楼蘭土・吾利羅条:(喜嶺堡)第六節~第七節
六、麻利亡。而松尾国併之。又王「江根雄」為虜時死。二子、上将「江根凝」、丞相「江根喰」相争、欲為王。上将曰「弟。我帥千騎万兵。爾無勇、以何討夷狄。王以武」丞相対曰「云『無言不讎、無徳不報』綸言不正、国不治。抑治国基、有格物到知。故王者必秀文。爾無学。不相応王」上将曰「而我取戈戟籠砦。爾、以文為破之」丞相対曰「只武耳民不順。又云「力抜山兮気蓋世、時不利兮騅不逝」雖有斯武勇、時不利則不能勝」上将怒去宮、籠砦。丞相布告「爾後、与上将者、必焚之」上将命卒数奪香蕉。民或懼罰、或飢。国大乱。
六、麻利亡ぶ。而して松尾国これを併す。又、王江根雄虜たる時に死す。二子、上将江根凝、丞相江根喰相ひ争ひ、王たらんと欲す。上将曰はく「弟。我は千騎万兵を帥ゐる。爾、勇無し、何を以か夷狄を討たん。王は武を以てするなり」と。丞相対へて曰はく「云ふ『言に讎ひられざる無く、徳に報はれざる無し』と。綸言、正しからざらば、国、治まらず。抑も国を治むるの基、物に格り、知を致すにあり。故に王者は必ず文に秀づ。爾、学無し。王にふさわしからず」と。上将曰はく「而れば我、戈戟を取りて砦に籠らん。爾、文を以てこれ破れ」と。丞相対へて曰はく「只武のみにて民、順はず。又云ふ「力は山を抜き気は世を蓋ふ、時、利あらずして騅逝かず」と。斯かる武勇ありといえども、時、利ならざれば、則ち勝つ能わず」と。上将怒りて宮を去り、砦にこもる。丞相布告す「爾後、上将に与したる者、必ずこれを焚す」と。上将、卒に命じて数々香蕉を奪ふ。民、或は罰を懼れ、或は飢う。国、大いに乱る。
六、麻利は滅んだ。そうして松尾国はこれを併合した。また、王の江根雄は捕虜となっているときに死んだ。二子、上将の江根凝と丞相の江根喰はたがいに争って、自分が王になろうとした。上将は「弟よ。私は千の騎兵、万の歩兵を率いている。お前は勇気がない。どうやって異民族どもを討つのだ。王は武力によってなるものだ」と言った。丞相は「『言ったことで反応のないことはないし、やったことで報われないことはない』というではないか。王者の言葉というのは正しくなければ、(このように言うことなすことが世の中に影響を与えるので)、国が治まらないのだ。だから王者は必ず学問に秀でていなければならない。そもそも、こうして国を治める土台というのは、物の道理をきわめて、知識を深めていくことにあるのだ。あなたには学問がない。王にはふさわしくない」と答えた。上将は「そういうのであれば、私は、武器をとって籠城するとしようか。お前は、その学問とやらで城を抜いてごらんなさい」と言った。丞相は「力にはやるだけでは民は従わないだろう。また、『力は山を抜くようで、その気は世の中を覆っている。しかし、時が味方せず愛馬も進まない』と言われるではないか。それほど(抜山蓋世)の武勇を持つ者であっても時勢が味方せねば勝つことはできないのだよ」と答えた。上将は怒って宮殿を立ち去り、籠城してしまった。丞相は「今後、上将に味方した者は、必ず火刑に処す」と布告した。上将は、配下の兵に命じてしばしばバナナを奪った。民は、ある者は丞相の刑罰を懼れ、ある者は上将によって飢え、国は大いに乱れた。
七、季子「喜嶺堡」為御史大夫于麻利国。以亡国、戻松岡城都。喜嶺堡見兄相争。曰「吾兄、一優文劣武、一秀武後文。以其優虐民、以其秀奪民。無勇者堕国於外患。無学者亡国於内憂。何不足王」以自欲為王。百官百姓順之。喜嶺堡以千卒千騎百車攻上将、追丞相。
七、季子喜嶺堡、麻利国に御史大夫たる。国亡を以て、松岡城の都に戻る。喜嶺堡兄の相争ふを見る。曰はく「吾が兄、一は文に優れ武に劣る、一は武に秀で文に後る。其優を以て民を虐げ、其の秀を以て民より奪ふ。勇なき者は外患によりて国、墜さる。学なき者は、内憂によりて国亡す。何づれも王に足らず」と。以て自づから王たらんと欲す。百官百姓これに順ふ。喜嶺堡、千卒千騎百車以て上将を攻め、丞相を負ふ。
七、末子の喜嶺堡は、麻利の御史大夫であった。麻利の国が滅んだので、松岡城の都に戻った。喜嶺堡は兄たちが互いに争っているのを見て「私の兄たちは、一人は学問に優れ武には劣っている。一人は武勇に秀でているが学問は後回しだ。そして、その優れている学問で(過激な法令を敷いて)民をいじめ、其秀でている武で民から奪っている。勇気のない者が上に立つとは外国からの敵で国が攻め落とされてしまうし、学問のない者が上に立つと内政に対応できなくて国が滅んでしまう。どちらも王の器には足りない」と言った。そうして自分が王になろうとした。多くの官僚や民はこれに従った。そうして千の歩兵、千の騎兵、百の戦車をもって上将を攻め、丞相を追放した。
六、
「上将曰~」、「丞相対曰~」:上将と丞相の性格がよくでている。無学武勇の上将は力にたより、弟を挑発し、有学無勇の丞相は古典の引用で兄を挑発する。
「無言不讎、無徳不報」:詩経からの引用
綸言:王者の言葉
「力抜山兮気蓋世~」:項羽の詩から引用




