今、実は結構やばい状況です?
そもそも読んでくれる人はいるのだろうか…
「え?じゃあつまり、君は元の世界にいた時は幽霊で、召喚したときに触れてしまって体を乗っ取ってしまったの?」
「分からん…。正直、あの時は幽霊なのに何故かあの子に触れたし、声も出せた、気がするのだが…」
あの後、少し落ち着いた私は一通りの事情と前の世界の覚えている限りのことを話した。
「その時に、今君の身体の持ち主も振り返ったんでしょ?うーん、全く訳分らん。
なんか、こう、体にいるのかな?その娘は。」
「そうだな、魔力を張り巡らせる感覚でいいか…?
う、む?」
女性のアドバイス通りに体を魔力で張り巡らせると、泣き声のような音が脳に直接届いた。
「どうしたの?いたの?」
「少し待ってくれ。見つけたかもしれん。」
さらに魔力を流す。魔力を流す量が多く少し漏れてしまった。が、場所は良く分かったので、精神を魔力にのせて行く。気絶するが、まあ待ってくれとは言ったので大丈夫だろう。
「お母さん、ひっく…」
「…ボーシャ」
そこには座り込んで涙を流しているボーシャの姿があった。思わず声が漏れると、ボーシャはビクッと体を震わせ、こちらを見た。そして、
「…お母さん?」
「違う。私はクラサだ。」
盛大な勘違いをしてしまったようで、即答する。しかし、またもボーシャは体を震わせる。今度は驚愕ではなく、畏怖の目でこちらを見る。
「う、そ。『憤怒』、クラサ…?な、何でここに」
「いや、実はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
そこからもこれまでのことを話した。
「――――――――――ということだ。あと、先ほどは私の事を『憤怒』と言ったが、どういうことだ?」
「え、まさか知らないの?」
全てを話し、ボーシャが何もしていない事はわかる、という本心からの言葉にボーシャは少しは安心したようだが、それでも警戒心は持っているようだ。
「うむ。私は生きているときの記憶が無くてな。それも教えてーーーー
あぁ、なるほど。」
直後に私の生きている頃の記憶が蘇った。おそらく、だんだん私とボーシャの精神が融合しており、記憶が共有されて私の記憶が刺激されたのだろうか。
「その通りだな。改めて、私はクラサ。怒りに身を任せ神龍を切り捨て、数多の国を滅ぼし『憤怒』の名を冠した大罪人だ。」
「で、では私も…
『嫉妬』、の名を冠された、ボーシャです。」
「君の心に無理に入ってしまい、申し訳ない。」
「いえ、むしろこの気持ちを分かり合える人ができてうれしいです。私一人だったら、たぶん、壊れていたから…」
共有ということは、ボーシャもどうやら私の記憶を観たらしい。
「まあ、それならよかった。それにしても、君の国のあの愚王はひどいものだな。」
「いえいえ、それならばあなたのほうのあの男だってーーー」
それからは、色々人に語れないような内容や悪口を言い合っていた。
「――――さて、そろそろ君は外へ出ろ。」
「え?何でですか?」
「律儀に待ってくれているみたいだな。
ほら、この体は元々君の物だ。彼女も君と話したいだろう。なに、私はここから聞いているよ。」
「あぁ、そういうことですか。分かりました。」
そういって、ボーシャが消えたと同時に視界が共有される。
変な感覚だ。感覚はあるが、体があまり動かない。動かせるのか?
…お、一応動くのか。
「クラサさん、いちいち体を動かさないでくださいっ!」
す、すまない。
ボーシャがいきなり声を荒げ、ついビクッとなる。目の前の女性も驚いているようだ。
「め、目を覚ましたのかい?いきなり倒れたからびっくりしたよ。」
「すみません。後で言いつけておきます。」
この子、前は周りから邪険にされて卑屈になってただけで本当の性格ってこうだったのか…
もし男と付き合ったら絶対にその男尻に敷かれるだろうな…
《聞こえてるからね…?》
ヒェッ…
「なんか黒いものが見えるけど無視するね。ええと、実はこの国は君のような転移者や転生者の待遇はしっかり出来ているんだけど、いかんせん君たち、強すぎるね。
多分この世界でも最強目指せるんじゃないかってぐらい。」
「え、それで何がまずいんでしょうか?」
「本来は学院に入ってもらうのがテンプレ…基本なんだけど、正直言って間違なく無双するだろうね。特に君の中にいるもう一人が。
そしたら、全体のレベルが恐らくかなり上がる。それこそこの世界の最高峰レベルまで。」
「確かに、一人頭が飛びぬけている人がいれば全体も平均が高くなるというのは本で読んだことがあります。
――――――――え?そっちの方が良くないですか?」
「多分、頭どころか君たちは体位余裕で飛びぬけてるだろうけどね…
さっき転移者や転生者も学院に入るといっただろう?」
「はい」
「転移者では大抵長所と短所があるからいいのだが、転生者は別だ。あいつらは短所がない。
因みに、世界最強はここ60年程ずっと転生者がとっている。
さらに、そのような転生者がこの国に攻めてきたこともある。その時にもかなりの犠牲があったのだが、なんとか鎮静させられた。しかも攻めてきた転生者は学院の卒業生なんだよ。
だから、もしこれ以上レベルが上がり、転生者が輪となり攻めてきたらこの国はほぼ必ず滅ぶだろうな。」
「なるほど、そういう事情が…
普通の市民として暮らすことは?」
「え?無理無理、君がこの世界で一番人類で力を持っているんだよ?監視するにきまってるじゃん。」
とたん女性が真顔となり感情のない目でこちらを射抜く。
…学院ならば、別に生徒ではないといけないことはあるまい?
《それだ!》
「では、学院の先生はどうですか?」
「ふむ?…ふーぅむ、いいんじゃないか?うん。少し上にかけ合わせてみるよ。」
そう女性は言うと、ポケットから薄い四角い板を取り出し、何回か押して耳に当てた。
「あ、ルー?何か今日来た転移者なんだけどねぇ、魔力えぐいから急遽先生側に席空けといてくれない?」
『は?いや、もっと詳しく話してくれないと分からんだろうが。久しぶりに連絡ついたと思ったらなんじゃそれは。』
「だーかーらー。魔力量が化け物レベルだから、生徒のところに入っても意味ないの。魔力の扱いのところぐらいに空きをねじ込んどいて~
ハイ説明した。後で会いに行くからとりまじゃね~」
『あ、待て…』
板からの制止する声を無視して女性が板を押し、瞬間に声が途切れる。
《ば、化け物…》
ボーシャが落ち込んでいるようだ。私はもう言われまくったので慣れたが。
「ってことで、君は転移者や転生者、成績が優秀な子達が集まる『勇者学院』の先生に決まりましたーー。いぇーい。
はーい、取り合えず君たちの住む場所を案内するねー。」
「はい。っそういえば、自己紹介がまだでしたよね?」
「あ、そうだった。私はシャナ。『双剣美蘭』っていう二つ名もあるよ。君たちは?」
「えっと、私はボーシャで、元『龍の巫女』で現在は『嫉妬』に名を冠しています。
もう一人はーーーーーーーーーーーーーーー
…ボーシャだ。『憤怒』の名を冠し、ただ一人の男を愛している乙女だ。よろしく頼むぞ。」
女性―――改め、シャナはあんぐりと口を開けていた。何か自己紹介が違ったのだろうか…?
「はぁ…なんで大罪を二つ持ってるんだよ…頭痛い…」
その後、シャナは自身の頭を叩きながら独り言をつぶやいていた。
私もそう思う。
読んでくれた人たちにウィンク☆(バチィ)