1話 プロローグ
初投稿です。拙い文章ですが、お楽しみいただけたら嬉しいです
空を見上げれば雲がポツポツと存在する程度の晴れやかな朝。
僕は隠すことなく欠伸をした。通学中なのだが、周りには学生の姿は見えない。
それもそうだろう。なにせもう学校が始まる2分前だからだ。
走っても間に合う気がしないときは、潔く遅刻するに限る。
どっちにしても遅刻なら疲れないで行きたい。運動は好きだし身体動かすのも好きだが、
朝はダメだ。無理。
外出するときは、必ず朝風呂に入るのだが、今日起きたのは、いつも家を出ている時間だった。
ならどうするか。朝風呂してから出るだろう。間違いない。
昨日遅くまでゲームしていたのがよくなかった。
でも仕方ないじゃないか!今日は楽しみにしていたゲームの発売日なのだ!
楽しみすぎて眠れなかったから、ゲームをするしかなかった。
今日発売のゲームの内容は簡単に説明すると、剣と魔法の世界のオンラインゲームだ。
このゲームの良いところはキャラクリ、つまりキャラクタークリエイトで身長から皺まで自分の思うままに作れる点だろう。
自分好みのキャラクターを作り、そのキャラクターでゲームができる。それだけで楽しみだ。
キャラクリだけで、今日が終わってしまいそうだ!
さて、のんびりと歩いている僕の前には、いつも通い慣れている道。
そしてここを曲がってずっと真っ直ぐ進んでいけば我が校が見えてくる。
そして、僕は考える。
通学・曲がり角・そして遅刻、という3つのキーワード。
漫画では定番、アニメでは……あまり見ないが主人公とヒロインの出会いの場だ。
パンを咥えながら「遅刻遅刻~」ドン。からのヒロイン尻餅、見上げてからのドッキドキ。
現実でこんなことあるのかな?最初に考えた人って実際にこういう出会い方したとかなのだろうか?
主人公がかっこよければドッキドキもするのかな。
......急いで走ってる時ってパン食べれるのかな?今度試してみよう!
そんなバカなことを考えてたら、曲がり角まであと数メートルとなっていた。
そういうことも起こらないだろうが
「『静動抑制』。」
とボソっと呟き、曲がる前に止まる。
「遅刻遅刻!」
と、僕と同じ学校の制服を着た女の子が僕の目の前を横切った。パンは咥えてなかった。
......え、今止まらなかったら物語り始まってたり!?
ドン。からのヒロイン尻餅、見上げてからのドッキドキ。のパターンだった?!
いや、でも体格的に僕の方が飛ばされそうだったけども。
あ、誤解が無いように言っておくと、今走っていった彼女が横に広いとかそういうことではない。
今年の身体測定で出た僕の身長はなんと!
157センチ。
......いや、いいよ。これでも伸びたしね!
5ミリくらい。
...そうだよ!成長止まったんだよ!悪いか?!
あぁ~あ。高身長になる夢が...。
まぁ、恋とかよくわからないし、あまり興味ないからいいんだけどね。
まだ初恋すらしたことないし。
誰かを好きになったら
「これが初恋か~。」
とか思うのだろうか?なんか面白いな。
通学路を進む。こう歩いてるときはいつも妄想をしている。
魔法を放ち、刀で居もしない敵を斬りつける妄想だ。
もちろん魔法を放つ時は詠唱有りだ。
『紅蓮の炎』や『漆黒に集いし』などその魔法に応じての詠唱をする。
もちろん脳内でだ。さすがに表立ってはやらない。
...表立ってやるときもあるが!
小さい頃にそういうことをした男の子は多いのではないだろうか?
この年になってもやっている人は少ないかもしれないが。
最近は妖精と共に戦う妄想をしている。
ストーリーのある妄想である。妄想ストーリー。
話的には、この地球で数百年に一度、数十人の人が妖精使いに選ばれ、妖精と共に戦い、全ての妖精を倒す、
もしくは管轄下に置く。妖精同士が戦うから妖精大戦という名にしている。
最後に勝ち残った者は願いが叶う。それも複数個の願いだ。
妖精には色んな属性がいて、その属性の精霊魔法を使って戦う。
僕の妖精の名前は『リア』。光属性で強者の部類に含まれるが、ある時の妖精大戦で、闇属性の妖精に敗北し、闇属性の精霊が勝利、リアにペナルティという名の願いをするのだが、それを精霊使いに言えないペナルティもつけてきた。
そこから何度も敗北し続け、契約者に裏切られ、捨てられ、利用されてきた結果、人間を信じることが出来なくなった。
しかし契約者を死なせてしまうことを恐れ、自分ひとりで戦いを挑むようになっていく。
最初の頃の僕はそのことを知らない設定だ。
僕も一緒に戦うことを伝えるが、足手まといだと。なら戦い方を教えてくれと伝えても押し黙ってしまい
教えてもらえない。
何度か戦いの場を見るがぼろぼろになり必死で逃げるしか出来なかった僕は一人で修行を開始する。
修行の内容は、魔法を感じるところから始まり、戦闘中に見た魔法の再現をし、
リアから唯一もらえた小さな箱のような物を使い、魔法の訓練をする。
この小さな箱は、力強く握ることで魔力が貯まり、自動で僕を守ってくれるということになっていたが、
この箱は使用者の意思でも動く。そのことを発見し、武器にしたり、罠を張るようなこともできるようになった。
さらに修行をしていき、分身なんかもできるようになり、分身と戦い、死に掛けながらも実戦を繰り返し
て強くなっていった。
この修行はリアにはばれないように行っていた。
そして、ある日のこと。
僕たちの前に闇属性の精霊が姿を出す。
リアは敵の接近には気付いていたが(僕も気付いている)、闇のフィールドを張られてしまい逃げられなくなる。
昔のことを色々と語りだし、ここで僕はリアが僕に魔法を教えなかった(教えられなかった)理由を知る。
リアは僕に危害を加えるなと闇属性の精霊に言うが、奴は他人が苦しむことが好きで、嫌がることを好んでやるような奴だ。
逆に狙ってくる。
リアは必死に応戦し、僕の周りにバリアを張るが、向こうは二人でこっちは一人。
物量差に押され、バリアのもとまで吹き飛ばされてしまい、バリアが解け僕にも魔法があたる。
リアは敵の魔法によって、空中で拘束され、僕に向かって魔法を放つことを宣言する。
リアの苦しそうな、泣きそうな顔を笑い。
そして僕に魔法を放つ…
というとこまで来てるんだよ!
ここまでの妄想二週間とちょっとかかってるんだよな!
どんだけ長い妄想しとんねん!って感じだけど楽しいからいいのだ。
修行編が特に面白かったな!
僕は学校までの道程を妄想をしながら進んだ。
学校に着いた。
朝のホームルームは終わっており、1時間目が始まる数分前だ。
「よぉ、髪のセッティングでもしてて遅れたのか?優衣ちゃん?ぶぁっはっは!」
朝から話しかけてきたのは...名前わからんかった。
記憶障害とかではない。記憶力は割かしいいほうのはずだ!勉強は嫌いだけど。
どうでもいい人のために脳内のメモリーを使いたくないから名前を覚えていない。
毎日同じような絡み方をしてくるんだけど覚えられないからコイツにプロテクトでもかけてるんだろうか、僕の脳は。
周りの男共もニヤニヤしたり、「女が男装してんじゃねぇよ、ゲァッハッハ!」とか言って笑っている。
周りの男の名前も全員わからない。
僕の脳はプロテクトかけすぎているのではないだろうか?
覚える気ないけども。
「僕は男だよ。」
と、いつものように返して自分の席へと向かう。
後ろからはバカ笑いが聞こえてくるが気にせず、自分の席に座る。
「ゆう!おはよう!」
僕に挨拶してきたのは隣の席に座る女の子。名前は渡里真苗。
1年の時から同じクラスで仲がいい。身長は僕と同じくらいで大きな目でたれ目。
おっとりしてそうな雰囲気だが、実際は明るく、元気ハツラツな可愛い子である。
「おはよう。」
「いつも大変だね~。」
「そう思うなら変わってくれてもいいよ?」
「いやいや、私そんな魅力ないから。」
「どんな魅力だよ?!」
え?なにかの魅力のせいでこうなってんの?ならそんな魅力捨ててやる!
会話をしながら置き勉している教科書を机の中から出す。
するとハラリと紙が落ちる。
「ゆう、なんか落とし...あ。」
そこにはハートのシールが貼られた手紙が一通。
どこからどう見てもラブレターだ。
僕はそれを真苗の手から取り上げて封を開いて中身を読んだ。
うん、ラブレターだ。ずっと見ていたことと、放課後体育館裏に来て欲しいということが書いてある。
今日はゲームを買いに行くから無理。そしてこの人知らないから無理。
というか
「男の名前じゃねぇか!」
名前が太郎なのだ。え?太郎で女の子の可能性ってある?
「あはは、これで今年入って4通目だね~。」
「勘弁してくれ…。」
男から告白されたり、こういう手紙をもらうことがたまにある。
ここで自己紹介しておこう。
鈴野 優衣 17歳。可愛らしい名前だが僕は気に入っている。
ただ、この名前のせいか顔のせいか周りからはよくバカにされる。
「僕」は男であって僕っ子な女の子ではない。ただ母親の遺伝が強かったのか女の子のような顔だし
声も高く中性的で、よく女に間違われる。
髪を短く切ると似合わないと両親に言われていたから、肩にかかるかかからないかくらい伸ばしてるのも間違われる要因だろう。
そんな容姿が災いしてか、男友達が中学のときから出来ない。
さっきの生徒Aやその取り巻きのようなのと、僕を女だと勘違いして告白してくる男ばかりだからな。
普通な奴もいるんだろうが、ターゲットが自分にこないように僕に関わらないようにしているように見える。
時たまイジメのようなこともされてるからな。
ただ、女子は普通に接してくれる。むしろ友達だ。
いつもイジメの対象にいないのは、女子達のおかげだったりするのだが、逆に女子と一緒にいることで
周りの男共が僕に対して憎悪の感情を向ける。というサイクルだ。
僕を中心に世界が回る!なんつって。
そんな回ってないか。
鐘が鳴る。授業開始の合図だ。
放課後まで長いな~、なんて考えながら教科書を開いた。
キーンコーンカーンコーン。
授業終了の鐘が鳴る。
帰りのホームルームが終わり真苗や他の友達に軽く挨拶を済ませ、学校を飛び出した。
ゲームを買いに行くのだ。
学校を出て少しのところのビルの階段を上りながらストレッチをする。
ここがゲームショップというわけではない。
ではなぜ、ここに向かったのか。ショートカットのためと遊ぶためだ。
屋上に出る。眼鏡を外しコンタクトレンズを入れる。
周りはフェンスで囲まれているが気にせずよじ登る。
下を見ると二十~三十メートルくらいあるだろうか。落ちたら死ぬ気がする。
僕は足にぐっと力を入れ、ジャンプした。
隣のビルへ。
着地と同時に、足、膝、腕、肩と着きグルリと周り起き上がる。
そのまま走りだし、時には側転で、時にはバク宙で障害物を避け次のビルへと飛ぶ。
パルクール。
街中にある建物や壁、凹凸、段差を障害物と見立て避けながら進むスポーツだ。
この街の建物は同じくらいの高さになっていて、パルクールするのに向いているのだ。
柵があるところもあるが、それも障害物の一つだ。二回壁を蹴り上げて登っていく。
身体を動かすのは楽しい。このパルクールをしながらいつものように妄想をする。
時々ヒヤっとするときもあるが、これがまた楽しい。
なにもない平らなところは敵の攻撃を避け、攻撃し、倒したら進むようにしている。
持つなら刀と小刀だな~。
なんて武器のことを考えていたらゴールが見えてきた。
ここの工事途中で放置されている、鉄柱がむき出しの先のビルのハシゴを降りて、表通りへ出るとお店がある。
僕は勢いよく飛び、鉄棒に掴まる。
そして身体を上下に大きく振り、次の鉄棒へと飛び移る。
その瞬間ーー
ガッ、ガシャン!
という音が下の方からした。嫌な予感しかしない。
下の支えが外れてしまい、崩れていっている。
僕が捕まっていた鉄棒も大きく揺れ、その反動で手が離れてしまった。
「あ、まずっ!」
ガシャガシャガッシャン
次々に鉄棒が外れていき、掴まる場所もない。
重力に逆らうことなど出来ずに下へと落ちてゆく。
落ちながらどこか冷静な部分で僕はこう思った。
(これで、父さんと母さんの下へ行けるのかな。)
鉄柱に頭をぶつけ、僕はそこで意識を手放した。
この日の夜、建設途中で放置された建物が崩れ、下敷きになった一人の少年が命を落としたという
ニュースが流れるのであった。
途中の妄想ストーリーは実際に秘ナツキが妄想していた物です(笑
みなさんも色々な妄想をしていると思うんですけど、どうなんでしょう?自分の周りの方たちは「しない。」というのですがしている方いませんか?
そういえば傘を刀と見立てて誰もいないことを確認したのち振り回していたのですが、取っ手の部分から先が外れてしまったことがあるんですよね(笑
手に残ったのは傘の取っ手だけで、遠くの方には傘…
そういうこと、ありますよね?(ニッコリ
お読みくださってありがとうございます。
次話もよろしければお読みいただけたらうれしいです。 秘ナツキ