夢の始まり
第1章 主人公は死にかける
第1話 夢の始まり
しがないサラリーマンが飲んで帰宅。どこにでもある風景だ。いつも通りに日課のポイントサイトへアクセスする。このサイトは会員になったり、クレジットカードの契約で少額のポイントが謝礼で貰えるので小遣い稼ぎに利用しているのだ。
その日は酔っていたせいか
高額ポイントに釣られて得たいの知れないカードの契約を行った。得られるポイントは10,000,000ポイント。さすがに高過ぎだ。普段なら余りの高額っぷりに逆に不信感を覚えて契約しないだろう。酔った勢いでろくに契約内容を読むことなく作業を完了させるとその場で使えるプレミアムガチャ権が得られた。と画面に表示される。サイトのサービスにこんなのあったかな?とも思ったが、高額ポイントが貰える場合はボーナスが付く事もあるので、そんな感じのものだろうと1人納得してガチャを引くと猫の神様ケット・シーが当たった。
「おめでとう。君は第2の人生を引き当てたニャ。君は常人の2倍の人生を得る事になるニャ!詳しく説明すると・・・・・・・
ポイントサイトの特典にしてはやけに長くて意味のわからない説明をケット・シーを名乗る猫のイラストが延々とモニターに羅列していく。当たった当人は飲んだ酒の効力と細かい文字の羅列を読む事で夢の世界へと旅立ってしまった。
・・・。
体が思う通りに動かない。やけに視界がぼやける。何か話し声が聞こえるが、声もうまく聞き取れない。謎な状況のまま一時間ほど経過しただろうか、近くに大きな人影が見えた。次の瞬間口許に何か柔らかくて人肌なものがあてがわれる。本能的にそれを口に入れてむぐむぐとすると何かうまい液体が口の中に溢れる。
ああ。これはあれだな。赤ちゃんの記憶だな。やけに再現度が高いな。と思いながら母乳と思われるものを飲んでいると眠くなってきた。赤ん坊の夢の中で更に眠くなるとは謎な夢だなとは思いつつ睡魔に勝てずに寝る。
夢の中で、更に寝たら夢から覚めるかと思ったのだが、夢の中の睡眠から覚めても相変わらず視界が悪い。なんだかアホな事を言っている気がするが、確か生まれてすぐの赤ん坊は視力が悪いからそういうことなのだろう。母親が時々顔を覗きこんでくれて何か話しかけてくれているが内容がわからない。耳も未発達なのかあまりいい聞き取り状態ではない気はするが、母親と思われる女性の声は割とハッキリ聞こえる。だが知らない言語のようで全然わからない。母親の顔立ちは西洋風で、金髪に碧眼だ。ほぼ日本語しかわからない人間だが、さすがに英語ならヒヤリングで何か単語が拾えてもいいはずだが、英語でもないようで理解不能。まあ、赤子なのでわからなくても問題はないか。しかし、長い夢だ。夢の中なのに忠実に時間が再現されているのか、三回ほど授乳したあと室内が暗くなり日が暮れてきたのが分かる。ほぼほぼ動けないし暇すぎる。いい加減この夢終わらないかな・・・。
・・・。
・・・。
はっ!?
やけにリアルな夢だった。
鳥がチュンチュン言っている。
すでに朝のようだ。
サイトを閲覧中に寝てしまっていたようでパソコンの電源が入ったままだ。昨日は飲み過ぎたようだ。
で、なければ、頭にネクタイを巻いたりはしないだろう・・・。
すでに出社準備をしないといけない時間帯なので、俺は素早く状況を把握してシャワーを浴びいつも通り会社に向かった。
変な夢を見だしたのは確か火曜の夜からだったか、ようやく週末にたどり着いた・・・。
いや、揶揄抜きに長いのだ。あれから毎日同じ夢を見ている。内容は違うのだが、問題は夢を見ている時間が長い。
赤ん坊で寝てるか暇してるか、母乳飲んでるかなのだが、どうも一回の夢の時間がきっちり24時間あるようで時間が経つまで目が覚めない。起きると普通の睡眠時間しか時間が経過していないので、やはり夢なのだろうがそう言うわけで週末になるまでにやけに長かった。
今日は土曜日の朝で代わり映えしない、暇で長いゆめを見終わったところだ。
パソコンの電源を付けてポイントサイトを眺めている。
「なんか、怪しい高額案件を酒の勢いで受けた気がするんだよな。起きた時もこのサイトを開いてたし。」
記憶を頼りに探してみるがポイントサイトに記憶と合致するカード契約の案件は見つからない。
「ポイントも変化ないしな~。履歴を確認するか。」
ブラウザの履歴も動的な生成なのかそれっぽいURLにはアクセス出来ない。
次にポイントサイトの通帳を確認する。
「ん?」
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ワッツポイント 324P(1P=1円)
ケットシーポイント 10000000
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こ、これだな。
ワッツポイントは知っている。ポイントサイトワッツのポイントで電子マネーやなんかに交換出来る。300Pから交換可能で現金にしたい場合は1000Pからだ。
ケットシーポイントは知らない。怪しい高額ポイントをほくほく気分で受けた気がするが、単価が違うパターンだったか・・・。
ガックリした気分でケットシーポイントにリンクが張られていたのでそのリンクをクリックする。
恐らく交換レートが駄々下がりであろうと予想してリンク先を見るが、その内容は予想と全然異なっていた。
■スキル交換リスト
※取得条件を満たしていないものは表示されません。
現在取得可能なスキル
□スキップ(オート)
乳幼児の時期に限り過去に経験がある場合にイベントとしてスキップ(時間経過)させる事が出来ます。
※体感は一瞬になりますが、実際には時間が経過しています。
※大変不評であった乳幼児時期の救済スキルなため乳幼児時期しか使用出来ません。
なんだこれ?
主人公はそのうち死ぬ予定ですが、第1章ではまだ大丈夫です。