第八話 桶狭間の合戦 起
前田利家の妻「まつ」は、戦国武将の妻の中でも、人気の高い人物の一人でしょう。彼女は内助の功で利家を支え続け、夫婦二人三脚で加賀百万石の礎を築きました。現在は古都金沢の尾山神社に夫婦揃って祀られています。
俺と愛都は並んで立ち、
利家一家の旅立ちを見送った。
「それじゃ、俺たちは、もう行くよ」
そい言って歩き出した利家の後を、
「では、あなた達も、お元気で」
と、妻のマツは赤ん坊を抱いて続く。
「利家様とマツ殿は素敵な夫婦ね」
愛都が言ったが、俺は首を横に振った。
「素敵だといっても利家は追放されれたんだぞ」
「それでも二人は心から愛し合ってるようだし」
そうかもしれないが、この乱世に、
赤ん坊を連れた若い夫婦が、
「放浪の旅をするのは並大抵の苦労じゃないよ」
利家とマツが尾張から旅立った、その頃、
内藤勝介が病死する。
勝介は先代からの織田家の家臣で、
その死に対して信長様も、
「この時期に勝介まで死んでしまうとはな」
と、無念の表情を見せた。
最近は度重なる合戦で、
多くの古参家臣が討死している。
さらに信長様が言うには、
「駿府の今川義元の動向も油断ができない情勢だ」
義元は東海道に広大な支配地域を有する、
強大な戦国武将であった。
そして遂に義元が尾張に攻め込む動きを見せる。
「丸根砦と鷲津砦が攻撃されました」
1560年6月12日。未明。
俺は佐久間盛重と共に寝所の信長様に報告した。
すると信長様は、
「鼓を持て」
俺に命じて鼓を打たせ、幸若舞・敦盛を舞う。
その後、俺に向かって言った。
「人の世の50年間は、天界では一瞬であると聞く」
さらに言葉を続ける。
「人の一生など、夢、幻の如く儚いものだ」
信長様は甲冑を身に着け、戦支度を整えると、
「出陣じゃ!」
と、自らは馬に乗り、
少数の供回りを従え、清洲城から飛び出した。
この時、馬廻衆の俺は、こう質問する。
「どちらへ向うのですか?」
「とりあえずは熱田神社だ」
事後、信長様は熱田神社で戦勝を祈願した。
今川義元は「海道一の弓取り」と称され、駿河を本拠地として勢力を拡大し、今川氏の全盛期を築いた武将です。彼は軍事だけではなく、外交政策でも能力を発揮した有能な統治者でした。




