表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大乱記上  作者: 両亭
九馬伝
19/37

安氐降倭条:第二節~三節

二、天近尊不賢。而執政、称領政王。天中尊不勇。而執武、称領武王。天中尊、賢勇。而追于落国。天遠尊嘆之、哭于落国海辺。

 而自海「浮田綿神」(曰航神)現。曰「嗚呼君天君。漸至海。当我誘君于海宮」以為船棕櫚、乗天遠尊。天遠尊赴于海宮。


二、天近尊、賢からず。而れども政を執り、領政王(マツリゴトシルノキミ)と称す。天中尊勇しからず。而れども武を執りて、領武王(イクサシルノキミ)と称す。天中尊、賢にして勇。而れども落国に追はる。天遠尊これを嘆き、落国海辺にて哭す。

 而れば海より浮田綿神(ウキタワタノカミ)現はる。曰はく「嗚呼(ああ)君、天の君。漸く海に至る。当に我、君を海宮に誘はん」と。以て棕櫚(しゅろ)にて舟なし、天遠尊を乗す。天遠尊、海宮に赴く。


二、天近尊は賢くなかった。そうであるのに政務を担当し、領政王と名乗った。天中尊は臆病であった。しかし、軍事を担当し、領武王と名乗った。天遠尊は賢く勇ましかった。しかし落国に追放されてしまった。天遠尊はこれを嘆いて、落国の海辺で大泣きした。

 そうすると海から浮田綿神が現れ、「ああ、君は天の君だね。ようやく海に来てくれた。海の宮へ案内しよう」と言った。そうして棕櫚で小舟を作って、天遠尊を乗せた。そうして天遠尊は海宮へ赴いた。



三、天遠尊謁瀬海神。瀬海神曰「嘗盟天子、与娘爾子」以其娘弟姫娶天遠尊、大饗。

 而天遠尊不欲還地。瀬海神問曰「何爾不還」天遠尊応曰「吾兄追吾。地非我在所。豈還。願吾成海民。」瀬海神曰「爾非海神、不為海民。吾賜爾瀞珠。若爾兄加爾害則宜曰瀞『珠、瀞珠、吾在海』必為爾助」以瀬海使天遠尊還地。


三、天遠尊は瀬海神に謁す。瀬海神曰はく「嘗つて天子に盟す、娘を爾の子に与えん」と。以て其の娘弟姫(ヲトヒメ)、天遠尊に娶らせ、大いに饗す。

 而れど天遠尊、地に還るを欲さず。瀬海神、問ひて曰はく「何ぞ爾還らざる」と。天遠尊、応へて曰はく「吾が兄、吾を追ふ。地は我が在る所にあらず。豈に還らんや。願はくは、吾、海民(ワタツタミ)とならん」と。瀬海神曰はく「爾は海神にあらず、海民となさず。吾爾に瀞珠(トロタマ)を賜ふ。若し爾の兄、爾に害を加えんとすれば、則ち宜しく『瀞珠、瀞珠、吾、海にあり』と曰ふべし。必ず爾の助けとならん」と。以て瀬海神、天遠尊をして地に還せしむ。


三、天遠尊は瀬海神に謁見した。瀬海神は「かつて天子と約束をした。その約束は娘を天子の子に与えようというものだった」と言った。そして、その娘である弟姫を天遠尊に娶らせ大いにもてなした。

 しかし、天遠尊は(宴が終わっても)帰ろうとしなかった。瀬海神は「どうしてお前は返らないのだ」と問うた。そうすると天遠尊は「わたしの兄が私を追放したのです。地は私のいていい場所ではありません。いっそのこと、私は海の民になってしまいたいのです」と答えた。瀬海神は「お前は、海の神ではないのだから、海の民にはなれない。私はお前に瀞珠を与えよう。お前の兄がお前に害を加えようとしたらこう言いなさい。『瀞珠よ。瀞珠よ。私は海にいます』と。必ずお前のことを助けてくれるだろう」と言った。そうして、瀬海神は天遠尊を海から帰らせた。

二、

浮田綿神:航海の神

棕櫚:大倭で神性と考えられた植物。


三、

弟姫:万の海の幸の神

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ