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うねうね☆マジック!  作者: うさおう
六本目! 弄ぶ者

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第四十一話 宿り木の力



 ルルと別れたフィノはまっすぐに自分の家を目指す。

 転がっているゾンビから目を背けながら、育んでくれた山を駆け上がった。


「ハイズ……」


 おそらくすべての元凶である者の名を口にする。

 昔から知っていたような気がする名前。

 胸の奥に静かな怒りを感じながら、フィノは体を動かし続ける――。


 ◇


 ほどなくして家に到着。

 そこでは門番のように扉を背にしたリンネが待っていた。


「フィノちゃん来たね……待ってたよ……」


 背中にしがみついていたリス型ゴーレムがリンネの手に飛び移った。

 フィノがやってくることはこれで分かっていたようだ。


「エリザ先生は!?」

「中にいるよ……いつも通りやかましい……じゃなくて元気だったね……呪術のせいで動けないけど……」

「ハイズはいなかったんですか?」

「いたんだけどね……逃がしちゃったんだ……ところで……白髪の子はどうしたの?」


 二人はその場で情報交換を行う。


「――ってわけで……ハイズには出来る限り近寄らない方が良いよ……もう一度戦闘になったら……フィノちゃんは魔法での援護をお願い……」


「分かりました」

 

 得られた情報をもとに、次の行動について話しあっていた時、二人に近付いて来る白髪の少女がいた。

 

「ルル? どうしたの?」

「…………」


 ルルは答えない。

 虚ろな目で、駆け寄って来たフィノを見つめている。


「見つけた」

「え?」


「見つけた…………セス!!!」


 豹変(ひょうへん)したルル。

 あふれる殺意を拳に込めフィノを殴り飛ばした。


「フィノちゃん!」


 素早く反応したリンネが受け止める。


「ごほっ……ルル、どうしたの……?」


 腹部を抑えながらフィノが言う。口元からは赤い血が見えていた。


「…………」


 何も言うことなくルルは飛びかかる。

 しかしフィノを抱えたリンネは圧倒的な速さで離脱、間合いを取った。


「あの子……明らかに操られてるね……どうせあの女の仕業だろうけど……呪術ってよりは催眠術かな……まったく……人をコケにする術にかけては天才的だな……」


 珍しく怒りを声に乗せるリンネ。

 フィノを下ろして前に出ようとする。


「リンネ先生、待って……」

「殺すなって言うんでしょ……分かってるよ……出来る限り捕まえる方向で――」


「違う……ルルのことはあたしに任せてほしいんです。リンネ先生は何があっても動けるように警戒を、ハイズはきっとどこかに隠れて見ています」


「正気かな?……見たとこあの子の力はキミと大差ないよ……そのケガじゃ普通に勝つのだって難しいでしょ……同じのをもう一発もらったら意識が飛んで……三発目で終わりだよね……これでも私は先生だから……死ぬと分かっていて任せるわけにはいかないよ……」


「でも、今日は先生じゃなくて……仲間だって言ってくれたじゃないですか」


 精一杯の笑顔を作って、フィノはそう言った。


「……キミには(かな)わないな……いいよ……少し見ててあげる……けどね……ヤバイと判断したらすぐに割り込むよ……」


「ありがとうございます」


 ゆっくりと近付いてくるルルにフィノは向かって行った。

 

 リンネはハイズの襲撃に備えるため、精神を集中させて付近の魔力を探る。

 すると――。


「んー。先生がルルに近付いたら動きを止めてやろうと思ったのに、やぁっぱりヤドリギさんはミーの思い通りにならないんだにゃ~」


 子供が適当にぶちまけた絵の具のような、ぐちゃぐちゃに混ざった魔力。


「……やっぱりいたか」


 感じたのは小屋の上。


「どうも、さっきぶりだね! 白髪と一緒に戻って来ちゃったにゃん♡」


 腰に手を当て見下ろしてくるハイズ。


「キミはさ……どうやったら死ぬわけ?……細かく刻んで埋めないと駄目なのかな……一人殺るのにそこまで手間かけたくないんだけどね……」


「生まれ持った器が壊れることを死と定義するのなら、ミーはとっくの昔に死んでるからにゃあ~。今着てるコレが壊れても予備のボディに移るだけだしぃ、どうやってもムリじゃないかな? かな? キャハハハ!」


 ハイズは笑いながら虹色の髪をかきむしる。

 抜けた髪をリンネのほうにふーっと飛ばして、


『ウゴクナ!』


 呪術を発動。

 同時にまかれた髪が光を放ち、激しい電気に変わった。

 自由を奪われたリンネの体が青白い光に飲まれていく。


「わお。これで生きてるのはかなり凄い! 肉体の改造でもやってんのかにゃ?」


 嬉しそうに振り返るハイズ。

 服がボロボロになったリンネが上がってきていた。


「キミほどじゃないけどね……」


「そぉ? 先生とミーはなんだか似てる気がするにゃあ。これって運命?」


「同類ではあるかもね……昔の……ひねくれた子供だった自分が……そのまま成長した姿を見せられてるようで嫌になるよ……だから……次は確実に倒す……!」


「キャハハハ! 困ったにゃあ、ちょっと勝てそうにない。だったらぁ~~~」


 ハイズは後ろ向きに飛び降り。


「エリザちゃんと遊んじゃえ~~い!」


 はしゃぎながら小屋の中に入っていった。


「それだけはされたくなかったから……上がって来たんだけどね……」


 大きなため息をつきながら、リンネも屋根を飛び降りた。



 ◇



 人間には決して出せない破壊力の蹴り、歯を食いしばってフィノは受けた。

 踏ん張る足が地面に沈む。


「ルル! 元に戻って! ルル!」


 必死に呼びかけるが反応はない。


「ルル! ルル!」


 顔面に迫る拳をギリギリで避けた。

 頬が切れて血が流れる。


 続く大振りのパンチを両腕で止めたが、威力を殺しきれず後ろに飛ばされた。


 しかし、偶然とはいえ距離が開いた。

 フィノは一気に魔力を解放し指輪に送り込む。

 発動させるは唯一の魔法にして切り札でもある樹の力。


「ラッシュヴァイン!」


 腕から大量に生えた触手が高速で伸び、ルルの手足を拘束した。


「よし! これで……」


 フィノ本人にもよく分かってはいないのだが、この触手は相手の魔力や体力を奪う。

 一度捕まってしまえばどんな達人でも脱出は難しい。

 

 ――相手が、人間でさえあれば。


「……な!?」


 暴れるように動くルルが触手を引っ張る。

 同じ人造人間ではあっても、ダメージを受けたフィノはルルとの力比べに勝つことが出来なかった。


「うわああああ!」


 一気に引き寄せられるフィノ。


 ルルは腕を大きく後ろに引き、小さな拳にありったけの力を込めて、自らの姉に……それを叩きこんだ。


 何かが砕ける様な、何かが破裂するような音と共に、フィノの体が折れ曲がる。

 触手は消え去り、凄まじい勢いで弾かれたフィノは地面を何度も転がり木にぶつかった。


「がはっ……か……ル……ル……」


 吐き出した血はドロリと濃い。

 意識が残っていたのはほとんど奇跡だった。

 普通の人間であればすでに死んでいただろう。


「返して、みんなを返してよ」


 ルルが歩いて来る、涙を流しながら。


「……ルル」


 拳に込められた想いと涙を見て、フィノは立ち上がろうと地面に手をついた。


「死んじゃったんだ、ネネもナナも、妹たちも、みんな」


 この子は今まで、どんな想いで生きて来たのだろう。

 妹を想えば想うほど体には力が戻り、樹の魔力があふれてくる。


「ルル! いま……あたしが止めるから!」


 魔法の指輪が教えてくれた気がした、この現状を打破する方法を!


「ラッシュヴァイン!」


 地面に向かい無数の触手が伸びる!

 爆発したように伸び続ける触手は山に根を張り、大自然のエネルギーをフィノに送り込む。

 輝く魔力に包まれたフィノの肉体は再び戦う力を取り戻した。


「うおおおおおおおお!」


 飛び掛かって来たルルをフィノが迎え撃つ。

 

「ルル! ちょっと痛いけど、我慢してね!」


 人外の力を持った拳と拳がぶつかり合った。

 押し負けたルルの表情がゆがむ。

 大地を割る蹴りと蹴りが激突した。

 あまりの衝撃にルルはよろける。


「今だ!」


 フィノの体から生えた触手が弱ったルルを拘束した。

 体力を奪われ大人しくなっていく。

 やがて、暴れるのをやめ眠りについた。


「よかったぁ……」


 疲れた顔で座りこんだフィノ。

 ルルの寝顔を見て力なく笑った。


「そうだ、ハイズは……?」


 リンネと戦っているのは分かっていたが、近くにはいないようだった。

 苦戦しているようなら助けにいかなければ、と立ち上がった時――"ソレ"は現れた。


『ウゴクナ!』

「……ハイズ!」


 呪術を使ったにもかかわらず、平気で拳を構えたフィノを見て、ハイズはその身を震わせながらうっとりとした笑顔を見せた。


「あああ……やぁっぱり効かないんだぁ。そうだよにゃあ、そうだよにゃあ、猫の首輪でドラゴンは縛れない……」


「リンネ先生はどうしたの!?」


「ご心配なく、エリザちゃんをアンデッドパワー! でブン投げたら慌てて助けに行ったにゃ。すぐに戻るんじゃない?」


「もうひとつ教えて! どうしてルルを騙して利用しようとしたの!?」


「も~う! 久しぶりに会えたのに怒っちゃダメダメ。戦う気は無いから座っていいよん。どうせミーじゃヤドリギさんには勝てないし、せっかくだからもっと楽しい話をするにゃ。前世で創った魔法を今生でも使うってのはどんな気分なのー? とか聞いてみたりして」


「訳わかんないこと言ってないで答えてよ! ラッシュヴァイン!」


 触手をさっと避けるハイズ。

 疲労とケガのせいで魔法にキレが無くなっていた。


「ん~~、まぁ教えてもいっかにゃ。元々ルルたちを作ったのはユーとセスを倒すため、利用するどころか存在理由がそれなの」


「あたしとお母さんを……」


「セスってばひどいんだよ? せぇっかくミーが作った器にヤドリギさんが降臨(こうりん)したのに、誘拐して独占しようとしたんだにゃ。だからユーの本当のお母さんはミーなの。ママって呼んで!」


「あたしは、いったい何なの……」


「それは自分自身が一番よく知ってるんじゃないかにゃ? 人間の魂では本来持ちえないエネルギーを有する宿り木の化身、今度こそ、必ず必ず必ず……ミーのモノにしてみせる」


 その場から飛び上がったハイズ。

 太い木の枝に乗り、さわやかに笑い手を振った。


「んじゃ、ミーはいったん逃げるから、また会おうね~! 絶対殺しに行くから忘れちゃイヤよん。今はフィリスの町に住んでるのかにゃ? いちいち探すのは面倒だから、引っ越しとかはしないでね。もし逃げたら……町の人みんな殺してミーのモノにしちゃうんだから。ではではーバイバーイなんだぁにゃあ~~~ん」


 とても楽しそうにそう告げて、ハイズは姿を消してしまった。

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