何故か私は観察対象の身体を乗っ取ったみたいです?
初めての作品です。
不定期さらに本人のやる気次第で即消しちゃうかも…
「さて、どうしてこうなった?」
顔を引きつらせながら、私ーーーーークラサは周りをみて、そう呟いた。
何故こうなったのか。それは、まだ私がこの世界いない時が発端だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「~~~~~~~~、この世界に光を照らす者よ~~」
私は、一人の少女を観察していた。上空から。
その少女はとある祭壇で一心不乱に祝詞を唱えている。
その周りには多くの観衆がおり、皆期待に満ちた目でその少女を見ている。
その少女は、儀式の影響で髪色が少しずつ白になってきている。
その少女の名は「ボーシャ」。この国、『グリッパー帝国』の王族の血を受け継いでいる龍の巫女の代役である。
何故代役なのか、それは彼女はつい先日に母親を亡くし、その母親の代わりにこの儀式を行っている。
そもそも、この儀式ーーーーー『勇者召喚』とは異界から「勇者」の資格をもつ生命体を儀式を行う者の命と引き換えにこの世界に呼び出すのだ。しかし、この儀式には誰しも行えるという訳ではない。
まず、膨大な魔力。そして、王族の血を受け繋いでるというのが最低条件である。そこからも女性のみ等の色々制約はあるが、それらは一般人でもクリアできる。ので、ここでは割愛。
この制約に対し、王族はとても単純に問題を解決させた。その答えとは、「世界の魔力が強いものと交わり、『龍の巫女』とする」というものだ。
有名な魔術師等を呼び血統に加えるということもあるが、魔術師というのは基本的にプライドが高いので、上手くいくケースはあまりない。だから、この国では生まれた赤子と7歳になる子供に魔力検査を義務とし、若くて魔力があり、且つプライドがあまりない子供を選出して龍の巫女の一族に入るように定めているのだ。もちろん、本人が嫌ならば強制はしないが。
『龍の巫女』とは国の最大戦力だが、数百年に一度生まれる「魔王」。これに対し、人間側は勇者の持つ属性、「雷光」でしか魔王には傷がつけられない。そして、その人類の希望は『龍の巫女』しか召喚できない。
今、この世界に突如生まれた魔王に、帝国の動きは素早かった。すぐさま21代目の龍の巫女であり、ボーシャの母親でもある「シャロン」に王令をだし、祭壇で儀式を行うよう下した。その命にシャロンもすぐさま服を着替え、向かった。
その時事件は起きた。シャロンは突然倒れ、周りの貴族の処置も空しく倒れてから僅か3分程度でその命を散らしたのだ。
シャロンは人柄が良く人望もあった為に、この事件は国中が悲しみの声をあげた。そして、その声は段々怒りや憎しみに変わり、その感情はシャロンの唯一の娘、ボーシャに向けられた。母親を殺した大罪人と謂れのない冤罪をかけられて。
ボーシャに対する行為は酷かった。王族や貴族間では間接的に、平民に会うと物理的に、子供に会うと泣きながらモノを投げられたり殴られたりされた。
これには耐えられた。歯を食いしばり、毎晩誰にも聞かれないように枕に顔を沈めて、誰にも聞かれないように泣く声をかみ殺して。ただ、不幸はそれだけではない。
「シャロンの娘ボーシャを龍の巫女を殺した大罪人とし、罪として『嫉妬』の名を与え、21代目の責務を全うせよ。」
「…はい」
「クスクス、聞きました?」「ええ、あの女にはお似合いよ。」「いつも陰から私たちを見下して、ねぇ?」「くふふ、親を殺すなど普通じゃ考えられませんがな」「何を言う。あれの頭がおかしいのは既に知っていただろう?」
王命を下されたのだ。それも、この世界で最も罪が重い七人に課せられる『大罪』まで。
その場にいた貴族からも一斉に陰口が押し寄せてくる。
ボーシャは顔が真っ青になっていた。まさか王がボーシャがシャロンを殺したとはっきりと告げるとは思わなかったのだ。
そして時はそのまま流れ、ボーシャは今『勇者召喚』の儀式をしている。侮蔑と期待に押しつぶされそうになりながら。
ここまでのことを私は上空から見ていた。何を隠そう、私は一般的に『幽霊』と言われる存在であるのだ。ただし、記憶が無い。それよりもこの子だ。何とか助けてあげたい。
「~~~~~~~盟約により、我、王族の血に銘を残す者~~~~~~~~」
祝詞も最後に近づいてくる。しかし、私は何もできない。触れないし、周りに声もかけられない。あまりの悔しさに唇を噛む、ということすらもできない…。
「~~~~~~~~~~我が意思に応えよ!『勇者召喚』」
「待ってくれ、君はーーーーーーーーー」
最後の言葉とともに、辺りが眩い光に包まれる。
思わず手を伸ばして触れようとしてしまった。声も出たようだ。幽霊なのに。
彼女が驚いた顔でこちらを振り向く。彼女の髪は既に真っ白になっていた。私が彼女に触れた瞬間、光に呑み込まれ、そのまま私は意識を失った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そして、そのまま拉致された、と…
いや、そもそもここは私がいた世界なのか?」
「正解!凄いね、君。一瞬で見分けるとは。」
なんちゃってーー、と自分の考えている事を否定しようとして、いきなり視界に入った女性に独り言を肯定される。
「…どこから入ってきたのだ?」
「え?そりゃあそこの自動ドア…って言っても分かんないか。まあ、自動で開け閉めがされるドアとでも思っておけばいいよ」
「いや、私の知っているドアとは全く形が違うーーーー
そうだ、ここは私がいた世界ではないのか。」
「うん。この世界は君たちがいた星よりもさらに技術が発展した世界、とでも思ってくれれば。」
「そ、そうか。ところで、何故私は今体を所持しているのだ?私は幽霊だったはずなのだが」
「ふぇ?」
私が幽霊だったということを伝えると、女性はとても間抜けな声を出して呆けていた。私もそう思う。
ただ、この服装はすごく見覚えがある。まるで、あの子のーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まさかっ!」
「ふぇっ、どうしたの?」
服装を見る。そして、その時に乱れた髪の毛は間違いなく彼女、直前にみたボーシャの色素が抜け落ちたがそれでも輝かんばかりの銀の色で、髪をまとめている髪飾りもあの子の物だ。つまり、
「私は、この娘の身体にいるのか!?」
もしここまで見てくれた人がいるならば感謝の証としてジャンピングDOGEZA☆します。