01:異世界転生はやっぱり死なないといけないようです。
五月晴れの今日、ひとつ大きなあくびをしながら通学路を歩く。
そろそろ友人との合流ポイントだと思い、ぎゅっと顔を引き締めた。
「若葉ちゃんおはよう」
「深雪殿、今月の新刊如何でしたかな?」
「挨拶の前にそれか」
「いやはや、失礼をば。深雪殿、おはようございます。
して、今月の新刊はもうお読みになられましたかな?」
「うん。昨日買って即行読んだよ」
「さすが深雪殿。吾輩は『死んだと思ったらどっこい異世界で生きていた』なら読破済みでありますぞ」
「あれは望月先生の新作だからね、私も読んだよ。あれは昨今の転生系にしては良くできてると思うな」
「王道ファンタジー好きの深雪殿としては、やはり転生系は邪道とお考えですかな?」
「邪道とまでは言わないよ。
過去の作品でも一巻目で主人公が死んで、続巻で主人公が転生するっていう作品もあったし。あれは現代ファンタジーだったけど、面白かったよ。
やっぱり『フォー○ュン・ク○スト』とか『デュ○ン・サー○』とかをよく読むせいか、世界観の作りが弱く感じるというか、もちろん例外もあるけど。どうしても教科書通りの世界にテンプレート的主人公が転生してるって感じちゃうんだよね」
「うむ、なるほど。
しかし、本日の深雪殿は普段より饒舌でありますな」
「実は昨日寝てなくて、喋ってないと寝ちゃいそうなんだよね」
「それは何故に?!」
「早く新刊読みたかったって言うのもあるけど、こうやって若葉ちゃんとおしゃべりしながら登校したかったから」
「深雪殿……。あっ危ない! 信号! 赤!!」
「え?」
決して前を見ていなかった訳じゃない。
深雪は友人の声が後ろから聞こえて初めて彼女が交差点で立ち止まったんだと気づいた。けれど動き出した足を止めることは出来ず、常時では考えられぬ方法で深雪は宙を舞った。
赤く光る歩行者用信号機と2トントラックを視界に収め、驚くほど冷静に、自分が車に轢かれた事、これから死ぬことを理解した。
不思議と体に痛みは無く、深雪は独りごちる。
「彼らはこうやって異世界に転生したのかな」
<この話に登場したやつメモ>
●深雪(一人称:私)
・本作の主人公
・中だるみの高校2年生
・ラノベ愛読家
・否オタ
・成績は平々凡々、運動神経は良い方(水泳以外)
・専業主夫の家庭
・家族仲は良好、両親共にラブラブの域
・中一の弟がいる(ゲーマー)
●若葉(一人称:吾輩)
・深雪の中学からの友達
・深雪とは魂の相棒(ソウルパートナー)だと思っている
・軽い厨二病患者
・ノーマルアブノーマルオールおkなオタク
・文武両道、教師人からの信頼も厚い
・深雪と喋る時はオタ口調なのに他の人と喋るとオール敬語
・両親共に共働きの家庭
・家族仲はあまり良くない
・一人っ子
※作者は決してアンチ異世界転生派ではありません。むしろ好きです。
※「死んだと思ったらどっこい異世界で生きていた」と「望月先生」は架空のものです。
例えとして書かれているものや、伏字がされている作品名は実在しますが、もちろんそれらとこの話はまったく関係ありません。