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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
一本目! 魔導士たちの学校

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第七話 準決勝開始、対戦相手は・・・



「こんの小娘が!」


 黒いとんがり帽子をかぶった魔導士が、人差し指を何度も振るう。

 ひと()ぎする毎に風の刃が生まれ、フィノに向かって飛んでいく。


「よっ! ほっ! と! やっ! いよっと!」


 右、左、(かが)んで、飛んで。フィノは風の刃を()い潜り進む。ちょっと楽しそう。


「くそっ! これならどうだ!」


 魔導士は両手を使い始めた。攻撃回数は単純に二倍だ。


「わわわ……」


 ちょっと焦りが見え始めたフィノ。

 危なっかしく動くが被弾することは無かった。

 徐々に距離を詰めて間合いに入る。


「ほいっ!」


 軽くビンタを打った。


「させるかっ!」


 魔導士は札のようなものを懐から取り出し、魔力を込める。

 すると札からは小さなゼリー状のモンスター、スライムが出現。

 出て来たスライムを荒っぽく掴むと、なんと盾に使った。


「ピギャー!」


 っと悲鳴をあげ、スライムは床を何度もバウンドしてダウン。くっきりとフィノの手形が付いている。


「ちっくしょー! よくもわたしのスラ吉を!」

「あっ……ごっ、ごめんなさい……」


 魔導士はフィノをキッとにらみつけた。

 盾にしたのは自分なのに。


「もう許さん! くらえっ! ソニックブーム!」


 魔導士は手のひらをフィノに向け魔法を発動。

 強力な衝撃波が轟音と共に発生。フィノを勢いよく吹き飛ばした。


「恨むなよ? わたしを怒らせたお前が……ええ!?」


 吹き飛び、壁に叩きつけられそうになったフィノだったが、空中で体勢を整えて壁に着地。

 そして両足に力を込めドンッ! と音を立て、壁を蹴り飛んだ。狙いは――魔導士。


「へっ!? やば――」


 吹き飛ばしたはずが、何倍もの威力で戻ってきてしまったフィノ。

 魔導士は焦って頭を動かすが、何をするにも時間が足りない。

 かっ飛んできたフィノはそのまま魔導士に体当たり、二人で地面を転げ回った。


「ふぅ! 今の魔法は避けられないなぁ。もっと威力があったら負けちゃってたよ」


 けろっとした顔で起き上がったフィノ。一方魔導士は目をぐるぐる回して気絶している。


「勝負あり。勝者三番……っと」


 腕を組んで観戦していた赤髪の教員は、手にした紙になにやら書き込んでいる。


「よぉ~し! これで予選終了! あ~疲れた……」


 今やっていたのは予選の最終試合。訓練場にはもう他の参加者の姿は無かった。

 自分で肩をもみながら、教員はフィノに近付いて来た。


「新入生で特待生のフィノだったよな? つえーなお前。このヴァリンって先輩はこれでも五回生だぜ」


 フィノに体当たりされ、目を回している魔導士にげしげしと蹴りを入れている。


「大切なパートナーである使い魔を身代わりにしやがるとはな。そんなこと教えた覚えはねーんだが……起きたらたっぷり説教してやる」

「あ、あの。その辺にしてあげてください」

「ん? いーんだよ。そんなヤワな奴じゃない……最近入学式やったろ? ヴァリンがやった時は十日間森で生き延びやがった。しぶとさは筋金入りだ」


 にかっとさわやかに笑って言う。


「それよりホラ。持っていきな。準決勝第一試合の切符だ。頑張れよ」


 カードのようなものを渡されたフィノ。


「今年の新入生はスゲーな。ベスト4に三人も残りやがった。あの小さいのと娼婦みてーなカッコしたのとは知り合いか?」

「しょっ!? ミ、ミランジェ――えと、背が高い方の子とは友達です。レンとは……これから友達になる予定かな」

「予定かぁ。へへっ、そりゃいいな!」


 教員はそう言ってヴァリンを抱えた。


「準決勝からは決闘場が舞台になるけど、場所は分かるか?」

「はい」

「そうか。じゃあオレの仕事はもう終わりだ。良い試合を見せてくれよ」


 二本指で敬礼のような挨拶をして、彼女はフィノの前から去っていった。





 訓練場を出たフィノは学園の敷地内を歩き、次の会場へと向かう。

 お腹がすいたので何か買おうかとも思ったが、準決勝まであまり時間が無いのでやめておいた。

 次の出番は準決勝第一試合で、対戦相手は知らない先輩。

 ミランジェとレン以外の戦いは良く見ていなかった為、どんな戦い方をする人なのかは分からない。

 多分どうにかなるだろう。

 と、フィノは考えている。


 準決勝第二試合はミランジェとレンだ。

 フィノとしてはミランジェを応援したいのだが、レンが負けてしまっては出場した意味が無くなってしまう。困ったものだ。


 小さな町のようにも見える学園内を歩いていると、円形の建物が見えて来た。

 ここが決勝トーナメントの舞台、決闘場である。

 大きく開いた入り口から中に入った。


 決闘場に入ってまず目についたのは、正面にある大きな扉。

 扉の手前には受付が用意されていて、長い行列が出来ていた。

 明らかに生徒でない者も並んでいる。フィリスの町からも見物客が来ているようだ。


 選手である自分も並んだ方が良いのだろうか。

 フィノが困っていると、近くの階段から慌ただしく駆け下りて来る人影が。


「フィノさ~ん! 聞きましたよ! 準決勝進出おめでとうございます!」

「上手くやったみたいね。ま、まぁ褒めてあげるわ」

「フィノさん……頑張ってください。あう……」


 現れたのはラキ、それと後から階段を下りてきた複数の女の子。

 入学式で助けたまわった同期たちだ。あれからはすっかり人気者。

 全員でフィノを囲み声を掛けて来る。

 

「対戦表見ましたよ! 決勝であのレンと当たるじゃないッスか! あいつに勝てるのはフィノさんくらいッス! 懲らしめてやってくださいよ!」

「あの子私のお気に入りの服破ったんだよ!? 信じられないよね~」

「あちしは隠してたおやつ食われた!!!」

「あのガキは私の可愛いポチをいじめたのヨ! なんとかしてちょうだい!」

「フィノちゃん疲れてなぁい? マッサージしてあげるね~。(スリスリ、さわさわ、ぺろっ)」


 皆がレンへの不満を口にする。

 先輩たちがいまいち頼りにならないことはすでに新入生全員が感じていた。

 それだけにフィノへの期待が大きくなる。


「う、うん。分かった。分かったから……ふ、服を脱がせようとするのはやめて……」


 赤面しつつ集団から逃れたフィノ。

 またリボンを付けられてしまった。


「その辺にしておけ~。戦う前からフィノがまいってしまうぞ」


 聞き覚えのある声がした。ぴょこぴょこと近付いて来たのは一匹の白い犬。


「ニケさ――うわっ……」


 現れたニケは体中にアクセサリーを付けられていた。ごちゃごちゃにデコられている。デコ犬。

 犯行グループは恐らく目の前の同期たち。


「フィノよ……気持ちは分かるが人の顔を見てそういう反応をするものではないぞ。傷付くからの……」

「あっ……ごめんなさい」


 人じゃなくて犬だよね~。などと話している声が聞こえてくるが無視して続ける。


「フィノ、わしはお主を待っておったんじゃ。控え室まで案内してやる。付いてこい」


 えー、もう行っちゃうの~。という声も聞こえたが、ニケはそれも無視して歩き始めた。





 フィノは受付にカードを見せ、奥の扉を通って決闘場の奥へと進む。


「レンはともかく、お主とミランジェもここまで勝ち上がるとはのー。今年は豊作じゃな」


 前を歩いていたニケが振り返らずに話し掛けて来た。


「わしはレンとは一度手を合わせておるが、お主ら二人の戦いを見るのは初めてじゃ。楽しみにしておるぞ。最初の試合がお主で、二回目がレンとミランジェだったかの」

「あたしが戦う先輩はどんな人なの?」

「なんじゃ。自分の対戦相手も知らんのか」

「えへへ……予選だとレンとミランジェばっかり見てた」


 ニケはうむ……と言って少し黙ってから口を開く。


「名前はトカナ、四回生じゃ。戦闘スタイルは……わしの口から言うわけにはいかんか……年齢はあれでも十七……じゃったかな。相当なアホ……いや、愉快(ゆかい)な娘でな。まぁ、見てて飽きることは無いの。他には――」


 話を聞くかぎり警戒はしなくてもよさそう。

 その後もニケからはスリーサイズだとかの情報しか出てこない。

 自分から質問した以上どうでもいいとも言えず、フィノは返答に困りながらニケの後をついて行く。

 少し歩くと控え室に到着した。狭い部屋だが個室である。


「ここがお主の控え室になる。出番まではしばらくここで待っておれ」

「うん。ありがとう。ニケさん」

「じゃあ、わしの役目はこれで終わりじゃな。あとは頑張れよ。学院長やエリザと観戦しとるからな」





 フィノが控え室でしばらく待機していると、部屋のドアがノックされた。

 現れたのは係の教員、出番が来たことを伝えに来た。

 返事をしてから部屋を出て、指示された通路を歩き、決戦の場へと向かう。

 そしてどんどん狭くなっていく通路を抜けた途端――


『さぁ! ついに選手の入場です! 東から現れたのはぁ! ラゴスの山から下りて来た! 五十年に一人の才能、フィノ選手だぁ! レア属性樹の魔法は炸裂なるか!?』


 爆音、だった。

 人の話し声がありえない音量で響いている。

 それと同時に凄まじい歓声がわき起こった。


(え? え? 何これ? だれが喋ってるの? なんであたしのこと知ってるの?)


 混乱しつつ周囲の様子を確認するフィノ。

 建物の中にいたはずだが、その広い空間に天井は無く、青空が見えていた。

 床も無く、地面には土がむき出しになっている。

 周りをぐるっと囲むのは高い壁、上には大量の観客席。ほとんどの席が埋まっていた。


 観客の中には同期たちの姿も見える。

 皆立ち上がってフィノの名を叫んでいた。


(す、すごい人……! どうしよう……ドキドキしてきた……)


 (うつむ)きながらフィノは中央付近まで歩く。ちょっと震えてる。


『続いて西から登場! 荒れ狂う炎の化身! トカナ選手! 歳は若いが魔導士歴は十年のベテランだ!』


 フィノが入って来た方角とは真逆の入り口。

 そこから歩いて来たのは、灰色の髪をした女の子。


(あれがトカナ先輩か……)


 背丈はフィノとそう変わらない。

 ド派手な赤いマントが目を引く。

 先端に赤い宝石が付いた杖を持っていた。

 緊張しているフィノとは対照的に、不敵な笑みを浮かべ肩で風を切って歩く。

 フィノの前までやってくると、大きく口を開けて話し始めた。


「キサマが妙ちくりんでトンチキな魔力性質を持っているとかいうフィノか。予選では誰が誰だか分からんかったぞ? 紛らわしいから名札でもつけておくのだ!!!」

「あっ……ハイ、ごめんなさい」

「だはははは!!! 物分かりの良い奴ではないか! だがバトルでは手を抜かんぞ? 血の海に沈むことを覚悟するがいい! ここの女医さんは腕が良いから安心するのだ!」

「そうなんですか」


 思いっきり胸を張って話すトカナ。ちょっと背伸びまでしてる。

 その姿がなんだか微笑ましくて、フィノの緊張は和らぐ。

 程なくして、再び巨大な声が響き始めた。


『ここからでは分かりませんが、両選手なにやら話をしていますねェ! それでは! そろそろ始めていきたいと思います! フィリス魔導学院闘魔武会、準決勝第一試合。フィノ対トカナ! いってみましょおおおお!!!』


 試合開始の声と共に、ひと際大きな歓声が観客席から聞こえて来た。





『準決勝第一試合が始まりましたところで、ここからは私、アルシー・メメメンの実況をお送りいたします。解説席に来ていただいたのは、当校の教員であり、フィノ選手の担当教員でもあるリンネ先生でェす!』


『コンニチハ……みんなのアイドル……リンネちゃんだよ……ぐふふ……』


『リンネ先生といえば、去年3800万ディーナのA級賞金首、切り裂きアルガスを捕らえた活躍が記憶に新しいですが、ズバリ! 賞金は何に使いましたか?』


『予備の……内臓……三十人分……です! うへ……へへ……』


『…………はい、ありがとうございましたー! 素敵なジョークですね! さぁ試合はすでに始まっていますよ!? トカナ選手の杖によるラッシュだぁ! フィノ選手は防戦一方! なかなか攻めない、いや攻められないのか!? それにしても杖ってこうやって使うんだっけ?』


『あれは……封炎杖(ふうえんじょう)……という杖で……古代人が作ったという……いにしえの魔道具のひとつ……炎の魔力を何十倍にも高めることが出来る……恐るべき兵器……』


『えっ!? そんな凄い杖だったんですか! それをどうしてトカナ選手が?』


『さぁね……一度取り上げて調べたんだけど……並み以上の術者があれを使えば……増大しすぎた炎を扱い切れず……自身の魔力で焼け死ぬことになる……極端に魔力の薄い……トカナちゃんだからこそ扱える武器なんだよね……』


『…………そんな危険なモノを生徒に返したんですか?』


『だって……泣いちゃったから……』


『はい、一部では魔族ではないかという疑惑もかけられているリンネ先生ですが、とても優しい先生でしたね! おっ!? 両選手一旦距離を取り、何やら話し込んでいます! フィノ選手の反撃が見られるか!? これは目が離せませーん!!!』





「ぜはぁ……ぜはぁ……うぐぐ……も、もう腕が上がらないのだ……明日筋肉痛確定なのだ……」

「だ、大丈夫ですか……?」


 肩で大きく呼吸しているトカナ、フィノは恐る恐る声を掛けた。


「っくー! 新入生だと思って手加減してやればいい気になりおってー! もう怒ったのだ! 怒髪が伸びすぎて世界を一周する勢いなのだ!」

(戦う前に手は抜かないって言ったのに……)


 トカナは持っていた杖に魔力を込め始めた。


「むむむ~~~~……炎よ……我に従い武器となれ……」

(今攻撃したら……あとで怒られるかなぁ……)


 杖を高く掲げ、トカナがハァ! と気合を入れると、杖は燃え盛る炎に包まれた。

 炎は徐々に形を変えていき、杖を持ち手とした炎の斧を作り上げた。


「ビッグ・フレイム・アーックス! 食らうがいい!」


 ドタドタと走って来たトカナ、フィノは彼女を高速のビンタで迎え撃った。

 ビンタはトカナの頬にヒット。ムチで何かを叩くような破裂音。


「あぎゃあああああ!!!」


 杖を落とし、絶叫と共に転がっていくトカナ。


「おうううう……い、いたいのだ……めっちゃくちゃいたいのだ……」


 ほっぺたを抑えながらよろよろと立ち上がる。


「す、凄い……あたしのビンタで気絶しないなんて……」


 驚愕(きょうがく)しながらも構えを取ったフィノ。

 ここまでタフな相手は初めてだ。

 この人を甘く見るわけにはいかない。

 次はもっと強く打たねば! という顔になる。


「ま……待て……」


 ぷるぷると震える手の平を突き出して待ったをかけるトカナ。


「どうしたんですか?」

「ちょいと用事を思い出した。今日のところはキサマに勝ちを譲ってやろう。さらばだ!」


 言った直後にトカナは走り出す。

 さっと杖を拾うと、入場してきた入り口からあっという間に去っていった。

 しーんと静まり返る会場。


『…………トカナ選手、逃亡……ですかね?』


 実況のアルシーも困惑。


『ト、トカナ選手を試合放棄とみなし、フィノ選手の勝利とします! 決勝進出おめでとうございまーす!』


 ぽかーんとしているフィノ。観客たちからは微妙な拍手が。


『次はミランジェ選手とレン選手による準決勝第二試合を行います。フィノ選手は控え室にてしばらくおまちくださ~い』

「は、はいっ」


 返事をしてからフィノは小走りで入り口に向かった。

 通路に戻り、控え室を目指し歩き始めた。





(とりあえず、何とかなったな。あとはミランジェとレンの試合か……)


 小さく息をつくフィノ。

 出来れば次の試合を観戦したいのだが、控え室を抜け出しても怒られないだろうか?

 そんなことを考えながら歩いていると、前方からは別の足音が聞こえてくる。


 前からやって来たのは……ミランジェだった。

 二人の視線が交わり、共に小さく微笑む。

 フィノは胸の前で握りこぶしを作って見せた。

 自分の勝利と、応援の気持ちを伝えるサイン。

 それを見たミランジェの魔力が熱く(たかぶ)ったのを、彼女とすれ違いながら、フィノは強く感じとっていた。

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