16話 ランクと模擬試験
とてーもとてーも遅くなりました。
待っていてくれた方々ごめんなさいでした。
「それでは、冒険者登録の際には模擬戦がございます。こちらで用意している教官の方との手合わせ後、ランクを決めていただきます。」
この世界の冒険者は実力によってランクが決まるらしい。ランクは数字で0から始まり6が一番高いランクだそうだ。簡単に説明すると
0:駆け出し
1:初級者
2:中級者
3:上級者
4:熟練者
5:英雄級
6:伝説級
6の人は現在存在せず、5は数える程度しかいないそうだ。ランク2、3がたくさんいるみたいだ。
話を聞けば、実力のある者にずっと薬草採取や家事の手伝いのような雑用をさせるのは勿体ないという理由かららしい。ただ、初めての登録の際は実戦経験も少ないため実力で決まったランクから一つ落としたところからのスタートになるらしい。今回が初めてだから一つランクが下がるのか。
ふむふむ、なるほどな。でも出来れば薬草採取なんかもしたいんだよな。まぁ、それは模擬戦の結果のあとに考えよう。
「それでは、こちらへどうぞ。」
立ち上がったシルエットさんは受付の横にある扉を開けながらそう言った。
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「こちらで、模擬戦をしていただきます。」
仕事があるのでと言い残し元来た道を戻るシルエットさん。それにありがとうございますと答えて目の前の男の人を見る。
「ふむ、登録希望者が来たか。俺はテチ。模擬試験の相手役兼ランクの判断を担っている。ランクアップする際にも俺との試験がある場合があるから何回か顔をあわせることになるだろう。」
スキンヘッドの30代後半くらいの男性で筋肉がやばい、テチさんか。顔はちょっと怖いけど説明も丁寧だし悪い人ではなさそうだ。
「僕はユウイと言います。よろしくお願いします!」
僕はそう言ってお辞儀をした。礼儀正しく、第一印象大事。
「…随分と礼儀正しいな。ただ貴族ってわけでもないみたいだな。まぁいい。そっちに木製の武器が置いてあるから扱いやすいのを選べ。準備が出来たら呼べ。」
「はい!」
見てみると、剣、盾、斧、ダガー、大きなハンマー、槍、杖と様々な武器が置いてあるがやはり刀はないんだな…。
剣を持って見ると木製だからか片手でも扱える重さなので、ダガーを左手に持つ。んー、違和感しか感じないのは刀じゃないからなのか。実際に持って振り回してたわけじゃないからか?後者だと見た。
「あの、準備出来ました。」
腕を組み目を瞑っているテチさんに報告すると目を開けて僕の持っている剣とダガーを見る。
「…二つの剣を使うのか。長さの違う得物はあまり見ないタイプだな。」
そうなのか…妄想だといつもこれだからな。ヤバイ、すごい緊張してきた!初めての実戦じゃないのかこれ?!
「早速始めよう。殺す気でこい。」
なかなか物騒なことを言っているが、とりあえず頷く。
「それでは、行きます!」
そう言い、妄想とは違う走り出しで駆けた。少しジャンプをし、剣を上から振り下ろす。が、一歩下がってやり過ごされたのでそのまま一歩踏み出し横薙ぎに剣を振るうとテチさんも同じ木剣で軽く受け止め、軽く上へと弾いた。ように僕からは見えたんだが僕の右手は万歳状態まで打ち上げられている。
「え…」
「…隙だらけの状態で固まっているとやられるぞ。」
そのまま持ち手の方の部分でお腹を突かれた。
「ーーー…ッ!ッゴホッ!」
やば、一瞬意識飛んだっぽい。
「ゲホッゴホッ!」
しばらく咳き込む。
つ、強すぎ!威力がじゃなくてもう全部が!勝てる気がしない。いやその思考すら馬鹿馬鹿しいほどの差。次元が違う。地面から顔を上げると、テチさんは五メートルほど下がった位置でこちらを見下ろしている。体が震える。恐いのだ、ビビっているのだ。逃げたい。だが…
僕は小さくため息をつきながら、二つの剣をそのまま床に置いた。
「…む?」
その様子を見ていたテチさんが訝し気にこちらを見ているが今はやらないといけないことがある。最初にやっておくべきだったな。敵の目の前で武器を手放すことはしないのが当たり前だが、模擬戦だし攻撃はしてこないと信じよう。
息を止め、目を閉じて、腕を上に伸ばしながら息を吸った。
「すぅ、よし!」
そして目を開け二つの剣を再び持ち構える。おまじないだ。
これは模擬戦なのだ。痛い攻撃は受けるかもしれないが死にはしない…はずだ!
「行きます!」
いつも通り行こう。ここでは普通のことなんだ、恥ずかしがる必要はない。殺す気で来い、というのはそれだけ僕たちに差があるから全力で挑めということなのだろう。妄想の時と同じ動きでテチさんへと斬りかかる。上から下へ、剣を振り下ろすとまたしても剣で受け止められたので、弾かれる前に剣の先をこちらに少し傾けて滑らせながら左前へ踏み出し距離を更に詰める。左手に逆手で持っているダガーを首目がけて振るうとテチさんは右腕で正確に僕の手首部分にぶつけて攻撃を止めた。ここで攻撃の手を緩める訳には行かないよな。滑らせ終わった剣を手首を回転させ、左半身の後ろ側へと剣先を持ってきて、持ち手部分での攻撃を試みる。
が、これは一歩後ろに下がってやり過ごされたのだが実はこれが狙いだったりする。手首を外側へと捻り持ち手での攻撃をキャンセルし、剣での攻撃へときりかえ、横っ腹を狙う。これは当たっただろう!と思ったがテチさんの動きが見えなかった。気づいたら剣でガードされており、またしても上へと弾かれてしまった。
「っ!っく!」
さっきと同じビジョンが見えたので咄嗟に左手のダガーで攻撃をするも手首を掴まれてしまった。
「い、っつ!」
手首がギシギシと嫌な音をあげる。あまりの痛さにダガーを落としてしまった。左足で腹を狙った蹴りを入れるも膝でガードされてしまった。詰んだか?!いや、一か八かだ!
左手は固定されており左足も固定されているので出来るはずだ。左腕の力を抜き後ろ側に重心を置き、浮かび上がり右足でテチさんの顎を狙い、蹴る。言ってしまえばサマソである。
だが左腕を離され後ろに下がって回避されてしまい、支えをなくなった僕の体はそのまま自由落下をして頭から落ちそうだったので右手の剣を離し頭を庇う。
ドスン
「いって〜…。」
右腕で咄嗟に庇ったせいか右腕がものすごく痛い。
顔をテチさんの方に向けると顎を軽く撫でてから剣を僕の首元につけた。
「っ!…参りました。」
「…うむ。」
模擬戦はこうして終わったのであった。
そして僕はこのときに決めた。
この人を越える!負けず嫌いなのだ、僕は。
ずっと優衣視点だから今回で別の人の思考なんかを文に取り入れてみようと思ったのですが、今までと違う形になってしまい、秘ナツキ自身違和感を感じてしまい断念しました。
ただ、別の話で別視点を取り入れてみたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。