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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
九本目! 目覚めし巫女の墓

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第五十八話 エピローグ 上陸! メイドさん!



「歯ごたえはいいな。こいつ」


 倒した黒龍の肉をかじるセス。よ~く味わっている。


「……腹こわしません?」


 引き気味に笑っているミランジェ。火は提供したが食べる気にはならなかった。


「ほんとうにやばいモンは味で分かる。味を感じる能力ってのはそのためにあるんだよ。町に住んでると食うことが作業になっちまうけどな」


 べっと食べていたものを吐き出すセス。やばかったらしい。

 ユミルが戦闘でまき散らした水をすくって口をゆすぎ、飲んだ。


「なんというか……自然的なお方ね」

「床に溜まった水ですよ。信じられません」


「あっはっは! ユミルとエスニャは都会育ちっぽいもんな」


「田舎もんのうちでも普通に引くけどね……ところで、セスさんはどうしてここに?」


「お前らが助けたチンピラに頼まれたんだよ。礼をしに宿まで行ったらいなくなってたから、きっとここに向かったはずだってさ。危険なとこだから助けに行ってやってほしいって」


「あいつ……」


「軽く話は聞いたけど、やべーとこだよなここ。その分お宝もありそうだが……」


「そういえば、セスさんは水差し探してるって言ってたけど、ここにあったよ」


「ホントか!?」


「持ち出せる状況ではないんだけど……」



 三人はセスに事情を説明した。


「なるほど、罠か。こいつもそれで出て来たってわけだな」


 今度は黒龍の尻尾をかじっているセス。


「それが妙といいますか。理解不能なんですよねぇ。キマイラといいこんな怪物が何千年もどこに隠れていたのか。そもそも盗掘防止のトラップとして用意しておくならエサはどうしたんでしょう。放し飼いではここを作った人間たちも入れなかったでしょうし」


「飼ってたんじゃなくて現れるんだと思うぞ。水差しを持ちだした瞬間、すぅーっとな」


 セスの返答に困るエスニャ。


「……意味が分かりません」


「えっとな。モンスターってのは、元々地上を離れられなくなった人間の魂なんだ。この建物にはたぶん、それを実体化させる何らかの仕掛けがある。再生するってのもそれの応用だろ」


「いや! 待ってください! そんな話始めて聞きましたよ!? モンスターが元人間!? いったいどこでそんな話を?」


「いまだに山奥で神様あがめて暮らしてるような部族とかには結構伝えられてる話だ。ああいう連中と仲良くなるのは大変だけど、一度認められるとずっと家族として扱ってくれる。なんでも教えてくれるぞ」


「そ、そんなことが……けど、そう考えれば一応説明はつくのか……」


「あっはっは! 気になるなら確かめに行ってみな! 世の中にはいろんなことがあって面白いぞ~。冒険者ほど楽しい生き方をあたしは知らない」


 陽気に笑いセスは立つ。


「休憩終わり! そろそろ脱出しようぜ。ユミルはあたしがおぶってやるよ。水差しが戻ったのならもうやばい奴は出てこないだろ」




 ◇ ◇ ◇




「は~。凄い経験したな、今回は」

『へへへ。いーじゃねーか。生ぬるい授業に飽き飽きしてたトコだろ?』

「ま、そーだけどね~」


 帰りの船の上。

 ぼんやりと海を眺めながら、ミランジェはもう一人の自分と話していた。

 乗船前にお土産屋で買って来た名産品のお酒を飲んでいる。


『ウマい! ゼルメア島名物、ノンダクレー・エックス。一度飲んでみたかったンだよなぁ』

「これが? ふ~ん」


 まだ酒の味が分からないミランジェは面白くないのだが、今回はなにかと世話になった彼女へのお礼である。

 どうでもいい話を聞きながらちびちびと飲む。

 

「お~っすミランジェ。昼間っからやってるわね。強そうで羨ましいわ」


 そんなところにユミルがやって来た。


「ん。ユミル先生も飲む?」

「一口ちょうだぁい♡ って言いたいんだけど、一応仕事中なのよね。遠慮するわ、アリガト」


『仕事中とは言っても暇そうじゃねーか』

(こら、黙ってなって)


 頭の中で会話するミランジェを見てユミルは、


「もしかして、例の人と喋ってる? もう一人の自分とか何とか」

「え、うん、まぁ」


 苦々しい表情で答えたミランジェ。

 やっぱり変な人みたいになってしまう。


「あっは、別に疑ってたりしないわよ? あのエスにゃんが信じてるんだから相当すごいもの見たんだろうし」


「……忘れてください」

「どうして? カッコいいじゃない」

「なんかヤバい悪霊とかに騙されてるって可能性も捨てきれてないんだよね、うち」

『がはは。ひでーなそりゃ』

「あっはぁ。あるかもね、ソレ。でも本当だったらリンネが喜びそうだけどなぁ。ミランジェには相当入れ込んでるからね、あの子。未来のあなたには会いたがると思うよ~」


「リンネちゃんがうちに入れ込んでる?……そうなのかな?」

「どっからどう見てもそうでしょ」

「まさか、リンネちゃんうちのこと好きなのかな!?」


 今度はユミルが苦笑して。


「んー、それはちょっと分かんないけど……。入学したばっかの時さ、レンとの戦いであなたかなり無茶したでしょ? 本気で怒ってたよリンネ。あの後からじゃない? やたら気にかけるようになったのって」


「言われてみればそうかも。うちの指輪まだ返してくれないからな~」


「サラマンダーインストールか……」


 悲しげにつぶやくユミル。


「実はね、アタシのお姉ちゃんが昔教員やっててさ。リンネの担当だったんだけど、ミランジェにちょっと似てるんだよね。魔力性質も炎だったし」


 なんとなく、続きを察してしまうミランジェ。

 それでも聞かずにはいられない。


「その人、今どうしてるの?」


「死んじゃった。ミランジェとおんなじ無茶してさ。それからだったな、不良だったリンネが変わったのは。だからあなたのことほっとけないんだと思うよ」


「ん?」


 なんか変な単語が聞こえた。


「不良? 不良って言ったの? あのリンネちゃんが!?」


「そうよぉ。今と違ってやたら早口でね。常にイライラしてて誰も近づけなかった。手が付けられないってこういう子のこと言うんだって当時思ったもん。ケンカなんてしょっちゅうよ」


「う……うそでしょ……」


 未来の自分に話しかけられるより信じがたい話だった。


「それでよく退学にならなかったな……」


「あの子は凄かったから。学院側も出来れば手放したくなかったんじゃないかしら」


「やっぱそんな感じだったんだ。そこはイメージ通りかな。成績良さそうだもん」


「エルクにリンネ。ヴァリンと来て、今はフィノとレン。飛びぬけた力を持つ生徒っていうのは、いつの時代も一人か二人は必ずいるんだけど、その中で誰が一番? って聞かれたら、アタシは迷わずリンネをあげる。入学してきた時は全然大したことなかったのに、あっという間に誰よりも強くなっちゃって、当時の先生たちもリンネには勝てなかったんだから」


「そこまでか~。うん、やっぱそういう話の方がリンネちゃんっぽいわ」


 腕を組んで笑うミランジェ。


「ね、もっと聞かせてよ。他になんか面白い話ない? 今度からかわれた時カウンター決めてやろ♪」


 ちょっと、意地悪そうに言った。




 ◇ ◇ ◇




「リンネちゃーん! ただいまー!」


 これっぽっちも遠慮せずに師の部屋に入るミランジェ。


「あらおかえり……旅行は楽しかったかな……?」


 読んでいた本を閉じてテーブルの上に置くリンネ。


「それがさ~聞いてよ~。ってすげーな、この部屋」


 足の踏み場もないほどに置かれた本を避けながら、ミランジェは持ってきた箱をテーブルに置いた。


「はいこれお土産。リンネちゃんワイン好きでしょ?」

「ふふ……ありがと……」


「忙しいのは分かるけどさぁ、たまには掃除とかしたら? フィノっちにバレたら勝手に掃除されて恥ずかしいもん見つかったりするよ」


「実際恥かいた人の言うことだから重みがあるね……掃除なら敏腕(びんわん)メイドのスズちゃんにお願いするから大丈夫だよ……」


「そうだ。そのメイドさんはどこ行ったの? ちょっと用事あるんだけど」


「おつかいで本屋さん行ってもらってるから……すぐ来ると思うよ……」


「まだ本買うの? いったい何読んで――ナニコレ?」


 ミランジェが手に取った本の表紙には、『ゼロから始める楽しい呪いの世界!~私はこれで憎い相手を始末しました~』と書かれていた。

 筋骨隆々とした爽やかな男性が白い歯を見せて親指を立てている。


「うっさんくせ~。リンネちゃんこういうの興味あるんだ」

「最近ハマっててさ……今日一番面白かったのはコレだよ……」


 テーブルに積まれていた本の中から一冊抜いて渡す。


「なになに……」


 赤い表紙の本。『(とく)を積んで来世で(とく)しよう!』というタイトルだ。


「く、くだらね~」


 と言いつつもちょっと笑ってしまったミランジェ。


「この本は中身も相当イってるよ……人間は生まれつき悪であるって……何の理由もなく決めつけるとこから始まるからね……普通に生きてたら地獄に落ちるってさんざん不安を煽った後で……救われたかったら著者のところに相談しに来いってさ……霊視相談一回六万ディーナだって……安いよね……ククク……」


「こんなん引っ掛かる人いるのかな~?」


「いるからこういう商売が成り立ってるんじゃない?……大金払って会員になれば……十日に一回ありがたいお言葉の書かれた手紙が届くらしいよ……」

 

 うへぇ、とミランジェは半笑いで本を置いた。

 と、その時、部屋の奥から青のメイド服を着た女の子がやって来た。


「おい、買ってき――ただいま戻りましたぁ、ご主人様ぁ」


 犬耳アクセサリーを付けたメイドさんはミランジェを見た瞬間コロっと態度を変えた。


「おかえりスズちゃん……お客さんだよ……」


 笑いをこらえながら返事をしたリンネ。


「やっほ、スズちゃん。これお土産ね。(今帰って来たんだよね? なんで部屋の奥から来たんだろ?)」


 小さな箱を取り出して渡すミランジェ。


「あう、ありがとうございますぅ」


 スズはそばかすの付いた頬を少し赤くして、ペコリと頭を下げた。


「それから、スズちゃんにはもう一つ……」


 手紙を取り出してスズに渡した。


「……どちら様からでしょう?」

「ごめん、学院で名前は出すなって言われてるの。スズちゃんにはこれ渡せば分かるからって」


 不思議そうに手紙を開いたスズ。

 一目見た後。

 あぁ、なるほど。みたいな顔で手紙をテーブルに置くと、リンネの方を向いて。


「ご主人様。しばらくお休みをいただけないでしょうか」


 そう言った。

 ミランジェとリンネが手紙に目を落とすと、そこにはヘタクソな文字で、


「きてくれ」


 とだけ書かれていた。




 ◇ ◇ ◇




 数日後。

 ゼルメア島の酒場にやって来たスズは、とある人物を見つけると隣に座り、水を注文した。


「酒を飲まないにしても、ミルクくらい頼んだらどうだ?」


 陽気な女の声。


「お腹下しちゃうんだよ」


 やや不機嫌にスズは返した。


「ほぉ~ん。ニンジャにも弱点があるんだな!」

「デカい声で軽々しく正体ばらさないでくれるか? セス!」


 ぎろっと睨むスズに対して、陽気な女――セスは頭をかきながら、


「悪い悪い。許してくれ」


 と軽く謝った。


「冗談じゃないよまったく。こっちがあの学院で正体隠すのにどれだけ苦労してると思ってるんだ。そろそろ限界だぞ」


「ああ、それも悪かった。でも、今のところは上手くいってるんだな?」


「ギリギリかな。あの子の先生がなかなか曲者(くせもの)でね。秘密を守るために動いたところで見破られた」


「だ、大丈夫か?」


「黙っててもらう代わりにこき使われてる。あんたのことやあの子の正体に関しては()れてないよ。だからギリギリなんだ」


「妙な先生だな。普通気になってもっとツッコんで来そうなもんだけど」


「変わり者なのは間違いないかな」


「フィノはどうしてる?」


「体調はいいよ。あんたが心配してるようなことにはなってない。町での生活も問題なし。っていうか、あんたの(コピー)とは思えないくらいしっかりしてる。私のサポートなんかほとんど必要ない。友達も多いし」


「そうか! 良かったぁ」


 とても嬉しそうな笑顔をセスは見せた。


「こっちもひとつ聞いていい?」

「なんだ?」

「あの子に妹がいたんだけど、どういうことなの?」


「報告は受けてる。ハイズが育ててたルルって娘だな。でもあたしは関わってないよ。きっと別の(オリジナル)を用意したんだ」


「なるほど。どうりで似てないと思った。それで? 何のために私を呼び出したの?」


「ん。その前にちょっといいか?」

「なんだ?」


 スズの姿を見て、神妙な顔でセスは尋ねる。


「なんで、メイドなんだ?」

「……慣れると便利なんだよこの服。中にいろいろ隠せるし」


 腕を組んで考え込み、「そうか……」と納得し、セスは呼び出した理由について話し始める。


「ずっと探してたもんが見つかった。『命の水差し』。これでフィノと……そのルルって子を助けてやれる」


「なんだ。だったらさっさと会いに行ってやればいいのに。私もやっとこの窮屈(きゅうくつ)な任務から解放されるよ」


「見つけただけでまだ手に入ってないんだよ。持ち出そうとすると罠が発動するんだ。強いモンスターがうんと出てくる。手伝ってくれ」


「そういうことか。いいよ。最近ストレス溜まってるし、丁度いいな」


「いや、スズは戦わなくていい。水差しを取ったら遺跡から脱出してくれ。お前の実力なら簡単だろ」


「なんだいそりゃ」


「想像以上にやばい罠なんだ。発動したままだとこの町や他の冒険者が危ない。遺跡がモンスターを実体化させるには何らかのエネルギーを使ってるはずだから、それが枯渇(こかつ)するまで中で戦おうと思ってさ。万が一あたしが力尽きたら、スズは水差しをフィノに届けて、すべての事情を説明してやってほしい。頼む」


 セスは深く頭を下げた。

 スズの国では頼み事をする時にこうするのがマナーだと聞いたことがあったからだ。


「……それが命令なら従うよ。でも、依頼人が死んだら仕事にならないからな。水差しを預かるまではやってやる。あの子に渡すのはあんたがやれ。依頼人の代わりに頭下げるなんて、私は嫌だ。冗談じゃないよ。それに、あんたの力なしにどうやってあのゾンビ女と戦うのさ」


「あたしの力なんて、ハイズが相手じゃ大したことないよ」


「珍しく弱気じゃないか」


「そうじゃない。ただの事実なんだ。十年以上探したけど、勝つ方法なんて何も見つからなかった。普通に倒しただけじゃ、ハイズは予備の体で簡単に蘇る。その気になれば転生だって出来るらしい。それ以外も何でもありさ」


 悔しそうに、本当に悔しそうにセスは話す。


「次元が違うんだ。伝説の勇者だろうが魔王だろうがあいつにだけは勝てない。魚がいくら強く賢くなったって、陸から見下ろしてる人間には絶対並べない。この世界を指一本で滅ぼせる奴が目の前に現れても、つまんなそうにヘラヘラしてるんだろうぜ、あいつは」


「だったらどうすれば……」


「フィノだ」


「あの子が?」


「フィノを生み出す実験が失敗して、赤ん坊だったあの子が死んだ時……いきなりもの凄い光に包まれて息を吹き返したんだよ。それを見たハイズがな、何故か、"泣いてた"んだ。無言で涙を流してた。あいつの人間らしい顔を見たのはあれが最初で最後さ」


 重い声で語るセス。


「きっと、フィノには何かあるんだ。あたしには分からなかったけど、ハイズはあの、あったかい光の向こうに何かを見たんだ。ハイズと対等になれる可能性があるとしたら、それはフィノだけなんだ」


「……分かった。水差しの件は任せてくれ。とにかく、中心はあの子なんだな」

「そういうこと。頼りにしてるぜ、スズ」


 セスはいつもの軽い態度に戻っていた。


「ところで、最後にもっかい聞いていいか?」

「……なんだ?」


 再び神妙な顔をするセス。


「なんで、犬耳なんだ?」

「………………可愛いだろ」


 スズはそばかすの付いた頬を赤くして、ぷいっとそっぽを向いた。















~あとがき~


こんばんは。作者です。


本当は9月中に更新したかったんですけど間に合わなかった・・・。

今回は大分文字数が増えちゃったってのあるんですけどね。

なんとびっくり七話分です。


今回登場したユミルで先生キャラは最後になります。

設定上はずっと前から存在してたんですけど、なかなか出すチャンスがありませんでした。

三章のエピローグで真面目に修行を始めたエスニャに後ろから抱き付いてからかってる、というシーンが頭の中にはあったんですけど、当時「まぁいらねーよな~」と思って書くのを諦めました。


今気づいたんですけど、うねうねマジックはいつの間にか連載開始一周年ですよ。

一人でコッソリお祝いします、おめでと~。

二周年までに完結・・・はいけるか微妙なトコですね。


次回はヴァリンの話やりたいんですけどまだどうなるか分かりません。

いずれにせよなるべく早く出したいですね。

あんまり間が開いて打ち切りだと思われちゃっても悲しいので。

次もしばらく休んでから1エピソード分を一晩でポポンと出していくような形になると思います。


それではまた!


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