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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
十六本目! ター〇ネーター

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第八十八話 酢の効能その3



『ほっほっほ、ケガはすっかり治っているようですね。触手の少女』

「あ、あなたは!」


 登校中のフィノの前に現れたのは、なんと! 黄金に輝くゴキブリであった!


「そんな、どうして……たしかにレンが倒したはずなのに……」


『ええ、間違いなく倒されました。ですが、死んだワケではない。それどころか、酢は死の(ふち)から(よみがえ)ったワタシの力をさらに高めてくれたのです』


 黄金のゴキブリは自信満々にそう言うが、以前戦った時のような、星をも震わせるほどの圧倒的な力は感じなかった。

 ハッタリであると判断したフィノは拳を構える。

 だが、ゴキはそんな人間の姿をあざ笑う。


『小さい』

「えっ!?」


 いつの間にか、ゴキはフィノの後ろにまわりこんでいた。


「ウソでしょ!? 音も気配もぜんぜんなかった……」


『すでに強さの次元が違うのですよ。戦闘能力が表に出ているようではまだまだ小さいのです』


 ゴキの声はただただ穏やかで、そこには圧倒的上位存在としての余裕があった。


『気配や見た目では分からないでしょうが、今のワタシは以前戦った時とは完全に別物だということです。ゴールデンゴキブリン2と言ったところでしょうか。戦闘力的には……通常のゴールデンゴキブリンの百倍以上は確実でしょうね。太陽系ですら一撃で破壊可能です。当然、冷気も克服(こくふく)していますよ』


「ひゃ、ひゃくばい……」


 詰みである。地球終わったね!


『そろそろこの小さな星を消し飛ばして、宇宙に出ようかと考えていましてね。あなたには挨拶をしておこうと思い、こうして現れたというワケです。では、さようなら、小さき者たちよ』


 人間に別れを告げたゴキは、空中に巨大な気のかたまりを作り出した。

 おそらく、本当にすべてを破壊してしまう威力を持つそれが、放心状態のフィノに向かってゆっくりと動き出した……その時!

 

 プシュゥーーっと白い煙がゴキに吹き付けられた。


『ほげえええええええ!? な、なんだこれはぁ!』


 ひっくり返って苦しそうにもがき始めるゴキ。


『く、くるしい、くるしー! だ、だれだ!? ワタシに何をしたぁ!?』

「よし、効果は十分ですね」


 滅殺ゴキ殺し、と書かれたスプレー缶をシュコシュコ振りながら歩いて来たのは、植物のようなデザインの仮面をつけた、謎の女。


「効かなければどうしようかと」


 仮面の女はスタスタとやってきて、のたうち回っているゴキのそばでスッと足をあげると……。


『あっ!』


 ぐしゃっと踏みつぶした。

 あっさり地球を救った仮面の女は足をぐりぐりとしながらフィノの方を向く。


「お怪我はありませんか?」

「う、うん、ありがとう」


 ぽかーんとしながらお礼を言うフィノ。まだ展開についていけてなかった。


「大変申し訳ありません。ゴールデンゴキブリンの復活はまだ三年以上も先だったはずなのですが、私が持ち込んだハチミツ黒酢を飲んだ影響で早まってしまったようなのです。おまけに大幅にパワーアップまでしていたようで……。通販サイトで星五の殺虫剤を買ってきておいて良かった」


 何の話をしているのか分からない。

 だんだん心が落ち着いてきて、あることに気が付いた。


「あれ? あなたは……」


 何度か見た覚えのある仮面。

 これは迷惑集団『フィノさんを愛でる会』のメンバーである証だ。


「はい、フィノさんには何度かお会いしていますわ。去年の年末にはお話までさせていただいて」

「あーっ!? そっか、あなたは!」


 声で思い出した。

 彼女は愛でる会のメンバーどころかリーダー的存在である。

 諸悪の根源と言っていいかもしれない。


「『フィノ様』、今日はあなたに大切なお話があって参りました」


 彼女はそう言うと、仮面を外し、素顔を見せた。


「私の名はグレン・ビャクヤ。千年以上先の未来から、この時代にやって来ていたのです」

「えええええええ!?」


 その顔は、レンにとてもよく似ていた。



 ◇



 フィノがゴキブリと遭遇する少し前。


「かーっ! やっぱレンちゃんってえっちな女の子だよなー!」


 路地裏に頭の悪そうなチンピラが三人。

 写真集を見ながら盛り上がっていた。


「あのトシでこんなにえっちなんだから、将来どうなっちまうんだろーなー」

「そりゃオメーあれだよ、エロテロリストだよ! なまらヤベーぞ!」

「まーーーじかーー!」


 とかなんとか頭の悪そうな話題で騒いでいると……。


「おい、なんだこの風?」


 ビュウっと何も無い所に風が集まっていく。

 そこにはポッカリと黒い球体のような穴が開き、やがて、凄まじい筋肉の大男が出現していた。

 しかも全裸である。フルチンマッチョ。


「おいおいマジかよ! なんだあのおっさん!」


 笑いながら謎の裸マッチョを取り囲むチンピラたち。

 どう見てもヤバイ奴なのにまったく警戒していないのは頭が悪いからである。


「よぉ、おっさん。カジノ帰りかぁ? ずいぶん涼しそうじゃん」


 チンピラはニタニタとしながら話しかけるがマッチョは無言。

 鉄のような真顔で彼等の恰好を見ていた。

 すると、


「君の着ている服が欲しい」


 一切感情のこもらない声でそう言った。


「……あ? テメー、調子乗ってんのかゴラァ! 舐めてんじゃねーぞ!」


 三人は順番にナイフを取り出し、マッチョに襲い掛かった!

 だが、


「ぶげ!」


 マッチョのパンチ一発でぶっ飛んだチンピラ。壁をぶち破って向こう側までいってしまった。


「だらぁ!」


 二人目がナイフで突き刺そうとしたが、失敗。鋼のような筋肉に弾かれ折れてしまった。


「なんで!? どうして!?」


 理不尽なまでの戦力差。

 二人目は首を掴まれ、見えなくなるほど遠くまで投げられてしまった。


「助けてくれ! 俺たちが悪かった!」


 最後の一人はあまりの恐怖に腰が抜けてしまい、立ち上がれない。


「分かった、服だな!? 脱ぐから! 今脱ぐから!」


 泣きながら服を脱ぐチンピラを、マッチョはまるで置物のように停止し、ただ待っていた。



 ◇



「未来から!? ていうかビャクヤってレンの」

「はい。私はレンの姉の孫の孫の孫の、まぁとにかくずっと先の子孫なのですわ」

「ウソみたいな話だけど……」

 

 グレンと名乗った彼女をフィノはまじまじと見る。


「やっぱりレンに似てるや」


 見た目の印象は大きくなったレンといった感じ。

 少なくとも血縁であるということは間違いなさそうだった。


「不思議な魔道具でゴキブリも倒しちゃったしね。うん、信じるよ、グレンさん」


 にぱっと笑うフィノ。

 その笑顔を見たグレンは、


「あぁ! 偉大なる神の子よ! あなたの愛に感謝いたしますわ!」


 涙を流しながらひざまずいた。


「ちょっと、恥ずかしいからやめてよ!」


 慌てて立ち上がらせる。周囲の視線が痛かった。


「ううう、申し訳ありません。あまりの感動でつい……。今日という日はこの命が尽きるまで私の宝物となりましょう」


 大げさな人だなぁとフィノは思った。


「そもそも、なんで未来から来たの?」


 さすがにあの変態集団を作るためにやって来たとは思えなかった。というか思いたくない。


「あなたをお守りするためです。フィノ様」

「守るって、何から?」

「それは――危ないっ!」


 話の途中、グレンは飛び掛かるようにフィノを押し倒した。

 直後、さっきまで二人がいた場所に激しい銃撃。


「なになに!? 何なの!?」

「おのれ、もう来たか! フィノ様、こちらですわ!」


 フィノの手を引き、近くの建物へ逃げ込んだグレン。


「あなたは狙われているのです! 裏口から逃げましょう!」

「待って。守ってもらわなきゃいけないほど、あたしは弱くないよ」


 グレンの手を払い、フィノは入り口の方を向き拳を構えた。


 やがて――ドス、ドス、と重い足音を響かせながら歩いて来たのは、ごっついごっつい大男である。

 硬く引き締まった顔立ち、服の上からでも分かるほどふくれ上がった筋肉。

 両手には、この世界に存在しないはずのマシンガン。


「あの人だね。ううん、人じゃない。何の感情も命も感じられないもん。だったら――遠慮はしない!」


「戦ってはいけません! フィノ様!」

「ラッシュヴァイン!」


 グレンの言葉を聞かずにフィノは魔法を発動。

 腕から緑の触手が伸びて大男に向かう。

 だが。


「あれ!?」


 届いた瞬間、バシュっと音がして触手はかき消されてしまった。


「魔法が効かない、だったら!」


 素早く接近したフィノ。

 軽く跳んで側頭部に蹴りを叩きこんだ。

 人外のパワーから放たれる必殺のハイキックである。

 どんな屈強な者でも耐えることは出来ない……はずなのだが。


「これでもダメなの!?」


 大男はビクともしていなかった。

 無言でマシンガンをフィノに向ける。


「フィノ様! 伏せてください!」


 服の中からショットガンを取り出したグレンは素早く発砲。

 ズドン! と重たい音が響き大男をダウンさせた。


「今ですわ!」

「う、うん」


 再びフィノの手を取って逃げ出したグレン。

 数秒後、何事もなかったかのようにむくりと起き上がる大男。

 真顔のまま武器を拾い、逃げる二人を追いかけていった。

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