No title
「No title」
キャスト
遥
夏梅
亜優
上演時間
30~40分
プロローグ
舞台中央に机といすが二つ置いてある
学校の教室。誰も座っていない。
遥が出てきて、自分の席に座る。
手紙を取り出して、それを朗読する
遥 市川夏梅様。貴方が私の前から去り、もうすでに一年が経ちました。私は、貴方の帰りを待ち続けたけれど、貴方は振り向きもしなかった。私はとうとう一人になってしまったように感じたのです。だから、私は、ここを去ることに決めました。世の中を私一人で駆け抜けれるほど、私は出来た人間ではなかったのです。
夏梅が舞台後方に出てきて遥を見つめる
遥 だからと言って貴方を恨むような気持ちにもなれず、すれ違う前の自分達を思い出すのです。あの頃の自分達はどれだけ輝いていたかと。貴方が舞台で輝く姿に嫉妬し、羨み、そんな醜い自分を蔑み、嫌になり。それと同時に、貴方が私を選んでくれたことを誇りに思っていた。私はあなたに振り回されてばかりだったのです。でも、私の誇りは消え去り、一人ぽつりと真っ暗な劇場に残されたのです。貴方に向いたスポットライトを見失い、自分の道を見失い、そして、舞台と言う世界を見失った。でも、貴方は何も悪くないのです。全ては私の甘えと、傲慢さのせいなのです。だから、私は今日、ここから去ることを決めたのです。もうこれ以上、2人ですれ違う必要などないと思ったから。最後に…。貴方は私の――。
手紙を封筒に戻して、隣の机に置く。
遥 山南遥より。
OPナンバー
1
学校。遥と夏梅が並んで座っている。
遥がノートを広げて何かを書いている
夏梅が本を読んでいる
亜優が教室に入ってくる
亜優 おはよう!
夏梅 (本を閉じて)おはよう。
亜優 夏梅、朝練ないの?
夏梅 朝練?
亜優 卓球部の。運動部、みんな朝練朝練って言ってたよ。
夏梅 あぁ…。私、まだ入部届け出してないしね。
亜優 えっ?いが~い。ずっと、卓球部入りたいって言ってたじゃん。どうしたの?
夏梅 演劇部と、悩んでるだけ。
遥 ……(ペンの動きを止める)
亜優 あれ?演技好きだっけ。
夏梅 観る専だけど、別にいいじゃん。
亜優 でも、明日までだよ。入部届け。
夏梅 分かってるって。亜優は?もう出したの?
亜優 うん。楽な部活で有名なとこ。
夏梅 天文?
亜優 そうそう。楽にいきたいじゃん?週一だし、同輩も多いみたいだし。割と上下関係も緩めみたいだし。
夏梅 ふーん…。あっ、山南さん!
遥 (ノートを急いで閉じる)なんですか…?
夏梅 えっと…、山南さん、演劇部の仮入部来てたよね?入るのかな~って。
遥 …ごめんなさい。入らないです。
夏梅 あ~、そっか。ごめんね、突然話しかけちゃって。
遥 いえ…。
亜優 山南さんっていつも勉強してるよね~。やっぱり、外部生は違うか~。真面目だよね、皆。
夏梅 私達も頑張らなきゃって話だよ。
亜優 はーい。じゃ、私宿題してこよー。
亜優が上手へ去る
遥 中学受験をして入った学校には、付属の幼稚園や小学校から上がってきた内部生と私達外部生の間に何か大きな隔たりがあった。内部の子達はどこか派手で、私が苦手とするタイプ。外部生は外部生と仲良くするか、内部生の中に混じる為にすこし派手にふるまうかの二択だった。私は内部生が怖くて、一人静かにノートに向かっていた。
夏梅 山南さん、いつも何書いてるの?
遥 いや、えっと…。
夏梅 物語?
遥 …脚本です。
夏梅 脚本?舞台の?すごーい!
遥 まだまだ、勉強中なので…。
夏梅 へ~。自分で作るくらい好きなのに、演劇部入らないの?
遥 週四回あるし、勉強、着いて行けるか不安なので…。
夏梅 うわー、偉いんだね。
遥 そんなことは…。
夏梅 山南さんって面白いね。私達同級生なんだから、敬語なんていいのに!私、市川夏梅。気軽に夏梅って呼んでよ。
遥 これが、夏梅と私の出会いだった。
夏梅が机に突っ伏す。
遥がその横にノートを持って立っている
夏梅 ひえー疲れた。
遥 今日ミーティングだったんだっけ?
夏梅 うん。死ぬ。
遥 大丈夫。それくらいじゃ死なないよ。
夏梅 昼休み中ずっと正座だったんだよ~?
遥 はいはい。お疲れ様。
夏梅 くだらない伝統だよね、ほんっと。
遥 そうだね。
夏梅 遥、何かあった?疲れてる?
遥 ううん。あのね、私の
夏梅 (さえぎって)あっ、文化祭公演の脚本来たんだよ。読む?
遥 ……(少し悩んでから)読む。
夏梅 そうこなくっちゃ。(台本を手渡す)
遥 『貴方が羨ましいのです。私にない、全てを持っている貴方が。』
夏梅 何?セリフ?
遥 …うん。
夏梅 面白い?
遥 うん。
夏梅 私、最後の公演は遥の脚本使いたい。
遥 私の書いたもの読んだことないくせに。
夏梅 まあね。でも、誰よりも演劇が好きな遥が書いたものが面白くないわけないじゃん。
遥 っ…。これ、返す(夏梅に台本を押し付ける)
夏梅 何?照れてるの~?
遥 ……(黙ってノートを隠す)
夏梅 遥?
チャイムが鳴る。夏梅が慌てて教科書と筆箱を持つ
夏梅 遥。次、移動だよ。
遥 あぁ…。ちょっと、先行ってて。
夏梅 …どうか、した?
遥 ううん。本当に何でもないの。
夏梅 そう。なら良いけど。先行ってるね。
夏梅が下手へ去る
それを見送ってからノートを取り出す
遥 面白くなんか、ないんだよ。……『貴方が羨ましいのです。私にない、全てを持っている貴方が。』……羨ましいんだよ、夏梅。
遥が教科書と筆箱を持って下手へ去る
亜優 何か喧嘩でもしたの?
夏梅 え?
亜優 山南さん。元気ないし、前より夏梅と一緒に居ないかなって。
夏梅 そんなことはないと思うけど…。
亜優 教室移動、何でばらばらに来たの?
夏梅 たまたま、だよ。
遥、下手から出てくる
亜優の言葉で立ち止まる
亜優 何か、あの子不思議だよね。
夏梅 不思議?
亜優 演劇部、入らなかったじゃん。
夏梅 学業優先だったんでしょ
亜優 あれだけの演劇好き、そうそういないじゃん?演技も嫌いじゃないって言ってたんでしょ?もったいなくない?
夏梅 …演出とかにも興味あるって言ってた。
亜優 演劇部、何で入らなかったんだろ。学業優先だけなのかな。
夏梅 どうだろうね。
亜優 気にならないの?
夏梅 気になるけど、何でもいいや。
亜優 何それ~。私めっちゃ気になるんだけど。
夏梅 今、演劇部に居なくても、遥は私のパートナーだから。
亜優が上手へ去る
夏梅に遥がノートを渡す。
夏梅が座ってノートを見ている
遥が落ち着きなく動き回っている
夏梅 面白い。
遥 本当に?
夏梅 本当に。私、これすごく好き。特に双子のキャラクター!物語の中での癒し役って感じだし。でもストーリーもすごいしっかりしてるし、面白い。私、これいつか演じたい!
遥 そっかぁ…。
夏梅 ねえ、遥はさ。将来、演劇の道に進みたいとか、思ったことないの?
遥 …あるよ。ずっと、思ってる。
夏梅 そっかぁ。あるんだ。
遥 夏梅は?夏梅こそ、ありそうじゃん。
夏梅 私は、どうだろうね。ずっと演技をしていたいって、思うかも。
遥 何度も思うの。将来、自分の演技がスポットライトに照らされればいいな。自分の脚本が世の中で面白いと言われればいいなって。
夏梅 それは、いつから?
遥 わかんない。物ごころついたときには演劇が身近にあって、それで、気付いたらずっと考えてた。大きい劇場で演じられなくても良いから、小劇場で愛される劇団を作って、自分は座付き脚本家兼役者になって…。沢山沢山人の背中を押せるようになりたいの。
夏梅 ねえ、その夢。私も一緒じゃ、だめかな?
遥 え…?
夏梅 私、今年から演技を始めたばっかりだけど、遥の脚本をずっと演じたいって思ってた。今日、この脚本を見てそれは学校だけじゃもったいないって思った。もっといろんな人に見てもらいたい。それを演じるのは、私が良い。
遥 本当に、私の脚本でいいの?
夏梅 遥の脚本が良いの!
遥 夏梅の言葉があまりにも嬉しかった。だから、私は言ったんだ。一緒にやろう!私の脚本を最初に演じるのは絶対に夏梅ね。
夏梅 やったー!
遥、そっとノートを抱きしめるて下手へ去る
夏梅は喜びながら遥を見送る
夏梅 それから私と遥の計画は始まった。色々なことを考えた。どんなジャンルの舞台をやるか、どの年齢層を対象にするのか、最初はどうやって公演の為のお金を創るのか。2人で共通で応援していた劇団のことも調べて。どうやってできたのかも。2人で並んで登下校する時は、将来の理想を話すのがいつもで、ずっと楽しかった。観劇を一緒にしては、自分もあんな演技ができるようになりたいと話をした。こんな役をやってみたい、こんな役を書いて欲しい。好き勝手話しながら、それはどんなことより楽しかった。
チャイムが鳴る
暗転
2
遥 下手くそ…。(俯いてから)もう一回やらせてください。お願いします。『私が全部覚えてる。だから、私にやらせて!代役を立てなきゃいけないんでしょ?時間無いんでしょ?だったら、私に』(少しの間をあける)思ったように感情が乗らなくなった。わざとらしい演技。下手くそ。自分の演技への評価が脳裏に焼きついた。私に演技は、出来なくなっていた。
夏梅が遥を見つけて駆け寄ってくる
夏梅 遥!この前言ってたワークショップ、どうだった…、ってどうしたの?暗い顔して。いつもならもっと楽しかったって顔してるのに。ほら、笑いなよ~!
夏梅が遥の肩を叩く
遥がその手を払う
遥 夏梅。ごめん、ちょっとだけ、ちょっとだけ、一人にして。
夏梅 …ごめん。
夏梅が下手側へ移動する
遥 醜い嫉妬だって分かってた。下手なのは、自分のせいだって分かってた。ずっと私は演技が好きだったのに。夏梅なんかより、もっともっと早く演技を始めていたはずなのに。いつも間にか、演技に割く時間がなくなって、短期のワークショップに甘えて。
夏梅 次の、春公演の主役に、私…?本当に、ですか…?ありがとうございます!頑張ります!
遥が夏梅を見つめる
遥 いつの間にか夏梅は学年の中で一番演技が上手になって、中学一年生で高校生を差し置いて、演劇部の春公演で主役を演じることになった。中二の春。主役を演じた夏梅は学年を問わず人気者になった。私は、置いて行かれていた…。
夏梅が振り返る
夏梅 新作?
遥 うん。
夏梅 ……これ、シリーズもの?
遥 そのつもりだよ。
夏梅 これ、今までで一番いい!面白い!!
遥 ねえ、夏梅。
夏梅 何?
遥 私、脚本に少し専念しようかと思うんだ。演技は好きだけど、時間無くて、どっちかにした方が将来の為にも、なるかなって。
夏梅 ……そっか。
遥 面白いもの、沢山書くから!
夏梅 うん。楽しみにしてる!
遥が下手へ去ろうとする
夏梅 遥!
遥 何?
夏梅 私、外部の長期のワークショップに通うことにした。私、そこで、主演をもらったんだ。だから、観に来てくれないかな?
遥 すごいね、おめでとう、さすがだね。色々な言葉が頭の中では渦巻いたのに、言葉に詰まった。聞いてない。外部のワークショップに通っている?主演をもらった?何も、聞いてない。また、私だけが置いて行かれている。
夏梅 遥?
遥 おめでとう!すごいじゃん!絶対、行くね。
夏梅 ありがとう!楽しみにしててね!
遥 ねえ、夏梅。私を置いて行かないで。隣に居させてよ。一緒の夢を歩んでいるはずなのに。どうして私…。貴方はそんなにも前に進んでいて、私は足踏みをしているの?書かなきゃ。書かなきゃ。面白いものを。次を。夏梅に読んでもらわなきゃ。……ううん。夏梅に、じゃない。世間に認めてもらわなきゃ。
暗転
3
夏梅と亜優が携帯を覗き込んでいる
亜優 ネットアイドル「キャンディドール」…?遥そんなのやるの?
遥 いや、絶対やらないけど…。
亜優 びっくりした~。
夏梅 これがどうかしたの?
遥 脚本を書かせてもらえることになった。
亜優 脚本?!それ、バイトとかにならない?まだ中三だよ?
夏梅 いや、高校生でもこの学校バイト禁止だよ。
遥 お金貰わないから。所謂ボランティア。でも、これなら、私の脚本の世間の評価が見えるから、もっと面白いもの書けるようになるかもしれないと思って。
夏梅 すごくいいと思う!え~、遥もついにデビューだね!おめでとう!楽しみにしてるね!
亜優 私も楽しみにしてる~。なにげに遥の脚本って見たことないんだよね。どんなの書いてるの?
夏梅 遥の脚本、凄い面白いんだよ!同い年が書いたとは思えないくらい、話しはしっかりしてるし、キャラクターはキャラぶれしないし。
亜優 夏梅べた褒めじゃん。
遥 まだまだ。これから、だよ。(携帯を夏梅から受け取る)そう、これからのはずだったのだ。
夏梅 えっ…?グループが解散?
遥 プロデューサーが、逃げたの。ネットアイドルの中だと良くあることなんだって。
亜優 うわっ…。こわっ…。
遥 でも、まだメンバーさん達はやるつもりでいるみたいだから、大丈夫だと思う。しばらくは難しいかもしれないけど。
亜優 再開したらちゃんと連絡頂戴よ?楽しみにしてんだから。
遥 ありがとう。
亜優 じゃ、私日直の仕事あるから。
夏梅 ん。じゃあね~。
遥 また明日。
夏梅 家の学校の演劇部にさ、プロの役者さんになった人がいるの知ってる?
遥 うん。お話ししたことあるし。
夏梅 その人から、稽古場の見学に来ないか誘いが来てるんだけど、一緒にどう?
遥 一緒に、行っていいの?
夏梅 もちろん。一緒に行こう!
遥 うん!ヤバいね。テンションあがる。
夏梅 あっ、あの作品の続きってまだ書いてないの?
遥 …最近、ちょっとスランプ何だよね。ごめん、出来たらすぐに見せるから。
夏梅 ほんと、楽しみにしてるから!
遥 分かってる、って。
夏梅 じゃあ、また明日。
遥 また明日。
夏梅が上手へ去る。
亜優が下手から出てくる
亜優 私さ、遥と仲良くなれる自信なかった
遥 私も。てか、内部生と仲良くなれると思ってなかったもん。
亜優 唐突に現れて、私から夏梅を取ってくし。どうして、演劇部に入らないのかも分かんないし。
遥 学業優先だったんだよ。本当に。でも、正直、自信がなかったんだよね。自分の演技が否定されるんじゃないかって。
亜優 ふーん。自分の演技が否定されない世界って何か甘くない?
遥 今ではそう思うけど、あの頃中一だしさ。ちっちゃかったんだよ。
亜優 今では平気なの?
遥 もう、否定されたよ。もう何も残ってない。だから、ネトアの脚本だけは成功させたいんだよね。
亜優 応援はしとく。
遥 ありがとう。
亜優 あのね。夏梅、あんたのことパートナーって言ってたんだよ。
遥 …知ってるよ
亜優 その割には、なんか…2人すれ違ってるよね
遥 え……?
チャイムが鳴る
暗転
4
2人が向かい合って座っている
夏梅 この前、稽古場を観に行って考えたことがあるの。
遥 私もある。
夏梅 先に言っていいかな?
遥 何について言うのか、私は考えを膨らませた。やっぱり、話にはインパクトを入れないとね。時代が混ざってるのおもしろいアイデアだよね。演出家さんの指示が全部細かくて、私たちもっと勉強しなきゃだめだね。色々なことが頭の中を駆け巡った。
夏梅 私は、稽古場を見る前から少し考えてた事なんだけど、稽古見てて、プロってやっぱり凄いって思ってさ。それでさ、私小劇場で終わりたくないなって思った。
遥 え?
夏梅 私、帝劇とか、大きい劇場を目指すことにする。
遥 笑顔でそう言う夏梅はひどく綺麗で、私は何も言えなかった。
夏梅 遥の夢は否定しないよ。小劇場、素敵だと思う。遥の脚本を演じたいのも本当。でも、やっぱり大きい劇場に立ちたいなって思った。
遥 (間を開けて)そっか…。私は、それを止める権利はないし…。応援、してる。
夏梅 ありがとう!遥が考えた事って何?
遥 ん~。色々ありすぎて、まとまらないから、まとまったら話すね。
夏梅 遥の着目点って面白いから、聴けるの楽しみにしてるからね
遥 任せてよ!
夏梅 じゃあ、今日はありがとう。
遥 こちらこそ。
夏梅が上手へ去る
遥 いつから、私の夢だったの…?いつから2人の夢じゃなくなってたの?いつから。いつから…。私は、ずっと夏梅の為に書いてたはずなのに。私の脚本を演じるのは必ず夏梅が最初だって約束だったはずなのに…。何で、こんなことになってんの…?
チャイムが鳴る
5
遥が一人で座っている。手元にはノート
静かにノートを破いていく。
感情の入り混じった顔をしている。
遥 あれから半年がたった。私は高校生になって、今も夏梅は外部のワークショップでも、演劇部でも、実力を誇っていた。私は、結局何も残せないまま…。
遥が下手へ去る
夏梅・亜優が上手から出てくる
亜優 おはよーって、遥まだ来てないじゃん。
夏梅 いつも、この時間には来てるのにね。
亜優 珍しく寝坊かな?
夏梅 (机の上にある手紙を手に取る)手紙?
亜優 誰から?
夏梅 遥からだ。
亜優 何それ。こわっ…。
夏梅 昨日私達一緒に帰ったよね…?てことは、朝置いたって事…?
夏梅がゆっくりと手紙を取り出す
夏梅 市川夏梅様。貴方が私の前から去り、もうすでに一年が経ちました。私は、貴方の帰りを待ち続けたけれど、貴方は振り向きもしなかった。私はとうとう一人になってしまったように感じたのです。だから、私は、ここを去ることに決めました。世の中を私一人で駆け抜けれるほど、私は出来た人間ではなかったのです。
遥が出てきて、夏梅を見つめる
遥・夏梅 だからと言って貴方を恨むような気持ちにもなれず、すれ違う前の自分達を思い出すのです。あの頃の自分達はどれだけ輝いていたかと。貴方が舞台で輝く姿に嫉妬し、羨み、そんな醜い自分を蔑み、嫌になり。それと同時に、貴方が私を選んでくれたことを誇りに思っていた。私はあなたに振り回されてばかりだったのです。でも、私の誇りは消え去り、一人ぽつりと真っ暗な劇場に残されたのです。貴方に向いたスポットライトを見失い、自分の道を見失い、そして、舞台と言う世界を見失った。でも、貴方は何も悪くないのです。全ては私の甘えと、傲慢さのせいなのです。だから、私は今日、ここから去ることを決めたのです。もうこれ以上、2人ですれ違う必要などないと思ったから。最後に…。貴方は私の。
夏梅が上手へ走り去る。その後に亜優が続く
遥にピンスポ
遥 貴方は私の、光であり、全てでした。山南遥より。
暗転
チャイムが鳴り響く
初めまして。*yudukiと申します。
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