やんでーら(下)
男は思う。フランちゃん、やんでーら。関わっちゃいけない人種だよ。
「私『剣聖』っていう称号があるんだって、ライアンが教えてくれたんだ。その時ライアンがいっぱい褒めてくれたんだよ♪︎凄いってずっと一緒に冒険者しようって言ってくれたんだ♪︎この剣もライアンがくれたんだよ、『剣聖』に相応しい剣だって。でもね、私がいちばん得意なのは剣じゃないんだ。」
そう言ってフランは漆黒の刃をもつ二本の包丁を取り出す。
「ばらばらにしてあげる」
直後、漆黒のオーラを纏いフランが高速で接近する。
ふぁ!?これが剣聖?冗談だろ?聖のせの字もないよ!真っ黒だよ漆黒だよ!アサシンだよ!男は混乱しつつも危なげなく回避していく。
ってかこの黒いオーラはなんだ?剣聖の派生スキルにはこんなんねーぞ、触れるだけでヤバそうじゃん!
「『ダブルエッジ』」
スキルを用いた包丁の斬撃が男を襲うが一向に当たる気配はない。回避し続ける男に苛立ちを隠せない少女は次第に動きが荒くなってゆく。男はそんな様子も気にせずに少女のオーラについて考える。
『ダブルエッジ』はアサシン系のスキルだよな、ってことは黒オーラはアサシン系最高峰の『エンチャントナイトメア』?確かあれって職業がアサシンキングかクイーンしか使えなくない?更に言うとアサシンクイーンって先天的にしかなれないよな……
生まれながらにしてアサシンクイーンで剣聖?女神様遊びすぎでは?人間びっくり箱じゃん…
まー何はともあれヤンデレアサシンさんをどうにかしなくては…
すっと行ってトンだ。男は事も無げに手刀でフランを気絶させる。普段ならもっと遊ぶのだが、フランの精神攻撃によりSAN値が激減した男にはこれが精一杯であった。
帰り道に残りの二人も気絶させ、しれっとギルドに保護したと報告するのであった。
男は学んだ、剣聖アサシンには近付かんとこ…