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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
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素材集めとスパイダーシルク

 「アッ、リズ姉ぇ・・・ソコ・・・ダメェ・・・。」

 リィズの攻めに耐え切れず、ソラが声を漏らす。


 「フフッ、ソラはいつも生意気なくせに、今日はどうしたのかなぁ・・・ココはどうかなぁ?」

 ソラの反応に気をよくして、リィズは別の所を攻める。


 「だっ、だって…ボク・・・初めてなのにぃ・・・リズ姉いじわるだよぉ…。」

 初めてなのにそんな強引に攻めるなんて……とソラが目で訴える。 


 「初めて…なのぉ?じゃぁ、色々と教えてあげる…ね。こことか・・・どう?」

 さらに気をよくしたリィズが、攻め方を変える。


 「あぁ…そんなトコ…ダメ…いやぁ…。」

 ダメ……耐えられない、とソラが呟く。


 「ほらほら、どうしたの?こういうのもどう?」

 リィズが調子に乗って攻める。


 「ダメッ、ダメっ・・・いじわる・・・・しないで・・・。」

 リズ姉、今日は意地悪だと訴えるソラ。


 「もぅ、そんな顔したら、余計いじめたくなっちゃうよぉ。ほら、こうして・・・。」

 リィズの眼に嗜虐の色が宿る。


 「・・・ボク・・・もう・・・許して・・・あぁ・・・。」

 もう耐えられない。もういいから早く楽にしてと訴える。 


 「ふふっ、かわいいなぁ、もぅ。じゃぁ、そろそろフィニッシュね…えいっ!」

 そんなソラを見たリィズはとどめを刺すべく最大の攻めを敢行する。 


 「あぁ…そんなところ…もぅダメぇー・・・。」

 ソラの声がひときわ大きく響く。


 「ダメって言ったのにぃ・・・ダメって…ぐすん。」

 ソラが泣き崩れている。


 「リィズ・・・お前わざとやってるだろ?」


 「何の事っすか?にひひ・・・。」


 ここは宿屋の1階にある食堂だ。

 周りの男性客は前かがみになって動けないでいる。

 また女性客はそんな男性たちを軽蔑のまなざしで見ている。


 「にぃに、私はソラとビットンをやってただけっすよ。ソラが初めてって言うから色々教えてあげてたっす。」


 ビットンとはこの世界の遊戯で向こうの世界で言う将棋とチェスを足したようなものだ。ただ、魔法という概念が入っているので、意外と奥深くなっている。


 「それとも・・・、にぃにも何か想像しちゃったすかぁ?」

 ニヤニヤとリィズがすり寄ってくる。


 「きょぉ、にぃにとぉねぇねとぉ、一緒にぃー、寝たいなぁ・・・ダメ?」

 そう言ってリィズが上目遣いで見上げてくる・・・あざとい奴め。


 リィズの甘えた声を聴いて周りの男どもがますます立ち上がれなくなっていると同時に俺の方に殺気が押し寄せてくる。


 「おにぃちゃん・・・ソラが一緒じゃ…ダメ?」

 ソラが腕をぎゅっと掴んで見上げてくる。


 ・・・殺気が増した。

 明日は宿を変えよう。客どもに襲われそうだ。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺達は今、ミンディアという街に向かって旅をしている。


 ミスル鉱山を出てから結構経つが、道中はあまり進んでいない。


 なぜかといえば、このような街道沿いにある宿場に立ち寄っては、リィズがソラを歌わせ、客から食事+デザートを貢がせているためだ。


 「イヤイヤ、にぃにとねぇねが、森を見つけるたびに採集に行くからっすよ。」

 ・・・まぁ、色々あってあまり進んではいないというわけだ。


 「ボクは色々と見れて楽しいよ!」

 ・・・最近ソラが天使だ…。


 「にぃに・・・。」

 リィズがジト目で見てくる・・・。

 ・・・最近リィズがエスパーだ…。


 「・・・。」

 突然、後ろからギュっとされる。

 「あの…ミリィさん?何をなさってるので?」


 「・・・ぎゅってしてる。」


 「あの・・・?」


 「ギュってしてる!」

 ・・・最近ミリィが・・・影が薄い…から?


 「レイさん、最近ちっとも構ってくれない。・・・だからギュっとしている。」

 ・・・可愛い…ぎゅっ!

 ・・・最近ミリィが可愛い…。


 「おねぇちゃん、ズルい!・・・ぎゅ!」

 ソラが前から抱きついて来る。


 「しまったっす!出遅れたっす!」

 リィズがオロオロしている・・・ゴメン俺にはどうしようもない。


 

 ミスル鉱山のダンジョンが過酷すぎたせいか、3人が最近やけに引っ付いてくる。

 俺もそばにいて欲しいと思ってしまうから、ついつい流れに身を任せてしまう。


 ・・・結果、バカップル、リア充爆発しろ!の絵柄が出来てしまうのだ。

 ・・・向こうの世界では考えられないよな。


 最近、向こうの世界の事を思い出すのが少なくなってきている・・・まるで、向こうの世界での出来事は夢の中のような気もしてくる・・・いい事なのか悪い事なのか・・・。


 まぁ、とりあえずは、今を楽しもう!


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 「おにぃちゃん、これでいい?」


 「ソラ、それは違う。…こっちだ。よく似てるから気をつけろよ。」


 「ねぇね、これだけ集めてきたっす。」


 「ありがとう。じゃぁ、次はこれを探してきてね。」


 今、俺達は森の中で素材採集をしている。


 これは寄り道ではない。

 ポーション類のストックはあるに越したことは無い。

 魔銃の弾丸用にも色々な素材が必要だ。

 特に弾丸はソラが撃ち尽くすからストックはかなり用意しておかないといざという時に困る。

 だから寄り道なんかではないのだ!


 「にぃに・・・誰に向かって言い訳してるっすか?」

 ・・・最近リィズがエスパーだ…。


 ・・・ん?これは…!


 「ちょっと、みんなこっちに来てくれ!」

 俺はみんなを呼び集める。


 「これを見てくれ。」

 そういって、俺はあるモノを指さす。


 指示したところにあったのは…。

 「蜘蛛の…巣?」


「ただの蜘蛛の巣じゃない。この質感の糸で、このような巣を張るのは【カオス・スパイダー】だ。近くにいるから気をつけろ。」


 「にぃに、カオススパイダーを見つけたらどうするっすか?」


 「もちろん、狩る…むしろ、見つけ出して狩る!」


 カオススパイダーの出す糸は高級素材だ。

 魔力伝導率が高いため、ローブとかマントの素材として扱われることも多いがインナー用の素材としても需要がある。


 通常は、このように貼り捨ててある巣を集めるのだが、カオススパイダーを倒せるぐらいの腕を持つ冒険者であれば、一戦交えたほうが大量に確保できる。


 「カオススパイダーの糸ならたくさん欲しいわね。」

 ミリィも乗り気だ。なんと言っても高く売れるため、採集できるときに採集しておくべきだ。


 「蜘蛛系はしばらく見たくないっすよ・・・。」


 「ボクも…。」


 リィズとソラはあまり乗り気じゃないようだ。


 「リィズ、あのね…。」

 ミリィがリィズに何やらささやいている。ソラも、フンフンとうなずいている。


 「にぃに、カオススパイダー狩るっす!引きずり出すっす!」


 「ボクも頑張る!」


 …急に乗り気になったな…。


 「ミリィ、あの二人になんて言ったんだ?」


 「ふふっ、乙女の秘密です!」

 ・・・深く聞かないほうがよさそうだった。



 「カオススパイダーは『スパイダーネット』と呼ばれるスキルで糸を飛ばして相手を捕獲するんだ。糸に触らないように気を付けるんだぞ。後、できるだけ糸をはかせるように。」


 戦闘後、バラまかれた糸を集めるのだ。1回の戦闘でどれだけ糸をはかせることが出来るかが重要で、そういう意味ではなかなか手ごわい相手でもある。


 「任せるっす!」


 「後、火気厳禁な。絶対火は使わないように。」


 糸が燃えるからな・・・。と注意を促す。


 「じゃぁ、各自見つけたらすぐに連絡すること。…よろしく頼む!」


 「ウン、・・・ファルス、見つけたら教えてね。」

 ソラはファルスの気配探知で探すようだ。




 程なくして、カオススパイダーが見つかる。


 「分かってると思うが、蜘蛛系のモンスターは機動力が高い。先ずは脚を狙って機動力を削ぐんだ。」


 カオススパイダーを含め、蜘蛛系で気をつけなければならないのは、その機動力である。

 蜘蛛系モンスターの攻撃手段の殆どは糸で相手を絡め取り、動けなくしてから毒牙でとどめを刺すと言うものである。

 中には毒液を吐くのもいるが基本的には糸攻撃を避ける事が出来るかどうかが、勝負の鍵であるのだが、恐るべきはその機動力・・・縦横無尽に動き回り死角から糸を吐かれると為すすべもなく捕まってしまうことになる。


 とは言っても、虫系モンスターの他聞に漏れず総じて火に弱いため、通常は火を使って行動範囲を制限し機動力を封じてしまえばそれ程苦労することなく倒せるのだが・・・。


 「今回は火が使えないからなぁ。」


 まぁ、脚を切り裂いていけば問題なかろう。


 「じゃぁみんな頑張って!ファルス、お願い!」

 ソラの背中から羽が広がる。


 ~~~♪

 テンポよくノリのいい曲だ。力が沸いてくる。


 リィズが飛び出す。・・・曲のテンポに合わせて双剣を振るう。

 リィズが双剣を振るう度に光が流れ、血飛沫が舞う。

 

 ・・・俺の出る幕無さそうだ。

 

 リィズが一旦距離を置く為に後ろへ飛ぶ。

 そのタイミングを見計らったかのように蜘蛛から糸が吐かれる。

 

 マズい!俺はあわてて飛び出す。


 「風の精霊さん、お願い!『ウィンド・カッター!』」


 しかし、俺が行く前に、ミリィの精霊魔法が蜘蛛の脚を切り裂いていく。


 無事な脚が無くなったカオススパイダーが崩れ落ちる。

 後は、挑発して糸を吐かせるだけだな。


 「にぃにー、助けてー。」


 リィズは、……女の子としては見せてはいけないような格好で、糸に絡め捕られていた。

 ……なぜ、そうなる。


 「リィズ……悪いがもうしばらくそのままで……。」


 「うぅ……出来れば早く助けてほしいっす……。」


 「そうは言っても……あ、そうだ、ソラ、リィズを頼む。」

 戦闘が一段落したので、手が空いているソラにリィズの救出を頼む。


 「はーい。……リズ姉、こんな格好でどうしたの?」


 「ソラ、早く助けるっす!……その顔は何すかっ?」


 「リズ姉にぃ、宿屋で遊んでくれたお礼をぉ、しないとぉ・・・。」


 「そ、そんなことはいいんすよ。それより早くこの糸を……何すかそれはっ!」


 「フフフ……リズ姉、ボク分からない事いっぱぁぁぁーいあるんだけどぉ……例えばぁ、ココをこうすると

どうなるのぉ?」


 「そ、ソラ、や、やめるっす……ソコは……。」


 「そこはなぁにー?うふふ・・・」

 ソラは、今までの仕返しとばかりにリィズを責める。

 

 「アン、ヤぁ……アァ……だ……め……。」

 弱いところを突かれて、リィズから声が漏れる……。


 「ここは?ツンツン……ツンツン……。」

 ソラは手にした羽を使ってリィズのお腹のあたりを突っつく。


 「ダメ……もぅ……やめてぇ……。」


 ----******-------******


 カオススパイダーが、糸を吐かなくなった。そろそろ打ち止めかな?

 

 「じゃぁ、とどめ刺しますか。」

 

 俺は剣をカオススパイダーの首の根元に突き刺す。

 しばらくヒクヒクとしていたが、やがて動かなくなる。

 あとは、あっちこっちに散らばった糸を回収するだけだ。


 「レイさんお疲れ様」

 ミリィが声をかけてくる。

 ずっと魔法でカオススパイダーを抑えてくれてたおかげで、かなり楽だった。


 「ミリィもありがとう。疲れてないか?」


 「私は大丈夫よ。糸の回収しておくからリィズたちの所に行ってあげて。あの子たち、まだ遊んでいるから。」


 「わかった。」

 そういって、俺は二人の下へ行く。


 「おーい、終わったぞ。まだやってるのか?」


 「あ、ヤバい。」

 俺の姿をみたソラが、慌ててリィズに巻き付いている糸を引きはがそうと力を入れる。


 「そ、ソラ……ダメ、そこそんなに引っ張ると……。」

 リィズが息も絶え絶えに何かをソラに言っている。何があったんだろう。


 「えいっ!」

 ソラが、思いっきり糸を引きはがす。


 ビリッ!

 何かが避ける音がする……リィズを見ると、蜘蛛の糸に衣服が引っ張られて破れてしまっていた。

 ……詳細に言うならば、その胸元の布地部分が裂け、それなりに膨らみはあるが育ち切っていない胸が露わになっていた……。


 「い、いやぁーーーーーー!」

 リィズは自由になる右手で胸元を隠しうずくまる。


 「あ、リィズゴメン……。」

 俺は慌てて顔を背ける。


 「……っすか?」


 リィズが何か言ってるがよく聞こえない。


 「にぃに……見たっすか?」


 ここはなんて答えるべきか……「見ていない」と言っても誰も信じないだろう。

 

 「………………見た。」


 リィズが一瞬押し黙り……

 「にぃにに見られたぁーーー。もうお嫁にいけないーーーー。」


 騒ぎに気付いて駆け寄ってきたミリィがリィズを抱きしめてあやす。


 「大丈夫よ、リィズ。大丈夫だからね。」


 「その……リズ姉……ゴメンなさい……。」

 ソラも謝るがリィズは泣き止まない。


 「見られたぁ……、にぃにに見られちゃったぁ……ぐす……。」


 「よしよし、リィズはいい子だから大丈夫よ。」


 「ほんと?ほんとに大丈夫?……ぐす……。」

 少し落ち着いたのか、ミリX時の顔を見て話すリィズ。


 「大丈夫、大丈夫。私がついてるわ。」

 ミリィが、リィズの頭を撫でてあやす。


 「もうお嫁にいけない……ねぇねがお嫁に来てくれる?」


 「そうねぇ、レイさんが貰ってくれなかったらそれもいいかもねぇー。」


 ……話がおかしな方向へ進んでいる。とりあえず、話題を変えよう。


 「カオススパイダーの糸を大量にゲットしたぞー。これを紡ぐと『上質なスパイダーシルク』になるんだぞー。」

 ……多少棒読みになるのは仕方がないんだ。だって、まだあそこで「みられた」「責任」とか言ってるし……。

 

 「そ、そうだね。ボク頑張って集めてくるね。」

 ソラが話に乗って……というより、逃げたな。


 ……とりあえず、ミリィに任せて、糸を集めよう。



 その後、街に着いた時ミリィ達三人は、大量のスパイダーシルクを持ってどこかに出かけて行った。

 戻ってきたとき、どこへ行ったのか、持って行ったスパイダーシルクはどうしたのか訊ねてみたが教えてもらえなかった。

 

 ただ、三人とも満足気な表情で帰ってきたので、とても良い事があったのだろう……。


 

 

 

中々先に進まない旅路です。

次はやっとミンディアに着……けるといいなぁ。

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