9話 唐突な不調
お楽しみいただけると嬉しいです。
ご飯を食べたあと、僕が寝ていた部屋で食休みをしている。
別に食べすぎたからではない。とても美味しかったが、スープとパンと軽めの昼食だった。僕はこのくらいの量が丁度良い。昨日の晩ご飯は食べ過ぎた。
食休みにしてもらった理由は、先ほど思いついたことを試すためだ。
あまりおおやけにするなと言われたばかりだし。
僕は創造する。そして生成。
なにも起こらなかった、失敗。
もう一回。
僕の右手の人差し指に一つのコンタクトレンズ。
右目のレンズを外し、鑑定レンズをつける。
そして鑑定してみるとそこには
学習レンズ
理解 lv1
吸収 lv1
「よし、できた!」
《理解》
物事の理解力が高まる。集中力が上がる。
《吸収》
理解した物事の吸収力が高まる。脳への負荷減少。
そう、この学習レンズをつけて勉強すればすぐに言語が覚えられる。はずだ!
ただlvが1だから微々たる物かもしれないんだよなー。
こっちも直ぐにlv上がらないかな…
今のところレンズのlv上がって無いんだよなー…というかlvが上がったらどうやってわかるんだろう?天の声が聞こえたり、
目に表示されたり、音が鳴ったりするのだろうか?
もしもどれでも無かったら、いちいち使った後に確認しないといけないことになる。
非常にめんどくさい。
…ん?音?さっき鳴ってなかった?!
《読眼》のスキルを使ったあとに鳴った気がした。
もしかするともしかして!?
通訳レンズ
通訳 lv1
読眼 lv2
上がってる!上がってるよ!!結構使ったもんな!!
やった!初のlvアップだよ!
ただlv上がったところで説明がないみたいだ。
鑑定で見てみよう。
《読眼》
意識した文字の発音が装着者のわかる文字で表示される。表示はコンタクト自体にされる。
特に変わらないか…使ってみればその違いが分かるのかもしれない。
午後の勉強で使ってみよう。
1日でlvが上がったのは早いのだろうか?わからないけど、あれだけ集中して最後の最後で上がったからそれなりの経験値は必要だったんだろう。
もっと早くlvが上がればいいのに。
特に今生成した学習レンズの《理解》と《吸収》のlvは早く上げたい。
異世界人なら経験値上昇とか必要経験値削減とかよくあると思うんだけど、神さまは異世界語の習得もくれなかったし、ないものねだりしても仕方ないか。
コンタクト生成だけでも十分ありがたいし!
鑑定も出来るし、魔眼なんてかっこいいいことも出来たし!
わからない言葉もわかるようになったし、なんでもできるな。
「…おろ?」
なんでもできるなら、スキル経験値上昇とか必要経験値削減なんかもできるのでは?!
え、まさかの?!本当に?!
出来てしまうのではなかろうか!
ヤバイテンションウナギのぼりやわいな!!
よし、落ち着くんだ僕!
落ち着いたぞ僕!
ならばやっていけ僕!
目を閉じて創造する。
目を開けると…
「なにも無い!!」
なんか感覚で出来るものと出来ない物の違いがわかってきた気がする。
スキルという括りだと全スキルだからダメなんだと思う。
ならば!
また目を閉じて創造する。
目を開けると、見慣れたコンタクトレンズが一つ。
そして
ピロン
という音が、またしても鳴った。
lvの上がる音だ。今したことと言えば、コンタクトを生成しただけだが…。
あ、つまりそういうことか!
自分を鑑定してみる。
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名前 鈴野 優衣 (人族)lv1
HP 10/10 MP 515/800
[筋力]12
[防御力] 8
[俊敏]14
[器用] 7
[魔力] 3
[幸運]56
[スキル]
[サブスキル]
<吸魔:1><鑑定:1><解読:1><記眼:1><通訳:1><読眼:2>
[エクストラスキル]
<コンタクトレンズ生成:2>
[称号]
<コンタクトレンズ生成者><招かれた者>
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コンタクトレンズ生成が2に上がってる!!
波に乗ってしまっているのではないか?!全力で乗ってますよ。えぇ。
ただ、2になったけど、どういう効果が付いたのかはわからない。
ここも色々と試さないと行けないな。
やることが多すぎて困っちゃうなぁ(歓喜)。
さらにサブスキルが増えているし、読眼のlvも2として表示されてる。
ここでlvが上がったかを確認すればよさそうだな。毎回コンタクトレンズ取るのもめんどくさいし。
そういえば、生成したコンタクトレンズがそのままだった!
lvが上がったことに気を取られすぎて忘れちゃってた。
鑑定してみる。
吸収レンズ
吸収 lv1
吸収経験値上昇 lv1
鑑定しなくてもわかるだろう。
そう、吸収のスキル限定だが得られる経験値が上昇するのだ。
これで、吸収スキルのlvが上がりやすくなっただろう。
前にも考えた通りlvが1だから微々たる物の可能性が拭えないが、無いよりはましだ。
理解の方のレンズも生成しなければ。両目につけることになってしまうが、
勉強しているときは大丈夫だろう。でも話しかけられたら、何を言っているかわからなくなる。
そのときは...あれ?どうしよう?!
コンタクトレンズのことは秘密にしていくから、人の前で外したり付けたりは出来るだけ避けなければいけない。
ディンさんとの約束でもある。レアなスキルは教えない方がいい。
それをディンさんに話してしまえば約束を目の前で破っている様なものだ。
さらには知ってしまったことで、迷惑をかける可能性すらある。
誰かに教えるときがくるとしたら、背中を預けられるような、大切な存在達だけにしたい。旅の仲間みたいな!
そんな存在が現れるかわからないけどね!
うぅむ、どうしようか。
そういえば神様が何か言ってなかったか?
確か...
「入れ物は...そうじゃの空間ポーチも使えるようにして直接空間ポーチへの出し入れが出来るようにしておくかの。」
だったっけ?
うん、合っているはずだ。
直接空間ポーチへの出し入れ...ってことは、付けているコンタクトレンズをそのままアイテムボックスに入れられる
のだろう。さらには、付けるのも同様と...
いつもは外して、指の上でやっていたのだが、それを目に付けたままか。
ちょっと怖いがやる価値はある。いや、やる価値しかない!
目を閉じ、右目に入っている鑑定レンズを意識。
鑑定レンズが仕舞われて行く感覚。
目を開けるとボヤけた視界。外すのはできたみたいだ。
次に鑑定レンズを右目に付けるイメージだ。
また目を閉じ、鑑定レンズを右目に付けるイメージだ。
目を開けると、クリアな視界。
「これで解決だ!!」
そんなに難しくなかった。手の上でやっていることと同じだ。
「人体の中に入っちゃうんじゃないかって心配したけど、大丈夫だったな。神様がなにかしたのかな?」
通常はそういう使い方が出来ないけど、出来るようにしてくれたのか?
考えてもわからないか。
「神のみぞってね。」
とりあえずこれで、人前でもコンタクトレンズを切り替えられる!
これで秘密にしていけるな。神様に感謝だ。ありがとうございます。
なにかを忘れているような...
「あ!理解レンズ生成だ!」
僕の悪い癖だ。
横道に思考が逸れてしまい、本来のするべきことを忘れてしまう。
と言っても、人並みだと思っているが。僕がそうならみんなもきっとそうだ!
僕は至って平凡なイッパンピーポー。
「枝葉に走るってね。」
...うん、生成しよう。
僕は今まで通り、目を閉じイメージしていく。
理解と理解経験値上昇。...そういえば経験値上昇にもlvが存在しているんだよな。
もらえる経験値がlvが高いほど多くなるのだろう。ならば経験値上昇スキルのための経験値上昇スキルなんかもできてしまうのか?経験値上昇スキル(のための)経験値上昇スキルみたいな?
もしもそういうスキルを作って名前を付けるとしたら、経験経験値上昇とか?
なんか笑っちゃうな。
目を開けるとコンタクトレンズがある。
しっかり出来たようだ。
鑑定する。
理解レンズ
理解 lv1
理解経験値上昇 lv1
経験経験値上昇 lv1
おー、出来た出来た。経験経験値とか見るだけで笑えちゃうな!ハッハッハッ。
...じゃない!スキルが3つある上にさっき考えてたバカみたいなスキルまであるんだけど!
いや、すごい便利そうだけども!
多分、コンタクトレンズ生成のlvが上がったことによって付けれるスキルが増えたのだろう。これは嬉しい。
2に上がったことで上限が増えたのだ。上限いくつになったんだろう?
もっとバカみたいなこと考えておけばよかったな。
「しっかし生成してからこういうことに気付くと損した気分になるな。」
ゲームでスキルポイント振れるのにそのことに気付かず、終盤あたりでそのことに気付いたときのようだ。
序盤で気付けただけマシか!そうに違いない。
それを試すのもよさそうだ。
この生成した理解レンズに、さらに付与って出来たら便利だよな。
結果だけ言うと出来なかった。
生成された物に対して付与は出来ないみたいだ。
生成している最中にのみ付与ができるのか。
んー、使い勝手が悪...くは無いか。また作ればいいのだし。経験値ももらえるし。
消費MPは多いけど。
さて、いくつ付与できるのかを検証するのと、今必要なスキル...。
学習レンズをもう一つ作るか。
目を閉じて集中。3つまでは付与できる。
ならさらにプラスで...
よし、これでいいだろう!生成!!
いつも通り指の上にコンタクトレンズができている。
が、それどころではない。
「う゛、うぐっ!っ!」
頭痛、めまい、吐き気。大量に吹き出る脂汗。
唐突に起こった現象。なんだ?!なにが起きた?!
苦しい。今さっきまでは普通だったのに!
この感覚はあれに似ている。
長時間、自分の限界を超えて走った時に起きるあれだ。
原因は酸欠や貧血。
いや、あのときよりもヒドイ。
とにかく気持ち悪い、頭が痛い。吐き気がするが吐けない。なにも考えられない。
バランスを崩し床に倒れる。すると
「ユーイ!」
クレアちゃんが焦った様子で部屋に入ってきた。どうやら僕を観察していたようだったが、突然に倒れた僕を心配して声をかけたのだろう。
が、今は言葉を返せそうにない。
荒い息を吐いていると遠くの方で音が聞こえたが、何の音か認識すら出来ない。
あれ、これは普通に不味いのでは。なにかの病気にかかった?一瞬で?
もしくは悪意あるものの精神攻撃?知らないうちに呪いを受けた?
様々な憶測が浮かぶが一瞬で消え去る。
頭にモヤがかかり、意識がおぼろげになっていくが意識を失える気がしない。
軽い拷問じゃないか。
とりあえずは目の前に落ちているコンタクトレンズをアイテムボックスへとしまう。
無くしても困るからな。
自分を鑑定すれば原因がわかるかもしれない。
が、うまく集中出来ず一瞬しか表示されなかった。更に具合が悪くなる。
頭がガンガンする。右に左に揺さぶられているようだ。目が回り、さらに気分が悪くなる。
またしても音がする。先ほどよりも近かった気がするが、もうなにがなんだかわからない。
ただ誰かに支えられている気がする。
「#жл☆〇、Ш△。」
誰かの声がして、僕は意識を手放した。
クレアちゃん、まさかの覗き…笑
でも子供は知らない人が来たら隠れて様子見てますよね。
最後までお読みいただきありがとうございます。