2繰り返す目覚め
楽しい夢を見た。
こたつの中に入って、皆でミカンを食べながらテレビを見る夢だった。私がお餅を焼いたら、お雑煮にお母さんが入れてくれていた。
四角い机には四人しか人が入れないから、4人家族で良かったと心の底から思って、お雑煮のお餅を食べて、見事に喉に詰まらせていた。
うん。何て情けない死に様。
††††
目覚めたときはすっかり元気になっていた。空腹が訴える。餅を食べたい。和食が欲しい!と。
だがしかし、麦はあれども米はない。残念だったな、私!
仕方がないので普通の朝食を食べ、全回復。
今日も元気に学園に通うぞー!おー!と一人で号令をかけて、意気揚々と家を出た。
――――――――のだが。
「ぐはっ………」
ルスレーと目が合った。血を吐いて私が倒れる。キャーという悲鳴、注目。それが加速度的に負荷をかけてしまった。
あ、これ、死n……。
最後の一文字を言えなかった。
目が覚めたらよく知った天井だった。
「……おはようございます。まだ生きてますよね?私」
「生きているわよー。エニア先生が運んでくださったのよ」
私の開口一番の台詞にのんびりとしたいつものテンションで答えたルイーズ先生は、そう言った。日常茶飯事とはいえ、生徒の一人が血を吐いたのだ。もっと気にしたらどうなんだ……はいすみませんでした目が怖い。
「ぇぇと、アスタリスク先生が運んでくださったんですね」
「そうよー。いつのまにかいなくなられていたけどねえ。いったいどうやったのかしら」
首をかしげるルイーズ先生は放っておいて、私は一人納得した。アスタリスク・エニア先生は、私の呪…ギフトについて知っている人だ。兄の恩師でもあるし、あの先生ならきっと私を死なないように助けてくれることもあるだろう。本当に助かった。
「もう、帰ります」
明日はもっと工夫して行こう。ルスレーにバレないように。
††††
次の日、時間帯を変えてみた。今までは、一番登校する日との多い時間帯だったのだ。朝一に出たらきっとルスレーもいないだろう!
元気一杯で寮を出た。
―――あ、いた。
ルスレーの愕然としたような顔が遠目に見えた気がする。ただ、その頃には視界が霞んで―――何も見えない暗闇の中。
「死んだ?」
「残念。生きてるわよ」
目を開く前に呟いた声に、ルイーズ先生が返してくれる。私はそろそろと目を開いた。いつもの天井が目に入る。………保健室の天井を、いつもの、と形容する私って大分病弱なんじゃないかな。
よ、薄幸の美少女!―――すみません私には似合わない形容詞でした。はい。
「今日はあの男の子が連れてきてくれていたわよー」
イケメンに会えたからかルイーズ先生はちょっとほくほくしていた。
「……帰ります」
まだ頭痛がひどい。よろよろと立ち上がって帰寮の支度をする。といっても鞄を持つだけだが。
明日はこうならないと心に誓って私は保健室を出た。
だが、そんな都合の悪いことばかり起こることも、あるのである。私は数日後には、常に体調が悪いようになってしまった。
††††
時間をずらしても出口を変えても男子制服を着ても人だかりの真ん中で埋まってみても、どうしてこうもルスレーは見つけてしまうのだろうか。頭を抱えて叫びたいが、それをしてしまったら痛む頭が更に痛い。
毎日毎日ぶっ倒れていれば、回復するものもしない。体調が悪いまま、私は最後の作戦をとる。
髪の色を魔法で変えるのだ。
地味な茶髪から、あまり派手すぎない赤い髪に魔法で色を変化させる。まつげも眉毛も抜かりはない。
そんな風にして、寮から足を踏み出したのだが、数歩と持たない。、
あ、いt―――――
―――「ぐわばっ!」
自分のそんな声が聞こえたような気がする。すぐに気を失ってしまったから分からなかった。私は今回吐血はしてしまったのだろうか。
意識が覚醒すると同時に私は叫ぶ。
「生きてます!死んでません!」
「そうねえ。知っているわぁ」
そ、そうですね。真面目に返されても困るんですけど。
まあ、こんなに叫んでいるなら生きているし、ルイーズ先生も言ってくれたからよしとしよう。
毎日ルスレーに会っては倒れる、ということを繰り返し続けた私の体力はもう殆どない……。疲れたからだに鞭打って、保健室を辞した私は校舎の隅っこの方の研究室に向かう。
よろよろしているし、口の中も何となく鉄の味がするが、このままではいけないのである。
ありがとうございました




