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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

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精霊とダンジョンとドラゴンと -その2-

 ・・・ぎゅ・・・ぎゅっ・・・

 ・・・・・・ぎゅぅ・・・。

 なんか苦しい…でも柔らかい…

 ぎゅう・・・

 ・・・ん・・・なんだ?・・・

 目が覚める・・・女の子に挟まれている・・・なんだっけ・・・。

 ・・・あぁ、そうか、いきなりダンジョンに飛ばされて、入口で出会った少女「ソラ」を守りながらダンジョンを進み、ようやくミリィとリィズと合流したんだっけ・・・。

 「・・・で、なんで俺は挟まれてるんだ?状況が分からん。」

 「それはですね。目が覚めたらソラちゃんがレイさんにギュってしてたんです。それを見たリィズが対抗心を燃やしてギュって・・・。」

 「で、ミリィもギュッとしたと…。」

 「だって、私だけ除け者って淋しいじゃないですか?」

 ・・・まぁいい。

 「とりあえず、みんな離れてくれ。」

 「「「いや!」」」

 「そうか・・・『帯電(ショック・ウェイヴ)』!」

 「「「あばばばば・・・・」」」

 体に弱い電流を流す。3人とも体に電流を受けショックを受ける。…やっと離れた。

 「落ち着いたか?」

 「うぅ・・・にぃに酷いっす!」

 「警告はしたぞ?」

 「おにぃちゃんの愛情が痺れますぅ・・・。」

 「ほら、にぃにのせいでソラちゃんが壊れたっすよ!」

 ・・・。

 「・・・、・・・とりあえず食事にするか?」


 俺達が今いるのはダンジョンの中・・・いくつかの部屋を経て落ち着いたところだ。

 今まで通ってきた各部屋ではモンスターがいた。たぶんこの先の部屋にもいるだろう。

 どこまで行けば脱出できるかもわからない、どれだけの時間がかかるかもわからない。

 だから、とりあえず落ち着けたこの部屋で体力を回復、アイテムの整理、情報交換、この先の進行確認などをしなければならない。やることは一杯ある。

 「さて、まずは何から手を付けるかな?」

 「えーと、レイさんちょっといいですか?」

 「何だ?」

 「とりあえず、そちらのソラちゃんを紹介してくださいな。私たち名前しか知らないですよ。」

 「そういえば…俺も名前ぐらいしか知らないな。」

 「にぃにも大概っすよね。」

 「お前らとの合流を優先したんだよ。」

 「じゃぁ、ソラちゃん、お話聞かせてもらっていいかしら?」

 「ウン、ボクの名前はソラ。…何を話せばいいのかな?」

 「そうだな・・・ソラは村に住んでいるのか?森にはよく行くのか?初めて会った時、何故村に近づくなと言った?歌っていたうたは・・・。」

 「ストップ、ストップすよ、にぃに。」

 「レイさんいきなり一杯質問しすぎです。ソラちゃん眼を回してますよ。」

 「えーと、えーと、あのぉ・・・」

 「あ、ソラちゃんは村に住んでいるのかな?そのあたりの事から教えて。」

 「ウン…ボクは隣の村に住んでるんだ。あの村にはよく遊びに行ってたんだけど…この間からみんなおかしくなっちゃったんだ。」

 「おかしいってどんな風に?」

 「ボクたち…親がいなくて、孤児院に住んでるんだけど…以前は村のみんなはとても優しかったの。ご飯くれたり・・・。でも、ある日突然ね、ボク達を見かけると村から追い出すようになったんだ。」

 「いきなりっすか?何かきっかけみたいなのはなかったんすか?」

 「わかんない。いきなりだったから、みんなしてどうしたんだろうねって話してた。・・・ただね、優しくしてくれる人も中にはいたんだ…。だけどそういう人たちに会う度に何処からか声が聞こえるの。その人について行っちゃいけないって。でもね、お仕事くれるって言うから、みんなその人について行っちゃうの。私止めたんだけど…ご飯持ってくるから待っててねって行ったきり…帰ってこなっかったの。」

 「帰ってこなかったって…どこへ行ったかも分からないの?」

 「・・・鉱山・・・鉱山に連れてかれるのを見たの。」

 「だから、俺達にも近づくなって?」

 「ウン、鉱山に行った子たちは一人も帰ってこなかったの。だからきっと良くない事が起こってるって・・・。」

 「まぁ、このダンジョンの中に連れ込まれたんだろうな…。」

 「にぃに、じゃぁその子達って・・・」

 「・・・無事だ…と思いたいけど…な。」

 「ボクが、ボクが、みんなを止めれなかったから・・・みんな…いなくなっちゃった・・・。」

 「ソラちゃんが悪いんじゃないのよ・・・。」

 ミリィがソラを抱きしめる。

 「森でおにぃちゃんに会った時も誰かの声が聞こえたの。鉱山に近づけちゃいけないって。」

 ・・・ソラの話をまとめると、普段の鉱山村の人々は、ソラ達孤児院の子供達を可愛がっていたようだ。

 お腹が空いている子供達にご飯を与えたり、ちょっとした仕事を紹介してお小遣いを稼げるようにしたり等。

 それがある日突然村人達の態度が豹変したらしい。たぶんまともな人もいたのだろう。追い出そうとした人たちはきっと、孤児達を守ろうとしたのだろうと思う。しかし、子供達はそんな事は分からない・・・優しい言葉をかけてくる村人達を信じてしまったんだろう。信じてついて行ってそして…。

 ・・・ソラが聞いたという声は何だろうか?普通なら『神託』と思うところだが、何か違う気がする…この件に関しては、まだ情報不足だから保留にしておくか。

 

 「だから、止めなきゃって、連れて行かれるおにぃちゃん達を止めなきゃって・・・。」

 「連れて行かれてたわけじゃないけどな・・・まぁ、だまされたことには変わりないか。でもソラが気にすることじゃないよ。」

 「でも、ボクどうしたらいいか…。」

 「ここを出るまでは、私たちが守ってあげるからね。」

  ミリィが、さらにソラを抱きしめる。

 「そうっすね。・・・難しいことは出てから考えるっす。」

 「そうね。まずはここを出る事を考えましょう。」

 「おにぃちゃん…、おねぇちゃん…リィズ、ありがとう。」

 「ちょっと待つっす!なぜワタシだけ名前呼びっすか!そこは「リィズおねぇちゃん」じゃないっすか?」

 「・・・リィズおねぇちゃんって呼びにくい…面倒…。」

 「面倒って何なんすかー!もぅー・・・。」

 「まぁ、まぁ、リィズ落ち着け!」

 ・・・その後リィズとソラの間で、呼び名に対する応酬が始まり…結局「リズ姉」という呼び方に落ち着いた。


 「さて、すると次に考えなきゃいけないことは「ミスル鉱山で何が起きているか?」だな。」

 「えーと、ダンジョンが出来てる…って事っすか?」

 「そのことも含めて…だけどな。一応依頼では『鉱山の調査』だからな。」

 「今わかってる事は、鉱山で色々な噂が出て、閉鎖。実はダンジョンが出来ていて鉱山に入るとダンジョンに飛ばされる。って事でいいかしら?」

 「ボク達への態度が変わった頃と鉱山の噂が出始めた頃は一緒だと思う。」

 「うーん、ダンジョンねぇ・・・。『英知の書(グリムベイブル)』!」

 「にぃに、何すかそれ!初めて見たっす!」

 グリムベイブルを発動するとリィズが騒ぐ…使ったことなかったっけ?まいいや…。

 「検索:ダンジョンについて」

 ・・・

 ・・

 ・

 ダンジョン・・・迷宮。迷路みたいになっている構造の建物・場所。

 多くはモンスターが生息している。また、トラップ等の仕掛けや宝箱などが数多く存在する。

 ・・・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 ・

 ・

 ダンジョンには自然発生しているもの…洞窟や遺跡などと人為的に発生しているものがある。

 人為的ダンジョンはエネルギー吸収、儀式補助など目的をもって作られる。


 「これだな…。」

 「何かわかりましたか?」

 「このダンジョンは人為的な物だろう…人為的ダンジョンは何らかの目的があって作られるらしい。村人達は、操られているか、もしくは脅されて・・・意外と自主的かもしれんが・・・その目的のためにダンジョンに生贄を送ってるってことだな。」

 「???どういうことなの?」

 ソラには難しかったか・・・。

 「誰かが、何らかの目的のためにこのダンジョンを作って、人を騙して連れ込んでるって事だな。」

 「にぃに・・・それで、目的っていったいなんすか?」

 「目的ねー…皆目見当もつかん。わかっているのは、だれかが、何かの為に、どうやってか、ダンジョンを作ったという事だけだな。」

 「にぃに・・・それって何もわからないって事っすね。」

 「そうともいう・・・。」

 ・・・分からないことだらけだ。

 「一つわかってることがありますよ?」

 ミリィが言う。

 「このダンジョンから脱出しないとおうちに帰れないって事ですよ。」

 「…そういうことだな。」

 このダンジョン攻略していくうちにわかることもあるだろう。


 「前向きに検討していくか。・・・まず持ち物の確認だな。」

 各自の装備、持ち物を確認し、再分配する。

 ポーション類、攻撃アイテム・補助アイテム類はそこそこあるが、攻略にどれぐらいかかるか分からないので楽観はできない。

 「食料が心もとないっすね・・・。」

 「ごはん・・・。」

 「お水は水の精霊さんにお願いすれば何とかなるんですけどね…。」

 「最悪、モンスター肉を食べるしかないな…リィズ、虫の肉ならあるけど食べるか?」

 「にぃにがいじめるっす!愛が足りないっす!」

 虫の肉と聞いて、リィズがプルプル震える。

 「レイさん、メッ!ですよ」

 よしよしとリィズを撫でるミリィ。

 「虫のお肉…御馳走なのに…。」

 ソラの今までの食生活が気になる…。

 「まぁ、動物系のモンスターが出ることを祈ろう。・・・武器のメンテナンスは…必要ないな。」

 もう一休みしたら出発するか…と皆に声をかけると・・・。

 「おにぃちゃん、おねぇちゃん、リズ姉・・・ボクに戦い方教えて!」

 ソラが、何かを決心したかの様にいう。

 「ソラ…。」

 「ソラちゃん・・・無理して戦う必要ないのよ?」

 「ボクだけ・・・ボクだけ何もできないの…イヤなの。ボクも誰かを守りたい。」

 「・・・教えてあげるっすよ。」

 「「リィズ?」」

 「好きな人の役に立ちたい、守られているだけの自分が嫌い、無力な自分が情けない…良く判るっすよ。」

 ・・・だから教えてあげるっすと、リィズがソラに伝える。さっきの言葉・・・たぶんリィズ自身に身に覚えがあるのだろう。ソラと自分を重ねたか…。

 「まぁ、さっきまで、サポートだけとはいえ戦闘に参加してたし、今更だしな・・・。」

 「おにぃちゃんありがと。ボク、がんばるよ。」

 「私は厳しいっすからね、覚悟するっすよ!」

 「程々にな・・・そういえば、ソラはどんな武器が使えるんだ?さっきの感じクロスボウは使えていたみたいだが?」

 「ボク・・・みんなと狩りに行くときに弓を使ったことがあるくらいで。」

 「そうか…じゃぁ一応渡しておくか…。」

 俺はソラにも扱えそうなナイフ一振りと軽弓、クロスボウを渡す。

 「とりあえず、弓が扱えるようになればいいんじゃないか?」

 「じゃぁ、簡単に取り扱いのレクチャーをするっす!」

 リィズがソラに、弓を使った戦い方の基本を説明し始める。

 「レオンさん…ちょっといいですか?」

 ミリィが小声で呼んでくる。

 「ん?どうした?」

 「ちょっとこちらへ…、あのソラさんの事なんですが…。」

 俺は二人から少し離れて、ミリィの言葉に耳を傾ける。

 「たぶん・・・なんですけど、ソラさんは精霊使いです。」

 「精霊魔法が使えるってことを…隠してるのか?」

 「いいえ、おそらくソラさん自身は気づいていないんでしょう。・・・精霊の存在は感じるのですが、ぼやけててハッキリしないんです。精霊自身が意図的に存在を隠しているのか・・・。」

 ソラさんが否定しているので顕現できずにいるか・・・とミリィは言う。


 精霊魔法の使い方は基本的には二つ、ミリィの様にその場にいる精霊の力を借りる方法と、精霊と契約し、その精霊の力を借りる方法だ。

 その都度精霊の力を借りる場合、その場の状況に合わせた魔法を使用できるので一見便利そうではあるが、ミリィの様な特別な例を除けば、基本的に下位精霊の力しか借りることが出来ない。つまり、強力な魔法は使えないってことになる。

 逆に精霊と契約を結んだ場合、その精霊の持つ力を十二分に発揮することが出来る。また、契約を結ぶ精霊の格が高ければ、その下位に位置する眷属たちの力を借りることもできる。強力な魔法という意味では聞こえがいいが、契約した精霊及びその眷属の魔法しか使用できなくなるのが難点だ。稀に契約しながらも、他の精霊の力を借りる事が出来る場合もあるが、精霊は意外と独占欲が強く、契約者が他の精霊の力を借りようとすると、邪魔してくる場合もある。

 また、複数の精霊と契約することもできるが、その場合でも反発する属性の精霊とは契約が結べない上、独占したがる精霊たちと上手く付き合っていかなければならないので色々大変らしい。

 簡単に言えば魔法を「広く浅く」使うか「狭いが深く強力」な一点集中で使用するかって事である。

 本人の資質の問題もあるし、どちらがいいかとは一概に言えない。


 ミリィが言うには、ソラの場合契約したがっている精霊がついているらしいが、本人がその事に気づいていない、もしくは無意識に拒否している為、契約できずにやきもきしている状態らしい。

 ソラが言っていた「誰かの声」というのはおそらくその精霊の声だろう。

 「それはソラ本人に教えてあげた方がいいのか?」

 「そうね…精霊さんを受け入れるかどうかを最終的に決めるのはソラちゃん自身だけど…身を守るって意味でも精霊さんとの付き合い方は覚えていた方がいいと思うわ。」

 「身を守る?」

 どういうことだ?とミリィに尋ねる。

 「精霊さんの中には、たまに術者を乗っ取っちゃう悪い子がいるの。また、精霊さん自身にその気はなくても術者さんが制御できずに暴走しちゃうこともあるわ。・・・ソラちゃんに近づいてる精霊さんは、何か特殊みたいで、私でもよく視えないの。」

 術者自身を乗っ取ろうと企む精霊はともかく、術者の資質を超える上位精霊等と契約した場合、力を制御できずに暴走するという事は良くあるらしい。普通、精霊自身は力を扱えないような術者と契約することはないらしいが、稀に理屈ではなく引き寄せられる術者というのが存在するらしい。

 ミリィの場合、少なくとも悪意があるか無いかは一目見ればわかるそうだが、ソラのそばにいる精霊は存在そのものの認識がむつかしいらしい。そんな存在は初めてだからこそ、身を守る術は身に着けておくべきだとミリィは言う。

 俺もその意見には賛成だ。

 「そうだな・・・向こうが一段落したら教えてやってくれないか?」

 「わかりました。…クス、でも中々終わりそうになさそうですよ。」

 俺はミリィの指さす方に顔を向ける。そこには楽しそうに訓練を続ける二人の姿があった。

 「リィズもソラちゃんも楽しそう。」

 「まったくだ…戦い方の訓練だというのに…な。」

 二人がじゃれあっているようにも見える光景…ここが、閉じ込められたダンジョンの中であることを忘れさせてくれるような、ほのぼのとした光景だった。


 

 結局今回もドラゴンは出てきませんでした。

それどころか、部屋から一歩も外へ出ていません・・・脱出する気あるのか?

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