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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
十本目! 大変で騒がしいいつも通りの一日

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第六十一話 頼れるのはやっぱりフィノ



 スラ吉の体に入ったヴァリンはその後も連戦連勝。

 いともたやすく勝利とファイトマネーを積み上げていく。

 もうね、笑いが止まらん。そんな状態。


『え~次が本日最終戦、Sクラスの試合となります。東から入場するのは、恐るべき堅さと素早さをあわせ持つ脅威の鉄球、ハガネスライムの「メタ郎」選手。そこに対するは、突如現れた魔法を操る謎のスライム、「スラ吉」選手で~す!』


「ビガ~~(へ~、ハガネスライムか。そんなレアモンスターよく捕まえて来たなぁ)」


 リングに入ったヴァリンはくちゃくちゃ噛んでいた干し肉を飲み込んだ。

 態度がデカすぎる。


「キュルッ……。キュルッ……(フッ……。誰もオレについて来ることは出来ない……)」


 そしてもう一匹。

 ドギャン! と残像が残るほどのスピードで現れたのは、体が金属のようなもので出来た銀色のスライムだ。

 どことなくイケメンである。


「ビッギ~(いつもなら大喜びで追いまわすとこだけど、試合でぶつかるのは面倒くさいなぁ)」


 ヴァリンはだるっそ~~に体を揺すって準備運動。

 ここまですべて魔法一発で終わらせてきたが、今度は少し手こずりそうだ。

 

『さてこれから試合開始、なのですが、今回は特別ゲストに来ていただきましたぁ! この町で彼女の名を知らないのは赤ちゃんと老人くらいなものでしょう! 実は魔導学院の生徒でもあるスーパーアイドル、レンちゃんで~~す!』


 仏頂面で実況席にやって来たレンを見て、ギャラリーたちから歓声が上がる。凄い人気だ。

 

『面白いスライムが現れたと聞いて来てやったぞ。まさかスラ吉とは思わなかったがな』


『おやおや? レンちゃんはスラ吉選手を知っているんですかぁ?』


『スラ吉の主人とは友人だ』


『それってフィノちゃんではないんですか?』


『フィノではない』


『お~! フィノちゃん以外に友達いたんですね!』


『アルシー、貴様……』


『あ~ごめんなさいごめんなさい。怖い顔しないでくださいよぉ』


『ふん、次は無いと思え』


『ありゃ、案外優しいんですね~。エリザ先生だったらもう手を出されてましたよ。そういうところがレンちゃんの人気の秘訣かもしれませんね! ところで、どうして普通の服着てるんですか? バニースーツは渡したはずですけど』


『人前であんな恰好が出来るか!』


『写真集とかではもっと凄い恰好してるじゃないですか。国によってはセンシティブな本として禁止されてるそうですよ』


『あれは仕事だから仕方なくやっているんだ!』


『今日だって事務所の方に話は通してあるんでお仕事ですよぉ。はい、お着換えしましょうね~♪』


『なんだとぉ!?』


『わぁー!? 机をドンドンしないでくださいよぉ。壊れちゃいますって……。あっ、とこんなことやってるあいだに時間の方が来てしまいましたね! それでは本日最終戦、ハガネスライムの「メタ郎」対、スライムの「スラ吉」! いってみましょおおおお!!!』


 ごい~んとゴングが鳴った。


「ビッギー!(手始めに一発! ソニックブーム!)」


 まずはヴァリンが仕掛ける。

 しかし、メタ郎は魔法が発動した瞬間にはもうその場から消え、ヴァリンの後ろにまわりこんでいた。


「キュルル……(ヒトの如き技……だが、当たらないのでは無きに等しい……)」

「ビキーッ!(かーっ! やっぱ早いなぁ)」


 慌てて振り向いて警戒姿勢を取った。


『出ましたー! メタ郎選手の高速移動! 逃げ回っているだけでSクラスまで登りつめ、ついた二つ名がガン逃げのメタ郎! その名は伊達(だて)ではありませーん!』


『スラ吉のやつ、見たところ口の中にソニックブームの魔導輪(まどうりん)を隠し持っているようだな。だが普通に撃ったところでハガネスライムには当たるまい。勝つには近付く方法を考える必要があるだろうな』


 素早くバニースーツに着替えたレンが実況席に戻っていた。なんだかんだでやってくれる子である。

 かなり小さいサイズの物だがそれでも胸の部分がちょっと余ってしまっていた。

 

「キュルキュル……?(闘争とは無意味で悲しいものだ……。そこまでしてお前は何を得る? 何故戦う? ああ、どうして力なき者にかぎって無駄な戦いをしたがるのか)」


 メタ郎は目をつむり、ニヒルな表情で左右にシャッ、シャッと高速移動を繰り返している。たぶん挑発。


「ビッガ~~!(舐めくさりやがってこのなまり玉野郎がぁ! アタシが得るのは金だよ金! これからテメーをぶっ潰してな!)」


 キレたヴァリンを、ビュウッと風の魔力が(おお)い始めた。


『なっ!? あっ、あれは!』


 レンが心底驚いた声を出す。


『魔力の衣だと……!?』


『それって、レンちゃんがフィノちゃんと戦った時に使ってたやつですよね? 氷で体を守ってた』


『……ああ、魔力を体外で扱う技術だ。魔導輪による補助がない分難易度は高いが、その分応用が利く。学院の生徒で出来るのは私くらい……たとえ卒業生であっても無理な者は無理だろうな。それくらい高度な技だ』


『ほぇ~、スラ吉選手は魔法を使えるなんて程度の話ではなく、一流の魔導士だった。ということですね~!』


『そうなるな。とても信じられんが』


 それを大した修行もなく出来てしまうのがヴァリンだった。

 ただ、そういった才を人に見せることを彼女はあまり好まない、というか出来る限り隠しているのだが、


「ビガガッ(だはは、ま~今はいいだろ。アタシだってバレないし)」


 今回だけは本気である。

 金のためだし、どうせ姿はスラ吉だし。


「ビ~ガガッ!(そ~らよっと!)」


 相変わらず余裕こいて油断してるメタ郎に狙いを定め、ヴァリンは風の魔力を追い風にして急加速。


「キュルッ!?(へあっ!?)」


 突然のことにビビるメタ郎。でももう遅かった。


「ギュペラーーー!」


 弾丸のようになってかっ飛んでいったヴァリンの体当たり。

 もろに受けてしまったメタ郎は体をへこませて転げ回った。


『スラ吉選手のぶちかましが決まったぁぁぁ! メタ郎選手リングアウト! スラ吉選手の勝利で~す!』


『あ、あれはエリザの……。奴に習ったのか……? いや、それならもっと話題になるはずだ。見ただけで盗んだのか……なんという奴だ』


「ビガガガガガガガ!(だはは! だはは! これでいくらだっけ? 笑いが止まんね~~。もう学院やめちゃおっかな~。このまま一生分稼いじまうかぁ)」


 そりゃあもう悪そうな顔で笑うヴァリン。

 まさに有頂天。

 最高に気持ちよくなっちゃってた。


 だけど……大変なのはここからだった。



 ◇



 いったん外に出たヴァリンとスラ吉。

 ファイトマネーや賭け金受け取りの手続きをするため、元の体に戻る必要があったのだ。


「へぶっ!」


 すてーんと転んでしまったスラ吉。

 人間の体に慣れていないと二足歩行は大変なのだ。


「ビ~ガビ~ガ(おいおいお~い。アタシの体あんま傷つけんなよなぁ)」


 機嫌良さそうにヴァリンが言った。

 勝利の余韻(よいん)がまだ残っているので穏やかである。


「うう……。早く戻ろうっと」


 涙目で紫の杖を持つスラ吉。

 ヴァリンにくいっと当てて口を開いた。


「あ~~……なんて言うんだっけ~?」


 ぽや~っとした口調でつぶやいて首をかしげる。


「ビガー! ビガー!(チェンジだよチェンジ! しっかりしろ~!)」


 その場でバンバン飛び跳ねて怒るヴァリンだったが通じていない。

 

「う~~ん? あっ、そっかぁ。チェンジだっけ」


 思い出したようだ。

 ほっと安心するヴァリン。

 スラ吉はもう一度杖をヴァリンに当て、


「チェーンジ!」


 確かにその言葉を唱えた。だが……。


「あ、あれ?」


 何も起こらなかった。


「チェ、チェーンジ!」


 さっきよりも大きな声でハッキリと唱えた。

 だがやはり、何も起こらない。


「な、なんで~!?」

「ビガガ!(貸せっ! スラ吉!)」


 ヴァリンはかぷっと杖をくわえて、ちょっと乱暴に奪い取った。


「ビーガッ!(チェーンジ!)」


 やっぱり、何も起こらなかった。

 

「あ……ああ……あああ……」


 じわじわと、じわじわと二人の胸に不安な気持ちが広がっていく。

 もし、一生このままだったとしたら……。


「うわあああん! どーしよー!」

「ビギギギギギ……(うぐぐぐ……なんでだ!? なんでだ!?)」


 地面に置いた杖をにらみつけるようにして考えるヴァリン。

 何か気が付いていないルールや能力があるのではないだろうか?

 しかし、いくら杖を調べても最初に見つけた文字以外は見当たらない。


「ビギ~……(ダメだ。わがんねぇ……)」


 お手上げだとばかりに天を仰ぐ。


「ふえ~ん、マスター……」

「ビガガ!(泣くな泣くな! アタシの体でみっともない声出すなって)」


 そこでパッと閃く天才ヴァリン。


「ビガ!(そうだ! あいつに頼ろう! あいつなら今のアタシとも話せるし、絶対協力してくれるぞ!)」


 杖の先端のほうをくわえ、地面にかりかりと文字を書く。


「マスター……これなんて書いたの?」

「ンガ!」


 そうだった! とスラ吉は文字が読めないことに気が付いたヴァリン。


「ビッガー!(仕方ねぇ、なら久々に本気だ!)」


 今度は似顔絵を凄い勢いで描き始める。

 これがまた結構上手いのだ。

 真の天才とは何でもこなしてしまうのである。

 地面にはあっという間ににぱっとした笑顔の少女が描かれた。


「あっフィノさんだ! そっか、フィノさんならきっと助けてくれる!」

「ビッガァ!(よっし! 気付いたか)」


 そうとなればこうしちゃいられん、とスラ吉は駆け出そうとして、


「へぶっ!」


 もっかいコケた。


「ええ~~ん、フィノさぁぁぁん……」


 小さな子供のように泣きべそをかきながら、フィノの部屋に向かうのだった。

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