ダークネス・ドラゴン
ドラゴンか!
ここにきてドラゴンが出るとは…。
『英知の書」
「鑑定:目の前のドラゴン」
ドラゴン種・・・龍族より派生せし古の超生命体。
若龍・老龍を経て古の龍と成る。現在確認されている古龍は7体。
若龍は赤龍・黒龍など体色より呼び表される事が多く、老龍は炎龍・水龍等内包する属性により呼び表される事が多くなる。
総じて堅い鱗及び外皮に覆われ、魔力を帯びた武器や祝福を受けた武器もしくはドラゴンスレイヤー等龍殺しの呪いを内包している武器以外では傷付けることは難しい。
また魔法抵抗は個体差があるものの総じて高く、魔法によるダメージは各個体の抵抗力と術者の技量によって変わる。
眼前のドラゴンは老龍の闇に属する個体・・・
・・・妨害により継続不能。
チッ!妨害ってなんだよ・・・判ったことは、奴が老龍で闇龍ってことだけか。
「リィズ、奴は堅い、双剣の魔力を切らすな。あとブレスに気をつけろ!」
リィズに注意を促し、俺もドラゴンに向かって飛び出す。
『雷撃剣!』
刃が雷を纏う。
ドラゴンの脚に斬りつける・・・ガキッ!
やっぱり堅い…が、傷はついた。これを繰り返していくしかない。
ドラゴンの脚が上がり、大地へ踏み下ろす。
ドゥゥゥゥンー!
衝撃で吹き飛ばされる。
転がりながらも体勢を立て直す。
視界にリィズの姿が入る。先のショックで体勢を立て直し切れていないところへ、ドラゴンの第2撃が迫る。
「リィズぅ!」
俺は叫ぶ・・・そして刃から魔力を開放する。
「ライトニング!」
解放された魔力が電撃となって、ドラゴンへ襲い掛かる。
それほどダメージを与えることはできなかったが、ドラゴンの気を逸らすことに成功し、リィズはその隙に体勢を立て直す。
「リィズ、次一撃与えたら、後方ミリィたちの所へ下がれ!」
「了解っす!」
俺もリィズの反対側から、ドラゴンにダメージを与えるべく攻撃を繰り出す。
左右からの同時攻撃に一瞬硬直するが、すぐさま体を捻り、尾で薙ぎ払ってくる。
しかし、その時には、俺達は後方へ飛びのき一旦下がって体制を整える。
「レイさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、俺よりリィズの方がキツいだろう。取り敢えず回復薬を。」
俺は回復薬で回復しながらドラゴンを観る。
俺達が一定の距離を取るとそれ以上は攻撃してこない。
「何かトリガーがあるのか?」
「にぃに、何か気になるっすか?」
「いや、ただ俺たちがここにいるのに攻撃してこないのが・・・な。」
「確かにおかしいっすね・・・。」
「まぁ安全地帯が確保できるのは助かるが・・・。」
「とりあえず攻撃するしか無いっすよ。」
「だな。」
俺達は剣に魔力を込め、ドラゴンへ向かっていく。
あれから俺達はドラゴンと一戦交えては、距離を取り回復・・・そしてまた戦闘を何十回と繰り返した。
「ふぅ、キリが無いな。」
「一応ダメージは与えているはず何すけどねぇ。」
「確かにな・・・。」
「微妙に反応遅れてるっす!」
「本当に微妙に・・・だけどな。」
「おにぃちゃん、ごめんなさい。ボクの弓役に立たない・・・。」
ソラがしょげている。
「仕方がないさ。ドラゴンに普通の武器は役に立たない。気をそらせているだけでも十分役立っているよ。」
気休めを言う。正直ソラの弓では力が足りず、魔力が込められているわけでもないので牽制以上の意味がないのは事実だ。しかしそれはソラの所為ではない。ソラを巻き込んでしまった俺達が悪いのだ。
「逃げる算段をした方がいいかもな。」
「そうね・・・。」
俺の言葉にミリィが賛同してくれる。
「次に俺達がアタックをかけている間にミリィとソラはあの扉に向かってみてくれ。ただ無理はしないで欲しい。ヤバいと思ったらすぐ引き返すんだ。」
「扉についたらボクたちどうすればいい?」
「そのまま向こう側へ。リィズは俺と一緒に二人の援護。二人が脱出したら一度距離を取る。」
「了解っす!」
「よし、試してみるか!」
「・・・ダメっすね。扉近くまで行くとブレスが来るっす!」
あの後、俺達は何度か扉からの脱出を試みたが、結果は芳しくなかった。
いくつかの方法も試し、今リィズに確認に行ってもらったところでもある。
「そうか…。とりあえず、ミリィに回復してもらって。」
何回かトライして分かったことがある。
まず、ドラゴンは今の位置からほとんど動かない。
そして攻撃行動を起こすのは一定の範囲内に入ったときだけ、範囲外に出れば攻撃して来ない。範囲は大体50~60mといった所か。
問題は出口のある扉がこの範囲に入っていると言うこと。
扉付近に近づくと必ずブレス攻撃が来る。
ブレスの範囲・効果時間・他の攻撃手段他色々な面から確認したが、攻撃をかわして全員が逃げるのは不可能と判断した。
「レイさん、どうしますか?」
ミリィが俺を見つめる目には、ある決断を迫っているかのようだ。
わかっている。ここまで来たらそれしか方法はない。もう回復薬も残り少ないしな・・・。
「みんな聞いてくれ。回復薬も残り少ないし、次が最後の攻撃になると思う。みんなの協力が必要だ。」
そう言って、みんなの顔を見回す。
「まず、俺とリィズでドラゴンの気を引くので、ミリィとソラは扉まで移動。ドラゴンのブレス攻撃が来るので俺が防ぐ。その間にソラは扉から脱出するんだ。」
「ボクだけ逃げるなんて出来ないよ!」
「もちろんソラだけじゃないさ。俺達もすぐ行く。ただ、誰かが時間を稼がないといけないんだ。だから俺がこの盾でブレスを防いでいる間にみんなに逃げてもらう。もちろんみんなが逃げたら俺もすぐ行くよ。」
そう言って俺は巨大サソリの外皮を加工した盾を見せる。
「ミリィの加護と治癒魔法をかけてもらえばある程度は持つさ。ただギリギリだから順序良く速やかに行動してもらわないと困る。」
皆が助かる為だと話を続ける。
「先にソラ、次にリィズに脱出してもらう。ミリィにはリィズが脱出するまで治癒魔法を頼み、リィズが脱出したらすぐ脱出。今までの攻撃パターンと併せて考えるとミリィが脱出する頃にはブレスが止むはず。俺一人で支える時間は大体1~2秒ってところだ。ブレスが止み、次の攻撃が来るまでの瞬間で、俺も出口に飛び込む。これで脱出完了だ。ただ、モタモタしてるとミリィが出る前にブレス攻撃が終わってしまうかもしれない。そうすると脱出がむつかしくなるから、躊躇わずに行動してくれ。」
・・・ウソだった。
ミリィが出るまでは何とか持ちこたえられるだろう。しかしミリィの回復がなくなれば数秒しか持たない。俺が脱出できる可能性は0に近い。
ただ、3人が脱出してくれれば、全魔力を使って身体強化して、何とか攻撃範囲から逃れることはできるかもしれない。そうすれば助けを待つという選択肢が増える。分の悪い賭けだがこれしか皆を助ける方法が思い浮かばなかった。
「ミリィ、リィズ必ずソラを連れて地上に戻ってくれ。」
「ソラは必ず脱出させるっす!」
「・・・。そうですね。ソラちゃんは必ず。」
「・・・みんな・・・みんな一緒に帰るんだよね?」
「じゃぁ行くぞ! ・・・ミリィ精霊の祝福を頼む。」
「風の精霊さん、大地の精霊さん 加護をお願い!『ダブルブレス!』」
加護を受けた俺は扉とドラゴンの間に位置し盾を構える。
リィズとソラが扉に向かって走り出す。
『万物の根源たるマナよ』『光となりて災いを退けよ』・・・
『耐魔の盾』
盾に魔力を流し込み、被せる様に魔力の盾を形成していく。
盾ができると同時にブレスが降ってくる・・・すごい勢いだ…がっ!
「風の精霊さんお願い! 癒しの風!」
正直、ドラゴンのブレスを受け止め切れていない。しかし、ミリィが都度回復をかけてくれているので何とか耐えられている。
「クッ・・・リィズと…ソラは・・・。」
「レイさん、ソラちゃんの事はリィズに任せて。今はドラゴンに集中して。」
「あぁ・・・そうだな。リィズ任せたぞ。」
****----****----****
「リズ姉、おにぃちゃんが・・・。」
「ソラ!今は脱出することだけ考えるっす!」
「でも・・・。」
・・・ソラだけは、何としても逃がさなきゃ…。
ん?…何かが動いた?
「ソラ…合図したら走るっす!」
「でも、ボク…。」
「いいからっ!・・・今っ!」
ソラを逃がして、私は振り返る・・・ゴーレムたちだ。
「リズ姉!」
「ソラ!、ここはワタシが食い止めるから先に扉から脱出!わかった?」
「ボクも・・・。」
「いいから行けっ!」
ワタシは双剣を構えてゴーレムに斬りかかる。
「ソラだけは、何としても逃がすの!」
左右から斬り付ける。そのままの勢いで下から蹴り上げる。倒れたゴーレムを踏み台にしてジャンプ・・・落下速度を利用して双剣を突き刺す・・・。
・・・後ろを確認する。ソラがまだいる!
「何やってるの!早く逃げなさいっ!・・・ガッ!」
しまった!
「リズねぇぇぇ…!」
後ろに気を取られた隙にゴーレムの攻撃を受け飛ばされる。
「うぐっ・・・」
受け身が取れなかった・・・ゴーレムがやってくる・・・早く立たないと・・・ダメ…体動かないや…。
「にぃに…ゴメン・・・。」
****----****----****
「リィズー!」
後ろでリィズがゴーレムと戦闘している。
「レイさんダメです!」
・・・ウッ!少し意識をそらしただけでかなり押し込まれる。漏れ出すブレスに体を焼かれる。
「水の精霊さんお願い!『水霊の癒し!』」
俺の背中を支えてくれているミリィから癒しがかかる。焼かれた部分が治癒していく。
「リィズの所には私が行くわ。」
「しかし・・・っ!その傷…。」
ミリィの脇腹に焼け爛れた後がある。
「アハッ、さっき少し焼かれちゃった。」
「少しじゃないだろ!すぐに癒しを・・・。」
「ううん・・・。」
ミリィは首を振る。
「リィズが危ないの。治してあげなきゃ・・・私の魔力だとあと1回分の治癒が限界みたい…だから。」
・・・・・・。何も言えない。
くそっ!封印さえなければこんなブレス・・・
「少しの間、レイさん一人にするけど、待っててね。ソラとリィズは必ず私が守るから!」
ミリィがリィズの所へ駆けてゆく・・・少しでも気を抜くとブレスが後ろへ行く・・・動けないのがもどかしい。
****----****----****
ゴーレムの剣が振り下ろされる。…もうダメ…と覚悟したのに。
・・・ゴーレムの動きが止まっている…なぜ?
「リィズ、間に合った、よかった。今治してあげるからね。水の精霊さんお願い!『水霊の癒し!』」
「ねぇね…どうして…。」
「リィズ、よく聞いて。ゴーレムは今バインドの魔法で動きを封じてるわ。今の内にソラちゃん連れて脱出して。」
「そんな、ねぇねは・・・ッ、その傷!」
「そう、私はもう動けないからリィズが頼りなの・・・。」
「・・・ウン。分かった。でも、ソラを逃がしたら戻ってくるから・・・それまで待っててよ。」
「・・・そうね・・・まってるわ。・・・行ってらっしゃい・・・。」
ワタシはソラを見る。ソラはうずくまっている。動けないのかな・・・最後まで世話焼かすんだから・・・。
まだ、体が思うように動かない…けど、早くソラを逃がしてねぇねの所に行かないと。
にぃにの所まで戻れないや…ごめんね。
****----****----****
・・・なんで、なんでこうなるの。
おにぃちゃんが必死にブレスを防いでる。防ぎきれずにボロボロになってる。
おねぇちゃんが倒れてる。リズ姉を直して力尽きたみたい。
リズ姉がフラフラになりながらこっちに向かってる。ボクだけを逃がすために…。
なんで・・・なんでボクには力がないの・・・力が欲しいよ・・・
(力が欲しいの?力を何に使うの?)
…いつもの声が聞こえる…おねぇちゃんは精霊さんだって言ってた…
「アナタが精霊さんなら…お願い!力を貸して!ボクはみんなを守る力が欲しい!守られてばっかりはイヤ!ボクもみんなを助けたい!…お願い…力を!」
(・・・あなたは自分の力に気付いてないだけ…いいわ、今回は私が力を貸してあげる。だから歌って・・・あなたの想いを歌って・・・)
「歌うって言っても・・・。」
(あなたの心の赴くままに・・・気持ちのままに・・・想いを声にして・・・。)
「ウン…やってみる…」
~~~~~~♪
****----****----****
~~アナタの~~~ワタシのちからに~~♪
「…歌が聞こえる…どこかで聞いた声…ソラが歌っているのか?」
魔力の維持が厳しくなり、意識が朦朧としていたところにソラの歌が聞こえてきた。
~~~~想いがあれば~~~~~どこにでも行ける~~~♪
…不思議だ。力が湧いてくる。
(神々に愛されし英雄の魂を持つ者・・・聞こえますか?)
・・・声が聞こえる…誰だ!
(ドラゴンの額の結晶を壊して。あれがドラゴンを操っているわ。)
ドラゴンの額をよく見ると確かに結晶が埋め込まれている。
しかし、ブレスを防がないと動けない…くそ!どうすれば…。
(大丈夫です。あなたの信頼する者たちがすぐきます。ソラの心に応じて私も力を貸します)
「にぃに!」「レイさん」
リィズとミリィの声がする。
「ソラは?ソラはどうなったんだ!」
~~~♪
「少し支えますから・・・後ろを見てください。」
ミリィの声に後ろを振り返る…そこには光輝くソラがいた。
ソラが宙に浮いている。体全体が淡く光り歌の旋律に合わせて揺らめいている。
背中からは金色の羽が生えている。
「ソラが歌いだしたと思ったら、いきなりあの姿になったんす!」
「ソラちゃんのそばにいた精霊さんの力だと思うわ。精霊力に満ち溢れているの。」
「そうか・・・なら・・・ミリィ、リィズまだいけるか?」
「行けるっす!ソラの歌聞いていると力が湧いてくるっす!」
「じゃぁミリィ、リィズこの魔力の盾を維持できるか?」
「…10秒…ソラちゃんの歌の力、リィズのサポートがあれば10秒なら何とか・・・。」
「充分だ。じゃぁ頼む!」
魔力の盾の維持をミリィに渡し、ルーンの詠唱に入る。
『万物の根源たるマナよ』『闇を照らし魔を退ける』『清浄たる癒しの流れ』『留まる事無く変化を示す』『大地より出で大地に帰る』『すべての理を力に返せ』・・・
握った剣に魔力が注ぎ込まれていく・・・。
ドラゴンのブレスを避けつつ頭を目指して飛ぶ。
両手で剣を握りドラゴンの額に突き刺す!
『楽園の崩壊』
ドラゴンの額の結晶にヒビが入り…ピシっ!…魔力を込める…。
「オォォォ!」
気合と共に最後の魔力を流す…パリーーーン!
結晶が割れるとドラゴンの体が崩れ落ち・・・倒れる。
そのまま俺も崩れ落ちる…。
倒れかけたところをミリィが支えてくれる。
「レイさん、お疲れ様」
「ミリィもありがとな。」
「にぃに―!」
リィズが抱きついてくる。
俺は動けないのでされるがままだ。
そのまま見上げる。羽が生えたソラがそこにいる。
「お前は…誰だ?状況の説明が欲しい。」
俺はソラに声をかける。
『私は精霊ファルス。音と光と調和をつかさどる精霊ファルスです。今ソラの体を借りてお話ししています。色々とお聞きしたい事もあるでしょうが今は挨拶だけとさせていただきます。皆様の行く末に女神ミルファースの御加護があらんことを。』
ファルスの声が途絶えるとともに、ソラの背中から羽が消え、体全体の光が消える。
「ソラ!」
くたりと崩れる身体をリィズが支える。
「・・・リズ姉。無事でよかった。」
「ソラ…頑張りすぎっすよ。」
「エヘッ」
「ソラちゃんの力は歌による支援みたいね。音と光と調和の精霊さんの力を引き出すには歌が丁度いいのね。」
「ボクも役に立てたかな?」
「あぁ、おかげで助かった。だから、今は休んでいいよ。起きたらみんなで地上へ行こうな。」
「レイさんも休んでください。まだあまり動けないんですよね?」
・・・近くで気配がする。
「あぁ、そうしたいところだけど…な。」
俺は剣を握り、ふらつきながらも立ち上がる。そしてドラゴンに相対する。
「まだ生きてるっすか!」
「さすがは老龍ってところか。」
俺は剣を構える。
・・・マテ、人族ノ子ヨ。我ニ戦ウ意思ハナイ。
・・・従属石ヲ壊シテクレタ事、礼ヲ言ウ。
ドラゴンの話によれば何者かに意識を乗っ取られ従属石(額の結晶の事だそうだ)によってこのフロアの守りを命じられていたという。
自由になった今他と争う理由もないのでこのまま手打ちにしたいとのことだ。
話してみると意外に俗っぽく中々話の分かるドラゴンだった。
とりあえず、このフロアには他者が入り込めない結界を張って、傷が癒えたら移動するというので、そっとしておく事にした。
というより、またドラゴンと戦うなんてゴメンだ。
「さて、ようやく帰れるな。」
「そうですね久しぶりのお外ですね。」
「とりあえずお風呂に入りたいっす!」
「ご飯…お腹一杯ご飯食べたい。」
俺達はようやく外に出ることが出来た。
ようやくダンジョン脱出です。
次回はミスル鉱山編後始末です。




