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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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光翼の歌姫

 ソラ視点です。


 「今日はギルドに行くぞ。」


 おにぃちゃんが宣言する。

 何でも、宣言しておかないと目の前の作業にのめり込んでしまうんだって。実際「ギルドに行かないとなぁ・・・」とおにぃちゃんが言い出したのは二日前の事だったりする。


 今、私達は森の中に住んでいる。でも、もうすぐここともお別れ…おにぃちゃん達と旅に出るんだ。


 ボクは、この付近の街と村と鉱山ぐらいしか行ったことがないから、どんなところに行けるか楽しみなんだ。

 でも、出る前に色々手続きが必要なんだって。その為にギルドに行くらしいんだけど……でも、今日までに何回もギルドに行ってたよね?


 まぁいいや、ボクはおにぃちゃん達とギルドに向かった。



 「「「「「ソラちゃ~~~ん!!」」」」」


 ギルドに入ると、大勢の冒険者さん達から声がかかる。

 びっくりしてリズ姉の陰に隠れる。


 「お前ら、ちゃんと並ぶっすよ!」


 リズ姉が、みんなをまとめてくれる。・・・よかった。悪い人たちじゃないのは分かってるけど、大勢で詰め寄られたら怖い・・・。


 「今日はデラックスモンスタープリンの気分っす。」


 「「「「「今持ってきます!」」」」」


 リズ姉の前に大きなプリンが運ばれてくる。……美味しそうだなぁ。


 「ソラ、今日も歌ってあげるっす。後でプリンを御馳走してあげるっす。」


 リズ姉は大勢の冒険者さん達と仲がいいみたいで、みんなに私の歌を聞かせてあげて欲しいって頼まれるんだけど…歌うのは好きだし、歌った後リズ姉がプリンを食べさせてくれるからいいんだけど…。


 いつもリズ姉の方がたくさん食べてる気がする。今も、さっそく食べてるし。


 ……いいんだけど、なんか胸の中がモヤモヤする…なんだろ?


 ……まいいや、おにぃちゃんも「悩む暇があったら笑え!」ってよく言ってるし。


 「リズ姉、今日はどんな歌がいい?」


 にっこりと笑って聞いてみる。 


 「そうっすね・・・」


 リズ姉が近くの冒険者さん達と何やら話してる。冒険者さんは大きくうなずくと離れて行って

しまった……どうしたんだろ?


 「ソラ、今日は「好きな人に伝えたい歌」をお願いするっす!」


 「わかった。ファルスお願い!」


 ファルスに声をかける。

 ファルスはボクと契約した精霊。ボクの歌が好きなんだって。


 ファルスの力がボクの中に流れ込んでくる・・・ボクの背中から羽が生えると体が軽くなった気がする。


 ・・・好きな人か・・・やっぱりおにぃちゃんだね。


 ~~~~♪

 ~~~~~青空が綺麗・・・~~~♪

 ~~~アナタに・・・~~~~届け、この想い~~~♪

 ~~~~~♪


 おにぃちゃんに伝わるかな?この気持ち・・・。


 ~~~~~~~~~・・・・♪

 ・・・・・・。


 歌い終わる。……なんだろう?すごく静かだ・・・。


 周りを見回すと、みんな固まってる・・・あれ?今の歌良くなかったのかな?


 「・・・リズ姉・・・みんなどうしたの?」


 リズ姉に聞いてみる。リズ姉の目の前にはさっきより大きいパフェが置かれてる。


 「みんな感動してるっす!今日の歌はすごくよかったっすよ!」


 リズ姉がそう言った後、一瞬の静寂の後・・・


 ザワザワ…ガヤガヤ…ザワザワ…

 ・・・うぉおおおぉ・・・・サイコー・・・

 …ガヤガヤ…ガヤガヤ…


 ざわめきが戻ってきた。何か叫びながら飛び出していった人もいた…なんだろうね?


 「ソラ、早く座って食べるっす!クリーム溶けるっすよ?」


 いつの間にかボクの目の前に大きなプリンとパフェがあった。


 「リズ姉ありがとう!」


 ボクは早速パフェを食べる…ん~おいしぃ!しあわせ~

 

 「リズ姉、ご馳走様」


 ボクはリズ姉にお礼を言う。今日は大きなパフェが沢山あった。いつも中くらいのパフェとプリンなのにどうしたんだろうね。


 「リズ姉、今日はいつもより豪勢で・・・その・・・ボクは美味しかったからいいんだけど・・・その・・・リズ姉お金大丈夫?」


 そう、ボクやリズ姉が食べたプリンやパフェは一つ300Gはするものだ。それがあんなにたくさん・・・。


 「大丈夫っすよ。冒険者って意外と稼げるっすよ。」


 「そうなんだ。ボクも早く冒険者になりたいよ。」


 「そのあたりは、にぃにと一緒に色々企んでいるけど…ソラは冒険者以外考えていないんすか?ソラなら歌でも生きていけると思うっすよ。」


 「歌は好き…でも、ボク…何もないから…みんなと一緒にいたい。」


 「一緒に…すか。まぁ、気持ちはわかるっすよ。」


 そういってリズ姉は受付で手続きをしてるおにぃちゃんを見つめる・・・詳しいことは聞いたことないけど、たぶんリズ姉もボクと一緒なんだと思う。


 ボクは・・・おにぃちゃん、おねぇちゃん、リズ姉と会えなかったら・・・どうなっていたんだろう…。

 

  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ボクは両親の顔を知らない。物心ついたときは孤児院というところにいた。


 そこには何もなかった。かろうじて食事ができるだけマシ、雨風を凌げるだけマシというだけだった。

 だからボクは歌を唄った・・・かすかに覚えている…誰かから教わった歌・・・。辛いとき、悲しいとき、歌えば気持ちは落ち着いた。


 「ソラちゃんの歌を聞くと悲しくなくなるの。」


 そう言ってくれたのはハナちゃんだった。

 ボクの歌で誰かが笑ってくれるのはとても嬉しかった。



 「もう大丈夫よ。悪い大人はいなくなるからね。」


 ある日知らない誰かが来てそう言った。


 次の日から孤児院に大人はいなくなった…ただそれだけだった。

 ご飯も出てこない…食べる物は自分たちで用意しなければならない。ボクは森に入り浸るようになった。


 皆と森に行くときは、お肉になる動物が獲れたが、それ以外でも甘い実や歯ごたえのある葉っぱなど、森の中には恵みが満ちていた。

 食べたら危険なものはなぜか分かった。「それはダメ」って声が聞こえるのだ。その声は度々ボクを危険から救ってくれた。


 決して裕福というわけではなく、生きるだけで精一杯だったけど、みんなと力を合わせて生きてきた日々は幸せだったんだと思う。


 そんな日々がずっと続いていくと思った。



 「いい声ね。」


 ある日、いつものように森で歌っていたらそんな声が聞こえた。

 見たこともないお姉さんだ。


 「もう少し歌を聞かせてくれる?」


 お姉さんにそう言われて、私は暫く歌っていた。

 歌うのは好きだしお姉さんが誉めてくれるのも嬉しかった。


 お姉さんはボクが知らない歌を一杯教えてくれた。


 「ソラちゃんはこれから大きな分岐点に差し掛かるわ。それは、出会い、別れ、大きな選択・・・。」


 「よくわからないよ?」


 「・・・そうね、今はわからなくてもいいけど、覚えておいてね。そして、その時が来たら…。」


 「来たら?」


 「・・・。ソラちゃんの心のままに…ソラちゃんがこうしたいって思ったように行動すればいいわ。」


 「・・・やっぱりよくわからないよ。」


 「すべては運命の糸が紡がれるままに…今はそれでいいわ。」


 「お姉さん?」


 「私とソラちゃんがここでこうして会えたのも運命の導きよ。・・・今は、ここで別れるけど、また会える日を楽しみにしてるわ。」


 「お姉さん・・・。」


 じゃぁね…と言ってお姉さんは去っていった。名前も知らないけど、また会えるって言ってたからその時に聞こうと思った。




 「トーマスさんの紹介で仕事がもらえるんだぜ!」


 「ソラ、私達が帰るまで、大人しく待っててね。帰ってきた時はお土産においしいもの一杯買ってくるからね。」


 森でお姉さんとあってから数日後、孤児院のみんなは、鉱山村のトーマスさんについていった。


 ・・・ダメ!という声が聞こえたから、みんなを止めたけど、みんなは行ってしまった。

 みんながどうなったのかは、おにぃちゃんたちと出会って、かなり後になってから知った。


 「ファルスは知っていたんだよね。どうしてもっと詳しく教えてくれなかったのかな?」


 (あの時点では、ソラの方で受け止めることができなかった。断片的なイメージしか理解できなかった。)


 「・・・僕の力不足だね。もっと早くに力があれば、みんなを助けられたのかな?」


 (・・・ソラには悪いですが、一人の力で出来ることには限りがあります。ましてや人の身為れば尚の事・・・。)


 「そうだね、あの時おにぃちゃんたちを助けることができただけでも良かったんだよね。」

 


 あの時、おにぃちゃんはボロボロになりながら、ダーちゃんのブレスを抑えていた・・・ボクの所に攻撃が来ないように…。


 リズ姉は、群るゴーレムを相手に一歩も引かなかった・・・ボクが地上への扉にたどり着けるように・・・。


 おねぇちゃんは、おにぃちゃんを支え、リズ姉を助けた・・・ボクを無事に逃がすために・・・。


 みんなボクを…ボクだけを逃がすために戦っていた。


 ・・・すべてはボクに力がなかった所為・・・。


 「あの時ボクが力が欲しいって願ったら、ファルスが歌えって言ってくれた。でもなんで歌なの?」


 (それは私が聞き・・・いえ、なんでもありません。)


 「今聞きたかっただけ。って言おうとしなかった?」


 (ソンナコトナイデスヨ・・・ごほん、元々精霊の力は術者の思いを受けて行使するもの。術者の思いが強ければ強いほど力は強くなります。ソラの場合、歌に想いを込めるのが上手だったということです)


 「・・・。まぁいいけどね。ファルスのおかげでみんなを助けられたんだし。」


 きっと、お姉さんの言ってた大きな選択はあの時の事だったんじゃないかな?みんなの言うとおり一人だけ逃げるか、みんなを助けるために力を得るか・・・。

 ボクはみんなを助ける選択ができてよかったと思う。



   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 「・・・ら、…ソラ・・・ソラってばっ!」


 リズ姉が呼んでいた。


 「あ、リズ姉…何?」


 「なに?じゃないっすよ。もう・・・。」


 さっきからずっと呼ばれていたらしい。


 「にぃにが呼んでるっす。向こう行くっすよ。」


 おにぃちゃんが手招きしていた。ボクはリズ姉と一緒におにぃちゃんの元へ行く。


 「リィズ、おまえの分手続き終わったぞ。」


 そう言っておにぃちゃんはリズ姉にカードを渡した。


 「やったっす!Cランクに上がったっす!」


 リズ姉は冒険者ランクが上がったらしい。すごく喜んでいる。・・・いいなぁ。


 「ソラ、ちょっとこっちへ来てこの水晶玉に手をあててみて。」


 何だろ?・・・言われるままに手をあてる。


 ・・・なんか魔力が吸い取られる感じする。


 もういいよ・・・と言われ手を離す。


 おにぃちゃんは受付の人と何か話してる。


 やっぱり・・・とか、大丈夫・・・とか、歌姫・・・とか聞こえたけど、何のことだろう?


 しばらくして,おにぃちゃんに呼ばれる。


 「ソラ、今すぐ冒険者になるか、成人まで待ってその時に改めて考えるか・・・どっちにする?」


 おにぃちゃんの話では未成年でも冒険者としての能力基準を満たしていて、尚且つCランク以上のパーティーが面倒をみるならば冒険者見習いとして登録出来るらしい。


 ただ支所によっては融通を利かせてもらえないらしく、今ココで決めないと、今度はいつ登録できるか分からないらしい。


 「そんなの決まってるよ。ボク冒険者になる。」


 冒険者になっておにぃちゃん達にどこまでもついて行くんだ!


 「そうか、じゃぁこっちのカードもって、受付のお姉さんの言うとおりにして・・・。」



 「ソラちゃんは魔力値以外には器用さがかなり高いですね。精霊との契約も済ませている中級精霊使いって所ですね。この年でこのスペックは将来有望ですね。・・・あ、やっぱり二つ名が既に付いてますよ。これからも頑張ってくださいね。」


 そう言ってボクはカードを受け取った。


 これでボクも冒険者。・・・でも二つ名って何だろ?リズ姉に聞いてみる。


 「ソラ、カードを見せるっす!・・・なるほどっす!」


 リズ姉がカードを確認して返してくれる。


 「称号の欄をみてみるっす。」


 称号・・・これかな?


 『光翼の歌姫』


 「・・・ええと、リズ姉、これは?」


 リズ姉が意地悪い顔でニヤニヤしている。


 「ソラの称号・・・みんながその名前が相応しいって言ってる証っす・・・歌姫様。」


 う、歌姫って、歌姫って恥ずかしすぎるぅ。



 ・・・歌っ姫!歌っ姫っ!

 ソラちゃーん歌って―・・・歌姫さまー。


 ・・・なんか、すごいことになってるし・・・って、リズ姉が煽ってる?


 「ありゃ、眼を離した隙に凄いことになってるなぁ。どうする?」


 吹っ飛ばすか?とおにぃちゃんが聞いてくる。


 「吹っ飛ばしちゃダメだよ。・・・ボク歌ってくる・・・。」



 「ボクの歌、聞いてくれる―?」


 うぉおおおおお・・・・


 ~~~♪


 ・・・ソラちゃーん!・・・・・・歌姫さまー!・・・

 ・・・・・・どぉおおおん!・・・・・・。


 ~~~♪


 結局3曲ほど歌っちゃった。途中爆音とかして吹っ飛ぶ人もいたけど・・・気にしないことにする。


 楽しぃなぁ・・もぅ・・・。


 

 あの後、リズ姉がさらに皆を煽ったせいで収拾がつかなくなっちゃって、おにぃちゃんと二人で、こっそり逃げてきた。・・・リズ姉もちゃっかり抜け出してきてた…。


 「明日には町を出るんだよね?」


 「そうだな。小屋が見つからないように隠蔽して、いつでも戻れるように転移陣を設置したら出発だ。」


 お話ししながら歩いていると森の中の道中もあっという間だ。小屋が目の前に見えてきた。


 「そういえば、にぃに・・・。」


 リズ姉が思い出したかのようにおにぃちゃんに聞く。


 「今日、ねぇねは何故来なかったんすか?」


 「えっ?・・・リィズ、声かけてない…のか?」


 「えっ…にぃにが声かけてたんじゃないすか?」


 「いや…きょうはソラの手続きの事聞くだけのつもりだったから・・・リィズがついてきたからてっきり声はかけたものだとばかり…。」


 おにぃちゃんは恐る恐る小屋の方を見る…。


 「え、ワタシはソラが行くからパフェを食べようと思っただけで、にぃにが声かけてるものだとばかり…。」


 そういってリズ姉も恐る恐る小屋の方を見る…。


 「・・・みんな楽しかったようですね。」


 小屋の前には笑顔のおねぇちゃんがいた。


 「私一人除け者でみんなはソラちゃんとお遊びですか?いいですねぇ・・・。」


 おねぇちゃんがボクをギュッと抱きしめる…あれ?動けないよ?


 「ミリィ、これには…。」


 「ねぇね、ワタシは…。」


 ・・・おにぃちゃんとリズ姉がおねぇちゃんに必死に言い訳している・・・

 おねぇちゃんはボクを抱きしめたまま、笑顔で二人を見ている。


 ・・・笑顔なんだけど…なんか背中がゾクッてする・・・なんだろ?


 (…ファルス、なんで背中がぞくぞくするのかわかる?)


 ボクは小声でファルスに聞いてみる。


 (・・・黙って大人しくしているのがいいと思います。)


 よくわからない答えだった。おにぃちゃんとリズ姉はまだ言い訳してる。

 お姉ちゃんは笑顔で聞いている。



 ・・・ボク悪くないよね?

 

ミリィさん影薄い…

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