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大乱記上  作者: 両亭
九馬伝
21/37

安氐降倭条:第六節~八節

六、天遠尊遣貴内公。公曰「孤識爾立。古伝云『国基在王而真治。若相応者在則王之』今貴内無王、服磨屯。君真為王。孤以君為王」又九馬人皆服大倭。天遠尊陥氐部。是以安氐攻九馬。大倭禦之。安氐攻幅那、以雷矢、又装金鎧。大倭兵恐懼之、退氐部。


六、天遠尊貴内公に遣す。公曰はく「孤爾の立つを()る。古伝云ふ『国の基は王にありて真に治む。若し相応はしき者あれば則ちこれ王とせん』と。今、貴内、王無く、磨屯に服す。君真に王たり。孤、君を以て王となさん」と。又、九馬人、皆大倭に服す。天遠尊、氐部を陥とす。ここを以て安氐、九馬を攻む。大倭、これを禦ぐ。安氐、幅那を攻む、雷矢を以てし、又、金鎧を装ふ。大倭兵、これを恐懼(おそ)れ、氐部に退く。


六、天遠尊は、貴内公に使いを出した。公は「私は、あなたが即位したのを知っています。古い言い伝えでは『国の土台は王であって、(王がいて)真に治まる。もしふさわしい者がいたら、これを王とせよ』とある。今、貴内には王がおらず、磨屯に服属している。君は、本当に王者だ。私は、あなたを王としたい」と言って従った。また、九馬人の国は皆大倭に服属した。天遠尊は、氐部を陥落させた。そこで、安氐は九馬を攻めた。大倭はこれを防いだ。安氐の兵は、雷矢を使って、金の鎧を着ていた。大倭の丙はこれをおそれて氐部に退却した。




七、安氐倭虜悉坑。安氐丞相天余日尊(曰金星神格)諫之而不聞。天余日尊曰「云『致冰匪霜、致墜匪嫚、瞻惟我王、時靡不練、興国救顛、孰違悔過』今君不追思黄髪。而臣宜退」以退官而遷倭地。是以、百官遷倭地、百将反磨屯。以安氐降、大倭併之。


七、安氐、倭の虜を悉く(あなうめ)す。安氐の丞相天余日尊(タマヒノミコト)、これを諫めども聞かず。天余日尊、曰はく「云ふ『(こほり)を致すは霜ならずや、(つい)を致すは嫚ならずや、()れ我が王を()るに、()(くは)しからざるは()し、国を興し(かたむ)くを救ふは、(たれ)か過を悔ゆるに(たが)はん』と。今、君、黄髪を追思せず。而して臣は宜しく退かん」と。以て官を退きて倭地に遷る。ここを以て、百官倭地に遷る、百将磨屯に(かへ)る。以て安氐、降り、大倭これを併す。


七、安氐、倭の捕虜をことごとく穴埋めの刑にした。安氐の丞相、天余日尊は、これを諫めたが聞かなかった。天余日尊は「『氷ができるのは霜からではないか。堕落がおこるのは驕慢からではないか。これ私の王を見れば、こういったことに詳しくないはずはない。国を興隆させ、国が傾くのを救うのは、その過ちを悔いるほかにない』と言われている。いま、君は老臣の諫めを思い起こさなかった。こうなったら私は職を退くのがよいだろう」といった。こうして、官職をやめて、倭地に遷ってしまった。そうするとおおくの官僚も倭地に遷ってしまった。また、多くの将軍が磨屯に対して反乱を起こした。そうして安氐は降伏し、大倭がこれを併合した。


八、始天余日尊在天。欲従百獣、伴神宝下地。天余日尊真海氏祖也。


八、始め天余日尊、天にあり。百獣を従へんと欲し、神宝を伴ひ地に下る。天余日尊は真海(マワタ)氏の祖也。


八、はじめ天余日尊は天にいた。百獣をしたげようと思って、神宝を伴って降臨した。天余日尊は真海氏の先祖である。

七、

天余日尊:金星の神


八、

真海氏:大倭の有力氏族。おおくの武官や大連を輩出した。

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