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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
十二本目! フィノとシェスカの年越し百合デート!

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第六十九話 変態おじさんに聖なる微笑み



「おーい、フィノ。こっちだこっち」

「はーい!」


 寒空の下、古くて大きなタンスを担いで歩くフィノ。


「ここに置いといてくれ。あとでまとめて焼くからさ」


 指示を出しているのはジズ。

 よく男性に間違えられているイケメン先生だ。


「よいしょっと」


 普通なら数人がかりで運ぶタンスを軽々と運ぶ。


「いや~助かるぜ。教員とは言え腕力はピンキリだからな。リンネの奴もこういう時だけは頼りにならねーし」


 ちょっと意地悪そうに笑ったジズ。

 その視線の先では、何枚も服を着こんでモコモコになったリンネがそれでも寒そうにゴミ拾いをしていた。

 なんかブツブツ言いながらすんごくイヤそうに作業している。


「ははは……」


 反応に困って愛想笑いしたフィノの隣に、両手に袋を持ったシェスカがやって来た。


「ジズ、ゴミ集めて来たわよ」

「おう、ごくろーさん。そこのタンスの辺りにぶちまけといてくれ」


 今日はこの年最後の日。

 フィリス魔導学院も年末年始は授業がお休みである。

 寮に入っている生徒も帰省し、新年を家族と祝うのだ。


「フィ、フィノ……。終わったら町へ行かない? 年越しのお祭り……」

「うん、いいよ」


 ただまぁ、家出同然で学院にやって来た生徒も多く、フィノやシェスカのように帰らない者はこうして大掃除を手伝わされている。


「ほら、二人とも。一服(いっぷく)入れてくれ。あったまるぞ」


 ジズが手渡してきたのはホットワイン。

 コップからは暖かそうな湯気と甘い香りが立ち昇っている。

 

「わぁ、いただきます」

「美味しいわね、コレ……」


 と二人が飲んでいたところに、普段学院では見かけない女性が近付いて来た。


「フィノ殿。少しいいか?」

「あなたは……」


 赤い軍服の上に軽鎧。

 槍を背負ってハキハキと喋る見るからに堅物そうな女性だった。


「なんだ、役立たず警備隊の隊長じゃない」

「ぐはっ!」


 シェスカのチクチク言葉が見事に彼女の胸をえぐった。


「ばっ、ばっかやろ!」

「いたぁ!?」


 すっ飛んできたジズがごちん☆とゲンコツ。


「すいません! 後でよく言って聞かせます!」

「い、いえ。信頼がないのは私の努力不足ですから」


 フィリス警備隊。

 治安維持を目的とした組織なのだがあんまり評判がよろしくない。

 町に入り込んだモンスターには負けるし怪盗は逃がすしで最近は特にひどい言われようだった。


「それで、レイリア隊長。あたしに何か用ですか?」


 ちなみにフィノは警備隊と結構親しい。

 町のトラブルにもしょっちゅう首を突っ込んでいるのでいつの間にか仲良くなっていた。


「ああ、いや、そんなに大した話でもないんだ。楽にしてくれ」


 隊長はジズから渡されたホットワインを一口飲んで続ける。


「今日が何の日かは分かるな?」

「それはまぁ」

「ん、町は今年最後の祭りでにぎわっている。夜にはカウントダウンもあるからな。我々も今夜は大忙しだ」


 盛り上がった酔っ払いがケンカを始めたり、裸で川に飛び込んだりするので祭りの日はと~っても大変なのだ。

 毎年警備隊は朝まで気が抜けない。

 

「実は最近になって犯罪が増えていてな。調べてみると、君が町にやってきてから前科者がよく移住してきているということが分かった」


「ちょっと待ちなさいよ。フィノのせいで犯罪者が増えたって言うつもり?」


 当のフィノは黙ってワインを飲みながら聞いている。


「レンとの戦いを見てこの町に来た、と(みな)口にするからな」


「仮にそうだとしてもフィノに問題が無いのは分かるでしょ。そんなことわざわざ言いに来たのなら帰りなさいよ。不愉快だわ」


 不機嫌そうにくいっとワインを口に含んだシェスカ。


「そんな連中に声をかけてまわっている集団がいるのだよ。『フィノさんを愛でる会』とか名乗ってな」

「「ブフゥーーー!?」」


 完璧と言っていいくらいピッタリ同じタイミングでワインをふき出したフィノとシェスカ。

 ホットな赤い霧が寒空の下に輝いた!


「けほっ、けほっ……。あっ、あの、あたしは――」

「いや分かっている。君が関わっていないことくらいは分かっているんだ」


 珍しく取り乱したフィノ。

 あの迷惑集団はレンの手によって壊滅したと思っていたので不意打ちだった。


「まぁなんだ。犯罪とは言っても町中で妙な儀式を始めるとかその程度ではあるからな。通報がなければ積極的に捕らえることまではしていない。ただ、犯罪が増加傾向にあるこの町で年越しともなれば何が起こっても不思議ではない。我々だけで対処するのは当然の話だが、もしかしたら君に協力を頼むこともあるかもしれない。それを言いに来たのだ」


 要は変態が増えてて怖いから連中に人気のフィノを味方にしておきたいということである。


「分かりました。あたしも今日は町に出る予定だったんで、何かあったらすぐに動きますね」

「ありがとう。感謝する」


 フィノたちにピシっと敬礼をしてから隊長は去っていった。


「な、なんか大変だな。フィノ……」


 気の毒そうなジズ。


「はい……。よし、早めに掃除終わらせて準備しようかな」

「そういうことならもう行っていいぞ。掃除は別に強制参加じゃないし、今年は人手も十分だからな」


 そう言ってチラッと別の方に目をやると、


「あっはぁ♡ ジ~ズ~! 粗大ゴミ持ってきたわよ~ん♪」


 笑顔でベッドを担いできた教員のユミルと、


「ぐおお~! ド根性ォォォ!」


 真っ赤な顔で同じ物をカメのようになって運んでいるエリザに、


「頑張れエリザ、ファイト一発」


 涼しい顔で同じ物を二つ持ち上げているルルがやって来た。


「どうしたエリザ、もう限界か? 辛いのなら我の術で運んでやってもいいのだぞ? お前の魔力を渡すのが条件だがな。さぁ、我と口付けをしろ」


 その周りをハエのように飛び回っているリリムもセットで。

 彼女たちを見たジズはフィノの方に向き直り、「な?」と言ってさわやかな笑顔を見せた。


「あはは、たしかにあたしがいなくても大丈夫かな。じゃあ、行こっか、シェスカ」

「え、ええ」


 フィノは嬉しそうににぱっと笑い、シェスカの手を取って歩き始めた。



 ◇



「ふひひひ……フィノちゃん。キミ、フィノちゃんでしょ? 可愛い子連れちゃってデートかな? うらやまし~ね~」


 着替えて町に出たフィノとシェスカの前に、突如バーコード頭のおっさんが立ちはだかった。

 マントで体を隠しているが頭とすね毛だらけの足が寒そうである。

 おっさんは怪しく笑いながらマントに手をかけると……。


「ふひ! ふひ! 生まれたままの僕を見てくれぇええええ!!!」

「ラッシュヴァイン!」


 マントの下になにも着ていないことを瞬時に見抜いたフィノが魔法を発動。

 緑色の触手が何本も腕から伸び、マントごとおっさんをがんじがらめに拘束した。


「よし、危なかった」


 陰毛の一本すら見せることが出来ず倒れたおっさん。

 驚愕の表情で口をパクパクさせていた。


「ば……ばかな……そんな……こ、こんなことが……」


 幼い頃から成功を重ね、露出性癖に目覚めてからは闇の世界でも名を上げ続け、表と裏、両方の社会からエリートとして認められてきた彼にとって初めての、生まれて初めての、『失敗』であった……!


「凄い……触手が早過ぎてぜんぜん見えなかったわ……」


 つぶやきながらガッ! とおっさんの頭を踏んづけたシェスカ。

 挫折中だったおっさんの顔がちょっと嬉しそうになった。


「ごめんなさーい! どなたか、警備隊の人を呼んできてもらえませんか?」


 大きな声を出してから「ふぅ」と一息つくフィノ。


「こういう人はだいたいレンのところに行くんだけどなぁ」


 困ったようにつぶやいた。

 そのレンは現在帰省中で町にいないのだ。

 レンの名を聞いたおっさんは倒れたままシクシクと泣き始めた。


「ううう……レンちゃんに会いたいよ。彼女は僕のすべてをゴミのように見下して……最後には町の外まで吹っ飛ぶような蹴りをくれるんだ……。通報したりもしなかった。これで僕の人生はもう終わりだ……」


「だまれっ! ゴミっ! あんたはとっくに終わってんのよっ!」

「はうっ!」


 シェスカは踏んづけていた足をぐりぃっとひねった。

 スカートの中がちょっと見えたようでおっさんの頬がポッと赤くなった。


「シェスカ。あんまり乱暴しちゃ駄目だよ」


 足をどけさせたフィノ。

 おっさんの前でしゃがみ、なでるようにバーコード頭の汚れを落としながら話す。


「おじさん。レンや町の人を困らせるのは良くないよ。檻の中で反省したら、今度は困ってる人を笑顔にしてあげてくださいね」


 そう言って、優しく微笑んだ。

 おじさんはその笑顔に釘付けになりながらも、こくんとうなづいた。

 後に、獄中で彼は語る。


「ええ、あの瞬間、私は確かに生まれ変わったのです。あの少女……いえ、フィノ様の笑顔はとても暖かく、神聖な光に満ちておられました。今では心を改め、彼女のお言葉通り、レンちゃんや町の人々を喜ばせる方法を考えております。ここを出ることが出来たら、露出とフィノ様の素晴らしさを伝える活動をしたいですね! まずはレンちゃんの事務所に――」


 その後、彼がフィノさんを愛でる会に参加したことは、書くまでも無いことであろう――。

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