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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
十六本目! ター〇ネーター

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第八十九話 アンチマジックフェイズシフト筋肉



 後ろを何度も振り返りながら逃げるグレンとフィノ。


大男(あれ)は何なの!? どうしてあたしの攻撃が効かないの!?」


「あれは未来で開発されたアンドロイドですわ。金属の骨格を生きた細胞でおおっています。奴の肉体は『アンチマジックフェイズシフト筋肉』という特別なもので、あらゆる魔法と打撃を無効化してしまうのです。フィノ様に破壊されないことだけを目的に開発されました。ダメージを与えるには専用の武器が必要となります」


「そこまでしてどうしてあたしを狙ったりするの!?」


「未来の……世界では……はぁ、はぁ……」


 話しながら走るのがきつかったのか、息が上がってしまうグレン。身体的にはあまり強くないようだ。

 フィノはグレンを背負い、触手を使って民家の屋根に上がると、姿勢を低くして身を隠した。


「ここならそう簡単に見つからないし、誰かが来てもすぐ分かるよ。ゆっくり休んで」

「はぁ、はぁ、申し訳ありません……」


 少しだけ息を整えてから、グレンは小声で事態を説明する。


「……まだずっと先のことになりますが、いずれこの世界は大変な危機を迎えます。誰もが絶望し、明日を諦めかけた時、その危機に立ち向かう者たちが世界を救ってくださいました。後に英雄と呼ばれることになる少女たちをまとめ、導いたのが……賢者フィノ様、あなたなのです」


「あたしが?」


 嘘のような話だと思ったが、一度信じると決めた以上、疑うようなことは言わなかった。


「そうです。フィノ様こそが神の子にして、至上の愛で人類を救ってくださる母であると、私が生まれる頃には大勢の者たちが信じていますわ」


「そ、そうなんだ……」


「千年後の未来では『母なるフィノ教』は世界三大宗教の一つに数えられます。私の家族も皆フィノ様を信じおります。ビャクヤ家は代々あなたに忠誠を誓う聖戦士の家系なのです」


「へ、へ~。レンには言わない方がよさそうだね。嫌がると思うから」


「レン! あの恥知らずの悪魔の子め! ビャクヤ家の者としてフィノ様に仕えるどころか、失礼な言動を何度も何度も! 本来ならば身内の恥として真っ先に首をはねるところですが、あの若さにして信じられないほどの強さで……。すべては私の未熟、誠に申し訳ございません!」


 ごつっ! と屋根に額を当てて詫びるグレン。


「いや、気にしないで良いからね? っていうかレンはあれでいいよ」


 けっこーヤバイ奴っぽいことが分かって来たので控えめにフィノは言った。

 それと話題も戻した方がよさそうである。


「えっと、じゃあ、どうしてあたしが命を狙われるのかな? 偉い人扱いされてるんでしょ?」

「いえ、違います。命を狙われているわけではありません」


 グレンは首を横に振ってからその問いに答える。


「狙われているのは――フィノ様の『子種』なのです!」

「…………は?」


 聞き間違いかな? とそう思った。


「実はフィノ教も一枚岩ではないのです。いくつかの教派に分かれていて、中には過激な思想を持った者たちもいます。特に危険なのが『陰茎教会』を名乗る教派で、天使リリムの福音書に記された陰茎人たちこそが、フィノ様が望んだ理想の人の姿である。と解釈し、都市でふたなり化爆弾によるテロを行ったりだとか、百合作品に男を出した作者を暗殺するなどの反社会的活動をあなたの名の下に行っているのです」


「あああ……」


 頭を抱えてうつむいてしまうフィノ。

 意識が飛ばないようにこらえているのだ。

 だが地獄のような説明はまだ続く。


「我々はフィノ様の名誉をお守りするため、奴等と戦いを始めました。当時勢力を大幅に拡大していた陰茎教会との戦争は激しいものになりましたが、ついにはあと一歩、という所まで追い詰めることに成功したのです。ですが……」


「ですが?」


「奴等は最後の賭けに出ました。洗脳した科学者にタイムワープ装置を作らせたのです。狙いはあなたをふたなり化させ、過去に送ったアンドロイドを妊娠させること。神の子を手に入れれば他の教派を全て味方に付けることが出来ますからね。それどころか、フィノ教を完全に牛耳ることも可能でしょう」


「いや、おかしいでしょ!? あの、アンドロイドっていうの? おじさんだったよ!」


「あの最新型は肛門が人工子宮に繋がっていまして、IPS弾によってふたなり化させたフィノ様の――」


「ごめん、聞いといてなんだけど、これ以上聞きたくない……」


「そうですか」


 グレンは素直に言うことを聞いて、立ち上がると仮面をつけた。


「どうやら奴はこちらを見失ったようですね。フィノ様、愛でる会のアジトに行きましょう。この日のために大分前から準備をして来たのです」


 フィノは何もかも嫌になってしまったような顔で、


「うん……わかった」


 と、言った。



 ◇



 一方その頃。

 フィノを逃がしてしまったアンドロイドは、待ち伏せをするために彼女の家にやってきていた。


「うぇ~い、どちらさま~?」


 眠そうな顔で玄関を開けたのは、フィノの母親であるセスだ。


「フィノに会いたい」


 魅力的な低音ボイスで伝えるマッチョなアンドロイド。騒ぎにならないよう武器は大きな袋に隠して背負っている。

 彼の体を見て「おぉっ、強そうだなぁ」とつぶやいたセスは、


「フィノなら今出かけてるみたいだぞ。中で待ってるか?」


 と聞いた。

 無言でうなずくアンドロイド。


「分かった、どうぞ~」


 あっさりと侵入に成功。


「セス、なんだそのイカつい男は」


 通された居間でくつろいでいたのはリリムとルル。


「フィノに用事だってさ。いねーから入ってもらった」

「フィノに? 知り合いか?」


 怪しむ様な態度のリリム。


「いや、どんな関係かは知らないけど?」


 そういや聞いてなかったな、と振り向くセス。

 すると、優秀なコミュニケーション能力を持っている優秀なアンドロイドはしっかりと返事をした。


「俺はフィノ専用のラブドールだ。彼女の子を産めと命令されてきた」


 ごめん、ぜんぜん優秀じゃなかった。

 イカついマッチョのその言葉に、家人三人はピシりと固まった。


「……ど、どどど、どうしよう! フィノがなんかヤバイことやってるぞ!?」

「お前の育児放棄が原因だぞ! セス!」

「マジか!? そうか、あたしのせいかー!」


 めっちゃテンパる母親と使い魔。


「おのれフィノめ、いつになっても周りの女たちに手を出さんから妙だとは思っていたが、こういう男をしいたげるのが好みだったとは……。性癖の乱れは心の乱れだ。やはり我が正しい性教育をしてやるしかあるまい」


 親指の爪を噛みながら悔しがるリリム。

 唯一平常心を保っていたルルは、トトトっとアンドロイドに駆け寄ると、


「これやるから元気出せ」


 グッと親指を立てて、宝物であるグラサンを差し出した。

 彼はそれを受け取ると、


「助かる」


 そう言ってかける。

 マッチョにグラサン、やばいくらい似合っていた。

 

「そうだリリム! フィノをここに召喚出来ないのか!?」

「少し待て、話してみる」


 目をつむるリリム。

 彼女は離れていても家族と会話が出来る便利魔族なのである。


「……拒否された。今は帰れない事情があるそうだ。それと、危険な奴がここに来る可能性があるから気を付けろと言っていた」


 会話を聞いていたアンドロイドがピクっと反応した。


「危険な奴だ~? 来るなら来てみろって、返り討ちにしてやるよ。なぁルル?」

「うむ」


 ちょっとワクワクしてるセスとルル。

 実はもう来てる。


「……う~む」


 アゴに手を当ててアンドロイドを見つめるリリム。疑いの目。


「いや、フィノの話ではいきなり襲い掛かってくるような奴らしいからな。こいつは違うか」


 残念ながら見抜けなかった。

 肝心な時に役に立たない使い魔である。


「フィノが来ないのなら俺はもう帰る」

「そうか? メシくらい食ってけよ。あ、あたらしい家族になるかもしれないわけだし……さ」

「セス、お姉ちゃんいないから誰もご飯作れないよ」

「あっ、そっか」

「フィノの代わりに、仮面をつけた女のことを知らないか」

「愛でる会のことか? それならば、我は良く知っているが」

「頼む。居場所だけでもいい」


 見事な会話術でグレンの情報を聞き出していくアンドロイド。

 やはり、優秀なのである……!



 ◇



「う~ん、お母さんたち大丈夫かな」


 グレンに案内され、愛でる会のアジトに向かっていたフィノ。


「アンドロイドはあくまでラブドールとして開発されたものなので、あまり賢くありません。天使リリムたちならばそう心配することもないと思いますわ」


「そうだよね。どう見ても危ない人だったし」

「……そこまでですか? フィノ様はああいった男性が好みなのでは?」

「いや、そんなことないけど。どうして?」


「天使リリムの福音書には、フィノ様はモリモリのマッチョを痛めつけて(よろこ)ぶ特殊性癖の持ち主であった、と記されていたのですが……違いましたか? このことは未来では常識ですよ。陰茎教会もそれを知っていたからこそ、あのようなアンドロイドを送り込んできたのです」


「そんなわけないじゃない! リリムったらもう、変なことばっかり言って!」


 タイムパラドックスという面白い矛盾である。


「着きました。ここが私たちのアジトですわ」


 やって来たのは何の変哲もない本屋だった。


「ぶぇ~い、いらっしゃいませ~ですわ~……。ひゃっ!? フィ、フィノさん!? それにリーダーも!」


 店で掃除をしていた仮面の女の子はピンと背筋を伸ばした。


「ごきげんよう。フィノさんを神殿にご案内しますわ。道を開けなさい」

「はっ、はい」


 返事をした女の子は、壁に掛けてあったフィノの絵を取り外した。

 するとそこにはレバーがあり、引くと壁の一部が動いて地下へ続く階段が現れた。


「ご苦労様です。では、引き続き店番をお願いいたしますわね。怪しい人物が来たらすぐに報告を」


 グレンはフィノを連れ、階段を下りていく。


 ◇


「……よくこんな集まり作ったなぁ」


 地下通路を歩きながら、呆れたような感心したような、複雑な表情のフィノ。

 途中、いくつかあった部屋をチラリとのぞくと、仮面の集団が様々なことをやっていた。

 何かの儀式であったり、並んだ机で事務仕事をしていたり、新人教育だったり。

 もはや秘密結社である。

 

「元々は学院内で活動していたのですが、あの悪魔の子……レンの手によって壊滅させられてしまったのです。しかし、その程度でこの信仰心が折れることはありませんでした。一からメンバーを集め直し、今では町を裏から支配するまでに組織を大きくしたのです。これも全てはフィノ様を思えばこそ!」


 その才能をもう少しマシなことに使えばいいのに。


「グレンさんはずいぶん前からこの時代にいたんだね」


「私はフィノ様が学院に来た日にやって来ました。アンドロイドが送られた日を正確には掴めていなかったので、早めに来てあなたを監視する必要があったのです」


「そういうことか~」


 話しながら少し歩き、やがていくつもカギの付いた扉の前でグレンは止まる。


「私の部屋です。どうぞ、ここなら安全ですから」


 中に入った途端、ふわっと空気が暖かくなった。


「あれ? 地下室なのにあったかいね」

「未来からいろいろ持ち込んでいますので。そこの、大きなスライムのようなのに腰掛けてみてください」

「スライム?」


 青くてぐにぐにした謎の物体が確かにあった。

 ベッドのようなサイズと形。

 言われた通りに座ってみる。


「わ!?」


 ぐにゅっとお尻の形に潰れて、丁度いいサイズのソファーになった。

 温かくて、そのまま眠ってしまいたくなるほど気持ちがいい。


「すっご~い……」


 部屋は他にも見たことのない家具ばかりだ。


「フィノ様、(のど)は乾いていませんか?」


 グレンは沢山のポケットやベルトの付いた服に着替え、タンスから武器を取り出して並べている。


「だ、大丈夫、ありがとう。グレンさんは何やってるの?」


「戦闘準備です。さっきはアンドロイドの反応が急に現れ、慌てて出たので装備が不十分でした。今度こそブチ殺しますわ」


 ハンドガンやショットガン、手りゅう弾などが小さくなってグレンの服に収まっていく。


「敵の居場所が分かるの?」


「はい。今度はこちらから出向きます。陰茎教会も追加の武器をどんどん送り込んできているはずですから、アンドロイドそのものを早めに潰してしまわないといけません。町でふたなり化爆弾でも使われれば、歴史に与えるダメージが修正不可能な規模になってしまうので」


 それは最悪だな……とフィノは青くなった。

 どっかの使い魔だけは喜びそう。


「フィノ様はここでお待ちください。小一時間もいただければ――」


 その時だった。

 グレンの服の中からアラームが鳴り始める。


「まさか」

「どうしたの?」


 冷静にスマホのような機械を取り出して、何かを確認しているグレン。


「……奴が真っ直ぐここに近付いています。何故かは分かりませんが、私たちの居場所が知られているようです」


 教えちゃったからね。どっかの使い魔が。

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