第六十四話 ペニス認証
ここは、宇宙。
いきなり何言ってんだ? って思うかもしれないがイメージしてみてほしい。
巨大な青い星の前に宇宙船がぽっかりと浮かんでいるのだ。
その宇宙船のブリッジから、感激の表情で星を見下ろす女の子がいた。
「船長! 着きましたよ! 地球ですよ! 地球ぅ!」
全身タイツのような宇宙服にメガネ。
股間の所だけ不自然にもっこりしている彼女は船長席の女を見てそう言った。
「うっせーぞ小林ィ! 今いそがしいからちょ、ちょっと黙ってて!」
船長席にいた下着姿の女は(やはり何故か股間はもっこりしている)マウスとキーボードをカチャカチャしながら目の前に浮かんだ画面に集中している。
「ダウン取ったダウン取ったダウン取った! お前らつめるからついてこい! あっ、ガストラップ……あーあーあー……」
チーンと音がして画面に部隊全滅と表示された。
「はー味方つっかえねーマジで……。なんであそこでウルトはかないのよ~、もう一人にいたってはボイチャ切ってるし。ID控えたからなあいつら。晒しスレに晒してやろ。え~と……罪状、ボイチャ無視……と」
「船長!」
メガネの少女、小林は大きな声で詰め寄った。
「ん? なんだっけ?」
だらしない下着姿の女はやっと画面から目を離した。
「地球に着いたんですよ!」
「……マジ? はぁ~」
船長は露骨に嫌な顔をしてから立ち上がり、脱ぎ捨ててあった宇宙服にだらだらと着替える。
そしてちょっと上を向くと、
「ドラちゃ~ん。ここが本物の地球である可能性は?」
と誰もいない所を見て聞いた。
数秒後。
『こんにちは。僕ドラちゃんです。今計算してみたけど、この惑星は99.99996%の確率でこの宇宙の地球だと思うよ』
返事をしたのはどこからともなく聞こえてくる機械音声。
「ああそうなんだ。よくこんな早く見つけたわね。半年くらいは何もしなくて良いかと思ったけど最悪だわ。ま、いいや。調査するから他の船員集めてくれる?」
『分かったよ』
会話はそこで終わり、船長は席に戻るとサンドイッチを取り出し食べ始めた。
「う~ん……ポテトサラダとか邪道だと思ってたけど悪かないわね」
「船長、調査班はどのように選ぶのですか?」
鼻息を荒くして聞く小林、両手をぐっと握っている。
「今考えてた~。本当は五人必要なんだけど、二人くらいでいいかな。みんな嫌がるだろうし。ったくもう、こんな仕事AIにやらせなさいよね~。人間様の仕事じゃないわ。本気だしゃ調査用ドローンくらい簡単に作れるでしょうに」
「船長! 差別発言ですよそれ!」
「はいはい」
「もう! ドラちゃんも私たちと同じクルーなんですからね」
『…………』
小林がプリプリ怒っていると、ウイーンと自動で扉が開き女たちがやって来た……皆すんごい嫌そうな顔で。
あとやっぱ股間もっこり。
「船長、私彼女とお話中だったんですけど」
「あんのぉ~、今日調子悪いんで調査に行くのはちょっと……」
「今! SNK48の! ライブ中継見てたんですよ! こんな時に呼び出すとか非常識でしょ! 訴えるぞ!」
「小林ちゃあ~ん、そろそろライン教えてよ~」
大勢でぎゃいぎゃいワーワーと文句を言い始めた。
『…………連れて来たよ』
感情の無い機械音声がまた聞こえた。
船長は席ごとクルっと向きを変えて話し始めた。
「うるっさいわね仕事なんだから仕方ないでしょーが! ドラちゃんから聞いたと思うけど、地球に着いたから調査班を選ぶわよ。テキトーに二人一組作っといてね~」
ええ~? と皆が渋い顔をするなか、船長は側にあった機械を操作して何もない空間に大きな画面を表示させた。
「船長! 大変です! 私新人なので友達がいません!」
「私もいないから安心しろ。お前は私と組むんだよ小林」
船長がさらに機械をいじると、画面には派手な音楽と共にカッコいいロボットが表示された。
「機動戦士ギャンダム エクストラVSマキシマムブーストONよ!!! これで決めるわ!」
起動したのは二対二の対戦ゲームだ。
通称マキオン。
「ルールは簡単。勝った組から抜けていく負け上がりトーナメントよ! 最後まで負け続けた二人が調査班。分かりやすいでしょ?」
つまり罰ゲームである。
『ちょっと待って。メンバーの選び方は船長の自由だけど、調査は最低五人以上で行うと社の――』
「ドラちゃ~ん。そんなこと言ってたら現場はまわらないワケ、分かる? 君が最優先しないといけないのはこの任務を無事に終わらせることでしょ。私たちがここで機嫌を損ねたら失敗で終わるわよ、いいの?」
『………………分かったよ』
こいつを船長にした方にも問題はある。
というわけで、宇宙船の中で女の子たちのゲーム大会は始まったのだ!
「ムキャー! 相方ァ! 前出ろって言ってんだろ前!」
「脳死で突っ込むのやめろって言ってんだろがチンパン野郎! お前の頭はハッピーセットかよ!」
「ホヒホヒホヒホヒ!(笑い声)」
「ストーップ! 灰皿投げんの禁止ー! ストーップ!」
とまぁこんな感じで楽しく大会が進行していった結果。
「小林ィ! チャンスだ! 当てろー!」
「うわあああ! 当たれ当たれ! ……あっ」
ピンク色のビームが直撃し爆散した小林機。
結局、船長と小林のチームは最後まで勝つことが出来なかった。
「いかにもオタクですって外見してるから組んだのにヤバいくらいのエイム音痴……」
「ひどい! 船長は私のことそんな風に見てたんですか!」
対戦相手二人は決着がつくとさっさと部屋に戻ってしまった。
ブリッジに残ったのは小林と船長の二人である。
「はぁ~あ……私と小林で調査に行くか……。ドラちゃん、調査艇の準備よろ~」
『了解――。ハイ、準備できたよ。船長、最終ロックの解除をお願い』
「ほいほーい」
返事をした船長は席の隣から受話器でも取るかのように筒状の装置を持ち上げた。
「これ毎回緊張するのよね~」
片手で宇宙服の股間部分についていたジッパーをシュイッと下ろし……なんと! 中からチン〇をポロンと取り出した!
さらにソレを筒状の装置にセット!!!
「ぅおおおぅッッ!」
電子音を発しながら七色に光る筒。
『――オーケー。船長、玉無竿理本人と確認、調査艇の最終ロック解除』
な、なんと! 彼女たちはチン〇の生えたふたなり星人だったのだ!
「ああ~~毎回終わった後に縮むのよね~これ。じゃ、行くよ~小林」
「了解ですッ! 船長!」
恐るべきふたなり星人だったのだ……!
◇
一方こちらは地上。
フィリス魔導学院の学生寮、管理人室である。
「はぅぅ、遅刻しちゃう遅刻しちゃう……」
後ろで束ねた髪を揺らしながら、部屋の中を慌ただしく行ったり来たりしている少女がいた。
彼女の名はラミィ。
歳は十二、優しく大人しい性格で趣味は料理というなんとも普通な女の子である。
普通すぎるせいで魔導学院では逆に浮くくらいだ。
幼い頃に両親を亡くした彼女は遠い親戚である学院長に引き取られ、今では寮の管理人として学院の仕事を任されている。
と言っても簡単な受付や掃除くらいだが。
「慌てずとも既に遅刻だ。ケガをせんように少し落ち着け」
そう言ってずずっとお茶をすすったのは言わずと知れたスーパーアイドル、レンだ。
やたら偉そうにしているが身長はラミィより少しちっちゃい。
「しかし珍しいな、貴様が寝過ごすとは」
大急ぎで弁当を用意しているラミィを見てぽつりと。
今日はたまたまレンとラミィの休みが重なったので、ルルと三人で芝居でも観に行こうと約束していたのだが、昨晩遅くまで弁当の仕込みをしていたラミィは寝坊してしまったのだ。
飽きるから、と言ってルルは先に行ってしまっていた。
「できたー!」
荷物を全てリュックに入れて背負うラミィ。
出かける前からもう息があがってしまっている。
「終わったか」
「うん、ごめんなさいレンちゃ――」
急いで駆け寄ったためつまずいてしまったラミィ。
しかし、彼女が倒れるより早く動いたレンが優しく抱きとめた。
「だから言っただろ、慌てるなと」
「ひゃうっ!?」
ボッと赤くなったラミィはすぐにレンから離れた。
「あ、ありがと……」
「足は大丈夫か?」
「うん……あっ、レンちゃん。服に糸くずが付いてるよ」
ちょんとゴミをつまんで取ったラミィ。
色がレンの服と同じだったのでとても見にくかった。
「よく見つけたな」
「わたし、目だけは良いから……」
「そうか。なら弓術でも学んでみたらどうだ? 精神修行にもなるし、いつか私以上の戦士になるかもしれないぞ」
「戦士なんてわたしには無理だよ。それに――」
今度はほんのりほっぺたを染めて、
「強くなっちゃったら、レンちゃんに守ってもらえなくなっちゃうから……」
はにかんだ笑顔を見せた。
「……? まぁ強制はしないが。さて、行くか。ルルが待っている」
「うん。いこ」
やたらとモテるわりには、ニブチンなレンだった。




