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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
十二本目! フィノとシェスカの年越し百合デート!

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第七十二話 エピローグ あけましておめでとうございます



 気絶したフィノを抱き抱えて町中を逃げ回ったシェスカ。


「はぁ、はぁ、逃げ切った……。ああいう戦いになるならシュノを連れて行くべきね」


 人の多い通りからは少し離れた公園にやって来た。

 ベンチにフィノを下ろし、自分も座り息を整える。


「ありがとう、シェスカ。助けられちゃったね」


 意識が戻ったフィノ。

 ゆったりとそう言って微笑んだ。


「と、当然でしょ。普段の借りを返しただけよ」


 飛び上がってしまいたいほど嬉しい気持ちを一生懸命に隠して、シェスカは表情と言葉をとがらせた。

 どうしてあんな態度を取ってしまうんだろう、といつも後で悩んでしまうのだが。


「強くなりたいって、夕方に言ってたけど、実際どんどん強くなってるよね、シェスカは。ちょっと前だったら、あたしを抱えて逃げるなんて無理だったと思うし」


「そりゃそうよ。あの変な世界で死にかけてからはずっとマジメに訓練してるんだから。もう半年くらい前でしょ、あの戦い」


「半年……かぁ。そういえばまだ一年も経ってないんだよね、この町に来てから。あまりにもいろんなことがありすぎて、もう何年もいるような気がしてた。あっという間だったなぁ」


 はーっと白い息をはき出すフィノ。


「……あんたの力ならさ、学院を卒業するのも時間の問題だと思うけど、その後どうするかとか決めてるワケ?」


 ずっと気になっていたことを聞いてみた。

 そんなことを聞いてどうするのか、と心の中で自分に問いかけながら。


「うん。実は決まってる」


 微笑んだまま答えるフィノ。


「ふ、ふ~ん。どうすんの? 山に帰る? それともこの町で働く?」


 だが、フィノの返事はシェスカの予想とはまるで違うものだった。


「冒険者として世界をまわる。エスニャさんに誘われてるんだ」


「……はぁ!? フィリスメイジの称号持ってそんなことするの!? あんた陰では未来の学院長って言われてんのよ!? 軍からスカウトだってくるだろうし、人望だってあるんだから将来的にはこの国で上に立つことだって――」

「でも、決めちゃったから」


 遠くを見つめるフィノの横顔を見て固まるシェスカ。

 フィノはずっと目の届くところに、いつでも会える場所に居てくれるのだと思っていた。

 そうであって、ほしかった。

 

「ほら、始まったよ。今年が終わるね……」


 楽し気なカウントダウンの声が通りの方から聞こえてくる。

 フィノはずっと遠くに見える時計塔から目を離さない。


「あたしはね、別に付き合いとかその場の勢いで決めたわけじゃないんだ。山で暮らしてた時から、いつか世界に出たいとは思ってた。そうしなきゃいけないような気までするんだよね。この町に来たのもあらかじめ決められていたことのような、そんな不思議な感覚があるの。みんなと出会ったことも、ハイズと戦うことも、たぶん、誰かの――」


 そこまで話して、フィノはうつむいているシェスカに気付いた。

 そしてすぐ何かを察して、優しい口調で語りかける。


「――シェスカ。良かったら、シェスカも一緒に行こうよ」


 冷え切ってしまった心に、ふぅっと命を吹き込む様な、温かな言葉。

 どうしてあなたは、いつも相手が一番欲しい言葉が分かるの?

 涙をこらえるシェスカを見て微笑んだフィノは、もう一度時計塔に目を移した。


「あ、目を離したら年が明けちゃったね」


 それからいつも通りの笑顔でにぱっと笑って。


「あけましておめでとう、シェスカ」


 新年を祝う声が、町中からあがっていた――。




 ◇ ◇ ◇




 二日後。


「はぁ~。静かだねぇ」


 自室で紅茶を飲んでいるフィノ。

 ルルはまだ眠っていて、リリムはスマホとにらめっこ中だ。


 町はいつもの生活に戻ったが、学院の授業はまだお休みというそこそこ特殊な日である。

 これが何を意味しているかと言えば、町でトラブルを起こす輩が減り、かつ学院内も平和であるというフィノにとってはようやく訪れた休日なのだ。


「まるで年寄りだな。思春期の娘とは思えん。散歩でもしてきたらどうだ? 部屋にこもっているのは不健康だぞ」


 画面を見ながら話し掛けて来たリリム。


「たまにはゆっくりさせてよ。リリムだってずっとその、すまほ? 見てるじゃない」


 明日になれば授業も再開されるので、今日にも生徒たちは寮に戻って来る。

 今の時間は本当に貴重だった。


「いつネットに繋がらなくなるか分からんからな。これでも必死だ」


 そんなやり取りをしていると、コンコンとノックの音が聞こえた。


「開いてますよ。どうぞ」


 フィノが声を出すと扉が開き、


「失礼する。新年の挨拶に来たぞ」

「お、お邪魔いたします」


 入って来たのはレンとエスニャだった。


「二人とも戻って来たんだ。でも珍しい組み合わせだね?」

「別に一緒にいたわけではない。私が来た時にはもうモヤシが部屋の前にいた。どうせツマランことを気にして何時間もドアを叩けずにいたんだろう」

「う……そ、それは……」


 図星ですーと態度で語ってしまうエスニャ。

 リリムやルルが出たらどうしようとずっと悩んでいた。


「リリム、もしかしてエスニャさんが来てるの分かってたから出るように言ったの?」

「うむ。知らんふりでうながしてみた。失敗したがな。こういう人見知りの娘も悪くないぞ、フィノ。お前色に染め上げてやれ」

「何言ってんの」


 呆れ顔のフィノ。

 そこにエスニャから小さなカバンが差し出された。


「あの、フィノさん。これ、私おすすめの筆記具セットです。その……普段大変お世話になっていますので……新年のご挨拶も兼ねて……」


「わぁ、ありがとうございます。でも、あたし字がヘタだからもったいないな。道具に負けちゃうや」

「で、で、でしたら私が今度お、教え――」

「おいモヤシ。私には何も無しか? 私とフィノをネタにしてろくでもない本を書いているのは分かっているんだぞ」

「ひえっ!?」


 それ以上は言わせねーよ、と割り込むレン。


「もう、レンったら意地悪しないの」

「ふっ、少しからかっただけだ」

 

 腕組みをして笑うレン。

 初めて会った頃とは別人のように穏やかな顔を見せるようになった。


「オイーっす。フィノっち~」


 と、そこへやって来たのは見てる方が寒くなってくるほど露出の多い恰好をしたミランジェだった。


「ミランジェも帰って来たんだ」

「あんな村にいつまでもいたら退屈で死んじゃうからさ~。あっ、これうちの村のハムね。うんまいよ~」

「ハム!?」


 ベッドからガバっと起きたルルに土産を渡すミランジェ。その場にいたレンとエスニャを見て「ん~」と複雑な顔をする。


「エスにゃん先輩とおチビも来てたんだ。最近フィノっちと二人きりになれる時間がぜんぜん無いな~」

「ほぉ、そういうことなら我に相談しろ。いくらでもその気になれる場と状況を用意してやるぞ」

「テメーは黙ってろクソ魔族! 二度と余計なマネするんじゃねーぞ!」


 急にギラっと目付きが鋭くなったミランジェ。おそらくもう一人の方だ。

 最近はよく表出するようになってきていた。


「フィノ! 訓練付き合ってよ。体術訓練。終わったら二人でご飯でも行きましょ」


 来客中だということなどお構いなしで部屋に入って来たシェスカ。

 年越しデート以来さらにぐいぐい来るようになっていた。


「う~っす。今年もよろしくな~。……ってすげぇ集まってんなぁ。なんか始めんのかぁ?」


 シェスカが開けた扉からとんがり帽子をかぶったヴァリンがのぞき込んできた。

 その肩にはスライムも乗っている。


静寂(せいじゃく)とは(はかな)いものだな」


 急に騒がしくなってしまった部屋を見て、フィノにボソッと言うリリム。


「……うん。でも、これはこれで楽しくて良いかな!」


 出会いがあれば別れがあるように、こうしたにぎやかな時間も永遠には続かない。

 それに対して、一人になることは何時だって出来るのだ。

 今この時がどれほど貴重で幸福な時間か、フィノの魂はよく分かっている。


「みんな! 今年も、これからも、ずっとよろしくね!」


 かけがえのない仲間たちに向かって、フィノは幸せいっぱいの笑顔を送った。

















~あとがき~


あけましておめでとうございます! 作者です。


予告した通り今回は作中でも年越しネタでした。


ふたなり星人回ではっちゃけすぎた直後に本筋部分の真面目な話を書くのもキツイなぁと思ってたんで今回はなるべく刺激の少ない内容で行こう! とか考えて事件とか起こさないように、かつあまりふざけ過ぎないように考えた結果が年末百合デートでした。


日常回っぽいものを書こうとして本当にそれっぽく出来たのは初めてでちょっと嬉しかったです。

ちゃっかり後の事件の仕込みも出来ましたしね。プリメーラのアホさに感謝。


さて、いよいよ始まりましたね2021年。

今年はうねうねマジックを完結させようと考えているんで、今までよりさらに気合いを入れて頑張りたいと思っています。

いろいろと同人活動に対するモチベーションが上がるような事が最近続いているんでメラメラ燃えてますよ。

今までやりたかったけど無理だった事が出来るかもしれないって状況になってきてるんで、ラノベを書き始めたばかりの頃の感覚が蘇ってます。たかが二年前ですが。

詳しい話は完結後にでも活動報告でだらだら書くと思います。


んで、ここからは物語とは関係ない話ですが、現実の方もかなり大変な状況になってますね。

人生は人の数だけあるので「俺は元々大変なんだよ」って人も当然いると思いますが、どんな問題であれ追い詰められてしまったらSOSを出すという事は忘れないでください。


探せば国の福祉制度やら民間の支援団体やらいろいろありますからね。

現代日本に生まれたのならメシ食ってあったかいトコで寝るくらいはみんな出来ると思うんで。

それでも悩みが尽きる事はなかなか無いかと思いますが、一緒に頑張って生きましょう。


そして次回は、前から言ってた通りスズとセス、フィノがメイン(ミランジェも出るかも)の本筋部分の話を進めたいな~とか考えています。

流れはだいたい頭の中でイメージが出来上がっているんで、何日かしたらさっそく書き始めようと思っています。

ボスキャラの顔見せなんかもやる予定なんで脳みそを真面目に切り替えて頑張ります。


ではまた~。

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