雲の上の都市
(俺はまだギリギリ20代だ。)
誕生日まで3ヶ月程度しかない残り少ない20代を根拠に内心でおじさん認定を否定しつつ俺は振り返って声を掛けてきた方に首をを向ける。
そこには30間近をオジサン呼ばわりできるだけはある若々しいコスプレコギャル・・な女性がいた。服装は中世風ではあるが、どちらかというとゲームに出てくる戦士のようなビキニアーマー的な格好で目のやり場に困る。男のサガで一瞬胸の谷間に目がいってしまった。慌てて視線を動かす。
茶髪で肩ほどまで伸びているであろう髪をアップでひとまとめにしている。やや小麦色に焼けた健康的な肌で目の色は青い。
目線が合うとニッと八重歯をだして笑った。
(認めよう。おじさんには眩しい若さだ。)
「えっと、なんでそんな格好?なぜ初心者だとバレた?」
脳内で抵抗と降参を瞬時に行いつつも、声を掛けられた反応として質問を返す。
「現代の格好はこっちでは浮くし?慣れてたらそれなりに違和感ない格好で来るよ。あとキョロキョロし過ぎ。初心者まるわかりでしょ。とりあえずマント貸したげるから着といたら?」
「そ、そうか。ありがとう。・・話通じてるし日本人だよな?」
コスプレコギャルが何処からともなく出したマントを受け取りつつ更に質問を重ねる。
「アハハ。話が通じるからって日本人とは限らないでしょ?まあ、髪は染めてるし、眼はカラコンだし、日本人で合ってるけど。」
ガコン
その時、停止音と思われる音が響き僅かに体に横からの力を感じた。
ゴウンゴウンいっていた謎の駆動音もいつのまにか止まっている。
「お待たせしました。空中都市グラディスに到着しました!快晴旅行社サンデーのご利用ありがとうございました。」
外へと続いていそうな部屋のサイドにある扉が開け放たれて先程の船員?がその側に立って乗客を送り出している。
「初回がグラディスっておじさん運がいいね~。せっかくの観光スポットだし宿泊先ぐらいなら案内してあげようか?」
「それはありがたいな。・・・正直自分の置かれている環境に理解が追い付いていない・・・。」
コギャルと話を続けるためコギャルの後を追いつつ扉から外へと出る。
正直のセリフの前で外の景色が目に入る。
まず見えてきたのは一面の青い空だった。
空以外で見えるのは足場だけだ。例えるなら海辺の島の先端にいるような感じだろうか。ただ海はなく眼下に広がっているのは何処までも続く青い空だ。雲も点々とあるので、空で見間違いということはないと思う。足場である桟橋は頑丈な金属製に見えて崩れそうにはないのがありがたい。
柵が船?と桟橋を繋ぐタラップ部分にしかないので非常に恐る恐る前に進む。
「早くしてくれたまえ?」
いつのまにか後ろには恰幅のいい商人風の男性が立っていた。もちろん?西洋の顔立ちだが、日本語だ。
「す、すみません。」
しかし、余裕のない俺は咄嗟に日本人気質を発揮して謝罪を口にしただけで日本語を喋っている事を気にする事はなく足元を見つつ出来る範囲で歩みを早める。
「ププツ。慌っぷりがすごいね。」
コギャルが桟橋の先で待っていてくれて声を掛けてくる。
「まあ、ゲームと違って風景だけでも迫力が段違いだしビビるのはしょうがないよね。私もちょっと足がガクガクするわ。」
「ゲーム?」
「え?うっそ?ゲームからの旅行者じゃないの?ウルトラレアじゃん。」
「??」
「じゃあ、なんで飛空挺に乗れてるんだろ?」
「飛空挺?」
「うん。後ろにあるじゃん?乗ってきたのが。」
桟橋の方を振り向くと桟橋には木造の船が浮いていた。何故浮いているのか分からない感じの造りで、まさにゲームに出てきそうな飛空挺だ。
「飛行機に乗ってたハズなんだが・・。」
「へぇ~。そういうパターンもあるんだ。とりあえず宿泊先に向かって歩きつつ説明するし、チケットの宿泊先はスカイホテルになってる?」
色々そういう不思議なパターンがあるらしい。
簡単に受け入れられてしまった事で、
俺も普通じゃない体験をしているまっ最中なのにそういうものなのかとふと受け入れ始めている自分がいる事に気付きつつポケットにしまっていたチケットを見る。
「そうだな。そう書いてある。おかしいな。さっき見たときは書いてなかったような気がするんだが。」
「そのチケットはスケジュールに沿って内容が変わるからね。」
そう言ってコギャルは歩き出した。
これがスマホの画面なら別に驚きはしないのだが、触っているチケットの手触りは紙以外ありえない感触だった。