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第三話 悲しき兄弟 前編

 織田信長の母・土田御前は信長を嫌い、弟の信行を溺愛していました。信長が父の葬儀で仏前に抹香を投げつけたのは有名なエピソードですが、弟の信行は礼儀正しく、品行方正に振る舞ったようです。こうした気質の違いで土田御前は信行を愛したのでしょう。

 美濃の内紛により斎藤道三は討死した。だが、

 内紛を抱えるのは織田家も同じである。

 跡目争いで信長様と弟の信行が対立していた。

 そして信之派は、


「道三が死んで、信長は後ろ盾を失ったぞ」


 と、この契機を逃すまいと信行に挙兵させる。

 こうして、1556年9月27日。

 稲生の戦いが勃発した。信長派の森可成は、


「織田家中が真っ二つに割れたな」


 そう言ったが、実際には信長様の軍勢が700騎。

 対する信行の軍勢は1700騎で多勢に無勢だ。

 同じく信長派の内藤勝介も、


「やはり多くの家臣が信行を支持のしたか」


 と、吐き捨てるように言う。

 大多数が非常識な信長様を嫌い、

 常識人の信行の方を支持したのだ。いよいよ、

 戦いが始まると、信長派の軍勢は、


「佐々孫介殿、お討ち死に!」


 などと、主だった家臣が次々と戦死する。

 敵の武将・柴田勝家は、


「押せ、押せ、勝機は我軍にあり!」


 と、兵を鼓舞していた。それを見た信長様が、


「黙れ、この逆賊が!」


 大音声だいおんじょうで怒鳴り声をあげる。

 この一喝で、一瞬、敵の軍勢が萎縮した。

 その機を逃さず、


「我こそは、攻めの三左、森可成なり!」


 可成が十字槍で敵陣に突っ込むと、


「おりゃ!」


 一瞬のうちに武将二人を突き殺す。

 この奮戦を見た信長様は、


「可成に続け!」


 号令を発して、軍勢は一気呵成に攻め込んだ。

 俺も勝家を見つけて組み付いたが、


「離せ、この若造が」

 

 剛腕で押し返かえされ、蹴り飛ばされた。

 そこへ味方の足軽が殺到する。


「柴田がいるぞ!」

「雑兵どもめがッ」


 と、勝家は一目散に逃げ去った。

 そして戦いも終盤になると信長様、自らが、


「反逆者め、成敗する!」


 敵の武将・林通具を槍で討ち取り、

 この稲生の戦いに信長派は勝利した。

 稲生の戦いの古戦場跡は名古屋市西区の庄内通駅から徒歩数分の場所にあり、現在は庚申塚となって、戦死者を供養する供養塔なども建立されています。

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