華太条:第一節~二節
華太条
一、始九馬族住於華太。華太希斗人元在於倭地。天幼日尊降倭都時、曰「若我民也。若従我宜謂倭民。」衆民従。然希斗族不従。是以華太人去倭地而遷華太。
希斗人至華太則征九馬。王「頼經」為九場人奴婢而令行万徭。華太、十中三希斗人。七九馬人。
一、始め九馬族華太に住む。華太は希斗人にして元は倭地にあり。天幼日尊倭都に降りたる時、曰はく「若は我が民なり。若し我に従はば、宜しく倭民と謂ふべし。」と。衆く民、従ふ。然れども希斗族は従はず。これを以て華太人は倭地を去りて華太に遷る。
希斗人は華太に至れば、則ち九馬を征す。王頼經、九場人を奴婢となして万の徭行はしむ。華太、十中三は希斗人。七は九馬人なり。
一、最初、九馬人が華太に住んでいる。華太の民は希斗人で、もともとは倭地に住んでいた。天幼日尊が倭都に降臨したとき「お前たちは私の民である。もし私に従うのであれば、倭民というがよい」といった。民の多くは従ったが、倭地に住んでいた希斗人の一派は従わなかった。そのため、この希斗人は華太人は倭地を去って、華太の地に移り住んだ。
希斗人が華太に移り住むと九馬を征服した。王の頼経験は九馬人を奴隷にして、あらゆる労役をさせた。華太に住む人のうち十分の三が希斗人、十分の七が九馬人である。
二、華太有上中下民。上民者為祖倭地希斗人。上民耳能官。将校兵卒凡上民也。中民祖住辺境希斗人。行農工商。衆因華太被征、加之。下民者九馬。下民奴婢行万徭。
二、華太に上中下民あり。上民は祖を倭地の希斗人とす。上民のみ能く官となる。将校兵卒も凡そ上民なり。中民の祖、辺境に住む希斗人なり。農工商を行ふ。衆くは華太によりて征せられ、これに加はる。下民は九馬なり。下民は奴婢にして万の徭を行ふ。
二、華太には上中下民がいた。上民は先祖を倭地から移りすんだ希斗人とする人たちである。上民のみが官職を得ることができた。将校や兵卒もすべて上民であった。中民の先祖は(華太の)辺境に住んでいた在来の希斗人であった。農業や商工業に従事していた。(この人たちの故郷は)おおくは華太に征服されて加わった人たちである。下民は九馬人である。下民は奴隷で、あらゆる労役に従事していた。