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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
十四本目! ゴキだーーッ!!!

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第八十二話 エピローグ 事業拡大



 あの死闘から数日後。

 残った巨大ゴキブリンとそのタマゴを全て駆除したフィノは、自宅にて療養(りょうよう)中であった。


「フィーノーちゃーん」


 家の前で子供のような声を出しているのは、女医メリル。二十四歳。

 隣にはナース服を着てカバンを持つラミィの姿もあった。


「は~い」


 玄関の扉を開けて顔を出したフィノ。


往診(おうしん)に来ましたよ~♪」


 花が咲くように笑うメリル。


「はい。二人ともどうぞ」


 フィノも笑顔で応え、二人を家にあげた。


「体の調子はどうかなぁ? 痛いところとかない?」


 リビングでソファに座って話す三人。


「はい、全然大丈夫です。むしろ元気すぎるくらいで、ずっと家にいるのも退屈で困っちゃってて」


「そっか~。顔色も良さそうだし、この分だったら明日からは学校に行っても大丈夫かな。激しく体を動かす訓練だけはまだ待ってね」


「本当ですか? やった!」


 嬉しそうに小さくガッツポーズしたフィノ。


「セスさんの方はどうかな?」


 そう言われると、フィノはちょっとテンションを下げて、手のひらサイズの水晶玉を取り出した。

 札が張られた水晶玉の中にはなんと、小さくなったセスが入っていた。


『あー!? お前はメリル! 出せ! 今すぐあたしをここから出せ! こんにゃろー!』


 セスは中から水晶玉を壊そうと何度も殴ったりかじったりするがビクともしていなかった。

 ケガが治ったばかりなので安静にしていろ、といくら言っても聞かないので封印されていたのだ。


「うん。セスさんも調子良さそうだね! よかったぁ♪ もう札をはがしちゃってもいいよ」


 苦笑いで水晶玉の札をはがすフィノ。

 するとピシッとヒビが入って、光と共にセスがその場に解放された。


「ふーっ! やっと出られた……。くそっ、ニコニコしながらなんて恐ろしいことをする奴だ! ニケでもここまでしないぞ!」


「そう思うなら、怪我をしたり病気になった時には、ちゃんと医師の言うことを聞いて安静にしてくださいね」


「やだ! 飽きるもん。あー腹減った……メシ買ってこよ」


 頭をボリボリとかきながらセスは出て行ってしまった。


「母がすみません……」


 書類に何かを書き込んでいたメリルに謝るフィノ。


「いえいえ。もっともっと大変な人たちと普段付き合ってますから」


 笑顔で丁寧に返事をして、書類をラミィに渡すメリル。


「あ、フィノさん。わたし、お見舞いを持って来たんです」


 書類をカバンにしまったラミィ。

 何かを思い出したようにカバンの中からそれを取り出した。

 嫌な予感。


「はい! 『ツチノコの酢漬け』です! 精が付きますよ~」

「それはもうやめて!」


 フィノの反応は速かった。



 ◇



 フィノの家の屋上。

 軽い動きで上がってきたセスは、どかっと腰を下ろし、持って来た大きな布袋から水筒を取り出して、中身を一気に飲みほした。


「ぶはーっ! 生き返るなぁ!」


 最高の笑みでラミィに貰ったツチノコの酢漬けを取り出し、幸せそうにかぶりついた。


「お前は本当に美味そうにものを食べるな」

「んが?」


 白い翼で飛びながら、リリムも上がってきた。


「封印が解かれたと聞いたので探していた。少し話がある。付き合え」

「おぉ、いいぞ。お前も食えよ。三人分くらいは買って来たから」


 布袋から酒やつまみをいくつか取り出し並べ始めた。


「一人で食ってもメシはうまいけど、誰かと食えばさらにうまくなるからな!」


 陽気にニパっと笑うセス。

 リリムは真顔のまま小さなナイフとフォークを取り出し、つまみの肉を上手に切って食べた。


「ふむ、味付けが濃すぎるな」


「あっはっは。町で売ってる食い物ってのぁ大抵そんなモンだよ。人間らしくない生活で味覚がマヒしちゃってる奴が多いから、どんどんきつくなっていくんだ。あたしはこういうのも好きだけどな」


 グイっと酒を飲んでからセスは続きを口にする。


「で、話ってなんだ?」

「お前が持ち込んだ水差しについてだ」

「命の水差しか」


 少しだけ真面目な表情に変わるセス。


「気になったので調べていたら色々分かって来たのでな。持ち主であるお前には伝えておこうと思った」


 リリムは不思議な術を使い、その場に水差しを出現させた。


「相手に命を分け与えることの出来る魔道具、じゃないのか?」


「その解釈(かいしゃく)は間違っていないが正確でもない。いいか、これは使用者の魔力の根源、魂そのものを削って命を生み出す水に変換するものだ。その水を使えば、なるほど、確かにどんな怪我や病気からでも相手を救うことが出来るだろう。なにせ癒しているのではなく新たに生み出しているのだからな。生まれ変わらせている、と表現してもいいかもしれん」


「よく分かんねー。あたしの理解じゃまずいのか?」


「ああ不味いぞ。問題はその効力と使用者側の負担だ。ヒトを生まれ変わらせるほどの力を使えば確実にその魂は大きく消耗する。一度使うだけでも寿命は大きく縮まるはずだ。二度も使えば肉体に留まることすら難しくなるだろう。つまり死ぬということだ。しかし、逆に考えれば誰にでも二度は使える」


「へっ。なんだ、そんなことか」


 セスは鼻で笑ってブドウを口に含んだ。


「今更死ぬくらい怖かないさ。二回使えるならフィノとルルを助けてやれる。安心したくらいだぜ」


「問題の本質を分かっていないな。例えばそうだな、スズが(やまい)で死にかけていたとして、関係のない誰かを連れてきて、水差しを使うことを強要することも出来てしまうのだぞ」


 セスの返事はなかった。

 黙って口の中のものを咀嚼(そしゃく)している。


「これはヒトが持っていて良いような物ではない。必ず持て余すだろう。もしかすれば、社会に大きな混乱や戦争をもたらすことになるかもな。こんな物を扱えるほどヒトという種は、いや、我々は成熟していない。まったく、とんでもない魔道具を見つけて来たものだ。いったいどんな存在が創り出し、何のために使っていたのか」


「…………あたしがフィノとルルを助ける。それ以外の目的には絶対使わない。あたしが死んだら、お前がこの水差しを壊してくれ。それじゃダメか?」


「そうだな。それがいいかもしれん。では、お前以外の者が水差しを使えば壊れるように術を仕込んでおこう。魔力が欲しい。お前のものをよこせ」


「お、おぉ……またアレやんのか」


 ちょっと頬を赤らめたセスが目をつむった。

 リリムはそっと口付けをして魔力を奪う。

 そして水差しに触れ、聞き取れないほど小さな声で呪文を唱え始めた。


「――よし。これでいい。他の者が使おうとすれば我の術が発動し、水差しは自壊(じかい)を始めるだろう」


「助かる」


「うむ。それから、これを飲め」


 リリムが渡したのは植物のタネのようなものだった。


「なんだこりゃ?」


「我の魔力を固形化したものだ。飲めばその者の体内に根付き、どこにいても我と話が出来るようになる。居場所も分かる。フィノとルルにはすでに飲ませた」


「へー、すげーモン作るな」


「気味が悪いというなら無理強いはしないが」


「いや? いいけど」


 何の躊躇(ちゅうちょ)もなくぱくっと飲み込んだ。


「そうか。フィノが言うには、我々は家族という集まりなのだそうだ。我はこの繋がりを気に入っている。出来ることなら守りたい。ハイズという者との戦いも近いようだしな」


「リリム……」


「フィノやルルにもしものことがあっても、早まって水差しを使うのはやめておけ。他の方法があるやもしれん。まずは我に相談しろ。お前の命も、使わずに済むのならそれが良い」


「お前さぁ、ホントに良い奴だよな。なんか、まだ付き合い短いけどさ、お前が超優秀なのに魔王軍から追放されたって話、よく分かる気がするよ」


 握手を求めたセスから、リリムは目をそらして、


「我は女が苦しんだり、命を落としたりするのを見ていたくないだけだ」


 そう言うと、どこかへ飛んで行ってしまった。

 セスはその背をしばらく笑顔で見てから、再び腰を下ろして食事を再開した。



 ◇



 世の中なにが金になるか分からんな。

 そう思いながら、美少女アイドルのレンはステージ衣装を着て飲食店の倉庫に入った。


「レン、そこにいるよ、たくさん」


 少し下がって、ルルが業務用の大きなゴミ箱を指差した。


「分かった。おいアホ毛。しっかり撮っておけよ?」

「りょーかいッス! こんな美味しいバイト他に無いんで頑張るッスよー!」


 事務所が雇ったシュノセルが録画水晶をレンに向け始める。

 レンは長い髪をかき上げ、ちょっと芝居がかった動作でゴミ箱に近付くと、


「いくぞ! 悪いゴキブリめ! 私が退治してやる!」


 迫真の演技でルルが持ったカンペを読み、


「はぁぁぁぁぁあ!!!」


 必要以上に大きな声と動きで、まわし蹴りをゴミ箱にぶち込んだ。

 派手に吹っ飛んで転がったゴミ箱からは野菜の皮などと共に大量のゴキブリがうじゃうじゃーっと……。


「一匹たりとて逃がさん! 我が魔法受けてみよ! 凍てつく氷の魔手! アイス・ショーック!」


 高く跳んでから床に手をつき、ゴキブリの集団へ冷気の波動を放った。


「はい! カーットっスー!」


 その言葉を聞いた瞬間だらんと力を抜くレン。

 近くのタルに座って、不機嫌そうに足を組んだ。


「まったく、ワケの分からん商売だ」


 トングのような物を取り出して、凍ったゴキブリを片付けるシュノセルとルルを見ながらごちる。


 さてこれが何をやっているのかと言うと、レンの新たな仕事である。

 彼女がゴキブリ退治において素晴らしい能力を発揮していると知った事務所の社長が思いついたのだ。


 レンが害虫駆除に出向き(法外な料金で)、しかもその映像を撮影して売るという一石二鳥の商売であった。


「こんな金額でわざわざ私に依頼する者などいるか! しかもその映像を売るだと? 誰が買うんだ誰が!」


 最初に話を聞いた時のレンの言葉である。

 だが現実は違った。

 依頼は来た。

 しかも映像は売れた。

 それもかなり好評だった。


「レン、髪にゴキブリ付いてるよ」

「くーっ!」


 結果レンの仕事はさらに忙しくなり、彼女の収入と人気は以前にも増して上がっていくのだった――。


















 


 

~あとがき~


今回のお話ですけど、実は最初はもうちょっとおちゃらけた内容になる予定だったんですよ。

ゴキブリとかほんっっと雑魚で、「や~ん服の中にゴキブリが♡」みたいな、それこそファンタジーじゃなくても出来そうなノリのお話。


最後はあらゆる駆除アイテムを克服したスーパーゴキブリを相手にレンが「くーっ!」とか言いながら氷の魔法で何とかするみたいな。

あ、オチは結構近いか。


それがどうしてあんな事になったかっていうと、ゴキブリについてネットで調べまわってたらですね、気付いちまったんですよ。

ゴキブリという連中がいかに生物として凄まじいかって事に。


それまでは気持ち悪いだけの雑魚虫ってイメージだったのにいつの間にか人類をはるかに凌駕する超生命として畏怖の念を抱いていました。

夢にまでゴキブリ出て来たんですよ。恐怖でした。


そんで気が付いたら頭の中のフィノたちはもうボロボロにやられてしまっていました。

ゴールデンゴキブリに・・・。


今回の話はそんな感じで生まれた。というわけですね。

こんばんわ、作者です。


今回のお話を書いてる途中に「後はこんな事やろうかな」っていうイメージが頭の中ですっとまとまってきて、だんだん予定が出来てきました。


あと3エピソードくらいやったら最終回を書こうかな~って今は考えてます。

このペースですんなり進めば本格的に暑くなってくる頃には完結でしょうか。


うねうねマジックを書き始める時に「今回はいくらでも自由に話が作れる土台があるから百話くらいやるか~」なんてボケっと考えてたんですけど、本当にそれくらいの話数になりそうでよくここまで積み重ねたなと自分で感心してます。

ぶっちゃけキャラのおかげなんですけどね。


次回は、ルル、レン、ラミィのロリトリオがメインになる予定です。

最近気が付いたんですけどあんまり三人でいるシーン書けてないんですよね。

この三人メインの話はもう一回やりたいなってのがあったんで。


それではまたよろしくお願いします。

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