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第四話 悲しき兄弟 後編

 織田信秀の死後、信長は家督を継ぎましたが、当主の城である末森城を継承したのは弟の信行でした。この段階において信長は確固たる地位を築いていたわけではなく、弟の信行や叔父の織田信光は大きな脅威であったのです。

 稲生の戦いで敗れた織田信行は末森城に、

 逃げ帰り籠城した。


「一気呵成に攻め落とせ」


 と、信長様は森末城に攻め寄せたが、

 この時は、二人の母の土田御前が調停して、

 信行と家臣の柴田勝家らは赦免される。

 しかし、その後、


「我が弟の信行を殺してくれ」


 信長様は俺に命じた。

 

「奴が再び、謀反の準備をしているようなのだ」


 その情報を信長様に密告したのは、

 信行の側近の勝家だという。俺は、


「御意に」


 と、短く答えて、この荷が重い任務を受けた。

 そして後日、信長様は、


「重病を患っている」


 と、仮病を使い、

 信行を居城である清洲城に呼び寄せた。

 その当日に、


「さあ、こちらへ、信行様」


 俺は案内役を務めるふりをして、信行に近づく。


「わざわざ、お越し頂き、ありがとうございます」

「うむ、それより兄上の病状の方はどうなのだ?」

「それが信長様は、思いのほか重病のようでして」

「それは心配だな、兄上は多忙のうえ重責だから」


 こうして接していると、信行は好青年であり、

 多くの家臣が指示したのも納得できる。


「こちらが信長様な寝所で御座知ます」


 俺は一礼してから、信行の背後に周り、


 スウゥーッ。


 音を立てずに懐刀を抜いた。そして、


 ズブリッ。


 背中から急所を一突きにする。信行は、


「は、図ったのか兄者」


 そう言葉を漏らして、

 ドバッと大量の血を流して、その場に倒れた。

 そして自らの流した血の海に沈む。


「終わりました」


 閉め切ったままの寝所へ向けて報告すると、


「で、あるか」

 

 と、信長様の声が聴こえ、さらに言葉が続いた。


「嫌な仕事をやらせてしまった。ご苦労である」

 

 信行の死後、信長様は短い期間に、次々と、

 尾張の敵対勢力を討ち倒して、

 その急速に勢力を拡大していった。

 信長は弟である信行を誅殺しましたが、戦国の世にあっては親子兄弟の殺し合いは珍しい事ではありません。話は飛躍しますが、旧約聖書においてもアダムとイブの息子・カインは弟のアベルを殺害しました。人類最初の殺人も兄弟間の争いであったと記されているのです。

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