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 コハクの母親の名前は、アクアマリン。コハクの父親の名前は、オニキス。どうやらこの世界の名前は、宝石の名前らしい。だとすれば、石言葉とも関係があるのだろうか?でも私は、そんな事なんて解らない。


「専門外だからなー」


 いろんな事を興味持っていたけれど、私の知識は、広くて浅い。知ろうとする前に母親に止められた。


「いくら時間かけても解らないものは、解らない。時間の無駄なのよ。あなたの脳みそで、理解出来る事まで、解ろうとするには、10年どころか100年ぐらいかかるわよ。死んでも無理。

 あなたは、解る事だけ出来ることだけすれば良いの。得意分野だけ伸ばしていけば良い」


 私を馬鹿にした母親の言葉。私は、母親が言われた通りした。好きな事それは、本を読む事だった。だから小説家になりたかった。でも、母親は


「あなたの知識じゃあ無理よ。才能ない。紙の無駄。時間の無駄。ニートになるに決まってる」


 そう言われた。悔しかった。悲しかった。母親にとって私は、娘でも何でもない。家族すら思っていないだろ。お金持ちになりたかった母親は、私は、良い道具にしか思われていなかったのだろう。


 にしても、ここの書庫は、大きく興味がそそる物が多い。昨日と今日でここに立ち寄ると流石に怪しまれるけれど……


 ダイヤは、家に帰ったから今は、いないし……昨日の件で私付きのメイドは、まだ決まっていないみたいだし……外には、出れないし、まだダンスの稽古とやらをやる雰囲気では無いから仕方がない。


「コハク。ここに居たのか」


 振り向くと、オニキスの事この子の父親がドアの前に立っていた。


「どうしたの?お父様」

「聞いてくれて、コハク。仕事も一段落したから、今日から家で、仕事をする事にするよ」

「良いの?」

「良いとも。アクアマリンが亡くなって、寂しい思いをしているのに側に居られない方がおかしいからね」


 そう言って、私の隣に座って微笑んだ。確か、この子の父親は、とある国のもと皇帝騎士。確か、王様の守備隊長だったはず。今現在は、新米騎士を育成する教官になっているとダイヤが言っていた。


「じゃあ!お父様!私に剣を教えて!」

「剣だと!?」

「うん。これから先、何があるかわらないからもし、何かあった時のために戦う術を身につきたい」


 そう言うと困った顔をして、目をそらし少しだけ考えたオニキスは、私の肩を握った。


「コハク。お前には、不幸体質と言う呪いがある。普通の人と同じように出来ないかも知れない。それでも、やりたいのか?」

「うん。お父様。女の子だって守られているばかりでは、無いよ。不安や恐怖で、ずっと立ち止まっていたら、呪いなんて打ち勝てないよ」


 そう言って、オニキスの手を握った。どんなに苦労しても良い。どんなに努力が必要だと言われても良い。私は、諦めない。


 私は、強く生きたい。諦めたく無い。諦め続けていた人生だったから、もうそんなのは、うんざりだから


「大丈夫。私は、大丈夫だよ」

「……解った。おまえがそこまで、言うなら教えよう。ただし、条件があるから、動きやすい服に着替えてからな」

「解った」



 そう言って私は、服を着替えに衣装部屋へ向かった。


 護身用でも良い。生きる為なら何だってやる。魔法だって…あれ?コハクの魔法って癒しの魔法。治癒魔法だったはず……戦いむきでは無い。それを言ったらダイヤもだけど……


 ………………あ……


 私は、この世界の攻撃魔法を知らない。この父親だと言うオニキスが使う魔法ですら知らないし、母親だと言うアクアマリンの魔法ですら知らない。魔法って何?あら?あららら?そう言われると訳が分からなくなったよ?


 取り敢えず落ち着け。また、ダイヤに心が騒がしいと言われるぞ。そうだ。服を着替えたから、オニキスがいる中庭に向かった。


「コハク。これを渡そう」


 そう言って渡されたのは、全体的な大きさは、30センチ。剣にしては、想像よりも遥かに短く野菜や果物を切るには、使いにくそう。そして、子供が持つには、ちょうど良いぐらいの短剣。ダガーと言う事ろか。


 “護身用”ね。


「剣や武器を持つと言う事は、おまえのその手で、生き物に殺生をする事になる。

 例え、動物だろうが、人だろうが、自分の命を守る為に命を奪う立場になるんだよ。それがおまえが出来るかい?」

「……」


 命を奪う。生きる為に奪う。解る。解っている。でも、私は、コハクを守らないとダメなんだ。


「……出来る」

「なら、私について来なさい」


 オニキスをついて行くと窓から見えた近くの森へと連れて来られた。もしかして、此処で、あの有名な漫画みたいな忍者みたいな修行をするのかな?いや、流石に違うよね。そもそも私が教わりたいのは、忍術ではなく剣術。変り身の術とか使いたいけど、影分身とか使いたいけど、違う。


「お父様、此処まで来て何をするの?」

「その剣を使って、動物を殺して、此処に持って来なさい。これが条件。剣の使い方は、それが出来たら教えるよ」


 思っていたのとなんか違う。いやいやそんな事思っては、ダメなのだけど、期待と違うと少し残念な気持ちになる。


 要するに狩をしろと言う事。殺生を教えようとしてるんだろう。教えるには、まずは、剣の使い方ではなく。命のやりとりか…確かに武器を使わしたくないからこうするよね。


「解った。どんなやり方でもこの剣を使っていたら良いよね?」

「ああ」


 オニキスは、頷き私の背中を押した。私は、短剣を持ち森の中へと入っていった。剣の使い方は、知らない。さてはて、どうやって動物を捕まえようか。いや、狩ろうか。


 鳥を狩ろうとするとやっぱり、弓が有効的。野ウサギなどの草食動物を狙おうとしても同様に弓が有利だ。彼は、音に敏感だから直ぐに逃げてしまう。罠を張ろうと考えても、仕掛けが甘い罠は、簡単にバレてしまう。


「かと言って、弓矢を作ろうとしても簡単に作れないしな…」


 いや、飛び道具を作るのではなく罠や仕掛けをかけるのではなくこの剣を使って、狩をやれと言っていた。


「飛び道具が無ければ、これを投げるのは、ありだろうか?」



 あ、ウサギを発見。しかもこのタイミングで…ラッキーだ。

 一か八か、剣を投げた。カランっと鈍い金属音を鳴らして、転がる剣。思ってたよりも勢いよく飛ばないし、距離も短い。


「……ッハ!」


 そうだった。この子5歳の幼女だった。パワーもスピードも無いのは、当たり前だ。いや、5歳の幼女をこんな所で、こんなの持たず父親もおかしいけれど……


「でも、此処で諦めない」


 私は、取り敢えず辺りを見てさっきの野ウサギが、いないか探してみた。しかし、10分、20分と探したが見つからない。


「そう簡単に見つかるわけないか……」


 なら、待つのも一つの方法。いや、待てよ。この服は、目立ちすぎなのでは?虎やシマウマ、タコ、虫の様に擬態するのは、天敵や獲物にバレない様にする為、だとすると、迷彩柄も同様にこう言った森や林道に溶け込む様になっている。


「これは、思ってたよりも厄介だ…」


 どうやら、相当にオニキスは、剣を使わせたくないようだ。確かに、何時どんな時に不幸体質スキルが発動するか解らない。


「……」


 不幸体質を利用するのは、どうだろうか?目立つ服、使い方も解らない剣、そして、私のスキルに魔法。そして、私の知識を全てを使って、いけば出来る(はず)


 原始人がマンモスを捕まえる時落とし穴を使ったと聞いたことがある。しかし、私の手には、剣のみ。剣以外の武器と言えば…そうか、あれがある。

 使えそうなちょうど良い太さの木の枝が無いだろうか?


「あった」


 この太さにこの重さなら平気だ。この枝の先を剣で下刷り鋭く尖らせたら即席の槍が完成。一様投げてみよう。


「よしよし。剣より飛んだ」


 剣より脆いが、尖った先をうまく急所に狙えば、確実に使える。後は、獲物だ。さっき見たいな野ウサギではなく大きくて狙いやすい生き物例えば鹿だ。


「いた」


 今度は、狙いを定めて、確実に正確に当たれよ。大きく振りかぶって勢いよく投げつけた。すると、即席の槍は、スパーンと鹿の急所と言うか生き物の急所である首に上手く刺さり一撃必殺の攻撃で、鹿は、死んだのだ。


「ごめんなさい。鹿くんには、罪が無いけれど、私たちが、残さずに肉を食べてあげるからね」


 これが、命を奪うという事。しかし、さっきのは、あまりにもうまく行き過ぎている。いくら何でも五歳児が投げた槍があんなに勢いよく飛ばない。それにさっき一度投げたのだら、動物を殺す殺傷能力は、無いはず……


 ……


 そいう事は、ヤツは、見ているな。さっきの一蓮を


「お父様。隠れてるのでしょ?出てきて」

「やっぱり見つかったか」


 そう言って、木陰からオニキスが、現れた。


「だって、急所にこの槍の勢いも飛距離も伸びているもの。そのぐらい解るよ」

「……コハク。生き物を殺してどう感じた…何を思った」


 どう感じたか、何を思ったっか…


「皆んな生きている。生きるのに必死で、誰も死にたくないと必死になっている。

 でも生きている限り生き物は、他の生き物の命を奪って、食べて生きている。草も虫も鳥もウサギもトカゲも皆んな…皆んな命を奪い奪われた生きている」


 残さずに食べる事が、彼らにとって、報いであり救いである。私たち人間もいつか食べられる側になる時もあるだろう。人間は、必ずの強者では無い。恐竜時代の様にいつか、人間時代も終結する。そして、言い伝えられる“愚かな人間と言う種族が世界を壊し自ら滅びの道へと選んだ”と


「コハク……やっぱり君は、賢いね。そう、我々は、生きている。生きる為に殺し、食する。生きる為に争いをする。お前は、その剣に何を込める。殺すためか?生きるためか?」

「……生きるためであり、誰かを救うため」


 私は、コハクを救う為に剣を握る。不幸体質を乗り越える為。明日を生きるため。この子にとって何が幸せなのか知るために剣を握る。


 オニキスは、走り出し私を突き飛ばした。突然の出来事に私は、草むらに倒れ込みオニキスを見た。オニキスの前には、2メートル近くある熊が、立っていた。どうやら私の後ろにいたて襲い掛かろうとしてしたのだろう。だから私を助ける為に突き飛ばした事になる。


「お父様!」


 彼は、剣を持っていない。いや、剣を持っていても倒せるかどうかなんて分からない。この熊は、近くで寝ていたのか、機嫌が悪いのか凶暴だ。


 私の不幸体質のせいで、熊を呼び寄せてしまったのだろう。この剣を投げればいい。でも恐怖で、足が竦んで動けない。


「動け、私の足。私なら出来る。出来る。大丈夫。怖くない。怖くない」


 怖くない。怖くない。怖いのは、熊ではない。何も出来ずにいる私だ。大切な人を失うことだ。動け。動け。立ち上がれ。


「コハク逃げるんだ」

「逃げない」


 逃げたらこの子のためにならない。絶対に後悔をする。何もせずに逃げるなんて、私は、出来ない。立ち上がれ。


 大きな熊の威嚇と攻撃を交わすオニキスだが、時間の問題だ。助けないと。助けないと。強く、強くそう思った瞬間、突然に持っていた剣が光り出した。


「え?何!?」


 何が起きたのだろう?でも、何故か馴染む光。これならイケる。


「いっけー!」


 私は、思いっきり熊に向けて投げつけた。すると剣は、即席の槍よりも早く、長く飛び熊を貫いた。


「コハクの魔法なのか……」

「……うん、でも私にもよく解らなくて……」


 オニキスは、木に刺さった剣を引き抜き私を見た。一瞬の出来事で、訳がわからない。コハクの魔法は、癒しの魔法を使うと言っていた。でも、さっきのは、違う。オニキスの魔法と似たようで、違う。オニキスが、槍に使った魔法は、風の魔法。槍に飛行能力を高めたのように感じた。しかし、さっきのは、まるで閃光。


「“ライトニング”と言う魔法だよ。コハク」


 まんまだった。オニキスは、私の頭を撫でてこう言った。


「まさかこの魔法を使えるようになるとは、ね。流石、私とアクアマリンの子供だよ。凄いね。

 私は、この魔法を元にさっき槍に使った魔法を作ったんだ。君が、この魔法を使える様になって、私は、誇らしいよ」


 “流石”“誇らしい”“凄い”私が子供の時に言われたかった言葉を始めて全て言われた。私は、言われなかった。どんなに頑張っても、才能がなかったから無駄だの言われ続けてきた。


「どうしたんだい?コハク。何処か痛いのか?」


 私は、知らずに涙を流していた。心配するオニキスを見て、初めて親の優しさを触れた様な気がした。


「何でもないよ。お父様こそ怪我は、無い?」

「大丈夫だよ。ほらな?」


 そう言って、クルリと回った。男性のと言うかおじさんの可憐な回転を見るのを初めて見たせいか少し面白い。


「コハク。テストは、クリアした。剣術を教えよう」

「でも、お父様は、森の外へ連れてきてと言っていたのに私は、連れてこられてないよ」

「そうだけど、お前が狩った獲物は、2メートル近くある熊。それを連れてこられるかい?」


 私は、熊を見て鹿を見た。鹿は、オニキスの魔法のお陰で、狩ることができた。実際に私が、狩ったのは、あの熊となる訳だ。2メートルの熊を子供が担いで、行けるわけがない。


 いや、寧ろ現時点で、熊と鹿をどうやって持って帰るのか解っていないのが、正しい。


 ゲームの様に鞄というどんな大きさでも入る不思議な収納ボックスが無ければ、現時点で不可能だ。


「リススカードがあれば話は、別だけど私は、渡していないからウサギぐらいの大きさにすると思っていたけどね」


 リススカードね。あーリススカード。そうかリススカードか。ってリススカードって何だよ。新しいワードが増えて、まじ、訳わからないだけど。こういう時スマホが欲しい。検索したい。


 オニキスは、ポケットからリス柄の可愛いカードとを取り出し鹿に向けた。


「リスお願い」


 そう言うとカードから水色の光が、鹿に照らし


「鹿を感知しました。食材ボックスに収納します」


 そうカードから声が聞こえたと思ったら光が消えた同時に鹿も消えた。続いて、熊も同じようにして、消えていった。


 何という画期的。収納した物は、何処に行ったのだろうか?どうやって、取り出すのだろうか?と言うかさっきまでのシリアスな展開は、何処に行ったのだろうか?


「明日から勉強にダンスレッスンにマナーレッスン。それに加え剣術の稽古が増えるけど、平気かい?」


 そうだった。この子は、普段からいろんなことをやっているまだ、子供なのにこんな事やっても良いのだろうかって思っちゃうよ。でも、私は、やって見せる。


「大丈夫。やって見せるよ。お父様」


 そう言うとオニキスは、優しくまた微笑み頭を撫でた。


「そうか。なら良いのだけど……帰るとするか」

「うん!」


 私は、オニキスの手を握り帰ることにした。


 今日一番に欲しかったのは、スマホとリススカードだなぁ〜

 カードが喋し、何処かに収納出来るなんて、魔法って感じだしゲーム感。リスって頬袋にパンパンに餌をためて巣に持ち帰ったり隠し場所に置いたり、するらしく、それは、天敵に見つからない場所でゆっくり食べたり冬眠の為に貯める、その他、子リスの為に持ち帰って帰ったりと考えられている。リススカードは、そう言った齧歯類の頬袋を例えて作られた物だろう。


 にしてもあのリススカードは、何でも使えるのだろうか?試してみたい。


「……」

「どうした?」

「何でもないよ」


 危なかった。気になりすぎて、カードを見つめすぎた……

 カードの事もだけど、魔法の事もだけど……私にとって今日は、人生初めてと言っても良い事が多い一日だった。


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