昇天時条:第一節~第二節
昇天事条
一、下照彦尊還海宮、既九馬為所希斗人国。天神怒下照彦不治地。以召之而責。
天神見国祖姫孕曰「下照彦因放地、不得治地。代以其子」以下照彦尊為天神所幽天地間、国祖姫返地。是於闇統神曰「若子、不足天徳。与若子毎夜我力。我徳尽一月。而一夜隠」而有盈虧。
国祖姫戻地時、催産。而産「天近尊」於天至近、産「天中尊」於天地中間、産「天遠尊」於地至近。
一、下照彦尊、海宮より還れども、既に九馬、所希斗人国に治むるところとなる。天神怒、下照彦の地を治めざるに怒る。以てこれを召して責む。
天神、国祖姫の孕むを見て曰はく「下照彦、地を放ちたるによりて、地治むるを得ず。代はりに其子を以てせよ」と。以て下照彦尊、天神の天地に間に幽さるるところと為す。国祖姫地に返る。ここにおいて闇統神曰はく「若の子、天徳足らざらん。若の子に夜ごと我が力を与えん。我が徳、一月にして尽く。而して一夜隠る」と。而して盈虧あり。
国祖姫地に戻る時、産を催す。而して天の至近に「天近尊」を産み、天と地の中間に「天中尊」を産み、地の至近に「天遠尊」を産む。
一、下照彦は海宮から戻ったが、既に九馬は希斗人が支配していた。天神は下照彦が地上を放置していたことを怒って、天に呼び戻してこのことを責めた。
天神は、国祖姫が妊娠していることを見て、「下照彦は、地を放置していたので、地を治める資格がない。代わりにお前の子供で地を治めろ」と言った。そうして下照彦は天地の間に幽閉されることになった。国祖姫は地上に返ろうとすると、闇統神がいった「あなたの子は、(地の神の地を受けているので)天の徳が足りないかもしれません。あなたの子に毎晩私が力を分け与えましょう。私の力は一ヶ月で尽きてしまいます。そのため、一日は現れないでしょう」と。そうして、月の満ち欠けが生まれた。
国祖姫天から戻っているときに産気を催した。そして、天に最も近いところで天近尊を、天と地のちょうど中間で天中尊を、地に最も近いところで天遠尊を産んだ。
二、及産三子、憊。神在於天地境。名玉彦尊。
大饗下照彦而献石与桃。下照彦食桃耳、棄石。玉彦尊曰「君桃耳食。以正呪。孤有考而献両。雖桃者実甜花美樹下集人、其命無果敢。雖石重人不顧之、風雨不能動、苔生之留。雖君子栄如桃、其命不永如石」是以、有定天子当死。
二、三子を産むに及びて、憊つ。天地の境に神あり。名を玉彦尊と。
下照彦を大ひに饗し、桃と石とを献ず。下照彦桃のみ食べ、石棄つ。玉彦尊曰はく「君、桃のみ食ふ。以て正に呪はれん。孤、考へありて両を献ず。桃は、実甜く花美しく樹下に人集ふといへども、其の命果敢なし。石重く人これを顧みずといへども、風雨動かす能わず、苔生せどもこれ、留む。君の子桃のごとく栄うるといへども、其の命、石ごとくは永らえず」これを以て、天子当に死すべき定めあり。
二、三子を産んで国祖姫は疲れ果てた。天地の境に神がいた。名を玉彦尊という。
下照彦たちを大いにもてなし、桃と石とを献上した。下照彦は桃だけを食べて石は捨ててしまった。玉彦尊は「あなた様は桃だけを食べました。そのため、ちょうど呪われるでしょう。私めは考えがあってその二つを献上したのです。桃はその実は甘く、花は美しいので、その木の下には人も集まります。(そのように栄えていても)その命ははかないものなのです。石は、重く誰も気にも留めません。しかし風雨によってもびくともしませんし、苔むすような長い時を経てもその場にあり続けます。あなた様のご子孫は桃のように栄えるでしょうが、石のようには長くは生きられますまい」と言った。そのため、天子といっても寿命がうまれた。




