旅に出よう・・・そうだ、東へ行こう!
ようやく旅に出ます。その準備をしています。
今回こそ旅立ち…旅立ち…旅立つよね?
「アッ、ねぇね、そこはダメ・・・。」
「そうなの?じゃぁ、ココは?」
「ねぇね・・・そこは、優しく・・・して。」
ねぇねの指が繊細な部分に触れる。
「うん、わかったわ。・・・こうならどう?」
「ねぇね、上手…。そのままゆっくり…。」
ねぇねの、指使い・・・すごぃ・・・。
「あ、ここね。」
ねぇねの指が大事なところを探り当てる。
「コレ、入れるね。」
「ちょ、ちょっと待って・・・ねぇね、ソレ大きくない?」
「そうなの?よく分からないわ。でも大丈夫よ。」
「あっ、ダメ・・・ねぇね、もっとゆっくり・・・お願い。」
「・・・一気に入れた方が早く終わるわよ。」
「そうだけど・・・あっ、やっぱりダメ・・・おおきぃ・・・。」
「大丈夫、私に任せて。」
ねぇねがグッと力任せに押し込む。
「ダメ・・・、壊れちゃうぅ・・・だめぇぇぇぇ・・・。」
「お待たせ・・・、何やってんだ?」
手続きを済ませ戻ってくると、二人が何か言い合ってる。
「あっ、にぃに聞いてよ。ねぇねがムリヤリ・・・。」
ダメって言ったのにぃ・・・とリィズが言う。
「ゴメンね。大丈夫だと思ったの。」
二人がいた場所に目をやる。そこにはバラバラになった細かい部品が散らばっている。
「成る程ね・・・ところでこいつらは何だ?」
二人の周りで身悶えている男達を指さす。
「「さぁ・・・?」」
・・・今日も世界は平和らしい。
「それで、もう大丈夫何ですか?」
「あぁ、手続きはすべて終わったよ。これでいつでも出かけられる。」
「じゃぁ、早速出発するっす!」
まぁ、待て・・・と逸るリィズを押し留める。
「すぐにでも出発したいのは山々だが、アシがない。流石にずっと徒歩と言うわけにも行かないだろ。」
「そうね。大変かも。」
「そこで我々のとる道は3つある!」
と指を3本たてる。・・・にぃに、それ好きっすねぇ、とか言ってるが聞こえない振りをして話を進める。
「まず一つ目は、隊商の護衛とか乗り合い馬車などを乗り継ぐ方法。」
「それでいいんじゃないっすか?」
「何か問題あるのでしょうか?」
「そうだな・・・まず自由がない。行き先を選べないとか・・・。」
「まぁ、それぐらいいいっすよ。」
「次に荷物があまり持てない。」
「それは少し困りますね・・・。」
「他人がいるとウザい。落ち着かない。」
「わがままっすねぇ・・・あ、そっか、にぃには人目があると、落ち着いてイチャイチャできないって言いたいんすね。」
素直にイエよ~とリィズが突っついてくる。ミリィは顔を真っ赤にして俯いてる。
「いや、するけど?」
「へっ?」
「だから、イチャイチャするって。見せつけておかないと、ミリィやリィズに手を出そうとする不心得者が出てこないとも限らないからな。」
「ハァ・・・そうっすか・・・。」
リィズも真っ赤になって照れてしまったようだ。
(・・・ねぇね、イチャイチャって何すると思う?)
(・・・それはやっぱり・・・手握ったり・・・とか?)
(・・・・・・それ以上はないかなぁ?)
(それ以上って・・・ま、まだ早いわ・・・ボッ・・・。)
(・・・ねぇね、顔真っ赤・・・。)
「二つ目は馬車を買う!」
二人が何かボソボソしゃべっているが取り敢えず話を進める。
「馬車っすか?」
「馬車を買えば先程の問題は解決する。」
「でも何か問題あるんすよね?」
「あぁ、馬の世話が大変だとか余分に水を用意しなきゃならないとかあるが、何よりも問題なのは・・・。」
「問題なのは?」
「俺は馬車を走らせることが出来ない!」
「あー、それはダメっすね。」
「馬車なら私が扱えますが?」
「いや、ミリィばかりに負担かけるのも忍びない。」
「一応ワタシも走らせるぐらいなら出来るっすよ。」
・・・・・・。
「…。三つめは・・・。」
「ごまかしましたね。」
「ごまかしたっすね。」
二人の視線が痛い…。
「三つめはゴーレム馬車を買う!これなら、俺でも扱える!」
「「・・・。」」
結局、定まった目的があるわけでもないので、次の街までは乗合馬車を使って、それから先の事は着いてから考えようという事になった。
「後、やり残したことは無いな?」
「大丈夫ですよ。」
「大丈夫っす・・・あ?」
「ん、リィズ、何か忘れてたか?」
「いえ、大したことじゃないっすが・・・牧場の動物たちってどうなるっす?」
「あぁ、あれはミリィが牧場って呼んでるだけで・・・奴らみんな野生だぞ。」
「みんな今頃はおうちに帰ってるわよ、きっと。」
「!!・・・知らなかったっす・・・驚愕の新事実っす!」
「じゃぁ、今度こそ出発だな。さて、どこから向かうか…。」
「にぃにの昔のオンナってどの町にいるっすか?」
「じーっ・・・。」
「そうだな…ここから東に向かってやや中央寄りにあるミンディアって街だ。あと「昔のオンナ」じゃない。人聞き悪いこと言うな。」
「ねぇね、あんなこと言ってるっすよ・・・どうするっす?」
「え…。どうしよう…オロオロ…どうするべきでしょうか?…もうギュって出来なくなるんでしょうか?…オロオロ…」
「大丈夫っ!ねぇねには私がついているっす。あっちは一人、こっちは二人。勝てるっす!。昔のオンナの一人や二人怖くないっす!」
「・・・二人出てきたら二対二になっちゃうよ…あと…他に3~4人出てきたら勝てないです…。」
「はっ!『アイツは昔のオンナ四天王の中でも最弱…』ってやつっすね。…どうしよう…オロオロ…。」
「…落ち着け!」
…なんでそのネタ知ってるんだよ。全異世界共通ネタなのか!
「コホン…とりあえず、そのミンディアを目指しますか?」
「ねぇ、にいに。その・・・解呪を考えるなら領都に行って聖女様に合う方が早くないっすか?」
「それも考えたんだがな…リィズ『聖女様』についてどれくらい知っている?」
「えーと、稀代の回復魔法の使い手で弱き人々にも分け隔てなく手を差し伸べる…ってことぐらいっすかね。」
「ミリィは?」
「私も同じよ。後は神々に愛されてるかのように膨大な魔力にあふれてるって聞くわ。」
「俺も二人と同じようなもんだ。…つまり情報が少ない。ゆくゆくは領都に向かうことになるが、その前に、色々情報を集めておきたい。ミンディアには以前『聖女様』が居たらしいから何か聞けるかもしれないしな。後、ミンディアでレイファに解呪してもらうことが出来ればそれでいいし。」
「そうなると…。」
リィズが地図を広げる。
「ここ、カシミアの街から馬車に乗って東へ・・・カシムの街まで行くっす。そこから森を抜けてミスル鉱山村を通って……で、ミンディア。…と、こんなルートでいいすかね。」
「いいんじゃないか。それで行こう。」
「じゃぁ、さっそく馬車の手配してくるっす!」
「うぅ・・・にぃに、ワタシはもうだめっす…。」
「はいはい、もうすぐ着くからな、そのまま大人しくしてろ。」
「リィズ…氷だそうか?」
「うぅ・・・もったいないからいい。大人しくしてる。」
リィズは現在絶賛馬車酔い中だ・・・。俺の膝に頭をのせて横になっている。
…まぁ、確かにこの揺れは尋常じゃないしな。
「しかし、俺達の中では、一番リィズが馬車に慣れているはずだろ?」
「うぅ・・・盗賊時代は、馬車の中に限らずずっと気を張ってたから…うっぷ…。」
楽しみにしてた分、気を抜いちゃった…とつぶやく。
「それより、にぃにとねぇねは何故平気なんすか?」
「もっと酷いの経験したことあるしな。」
「精霊さんのおかげ…?」
ミリィには精霊の加護があるらしい…羨ましい。
そんな俺達を乗せた馬車がカシムの街に着いたのはそれから1時間後だった。
「行ける所まで行こうって思っていたけど・・・今日はここで泊りだな。」
「うぅ・・・にぃに、もうちょっと休めば大丈夫だから行けるっすよ。」
「無理するな。どうせ先は長いんだ。明日から野営が続くから、今夜くらいはゆっくりと休もうぜ。」
「宿取ってきたわよ。荷物もお願いしておいたから、リィズが大丈夫そうなら食事に行きましょ。」
「大丈夫っす。行けるっす。」
「・・・無理するなよ。」
あれから俺達は、街中を巡り、露店を冷やかし、ミリィとリィズにちょっかいをかけてくる奴らを吹き飛ばし、食事をしたりして楽しいひと時を過ごした。
「品揃えはカシミアの街の方が良かったですね。」
「まぁ、仕方がないだろ。この辺でカシミアより大きい街となると、東のズロンまで行かないとな。」
「でも、にぃに、なんか一杯買ってたっすよね?」
「あぁ、面白いジェムが沢山あったからな。・・・リィズ、この間作ってやったショートソード、二本とも置いてってくれ。今夜中に調整しておく。」
「何も今日やらなくてもいいっすよ。それより一緒に湯浴みに行くっす。家族風呂もあるので一緒には入れるっすよ。」
「いや、一緒に入らないし…。」
「なんで!こんな美女が二人もいるっすよ、誘ってるんすよ。一緒に入らないなんてありえないっす!にいにはヘタレですか!不能ですか!それともホモですか!!」
…オイ、コラ!
「落ち着けって…一緒に入ったりなんかしたら…その…わかるだろ?…わかれよっ!」
「何逆ギレしてるんすか!わからないっすよ!美女二人に囲まれて手を出さないなんておかしいっす!」
「出してほしいのか!出すぞ!・・・でも、その…ほら…気まずくなると…さ。色々と…な?」
「出したかったら出せばいいんすよ!にぃにのヘタレっ!」
そういってリィズは部屋を飛び出していった・・・。
「あ、その…ミリィ?」
「ウン、大丈夫よ。リィズと一緒に湯浴みしてくるね。」
「あぁ、ごゆっくり・・・。」
***・・・***
「…にぃにのバカ…ヘタレ…。」
「リィズ。お風呂行こ?」
ねぇねがにっこりと笑っていた。
「ねぇねー・・・。」
私はねぇねに抱きつき、落ち着くまでしばらくそのままでいてもらった。
「リィズは本当にレイさんの事が好きなのね。」
一緒に湯につかりながら、ねぇねが言う。
「それはねぇねも一緒でしょ。」
「そうだけど…でも、今日のリィズなんか焦ってるように見えたわ。」
「焦りもするよ…。このままミンディアに行ってレイファとかいう巫女さんに会ったら、にぃにが離れていくんじゃないかって…せめてずっと一緒にいていいって証が欲しいの。口だけじゃ不安なの。」
「焦らなくても大丈夫よ。レイさんが離れていくことは無いわ。リィズもあの時そう思ったでしょ。」
「そうだけど…そうだけど…不安なの。ねぇねはいいよ、そんな立派な武器があるんだから。」
ねぇねの胸元を見る。私では到底敵わない立派なボリューム。にぃにがたまにチラ見しているのを私は知っているのだ。
「そんなことないわ。リィズだってそのうち…。」
「ねぇね・・・それ、無駄に敵を作る言葉だからね。」
「もぅ・・・。・・・、でもねリィズ、焦っちゃダメよ。レイさんの心の奥底には誰かがいるの。レイさんにとってとっても大事な人。」
…そして多分二度と会えない人…、とねぇねは言う。
「じゃぁ、私は、私たちはどうすればいいの・・・つらいよ…。」
「私たちがそばにいる事は無駄じゃないわ。レイさんと初めて会ったときね・・・心が壊れそうなくらいの悲鳴を上げてたの。あんなに心が軋んでいるのにレイさんは平気そうな顔をしていた。それが凄くアンバランスで何かきっかけがあれば壊れてしまうんじゃないかと思えるくらいに・・・だから、私はレイさんの心を支えてあげたかった。」
結局、私の方が支えてもらってるんだけどね・・・とねぇねは笑いながら言う。
「でもね、私と一緒に暮らして・・・そこにリィズが加わってからは、レイさんの心の叫びがほとんど聞こえなくなったの。これは自惚れじゃなく、私とリィズの力なのは間違いないよ。誇っていいんじゃないかなって思うわ。」
「ねぇね…。にぃには…私達が必要?…一緒にいても大丈夫?」
「ずっと聞こえなかったレイさんの心の悲鳴が、また聞こえるようになったのは、この間の事件の後よ。そして、レイさんが言ってたじゃない、私たちを失うのが怖いって。レイさんが、私たちに話してくれた後からは心の悲鳴は小さくなったわ。」
だから・・・とねぇねは続ける。
「私たちは一緒にいていいの…ううん、一緒にいなきゃダメなの。」
「ウン・・・、それはわかった…でもそれとは別に、にぃにに優しくされたい、一つになりたい…それは望んじゃダメなの?」
「・・・ダメじゃないわ。私も一緒だもの。でもね、レイさんの心に傷がまだあるから・・・だから・・・焦っちゃダメなの。焦らなくてもね、今まで通り一緒にいれば、きっと自然にそういう時が来るわ。その時一杯甘えましょ。」
「・・・ん、わかった。焦らないようにする…。」
いい子ねーとねぇねが頭を撫でる。…でも、お姉さんぶって誤魔化してるだけだね。恥ずかしくなっちゃったんだよね。それで照れ隠ししてるのわかるよ。…だって、ねぇね、真っ赤だもん。
「でもさ、ねぇね・・・。」
「なぁに?」
「にぃにの事だからさ『その時』が来ても、直前でヘタレると思わない?」
「…くすっ。思うわ。だからその時は・・・絶対逃がさないわよ。」
ねぇねの笑顔が怖い・・・。ねぇねもたまに過激になるからね。
「ウン、そうだね。とりあえず、今夜はにぃにをぎゅっとして寝ようね。」
「そうね。三人で一緒に寝ましょ。」
「…でも、私たちに挟まれて寝ていても手を出さないなんて…ほんとにヘタレだね。」
***・・・***
ミリィとリィズが戻ってくる。
二人とも笑顔だ・・・ミリィがしっかりと宥めてくれたのかな。
ほんと、ミリィには頭が上がらないよ。
「あー、リィズ…さっきは悪かった。」
「ううん、私の方こそ悪かったっす。今夜一緒に寝てくれれば許すっす。」
・・・なんでそうなる。
「三人で仲良く寝ましょうね。明日から、しばらくゆっくり寝れないんだよね?」
「・・・・・・。まぁそうだな。じゃぁ、これだけ終わらせたいから、先に休んでてくれ。」
目の前にはリィズのショートソードとミリィの精霊杖がある。…魔改造したい!
「「・・・ダメ!」」
「・・・・・・わかった。」
素直に降参した。もとより二人に敵うわけがないので抵抗するだけ無駄なのだ。
結局二人にギュっとされて寝ることになった。
二人の柔らかい肌、女の子特有の甘い香り・・・色々大変ではあるんだけど、大変なんだけど!
……それ以上に包まれている安心感。二人がここに居るという安心感が俺を深い眠りに誘うのだった。
う~ん、困った。リィズが暴走して手が付けられません。
本当ならレイファさん再登場の予定だったんですが、まだまだ先になりそうです。
ミリィも暴走し始めたらレイファさんの出番無くなるかも…。
※私事ですが、左手を大怪我してしまいました。
ただでさえ遅いタイピングがより遅くなり…でも、毎日更新は守りたいと思います。