛と怨嗟を封じて鍛え上げた武器なんじゃよ。これで傷つけられればあっという間に呪いに飲み込まれ、絶え間ない苦痛と怨嗟に攻め続けられるのじゃ。そういう意味では我々にダメージを与えうる武器というのは間違いではない。」

 どうする?と試すような目つきで、ドラゴンバスターを差し出してくる。


 「そんな話を聞いた後で、受け取れるか!」

 「アハハ、座興じゃ、許してたもれ。……まぁ、お主なら預けても構わんと思ったのもホントじゃが。」

 「勘弁してくれ。それはランが持っていればいいよ。」

 どう考えても厄介ごとにしかならない気がする。


 「そうじゃ、そんな事より爺様の話じゃ。リィズと言ったかぇ?爺様は壮健かのう?」

 ランは、リィズにダーちゃんの話をせがんだ。


 なんでもダーちゃんは、あるドラゴンの一族を束ねる長だったらしい。

 ある時「戦いが我を呼んでいる」とか言って、一族を若いものに任せて飛び出してしまったらしい。

 まぁ、結局、飛び出した先で魔人に捕まり使役させられていたのだが……。

 

 「なんと!では、爺様はお主ら……いや、レイ殿達のおかげで助かったのじゃな。」

 「うん、今はまだ傷が癒えていないといって洞窟に籠ってるっすけど……。」

 結構あそこ気に入ってるんじゃないかな?とリィズは言う。

 「ダーちゃんには、結構鍛えてもらったっす。」

 「おぉ、じゃぁ、リィズ殿、後で手合わせをしようではないか。」

 「望むところっす!」

 ランとリィズは意気投合したようだ。後で模擬戦をやるとか……怪我には気をつけろよー。

 

 「はぁ、何とか無事収まりそうですわね。」

 レイファが安心したように息を吐く。そりゃぁ……ドラゴンを目の前にして生きた心地がしなかっただろうなぁ。

 「結局、ボク何の役にも立てなかった。」

 ソラがすねたように言う。

 「いいんだよ、こんな所じゃなく別の所でソラには役立ってもらうつもりなんだから。」

 「別の所って?」

 「ミンディアの経済を立て直す計画・・・詳しくは戻ってから話すよ。」

 「ウン、ボク楽しみにしてる。」

 フフフ……楽しみにしておいてくれ。俺は先の計画の事を考えると、思わず笑みがこぼれるのだった。


 「レイさんがよからぬことを考えていますね。」

 ミリィがつぶやく……なぜバレルのだろう。

 「それより、ランさんはなぜここに居たのでしょうか?」


 「あぁ、それはじゃな……」

 ミリィとの会話を聞きつけ、ランが説明してくれる。

 

 「爺様を探しに里を出て旅をしておった途中にな、この山脈の中腹でヤンゴンの群れを見つけたのじゃ。」

 ヤンゴンとは産地に住むヤギと羊を足したような動物である。

 その肉は美味で、野生のヤンゴンを捕らえ、家畜として飼いならす地域もある。

 そして、ドラゴン族にとっては最高のご馳走なんだそうだ。


 「大量に発生しておったからのぅ、多少間引いてやったほうが親切というもんじゃろ?」

 「確かに、ヤンゴンの大量発生は生態系を崩しますしね。」

 

 ヤンゴンは、草食動物ではあるが……とてつもなく強い!

 狼程度では全く歯が立たないぐらいの強さを誇り、それが群れとなると滅多な肉食獣ぐらいでは歯が立たないのだ。

 また、その旺盛な食欲は周りの草木を食い尽くすため、弱い草食動物は食べるものがなくなり、肉食動物はエサを失い……と、生態系を崩してしまうのだ。

 そのため、ヤンゴンの発生があると定期的にギルドへ捕獲依頼が出るぐらいである。


 ただ、今回の場合は、ヤンゴン見つけたランが食欲に負け、居座ってたのが目撃されたのがきっかけとなったわけだが。


 「でもこれで『神託』の意味が解りましたわ。」

 レイファが言う。

 「そうだな・・・・「飢餓」は、まぁ……勇者のせいで起こる財政難だろうな。」


 「『ドラゴン』退治の為『勇者』が寄付金を募り財政難を起こして『飢餓』の『原因』を作ったのですね……レイさんの言った通りでしたね。」

 ミリィが笑いながら言う。

 「やっぱり奴らが『原因』じゃないか!……なぁ、こいつらこのまま放置していかないか?」

 俺がそう提案すると、レイファからダメですと言われてしまった。


 「放置していくのは構わぬが、たぶん三日と経たずにアンデット化するぞ。そうしたらもっと厄介になるのではないのかぇ?」 

 そんなことをランが言ってくる。

 クソッ!死んでも厄介ごとを招くのか、こいつらは。


 「でも、『飢餓』『ドラゴン』『勇者』『原因』まではわかりましたけど、残りの『解決』と『欠けた英雄の魂』と『見えない絆』というのは何だったんでしょうか?」

 レイファが疑問を投げかける。

 今更どうでもいい気もするが、はっきりさせないと気が済まない質なんだろう。


 (『欠けた英雄の魂』というのはレイ殿の事。レイ殿の持つ魂の資質が英雄……ただ今は完全ではなく掛けた状態……だから「欠けた英雄の魂」つまりレイ殿が『解決』してくれるという事です。)

 ファルスが突然話に割り込んできた。

 (ミルファース様からの用命はレイ殿を必ず解決のために行動させること。結果、ラン殿との誼も結べました。『見えない絆』とはレイ殿を取り巻く関係を指しているのです。ここでレイファ殿、ラン殿との誼を結ぶことは今後に大きく関わってきます。)

 どういうことだ……?

 

 「ファルス、どういう事なんだ、もっと詳しく教えろ。」

 (ごめんなさい、私が言えるのはここまでです。)


 「私とランさんが、今後何かの影響を与える……ってことでいいのかしら?」

 「そう言う事でしょうね。」

 レイファとミリィの言葉に先行きの不安を感じる・・・。

 

 「結局、にぃにの周りにオンナがふえたってことっすね!」

 ポカリ!

 思わず反射的にリィズの頭を殴ってしまった。

 いや……俺悪くないよ?


 「とりあえず、街の戻るとするか……。」


 先の事を考えると憂鬱な気分になるが、とりあえず、まぁ後回しだ。

 まだ、街でやらなきゃいけないことがあるからな。

 あとの事は後で考えよう。

何とか前後編で収まりました。

途中、中編にしようかと何度か悩みましたが(^^;

次回は、ミンディアでの後始末です。

財政難解決です。 


※1000pv超えました。読んでくださる皆様に感謝です。

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