表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか魔王になろう!  作者: Red/春日玲音
第一章 魔王になろう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/153

魔族領の協力者

 「ぶぅ……。」

 ……ソラがむくれていた。

 俺の膝の上に乗って離れない。

 「あ、あのぉ……ソラさん?」

 「シャァーッ!」

 「ヒィッ!」

 チェムが話しかけようとすると威嚇して追い払う……さっきからこの繰り返しだ。


 「あ、あはは……はぅ……私、何か嫌われることしたのでしょうか?」

 そう言って、俺にすり寄ってくるチェム。

 「シャァーッ!」

 「ヒィッ!」

 ソラに威嚇されて、慌てて離れる。


 「はぁ……チェムちゃんって、無自覚なのねぇ。」

 「サキュバスの本能ってやつっすかねぇ。」

 カナミとリィズが少し離れたところで、俺達を見て話をしている……見てないで助けてくれよ。


 「あらあら、まぁ、あの子は一族の中でも最年少ですから。」

 カナミ達の所へセレナさんが加わり、ミリィも交えて楽しそうに談笑している。

 楽しそうでいいなぁ。

 俺の膝の上にはソラ。

 すぐ近くにチェム、そして、少し離れて他のサキュバスたちが面白そうに眺めているだけ。

 うぅ、俺もサキュバスのお姉さんたちとキャッキャ、ウフフしたいぞ。


 (そう言うこと考えてるから、こういうことになってるのよ。)

 呆れたように言うファー。

 「そう言われてもなぁ……。」

 

 俺達が、チェムの案内でサキュバスの里についたのは1時間ほど前。

 セレナさんをはじめ、サキュバスの里の皆は大歓迎で、出迎えてくれた。

 さりげなく現状を確認すると、俺は里を救った英雄という扱いらしい。

 「英雄?」って問いただすと、みんな「あれ?なんでだっけ?」と、少し記憶が曖昧になっていたのでそれ以上ツッコむのはやめておいた。

 とにかく、好意的であることは間違いなく今も、こうして歓迎の宴を開いてくれているのだけど……。


 「なぁ、ソラ、チェムはお前と仲良くしたいだけなんだよ?」

 俺はソラを諭してみる。

 「違うよ!そう言っておにぃちゃんに近づくのが目的なんだよ。ボク知ってるよ、こういうの「ネトラレ」っていうんだよ。」

 ……誰だ、ソラに余計な事を吹き込む奴は……って、ソラの言動から見ればアイツしかいないか。

 俺はカナミの方に視線を向ける。

 カナミは俺の視線に気づき、慌てて視線を逸らす。


 「違いますよ!私はソラさんとお話ししたいだけで……。」

 チェムが必死になって否定するが、その都度俺にすり寄って来るのであまり説得力がない。

 「シャァーッ!」

 「ヒィッ!」

 ……。

 「あらあら、レイフォードさんお困りですか?」

 セレナが笑いながら寄ってくる。

 「見ての通りだよ。」

 「あらあら、では、レイフォードさんの為に一肌脱ぎますか。」 

 そう言いながら、自分の服に手をかけるセレナ。

 いや、一肌脱ぐって、そう言う意味じゃないでしょ?

 セレナは、俺を見て「冗談ですよ」と言いながらソラに声をかける。

 「ソラちゃん、ちょっと耳貸してくれる?」

 「なぁに?」

 「あのね……ゴニョゴニョ……殿方を……。」

 「そうなの!」

 セレナに何やら耳打ちされ、驚くソラ。

 「そうよ、だからね……。」

 「うんうん……。」

 セレナの言葉に、まじめに頷くソラ……内容はよく聞き取れないが、俺は知らないほうがいい気がした。


 「じゃぁ、あっちにいる人たちに聞いてくるといいわ。」

 「うん、ありがとう。チェム、行くよ!」

 セレナに何を言われたか知らないが、チェムを伴って奥のサキュバスたちの所に向かうソラ。

 「これでゆっくりお話しできますわね。」

 そう言って俺の隣に座るセレナさん。

 ちらりと周りを見ると、カナミ達もそれぞれ他のサキュバスたちと話している。

 何を話しているか分からないが、皆真剣な顔で聞き入っている。


 「出兵の準備であまり大したお持て成しも出来ず、申し訳ないですわ。」

 「いや、十分だよ……と言うか、サキュバスたちも戦争に出るのか?」

 「えぇ、戦争は大手を振って補給できるいい機会ですからね。」

 サキュバスたちにとって、戦場に出る兵士たち……魔族人族問わず……は、いい補給源なんだそうだ。

 味方の軍にとっては、戦場で滾った興奮を納め、規律を守ることが出来、相手の軍にとっては軍規を乱し、腑抜けにすることが出来る……。

 サキュバスにとっては、たっぷりと精を吸い取ることが出来る上、軍の役にも立てるというまさにWin-Winの関係だ。

 出兵しない理由はないだろう。


 「平時でも、皆に喜ばれる方法が……あら?何かあったような……。」

 そう言って、俺を見るセレナさん。

 何かを思い出そうとして、思い出せない……そんな表情だ。

 「なぁ、この戦争が終わってからでいいから、俺に協力してくれないか?」

 「どういう事でしょう?」

 俺はセレナに、人界の街で店を開き、そこで情報収集をしてほしい事。

 店の形態はいわゆる「夜の店」で、そう言う目的で来る客が多い事から、楽に精を補給することが出来るという事。

 ゆくゆくは、街をつくるのでそこを拠点にしてほしい事などなど……。

 要は以前の「セレナーデ」で行っていた事を話す。

 

 「それは素晴らしいですね。ぜひ協力いたしますわ。」

 俺の話を聞くとセレナはすごく乗り気になり、戦後と言わずすぐにでもと言い出す。

 まぁ、リンガードの街中の店舗を借り受けて……予算は……まぁ、行けなくはないか。

 「そうだな、1週間ほどで準備はできると思う。そちらの準備はしよう。代わりに……。」

 俺は、魔王の娘に関する情報を集めてもらう事をお願いした。

 戦争ともなれば魔族中から人が集まる。

 気を抜いている時の寝物語として聞き出せるサキュバスたちなら、情報収集に最適だと言えよう。


 俺達はさらに詳細を詰め、その日の宴会はお互いに有益な物となったのだった。


 「ねぇ、センパイ、セレナさんと楽しそーにお話ししてたね?」

 「にぃには鼻の下を伸ばしてたっす。」

 「レイさん……私達だけじゃ物足りないですか?」

 ……宴会の後、3人から詰め寄られたことは……まぁ、そう言う事もあるという事にしておこう。


 翌日から、俺はセレナとの約束を果たすために、サキュバスの里と人界を行き来する。

 店の場所だが、アルガードの王都でもよかったが、やっぱり自由な意見が飛び交いやすい、リンガードの首都の方がいいだろう。 

 店舗の借り入れ、内装工事、備品の購入・設置……近隣にダミー用のセーフハウスも借り入れる。

 流石に、店員の出入りが全く無いというのはおかしく思われるかもしれない。

 魔族領から直接店内へ転移も出来るようにはしておくが、基本的にはセーフハウスを経由して行き来してもらいたい。

 結局、今までの稼ぎの殆どを使ってしまったが、今後売り上げから返してもらおう。

 

 俺が店舗の準備をしている間に、セレナは戦場へ向かう者、新しい店舗に行く者、この里に残りサポートする者、それらのローテーションなどを決めていった。

 その手際は見事としか言いようがない。

 彼女に任せておけば、それなりの情報は集まるだろう。


 ある程度目途が立ったところで、俺達は先へと進むことにする。 

 出発際に俺はセレナにネックレスを渡す。

 通信機能及び転移機能をエンチャントしてある優れモノで、これがあれば俺とすぐ連絡が取れる。

 最初は指輪型にしていたのだが、カナミ達に凄い勢いで止められた。

 セレナに渡したとき「あらら、指輪じゃなくて残念ですわ。」と言っていたので指輪型の方が良かった気もするんだが。

 

 「にぃにはわかってないっす。」

 「あのねぇ、センパイ。指輪って、女の子にとって大切なモノなんだよ?」

 「そうですね、そうホイホイと配られるのはちょっと……。」

 「ボクだけ指輪もってない……。」

 リィズ達がこぞって俺を責め立てる……俺が悪い……のか?

 

 まぁ、サキュバスの里では色々あったけど、情報収集の手段も手に入れたし上々だったと言える。

 セレナたちを見て確信したのは魔族たちへの変革の影響は少ないって事だ。

 今後の事を考えると魔族の協力は必要不可欠……となると、次の行き先はオーガの里だ。

 セイラやハクレイの協力はぜひとも取り付けたい。

 

 「セイラたち元気かな?」

 「んー、戦争が近いからな。オーガ族は戦闘種族だし、ひょっとしたらみんな戦場へ行っていて、里は空っぽってこともあるかもな。」

 カナミがポツリと聞いてくるので、それに軽く応えてやる。

 「笑えない冗談っすね。ほんとに空っぽだったらどうするんすか?」

 「考えてない。」

 「マジっすか?」

 リィズが呆れたように聞いてくる。

 「マジっす……と言うか、魔族領でやる事は3つ。魔王の娘を探すこと、拠点となる場所の確保、協力してくれる魔族の確認だ。」

 俺は再確認を兼ねて、現状と今後の事について話し出す。

 「魔王の娘に関しては、セレナたちの情報待ちだな。だから協力してくれそうな魔族を探しつつ、拠点と出来そうなところを探すんだけど……だから、オーガの里が空っぽだったら……まぁ、のんびりいこうか。」


 「ちょっと、にぃに、聞いてもいいっすか?」

 リィズが分からないという顔で聞いてくる。

 「ん?」

 「魔王の娘を探すって言うのは分かるんっすけど、協力者とか拠点が必要ってのが分からないっす。まぁ、協力してくれる魔族が多ければ楽って言うのは分かるっすけど、いなくてもにぃになら気にしないと思ってたっす。後、拠点も魔王島があるじゃないっすか?」

 「あぁ……、んー、何て言えばいいかな?」

 そう言えば、皆にしっかりと説明してなかった気がする。


 「今回の人族と魔族の争いの隙をついて内乱が起きるという話は覚えているかな?」

 「ウン、魔王の力を狙っているってやつだよね?」

 俺の問いかけにカナミが応える。

 「そう、魔王の力を狙う『魔王種』たちの反乱……しかし不思議に思わないか?なぜそのタイミングで反乱を起こすのか?」

 「それは、意識が人族に向くから隙が出来る……からじゃないっすか?」

 リィズがそう答える。

 「確かに、隙は出来るかもしれない……しかし人族との争いの最中に反乱を起こせば、魔族たちの勢力が削がれる。それは魔族側に深刻なダメージを与えることにつながる。結局自分たちが不利になる事になるんだ。それでも反乱を起こす理由は?」

 「確かにそうっすね……。」

 リィズが俺の言葉を聞いて考えこむ。

 「レイさんは、この争いも仕組まれているって言いたいのですか?」

 ミリィが的確なところをついてくる。


 「流石だな、その通りだ。人族のバックに魔王種がついていると俺は思っている。ただ、操られているだけなのか、互いの利害が一致して利用し合っているだけなのかは分からないけどな。そして、魔王種は何人いるのか、お互いに敵対しているのか協力し合っているのか、それすらも分らないのが現状だ。」

 俺はそこで一旦言葉を切って皆の顔を見回す。

 「いくら魔王の力を入れても、他の魔族や人族まで敵に回したら……ちょっと厳しいだろ?だから、魔王の力を入れた後、それなりの勢力を示さないといけないんだよ。その為の拠点であり、協力者って事だ。」

 「成程っす……なんとなくわかったっす。」

 「まぁ、今の魔王の勢力をそのまま乗っ取れればいいんだけどな。そう甘くはないだろう。」

 「サキュバス族とオーガ族以外にアテはあるの?」

 「一応リザード族に声をかけてみようかと……後は水棲族、魚鱗族辺りかな。後はアドラーやカミラなど四天王と会うことが出来ればいいんだが……最悪、サキュバスの里を拠点にして勢力を広げていくしかないかもしれないな。」

 「行き当たりばったりって事ね。」

 「臨機応変と言ってくれ。」 

 カナミの身もふたもない言葉に言い返す。

 「じゃぁ、とりあえずオーガの協力を取り付けるってことでいいっすね。」

 「そう言う事だな。」

 そんな話をしながら、俺達はオーガの里へ向かう。


 ◇


 「……で、なんで囲まれてるの?私達。」

 「わからないっす。」

 「……以前も同じような事が……。」

 「面倒は1回だけでいいんだけどな。」

 森を抜けたらオーガの里、と言う所で、俺達は多数のオーガ達に取り囲まれた。

 「レイさんどうします?」

 「蹴散らすのは簡単なんだけどな……。」

 まぁ、最悪いつでも逃げられるという事で、大人しくし捕まったんだが……。


 ◇

 

 「本当に申し訳ござらぬ!」

 今、俺達の前にはハクレイを筆頭にオーガ達が土下座している。

 「あぁ、まぁ誤解が解けたならいいさ。」

 さっきまでは一族総出で切腹とか言い出してたんだよ、このオーガ達。

 正直、ここまでされるとかなり引いてしまう。

 「お姉さま、御免なさい。嫌いにならないでくださいー!」

 向こうではセイラがリィズにしがみついて泣いている。

 

 戦時中でピリピリしていた所に入り込んできた人族。

 そして警備の指揮を執っていたのが俺達の事を知らなかった新参者だったというのが災いした。

 大人しく捕まった事に気を良くしたソイツはミリィに手を出そうとして……その結果、俺とリィズの怒りを買って、警備隊は半殺し。

 縛り上げて里に入った所で、俺達の事を見知っていた者がハクレイに報告し、一族総出の土下座……となった。


 その後、歓迎の宴を開いてもらったのだが……。


 「お姉さま、ハイ、アーン。」

 「ちょ、ちょっと一人で食べれるっす。」

 「おねぇさま・……セイラの事キライですか?」

 「そう言うわけじゃ……。」

 ……セイラはリィズにべったりだ。


 「レイフォード殿、此度の事は本当に申し訳ない。なんとお詫びを申し上げればよいやら……。」

 ハクレイは口を開くたびに謝罪をしてくる……正直鬱陶しい。


 セイラやハクレイ達と話をしたところ、やはり俺達との出会いの部分は曖昧ではあったが、俺達がセイラのピンチを救った事がきっかけで、オーガ族は俺達に忠誠を誓うと決めたという事になっているらしい。

 基本的には今までと変わらないスタンスでも大丈夫そうだ。

 そしてやはり、オーガ族は人族との戦争に参加するとのことで、すでに半数が戦場に行っているらしい。

 現在入っている連絡では、すでに小競り合いが始まって本格的な戦争まで時間がないらしく、明日にでも、残りの者達が出発するところだったとのことだ。


 「センパイ、どうする?」

 カナミが聞いてくる。

 空っぽになる前に辿り着いたのはいいが、このままでは明日にでも空っぽになるのだ。

 「どうするかなぁ……?一応転移陣は設置させてもらって……戦場を見てみるか。」

 戦争に参加する気はないが、どういう状況か確認しておくのも悪くないだろう。

 それに今後の事も考えると、色々顔を売っておくのも悪くないはず。

 

 「という事で、俺達もついて行くよ。」

 俺はセイラとハクレイにそう告げる。

 「助太刀いただけるとは心強い。」

 「いや、戦争する気はないから……ただ、お前達に被害は出て欲しくないしな。」

 「私、お姉さまのために頑張ります!」

 セイラがリィズの手を握ってそう宣言する。

 「あはは……怪我しないように気を付けるっす。」

 リィズが困り顔で答えている。


 オーガ、鬼人は戦力としては大きい。

 俺の勢力下に入ってくれるのであれば、戦場で数を減らさないように気を付けてやらないと……本当の戦いはその後にあるのだから。

 


   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ