1.エーフェスと量子のゆらぎ
まず、一つ質問です。
この宇宙はどうやって始まり、宇宙が始まる前には何があったと思いますか?
中二病をこじらせたことがある人なら一度は考えたことがあるでしょう。
しかしまっとうな人生を歩んできた人は、ここですでにドロップアウトしてしまうかもしれませんね。
科学的にも諸説あるこの謎ですが、コロンシリーズの宇宙では「宇宙が始まる前には何もなかった」という説を前提にしています。
何もなかったというのは、「冷蔵庫の中に何もなかった」というレベルの話ではありません。「冷蔵庫すらなかった」のです。
つまり、物質が存在するための空間すらなかった状態です。完全なる無というわけですね。
一体そんな状態から、どうやってこの広大な宇宙が生まれたのでしょうか?
“量子ゆらぎ”という言葉があります。
これはざっくり説明すると、「エネルギーの総量はゼロでも、膨大な量のプラスとマイナスが同時に存在している」という状態です。
その量子ゆらぎ=実質ゼロの状態から、“なんらかのエネルギーを外から受けて”わずかに実在に傾いた結果がこの宇宙、ということらしいです。
ちなみに自分はこの説を参考にしただけで、完全に理解しているわけではありません。
自分にとって重要だったのは、“なんらかのエネルギーを外から受けて”という部分でした。
自分はここに“神の作為”のようなものを感じたのです。
そしてその作為の正体を設定しようと思ったとき、思いついたのが“心”でした。
その心は我々の持つ心のように複雑なものではありません。本当に原始的な状態の心です。
何しろ空間すらない時から存在していた心なのですから、「なんだここ何もない」などと思っていたりするわけがありません。
では原始的な心とは何か。
自分は“胎児の心”がそれに近いのではないかと思いました。
胎児が母親のお腹の中にいる間、「なんだここ暗い」とは多分考えていませんよね。
では我々の持つ心の複雑さを極限まで削り、胎児の心にまで戻った時、何が残るのか。
それは“生まれたいという意思”なのではないかと思いました。
胎児が母親のお腹を蹴るようなアレです。
この“生まれたいという意思”を持った原始的な心が、母親のお腹を蹴る胎児のように量子的なゆらぎにエネルギーを与えた結果、宇宙誕生に繋がったと考えると面白いですよね。
胎児の他にももう一つ似たような例があります。
それは創作物です。
我々物書きは、頭の中で面白そうな話のネタが浮かぶと、それをしっかりと書き起こして物語にしたいと思いますよね。
まるでそのネタが“物語にしてくれー”と頭の中を暴れまわるように。
創作物は物書きにとっての胎児というわけです。
以上のことから、生まれたいという意思は創作意欲にも似ていることを示唆しておきます。
これが自分の考えた“世界の始まり”です。
そして自分はこの“生まれたいという意思”に、“エーフェス”という名前を付けました。
エーフェスはヘブライ語で0(ゼロ)という意味です。