サプライズがあるみたいなのです?
また小説を書くのにハマった。
「ただいまです。」「たっだいまー!」
「あら、お帰りなさい。丁度いいタイミングですね。」
あれから一時間ぐらい買い物をし、対照的な顔で帰ってきた私たちはアザミにそう声をかけられた。
「丁度いい、とは…?」
「ふふ、それは見てからのお楽しみよ!」
どうやら知らないのは私たちだけらしい。「こっちにいらっしゃい」と、アザミに手を引かれて行くと、これまでの扉より一回り大きい扉があった。これだけ大きいということは、中も相当大きいのだろう。
「じゃ、開けましょか!」
「ちょっと、スカーレット。サプライズなのだから、スカーネさんに開けさせましょう?」
「それもそうね。スカーネちゃん、開けてみて!」
「は、はい。」
静かにスカーレットの隣でアザミが「スカーネ…ちゃん…!?」と呟いたのが聞こえた。
さて、中はどうなっているだろうか。罠の可能性もあるし…
『スカビオサさん。私は友達を疑うことはしたくありません。』
その言葉に私が驚いた隙を突いて、ボーシャが扉を開いた。
「「「「スカーネさん、おめでとう!」」」」
「えっ…!?」
目を丸くして驚いている。当然だろうな。祝われるなど、この子にとっては初めての経験だから。
「この寮はいつも新しい人が来ると祝っているのよ。どう、驚いたでしょ?」
「おーい、スカーネ殿ー!早くこちらに来て楽しみましょうぞ!」
確かに、探知を使わなくてよかったな。
「う、うう」
「ちょ、スカーネちゃん!?ファイエルぅ!!!!!」
「某は声をかけただけでござるううううう」
「ファイエルは気持ち悪いからねー。」
「ベール殿、今の言葉で某のライフはゼロになりましたぞ!?」
「いっそ死んでください」
「アザミ殿!?」
「違います、ファイエル、さんは、確かに気持ち悪いけれど、」
「ぐふぅ」
「じゃあ、なんで泣いてるんだい?」
「こん、な、優しい場所がある、なんて、知らなかったから…」
その嗚咽交じりに絞りだした声に、みんなの顔が慈愛にも似た目でこちらを見る。
「…じゃあなおさら今日は楽しまないとね!」
「そうだな!」
「いい思い出になるだろうね。さ、こっちへおいで。ファイエルはそのまま退場ね。」
「なんかスカーネたん入ってからみんな某の扱い雑になってきてござらんか?」
「今日ははっちゃけましょうか。ほらほら~」
アザミが手を振ると、幻想的な、お伽話の中にある様な虹の渦がたくさん出来た。
〔楽しい〕を知らなかった少女が、はちきれんばかりに笑っている。
そんな風景をみて、ふと胸の奥に何かがうごめいているのを感じた。
私たちは、全てを共有している。
この胸の気持ちが、いまボーシャの溢れんばかりの喜びだろう。
実は私も、この感情を知らない。
人生の半分以上が逃げる人生だった。それが今ではどうだろうか。
「くうぅ~っ、エールがうめぇ!」
「ちょっと、ラインあんた飲みすぎなのよ!ひっく」
「…僕もちょっと飲みすぎたようだね。久しぶりに頭がくらくらする」
「…………………………うぷっ」
「上か不穏な音が…アザミ殿!?なぜそこにってまさか!!」
あぁ、暖かいな。
自分が流している涙にも気づかず、私はこの光景を記憶に焼き付けるように見つめていた。
その後、私たちは昼から夜まで飲み明かした。
無論全員二日酔いである。
ファイエルさんはどうなったんでしょうかね?