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いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう
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封印・・・その2

後編です。

少し短いです。

 「旅に出ようと思う。」


 ミートトード討伐を終えて帰ってきた第一声がそれだった。


 「・・・ごめんなさい。ちょっと理解が追い付かないの。」


 「にぃに、いきなり過ぎるっす。」


 ・・・向こうの世界で就職したときに「報告は結論から簡潔に!」って教えてもらったからそうしただけなんだが・・・不評だったみたいだ。




 俺達は、初めての依頼から戻ってきてからギクシャクしていた。


 原因は主に俺なんだが…主にというか俺が原因だな。


 一応俺なりに答えを出し、色々説明する前に一つ依頼を受けよう!という事でミートトード討伐の依頼を受け、無事達成した今帰ってきたところなのだが・・・。


 「・・・とりあえずご飯用意するわね。」


 「ねぇね、ワタシも手伝う。」


 「・・・・・・行ってらっしゃい。」




 「で、だ。旅に出ようと思う。」


 食事を終え、一息ついたところで、話を切り出す。


 「にぃに、それさっき聞いた。」


 リィズはミリィの膝の上に横座りしている。


 「えーと、順番に説明してください。…悩んでいたんですよね?」


 ミリィはリィズを抱きしめながら言う。リィズの背中に回した手が少し震えている様に見える。

 二人とも不安に押しつぶされそうな顔をしている…。クエストに行って、少しは気が紛れたかと思ったが・・・。


 「とりあえず、ミリィ、リィズ…ゴメン!本当は、もっと早くに話し合うべきだった。不安にさせて悪かった。」


 「ウン……いい……っすよ。」


 「・・・。話して・・・くれるんですよね?何があったか・・・。」 


 「そうだな…何から話せばいいか…。」


 自分の中で最近の出来事を整理しながら話し出す。



 「…まずは、あの仮面の男についてからかな?」


 「「仮面の男?」」


 「あの時現れた奴だ、お前らの所から顔は見えなかったか?」


 「にぃにの後ろに誰かいるってことしか・・・。」


 「そっか。俺もどんな奴かはわからないが、仮面をつけてたからな。」


 ・・・だから、とりあえず『仮面の男』で、と伝える。


 「これは俺の推測がかなり入るから間違ってるかも知れないが、今回のリビングアーマーの件は奴の仕業だと思う。そして既に目的は達している。」


 「なぜ、そう思うの?」


 「奴が『要らなくなった玩具』といってた。つまり、リビングアーマーは目的を達したから要らなくなった・・・と。」


 推測ではあるが間違いないだろう。


 「何が目的だった・・・っすか?」


 「そこまでは分からない・・・が、問題はそこじゃないんだ。」


 そう、奴らの目的なんてどうでもいい。


 「俺は奴に負けた。全く歯が立たなかった。」


 私が逃げたから・・・。ミリィがつぶやく。


 「違うんだミリィ。あれは逃げるのが正解だ。むしろ逃げてくれてほっとしている。」


 「でも・・・。」


 「・・・。」


 ミリィは泣きそうな顔をしている。リィズは黙ったまま俯いている。


 俺は立ち上がり二人の後ろに回る。そしてゆっくりと優しく抱きしめる。二人が落ち着くように…と。


 「俺は怖い。本当ならあの時俺は死んでいた。」


 俺の腕の中で、二人がビクッ!と身を固くする。


 「死ぬのが怖いんじゃない。手も足も出なかったという事実・・・二人を守れないという事実が怖いんだ。」


 今思い出すだけでも震えが止まらない。もし、あの時二人が逃げてくれなかったら…今、こうして、俺の腕の中に二人はいなかったかもしれない。


 「だから、あの時リィズが咄嗟に行動してくれた事感謝してる。」


 「…ぐすっ…違うの…。あの時…本当は…ぐすっ…。」


 リィズがしがみついてくる。


 「にぃにが逃げろって…ぐす…でも何かできたのかも…でも…ぐす…怖くて逃げただけなの。」


 「私も怖かった…リィズが引っ張ってくれなかったら動けなかったのよ。」


 リィズの頭を撫でて慰めているミリィの眼からも涙があふれている。


 「レイさんおいて逃げて…逃げろって言われてたから…と言い訳して、帰ってきたレイさんにかける言葉が見つからなくて・・・。悪いのは私の方なの。」


 「でも…ひっく・・・でも・・・だって・・・ぐすっ・・・。」


 「いいんだ。リィズも、ミリィも、もういいんだよ。あの時リィズたちが逃げてくれなかったら今、俺の腕の中に誰もいなかったかもしれない・・・そう考えるととても怖い。でも今確かに二人がここに居る。だからいいんだよ。」


 俺は二人を抱きしめる。


 「戻ってきたレイさんの心が痛くて…でも何をしてあげればいいかわからなくて…。」


 「にぃにぃー、ねぇねぇー・・・ぐすっ・・・。」


 「俺の方こそゴメン。二人が気遣ってくれるのに甘えてばかりで、二人の事気遣えなかった…。」


 俺は、二人が落ち着くまでギュッと抱きしめ続けた。




 「落ち着いたか?」


 「はい、取り乱してしまってごめんなさい。」


 「ウン、もう平気っす。」


 ・・・・・・。


 「じゃぁ…そろそろ離れても…。」

 

 「「イヤ!」」


 今、俺はミリィとリィズに挟まれている状態だ。

 両方の腕を取られてしがみつかれているので身動きが取れない。


 「ふぅ・・まいっか。じゃぁ、話を戻すぞ。」


 「私たちが離れてから、何があったんですか?」


 「二人を逃がした後、隙を見て俺も逃げ出そうとしたんだが、逃げ出せなかった。気を失う前に何かをされたみたいだったがその時はわからなかったんだ。」


 「今はわかってるっすか?」


 「あぁ、リィズが助けに来てくれた時、回復が遅いと思ってはいたんだ。帰ってきて確認して、確信が持てた。・・・俺の魔力は、封印されている。」


 「封印…って、魔法使えないってこと?」


 ミリィが首をかしげる。


 「あぁ、実際みてもらった方が早いだろ…っと、ちょっと腕離してくれない?」


 俺は自由になった腕を前に突き出す。


 「今、氷を出すから見てろよ・・・。

 『万物の根源たるマナよ』『冷たく閉ざされし塊となりて顕現せよ』・・・。」


 俺がルーンを唱えだすと手首から光の紋様が浮き出る。


 「『氷塊(アイス)!』」


 顕現のルーンを唱えるが何も出てこない…やがて光は収束し消えていく。


 「見ての通り、呪術的な『枷』をはめられたらしく、魔力を外に放出できないんだ。」


 「そんな・・・。」


 ミリィが青ざめる。


 「・・・。」


 リィズが何かを考えているようだ。・・・気付くかな?


 「あ、でもレイさん、今日魔法使ってませんでしたか?」


 「あぁー、にぃに使ってた。私のと同じ刃飛ばすのも。」


 「気づいたか。」


 ふふんと笑ってやる。


 「封印に気付いてから、色々試してみたんだよ。その結果、外に出せないだけで、身体強化みたいな体内の循環なら可能だということに気付いたんだ。」


 どうだ、すごいだろ!とドヤ顔してみせる。


 「もちろん完全じゃなくて、枷に持ってかれる分のロスはあるけどな。それでも練習の結果、徐々に使える魔力量を伸ばしているぞ。」


 「でもにぃに、爆発系の魔法使ってたっす。後、刃の放出も・・・。」


 「あれはなぁ…ちょっと裏技っぽいんだがエンチャントだ。」


 「「エンチャント?」」


 「本来は、エンチャントは対象に魔力を付与するものなので、放出系になるんだけど、ジェムを握りこんで体内の一部としてイメージを誤魔化すんだ。

 後はそこへ魔法を集めてやるイメージでジェムの中に魔法を封じ込め、キーワードを一緒に封じておいて、キーワードで魔力開放・・・というわけ。」


 「刃の放出は?」


 「あれはリィズのと一緒。前提条件として剣に魔力を込めなきゃいけないけど、魔力さえ込めたらワンワードで発動できるという剣の方の技能。

 後、剣に魔力を込めるのは先ほどのジェムと一緒で、剣の柄を握りこんで、剣先までが手だと思い込むことで魔力を流すことに成功した。」


 「はぁ、にぃには相変わらず規格外っす。簡単に言ってるけど普通できないっすよ。」


 ふむ、もっと褒めてくれたまえ!とドヤ顔をしてみた。


 「そこで、最初に戻るんだが旅に出ようと思う。」


 「「・・・。」」


 まだわからないと言う顔をしてるな…。


 「旅に出る理由は3つ・・・。」


 指を一本立てる。


 「まず一つ目、素材集めだ。さっき説明したとおり、俺の魔法は外に出せないからエンチャントが重要になってくる。だから魔力を通しやすい素材をたくさん集めて、アイテムをたくさん作り、装備を整えないと強くなれない。」


 指をもう一本立てる。


 「二つ目は情報集めだ。仮面の男みたいなやつらが他にもいるかもしれない。不審な情報があったら近づかないようにしないとな。」


 「そこは調べるっていうところじゃないっすか!」


 「ヤダよ、めんどくさい。そういうのは勇者様に任せておけばいいんだよ。」


 三本目の指を立てる。


 「最後に…これはダメもとだが解呪の方法を探す。会えるかどうかわからんが『慈愛の聖女』なら、解呪できるかもしれないしな。」


 ふぅ…と息を吐いて二人を見つめる。そして…


 「というわけで旅に出る…ついて…来てくれるか?」


 「連れてって…くれるんですか?」


 ずっと不安そうな様子だったミリィが泣き出す。・・・おいていかれると思っていたのか…。


 「行くっすよ。ダメと言われても付いていくっす!」


 リィズも本来の調子を取り戻したかのように元気一杯に答えてくれる。


 「よし!じゃぁ、準備が出来次第旅に出るぞ!」


 「「おー!」」ノリよく元気に答えてくれる。


 やっぱり泣き顔より笑顔がいいね。


 「ところでレイさん、行先とか決めてあるんですか?聖女様のおられる領都ですか?」


 「いや、特に決めてはいないが、とりあえず東の方の小さな町に昔世話になった巫女さんがいるんだ。まずはそこを目指してみようかなと。」


 「むむっ…浮気っすか?昔のオンナっすね。ねぇねやワタシだけじゃ物足りなくなったっすか!」


 そんなんじゃない…よな?


 「ねぇねー、にぃにが浮気性ですぅー。」


 「はいはい、リィズには私がいるからね。」


 ・・・久しぶりに明るい雰囲気だ…やっぱこうでなくちゃ!


 今夜は久しぶりにゆっくりと眠れそうだ・・・。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


  ・・・ぐるぅ、ぐるっこぉー・・・

 ・・・ン・・・うるさい・・・

 ・・・ぐるっこぁー、ぐるぅー、ぐるぅー・・・・


 騒がしくて目を覚ます・・・。

 いつもの朝の光景だ・・・。


 「にぃにー、起きて…あ、起きてた。おはようございます。」


 「ふふぁぁ…。おはよう、リィズ。」


 「・・・にぃに。…一体いつになったら旅に出るんすか?」


 あれから1週間、俺たちはまだ村の中にいた。

当初の予定よりどんどん話がずれていきます。

チート能力でのんびりほのぼの日常生活をさせたいのに、どんどんトラブルに巻き込まれ飛び込んでいきます。

本当に魔王になれるのでしょうか?


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