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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
一本目! 魔導士たちの学校

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第六話 戦いの始まり



 フィリス魔導学院、食堂裏。

 通り魔による犠牲者は運ばれ、見物に来ていた生徒たちも去り、フィノ、ミランジェ、ラキ、リンネだけが残って話をしている。


「レンちゃんを……なんとかするって……どうやって~?」


 リンネは人差し指をアゴに当てて頭を左右に振る。

 口元は相変わらずニヤついていて、フィノに何かを期待しているような素振り。


「戦って勝つしかないと思います。あたしはもう、話をしてもらえないから……」


 入学式が終わってから、フィノは何度かレンに声を掛けたのだが、全て無視されてしまっていた。

 彼女が興味を持つのは強い者だけ、格下だと思っているフィノのことなど眼中にない。


「でもさ、生徒同士での決闘は禁止されてんでしょ?」

「一応可能だよ……互いに申請を出せば……教員の立会いのもとでね……まぁ……レンちゃんが応じるとは思えないけど……」


 ミランジェの問いにはリンネが答えた。

 それを聞いたフィノは頭を抱える。


「う~……どうしようかな。いきなり襲ったらあたしが通り魔になっちゃうし」

「うっふ! あるよ……一つだけ……レンちゃんと戦う方法……」


 三人の視線がリンネに集まる。


「学院ではね……年に一度武術大会があるんだ……生徒の間では『歓迎会』なんて呼ばれてるけどね……新入生の参加は珍しいんだけど……上級生たちと戦えるチャンスだからね……レンちゃんは多分……出て来るよねぇ~」


 言いながらフィノを見る。その視線は明らかに参加を促していた。


「大会はいつからなんですか?」

「エントリーは明後日からだよ……毎年入学式の直後にやるんだ……だから歓迎会……くふっ……」


 恐らく新入生に魔導士の戦いを見せる意味合いもあるのだろう。

 そのことにいち早く気が付いたミランジェはすぐに反応した。


「はい! うちも参加します! 先輩たちと戦えるってのはうちにとっても魅力的だよ。今の自分がどこまで通用するのか試してみたい」

「くふ……いいね……ミランジェちゃんも……優秀だからね……結構良いとこいくと思うよ……フィノちゃんは……どうする?」

「…………あたしも参加します。レンとしっかり話をするには、それしかなさそうだし」


 目的は違うが、二人の瞳には熱い闘志が燃えていた。


「あわわ……凄いことになってきた! 私みんなに知らせてきますー!」


 結構な速度でどこかへ走っていってしまったラキ。明日には噂になっていそうだ。


「ラキちゃん……素早いね……森では……あの半分も動けてなかったはずだけど……潜在能力はトップクラスかも……うふふ……」

「リンネちゃん! そんなことはどうでもいいから、おチビの対策教えてよ! ああいう天才って気に入らないんだよね。もし当たったらうちも負けたくない」


 手をあげて質問したミランジェ。

 聞かれたリンネは首をかしげて「んーっ?」と考えてから答えた。


「注意すべきところは……三つかな……まずは……豊富な実戦経験……どんな教育されてたんだろうねぇ……明らかに戦闘慣れしている……という印象……十一歳とは思えないね……長期戦にはしない方が良いよ? 長引くと経験の差が大きくでるから」

「でも、リンネちゃんとの戦いで油断して不意打ちもらってなかった? そんなに慣れてるのかな……?(おチビ十一だったのか)」

「ふふ……あれは慣れてるからこそだね……あんなの食らったら……普通は魔力操作なんて無理だから……」


 ふ~ん……とミランジェ。

 

「二つ目は……あの異常な握力……ひねられただけで腕がダメになっちゃった……普通に鍛えてるだけじゃ……ああはならないと思うから……薬物か魔道具か……何かで発達を(うなが)したんだね……接近戦は避けるのが無難(ぶなん)……」


 リンネは説明を続ける。


「最後……三つ目……『魔力の衣』……これが一番厄介かも……」

「レンの体を守ってた氷の魔法ですか?」


 フィノの言葉にうなずいてからリンネは続ける。


「魔法……というよりは……技法……と言った方が近いかもしれない……自身の魔力を体外でローブのようにまとう技でね……色々と応用が可能……氷属性のレンちゃんは……攻撃された部位を一瞬で凍結……氷の鎧を作って身を守っていたね……」


 フィノは顔面に攻撃を受けた時のレンを思い出す。

 一瞬で氷の膜が張って顔を防御していた。


「あれを突破するのは大変……でもレンちゃんに勝ちたいなら……避けては通れない道だね……うふ……ふふっ」


 考え込むフィノとミランジェを満足そうに見て、リンネは「頑張って」と呟いてから去っていった。





 それから数日後――


 学院の敷地内に生える一本の大きな樹。

 樹上に生い茂った、緑色の葉が作る木陰に座り、フィノは目をつむって、意識を世界に溶け込ませていた。


 町の中でも、ここにいる時は自然を感じることが出来る。

 山を下りてからたまに寂しくなる時もあったが、こうしていると"結局人間というのは、どこにいても同じ大地の上にいるのだ"ということを実感できる。


 そうすると、不思議と寂しい気持ちは消えてしまう。

 あたたかい何かにいつも見守られているような、そんな気持ちになれる。


「お~っす! 何やってんの~?」


 静寂を破る声がした。大きくてがさつで、でも不快になることはない……そんな声だった。

 フィノは目を開け声の主を確認。

 ウインクをしながら、手を振って歩いて来るミランジェの姿があった。


「う~んと……栄養補給みたいなものかなぁ」

「……ナニソレ? はは、フィノっちたまに変なこと言うよね~」


 歩いて来たミランジェは、フィノの隣に座ってあぐらをかく。スカートが短すぎるので見えてしまいそう。多分見えてる。


「あのさ……聞いた? おチビの話」

「あ~……うん……」


 レンの横暴な態度は日に日に悪化していて、学院の中でも悪い噂が立っていた。

 そんな彼女を懲らしめるために、フィノとミランジェが立ち上がった! という噂も同時に広まっている。ラキの手によって。

 そのためか二人の元にはやたらレンへの苦情が入るのだ。なんとかしてくれと。


「肩がぶつかっただけで服を破かれたとか、ペットをいじめられたとか、おやつを食べられたとか、下着を盗まれたとか、お風呂覗かれたとか、もうやりたい放題みたいだよ、おチビの奴」


 冤罪(えんざい)もかなり混じってそう。


「あたしのところにもよく来るんだ。レンに酷いことされたって……今日も逃げてきちゃった」

「こりゃあなおさら負けられなくなったね~。大会は明日だけど、登録はもう済ませた? 今日までだよね」

「うん! バッチリ! 後はしっかり食べて寝るだけ」


 そう言ってフィノは力こぶを作って笑顔を見せた。

 釣られて笑うミランジェ。その後、ちょっと恥ずかしそうにして口を開く。


「そっか…………え~っと、あのさ。うち、上級生との力試しに参加したいって言ったけど……本当はフィノっちとも戦ってみたいんだよね」

「あたしと?」

「うちは最強の魔導士を目指してるから、フィノっちやおチビみたいな天才はライバルなんだよね。でもフィノっちにはずっと助けられっぱなしジャン? 負けたくねーって……そう、思うんだ。だから、もし大会で当たったら、手加減なんか絶対しないでほしい。そん時は互いに全力でヤりたい。いいかな?」


 静と動。

 樹と炎。

 性格も性質もまるで違う二人ではあったが、何故だか気が合う。

 ミランジェの言葉を聞いて、フィノは満面の笑みで――「うん!」――と返事をした。





 翌日の朝、フィリス魔導学院闘魔武会――通称『歓迎会』の参加者たちは、学院内の訓練場に集められていた。

 ここはただデカくて広いだけといった建物で、普段はトレーニング用の標的人形や、肉体と魔力を鍛えるための道具が置かれている。

 今日は大会の予選を行うために全て片付けられていた。


「え~っと……あたしは三番か……」


 渡された参加番号を確認するフィノ。登録が早かったため番号が若い。


「それじゃあ予選を始めるぜ? 番号を呼ばれた奴はオレのところまできてくれ。まずは六番と二十八番だ」


 赤い髪をショートカットにした教員が大きな声で言った。

 彼女に呼ばれ向かって行ったのは、上級生の一人と――


「……レンだ」


 思わず見入るフィノ。


「武器と魔法は好きに使っていい。どちらかが意識を失うか降参をしたら決着だ。決着がついた状態での攻撃と、相手を殺した場合は反則となり失格だ」

「審判、ひとついいか?」


 ショートカットの教員に対して鋭い視線を送りながら、レンは尋ねた。


「意識を失った相手に攻撃を続けようとした者がいた場合、どうやって止める?」

「あ? 教員の誰かが力尽くで止めンだろ。今だったらオレだな。っつーか聞く意味あるか? ソレ」

「ああ、それを聞ければ十分だ。始めてくれ」


 答えを聞き、レンは薄く笑う。

 なにか、良からぬことを考えているような……そんな予感がしたフィノ。


「じゃあ、始めッ!」


 教員の声と共に試合は始まった――が、まともな戦いになることは無かった。

 上級生の攻撃を歩くようにかわしたレンは、相手のアゴを一瞬でなでる。

 とすっ――と相手は(ひざ)をつき、そのまま意識を失った。


「勝負あり! 勝者二十八番!」


 見物していた他の参加者が固まる中、レンは無言で去っていく。


「次は……十八番と二十三番だ。こっちに来てくれ」


 気絶した者を移動させ、何事もなかったかのように予選を再開する教員。

 呼ばれたのが自分でもミランジェでもないことを確認したフィノは、訓練場に設置された大きなトーナメント表の前まで移動した。

 

「え~っと。レンは二十八番だったよね……あたしが三番だから…………わっ!? 予選どころか決勝まで行かなきゃ当たらない! そんなぁ……」


 がくんと肩を落とす。

 目的は優勝ではなくレンと戦うことなので、余計な苦労が増えてしまった。

 万が一レンが他の誰かに負けてしまえば、全てが無駄になってしまうだろう。


「次! 四番と十一番だ」


 教員の声を聞いてフィノは振り返る。ミランジェの番号だ。

 応援のために小走りで近付く。

 そこには向かい合うミランジェと上級生の姿が。


「ミランジェ……気合入ってるなぁ」


 ノースリーブにミニスカート、相変わらず露出が多い派手な恰好。

 いつもと違うのは、赤いハチマキを巻いていることと……その表情。

 普段の軽いミランジェとはかけ離れた、真剣な顔。担いだ刀にそのまなざしが映り込む。

 

 今日はまだ一度も言葉を交わしていない。

 今日だけは、二人は友達ではない。ライバルだ!





「では……始めッ!」

「ウォーターバレット!」


 開始の声と共に魔法が放たれる。水のかたまりが弾丸のように撃ちだされた。

 ミランジェは走りながら潜るように回避、一気に相手の懐へ飛び込み刀を振るう。


「ワリーね、舐めてるわけじゃないけど……ベスト4くらいまでは魔力使いたくないんだわ」


 振り返りながら、刀を鞘に納めた。もちろん峰打(みねう)ちだ。


「勝負あり! 勝者四番!」


 教員の声と同時に、人が倒れる音が響いた。


 一戦目に勝利したミランジェは教員から離れる。笑顔で観戦していたフィノに気が付いてはいたが、そっちには行かない。

 顔を見ると、きっと声をかけたくなってしまうから。


(今日最初に話すのは、決勝の舞台でだよ。フィノっち)


 トーナメント表はとっくに確認していた。

 ミランジェとフィノが当たるには、決勝まで勝ち上がる必要がある。

 それには問題が一つだけ。


(このまま進めば準決勝でおチビと当たる……やってやるさ)


 その瞳の向こうにはレンがいた。

 相変わらず隅の方で腕組みをして、退屈そうにあくびをしている。

 他の参加者にはまるで興味を示していない。


(相手が四回生以下なら魔法は無しでもいい。少しでも温存しておかないと、おチビには勝てない)


「次! 三番と七番」


 三番……という言葉に反応して教員の方を見た。

 フィノの試合が始まる。


(応援……いらねーよな)


 くすりと小さく笑ったミランジェ。

 そこにはビンタ一発で対戦相手を吹き飛ばしたフィノがいた。慌てて駆け寄って謝っている。


(最近何となく分かって来たよ。フィノっち……あんたさ……本当はこの学校の誰よりも――)


 それは、ミランジェだけが勘付いていたこと。

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