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いい人ヅラしてやるぜ

「おい坊主、ここは冒険者ギルドだ!ガキの来る場所じゃねぇぜ、有り金と後ろの女置いてママの所に帰りな!」



最低の文言、三下を彷彿とさせる下卑た笑み、相手をただのガキだと思って舐め腐った態度。控えめに言って完璧だ!



新人の坊主はやれやれだぜって顔してやがる、最っ高にいい反応だな。


「エミ、サラ少し下がっていてね危ないから」


そう言って俺に相対する新人くん、かっこいい所を見せたくてもう剣に手が伸びてるじゃねぇか


「どういうつもりで言っているのか知りませんが貴方なんかにお金を渡す気もましてや彼女たちを置いていく気もありません。それ以上絡んでくるのであればそれ相応の対処をしなくてはいけなくなりますがどうしますか?」


この新人くん分かっていやがるテンプレってやつを…

敬意を持って答えようではないか!


「おいおい、それ相応の対処だって?笑わせてくれる、お前みたいなガキに何ができるって?表へ出な!俺が冒険者ってやつを教えてやるよ」











野次馬たちが息を呑んだ。煌びやかな装飾の施されたミスリルの剣を見てこの持ち主の生まれが貴族であることが分かったのだろう。対する男が持つ剣は刃が潰れ所々に錆が浮いている一目見て手入れがされてないと分かるものであった。だが、野次馬たちがその男を軽視する気配はなく寧ろ敬意を払っている者までいる。彼らは男の正体を知っているが同時に彼の普段の行いも知っているので新人冒険者に何かを言うことはなかった。



「で、貴方は何をかけるのですか?」


唐突に口を開いた新人くんは僕が勝った時貴方は何を差し出すんだ、僕だけかけるのは不公平ではないかと捲し立ててくる。最高じゃねえか、どこまでテンプレを理解してるんだこの新人くんは!


「ガハハハハ、威勢だけはいいみたいだな、万が一にもお前が買ったら俺の全財産をくれてやるよ!お前の見掛け倒しの剣なんかよりよっぽど高価な魔道具だって持ってるんだぜ?ま、俺に勝てたらの話だがな、ガハハハハ」


今日は絶好調だな、テンプレムーブが止まらないぜ

あとは新人くんに絶望の敗北をプレゼントするのみだ!だが油断は禁物、新人くんだって天才の一人なんだ、訳わかんない恩恵(ギフト)とか持ってるだろうしな。

開始の合図を野次馬に任せて互いに向き合う。


━━━━━━━━━━始め



開始の合図とともに飛び出す新人くん、こりゃ加速系の恩恵(ギフト)かな?Bランク冒険者よりか速い。ま、俺からしたらスローにしか見えないんだけどね。その場で身体をずらすだけでミスリルソードは空を切る。避けられることは考えてなかったのか、驚愕の顔で俺を見る新人くん。うーん、そんなことしてるより着地の事考えた方がいいんだよねぇ…大きくよろめく新人くんの腹に蹴りを入れ新人くんとの間合いを取る。


「ゲホッゴホッ…なんで僕がこんなやつなんかにクソッ……二人ともゴメン…」


新人くんは悔しげに俺を睨み見上げ悪態をつく。蹴り1発で戦意喪失とは根性のないヤツめ、このまま煽り倒してやってもいいが無闇に敵を増やさない主義なんでな。いい人ズラしてやるぜ。


「そんな悲しげな顔しなくていい、俺は元からお前たちの金を奪う気はないからな。これで分かっただろ?相手を見くびって無闇に剣を抜くのは自分だけでなく仲間をも危険に晒す行為だ。逃げることは悪いことじゃない、最後まで生きたやつが勝者だ。命を張る冒険者稼業だからこそ命を大切にしなきゃいけねえ。それを今のうちに学んでおけ」


新人くんは、驚いた顔をしていたが次第に真剣な表情になり俺の言葉を聞き逃すまいと聞き入る。……傑作だよ!なんだよそれを今のうちに学んでおけって自分で言ってて笑えてくるわ、しかも新人くんの表情!真剣そのものじゃねえか!俺が言った内容は冒険者登録の時に受付嬢さんが言ってくれる内容とほぼ一緒だぜ?内容なんか「いのちだいじに」って言っただけだぞ!今日の新人くんは最っ高に当たりだな!こんなピュアなやつ滅多にいないぞ!クックックこのままカッコつけて帰っちゃおー



無言で立ち去る男の背中を見ていた新人くんは、立ち上がると男の背中に向け深々とお辞儀をするのであった。


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