貴内条:(氐正由)二節~三節
二、始貴内住「牡毘」牡毘者大牛而統民。牡毘日欲食十人。若不食之則怒而殺百。以民悉懼大牛。勇士在。名曰「氐正由」願自為牡毘所食而見大牛。而氐正由忽折頸而殺牡毘。以民従。氐正由為王。
二、始め貴内に「牡毘」住む。牡毘は大牛にして民を統ぶ。牡毘日に十人を食さんと欲す。若しこれを食せざれば、則ち怒りて百を殺す。以って民悉く大牛を懼る。勇士あり。名を「氐正由」と曰ふ。自づから願ひて牡毘の食せらるるところとならんと欲して大牛と見ゆ。而して氐正由、忽ち頸を折りて牡毘を殺す。以て民従ひ。氐正由王となす。
二、貴内にははじめ牡毘が住んでいた。牡毘は大牛であったが、人民を支配していた。牡毘は一日に十人の人を食べたいと願い、これがかなわないと怒って百人を殺した。そうしたわけで、民はみな大牛を懼れていた。勇士がいた。名前は氐正由という。自分から牡毘のいけにえになることを願い出て、大牛にあった。そうすると忽ち氐正由は大牛の首をおって殺してしまった。そうであるので民は氐正由に従って、王とした。
三、氐正由正法。嘗貴内人食牛、王禁之。王下原川整而設港。以貴内人悉富貴而大栄。
氐正由十五年、九馬族犯疆。王令「明爛」禦之。明爛能禦之。王賛明爛之勇。以譲王。
三、氐正由、法を正す。嘗つて貴内人は牛を食せども、王、之を禁ず。王、下原川を整えて港を設く。以て貴内人、悉く富貴にして大いに栄ゆ。
氐正由十五年、九馬族、疆を犯す。王、明爛をしてこれを禦がしむ。明爛よくこれを禦ぐ。王、明爛の勇を讃え。以て王を譲る。
三、氐正由は法を整備した。かつて貴内人は牛を食べていたが、王はこれを禁止した。また下原川を整備して港をつくっ(て、貿易を振興し)た。そのため、貴内人はみな豊かになって、国は大きく栄えた。
氐正由の治世十五年。九馬族が侵入した。王は、明爛という将に命じて、防衛にあたらせた。明爛はこれをよく防いだ。王は、明爛の勇気をたたえ、(王者の資質を認め)そうして、王位を彼に譲った。




