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戦う巫女さん的な何か

作者: 桃花

 戦場を見下ろせる高台に人影が数個見える。ただ一人だけ地に降りている人間が馬に乗るのを合図にしたように睨み合っていた両軍がぶつかり合い殺し合いを始める。

 世界には色々な職業がありその中に戦争専門神官(女性の場合は巫女)と言う特殊な職業がある。通常時は、神官・巫女として神に仕え祈りを捧げているが、有事の際は戦場に駆けつけ死者に祈りをささげる。戦地の浄化が主な仕事だ。戦地の浄化? と思われる人もいるだろうが、戦地になった土地は荒れる。戦地だったからと言うわけではなく、荒廃するのである。流された血がそうさせているのか死者の嘆きがそうさせているのかは、いまだわからない。ただ、戦地をそのまま放置すると何十年・何百年と言う時間が経過しても作物も動物も育たない荒廃した大地が横たわっているだけである。その大地を作物・動物が育ち人が住める大地に戻すことが出来る唯一の方法が、神官・巫女の捧げる祈りである。ただ、神官・巫女と言う職業は荒事に慣れていないのと安全面を考慮して荒事も平気な神官・巫女を養育する部署が出来た。戦闘が終われば敵味方関係なく死者に祈りを捧げ生存者には、治療を提供するのが戦争専門神官・巫女の仕事なので、戦が起きそうになる・起こす時には神殿に連絡し戦争専門神官を派遣してもらうことが一般常識となっている。

 「何が長くて数か月。だよ。もう半年くらい戦ってんじゃん」ぷりぷり怒りながら戦場から一時退避している黒髪の女性が居る。周りには女性を守るような陣形を保ちながら同じように馬に乗っている人が男女合わせて4人いる。珍しいことに髪の毛が肩までの長さしかない。一般的に女性は腰までの長さである。短い髪と言うことは神に仕えている巫女か罪人でしかない。

「そういうな。数か月で終わらせるつもりだったんだよ」それに答えるのは右側を並走している茶髪のキース。鎧を身に着け戦場に居るいでたちだが、茶目っ気があるような顔をして親しみを持ちやすいので、ご婦人たちには人気。こんな息子が欲しいともてはやされている。ご婦人に(大切なことなので二回言ってみました)他の三人も同じように鎧を身に着けているが中央の女性だけは鎧を着けていない。ただ、着ているチェニックの下には鎖帷子。チェニック自体も糸のように細くした金属で作ってあるので防護面ではかなり高いが重いし熱がこもるので戦場でしか使用されない服である。

「だとしても上はどうしているさ。長期になるなら長期担当が変わるとか出来るでしょ。薬や食料を補充するだけで交代しない理由がわからない」愚痴っている黒髪の女。それを諭す様に話し始めたのは、このメンバーで一番年長のルーカス。黒めの金髪で糸のような目をしているが、雰囲気は優しいため婦女子に人気のオッサンである。「仕方ないな。こう転々と移動しながら戦っているから戦地が拡大している。お前だけの力では浄化が完璧じゃなだろ? 後方に回って生存者を治療するにも手が回っていない現状だ。後方の浄化・治療部隊を編制してこちらに送っているが、追いつく前に患者や荒野があれば捨てておけないだろう」解っているだろうが。と叱りつけている。それで愚痴っているのを聞きながら殿を務めている金髪美女のマリーが「別な理由もあるんだろうけど・・・」とつぶやいてるが、これは聞こえていないようである。

愚痴を静かに聞いていた先頭を走る黒っぽい茶髪でメガネのクリスが「王都もごたごたしているみたいですから、戦地にいた方がイライラしなくてもいいのでは? 」と黒髪に話している。

「何がごたごたしているの? 施政はちゃんとしているみたいだし。継承者争いをしているわけでもない。たまに小競り合いがあるくらいでしょ? でも、最近小競り合いに他国の間者が入り込んでいるっぽいけど・・・狙われているのかな? うちの国を敵に回して勝てると思っている周辺国なんてなかったはずだけど・・」数年前に起きた周辺諸国の小競り合いを介入して制覇してしまったので、他国からは恐れられているはずなんだよね? と周りに確認すると頷いているので認識を間違っていないはずだけど。なんでだろうと考えていると「「「「だから、大人しくしていてね。ミカ」」」」皆から声をそろえて黒髪ーミカを注意している。それにきょとんとした顔をしてなんで私?と聞いている

「なんでじゃないだろう。神殿に戻って他の巫女さんたちに迷惑をかけているのを自覚してないとか言わないよな」うんざりした顔をして探しに歩く身になってくれ。呟くのはキースだ。それにミカは「迷惑なんてかけてないよ」と答えている。

「ちょっと言ってくる。と伝達して一人で薬草取りに山に入って帰ってこないとか、書庫にこもって数日出てこないとか。覚えてないと言わせませんよ」クリスが具体的に例を挙げている。それに「薬草取りは、薬師たちに喜ばれたし良いじゃん。それに書庫に籠ったおかげで古い文献を探し当てて書庫長に喜ばれたよ」ミカが答えると反省していないんですね。とため息をついているクリス。

「そういえば、術者と一緒に術具を作ってたことあったよね。体調を崩すからだめだって言われていたのに」覚えている? 腕につけているネックレスを見ながら聞いているマリーに対しては「そういうけど、私が一緒に開発したから着けていても倒れないものを作れたんだよ」と答えているのを聞きながらしみじみと「本当に昔から落ち着きがない子だよな。だから他の巫女たちには子供扱いしかされないんだ。わかっているのか」最後は必ずルーカスがお説教を言うのがいつものパターンなのかそうだ。そうだと頷いている護衛たち。

「そんなこと言っても。大人しく過ごしているとどっか悪いのか?部屋にこもっていると体が丈夫にならないから外に行っておいでって言うんだよ。皆が」抗議するようにミカが答えながらここら辺でいいんじゃないか?と提案している。あまり離れすぎるのも戦が終わった後に駆けつけるのが大変なので、戦場が見えるか見えないかと言う距離に待機する事となっている。

「そうだな。ここら辺ならギリギリ範囲だな」とルーカスが頷く。それを見て馬から降りて各自ゆっくり寛ぐ。座り込んでいるのは巫女のミカだ。荒事担当と言っても巫女であるから体力が護衛たちより無い。それを知っていてゆっくりできるように準備をし始める。祈りを捧げることは以外と精神力を使うことである。普通の巫女は祈りを捧げ浄化をすると半日休まないと動けいなくなる事を鑑みると一応体力はある方なのだろう。

 精神力を少し回復できるお茶を飲みながらゆっくりしていると腕輪がちりちりする。この腕輪、魔力の高まりを感知すると教えてくれるように作っている。戦場には魔導師もいる。生来持っている魔力を引き換えに魔導を使う魔導師は、精霊が少ない(戦地になるよ。精霊さんは退避してください。神様終わったら浄化するのでお願いします。っていうのが戦地になりそうなところで祈る内容なので、精霊さんは避難しているんです)戦場でも一発逆転するために必要な戦力だ。ただ、魔導師になるにはかなりの魔力を持って生まれてこないとだめなので、世間一般的には精霊魔法が流通している。

「どなたさんかね。魔導師なんてレアな人を引っ張り出したのは。後処理が面倒ジャン」ぶつくさ言いながらお茶を飲んでいると(大量に人が死ぬと荒野が深刻化して浄化がなかなか進まないのである)腕輪が爆ぜた。爆ぜたと同時に馬に乗り退避する。爆ぜるということは、ここを目標として魔導が使われたということだ。

「流れ弾じゃないよね? 」と期待を込めながら言うミカに

「そんなへたくそ誰も雇わないだろうが!!明らかに狙われているんだよ!!」激しい突っ込みをキールが入れている。

「前方に空き地あり。そこで大勢の兵士が待機してます」と叫びながら教えてくれるのはクリス。メガネは遠視術の具なので、目が悪いわけじゃないんですよ。

「回避」と違う場所に行こうとするとそれを邪魔するように火球が降り注いでくる。驚き暴れそうになる馬を操りながら誘導される場所へ。クリスが言った通り兵士がたくさんいるのでマリーが風霊の力を借りてなぎ倒す。

「誰が荒事専門の巫女を殺して得するんだろうね」と風霊の力を借りてなぎ倒してもなお大勢いる兵に向かい馬を回転させながら聞くミカ。荒事専門の神官・巫女は大体が孤児である。途中で死んでしまっても文句を言うような親がいないからだ。ある程度育って、頭が良いものや容姿が良いものは別の部署に回される。王族専門とか経理・薬師とかに・・・

ミカの言葉に答えるものは居ないがそれは致し方がない。「何をしている。早く殺せ」と号令を出されて攻撃に転じる兵士。命令を下したものは、一番奥で綺麗な装備をしてるのが確認できる。

「まあ。誰が得するかは後からゆっくり担当の者が聞くから覚悟しててね。他の皆さんはきっちり大地と友達になってもらいますか」ニッコリ笑ってミカが言うと護衛たちが笑いながら「「「「巫女の言うことか」」」」と口をそろえて突っ込みながら兵を死なない程度に、かつ戦意を確実に刈っていく。

 アッという間に明けた場所には兵士が唸りながら地べたに倒れている状態になる。手に持った剣を振り付いた血を飛ばしているミカに「それでも巫女か。敵となれば切るものが巫女と名乗っているか!!」と号令を出した兵士が言う。

「あいにく私は戦争専門巫女。当代巫女長・神官長並びに陛下からも、身に降りかかる火の粉は振り払ってもよし。と言う命を受けているんだよ。残念だね」ニッコリ笑いながら首元に剣先を向けて「やるか?」とミカが聞くと這って逃げようとするが「誰が逃がすか」と退路を塞ぎ首に鞘を振り下ろすルーカス。

「これで全員ですね。後から来る神兵に引き渡して黒幕を引きずり出してもらいましょ」怖いことを言いながらクリスにだな。と同意しつつ縛り付けているキールとマリー。

「戦の方も終わったようだ」と風霊にお願いしてみてきてもらった様で報告をしてくるルーカス。

「面倒だけど戻って仕事しますか。それで、勝ったのは隣国に助力を願った方? 」ミカが聞きながら馬に乗っている。縛り終えたキール・マリーが馬に乗ると戦場に馬を向かわせながら「解りきっている事を聞くな。それとも弱な隣国に助力してもらったら勝てるとか思っている奴らが、勝つようなレベルの相手じゃない事なんてわかっているじゃないか」呆れながら戦力の違いを説明しているキール。

「一応聞くじゃん。間者が居たら改心してもらってうちの戦力になれば私の仕事も減るかな? ゆっくり出来るかなって思ったらいけないの? 」鬼畜が居るとミカが騒いでいるのをやれやれ。と言った風にほかの3人が聞いている。

 私は戦闘専門巫女。料金は神の御心次第で変わりますが、仕事はきっちりしますよ。戦を起こす場合はご用命を。

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