第十話 桶狭間の合戦 転
今川義元は「昨日のことを覚えておらず、明日なにが起こるか知らないような人は、今日までの命である」という名言を残しています。過去から学び、未来を予測できない人は、すぐに命を落とす。自らが言った言葉を忘れずにいれば、義元の未来は違ったものになっていたでしょう。
昼下がり、信長様の軍勢が、
桶狭間山に攻め込もうとした、その時、突如、
ザザザザザーッ、
激しい豪雨が降り出した。
さらに強い風も吹き荒れる。この悪天候に、
「天は我に味方した」
と、信長様は言い、その言葉の通り、
突然の暴風雨の影響で今川軍は、
俺たちの進軍を見落としていたようだった。
「今だ、一気に攻め込め!」
信長様が叫び、兵は雄叫びをあげた。
「うおおおおおおーッ!」
慌てた敵の前線の兵士が、
「敵襲だ、敵襲!」
叫び声をあげたが、突然の奇襲攻擊に、
「いったい何が起こった!」
「まさか、敵が来たのか?」
今川軍の初動は遅れる。
たちまち桶狭間山は乱戦状態となり、
「うあっ、敵だ、敵だ」
「敵軍が攻めてきた!」
「な、何だと織田軍が」
混乱する今川軍は、
多勢でありながら右往左往と逃げ回った。
そして兵を率いる敵将も、
「下がれ、下がれ、一旦、引いて立て直せ」
と、弱腰になっているようだ。この状況に、
「勝てる、この一戦、勝てるぞ!」
信長様は兵を鼓舞した。
それでも、勇猛な敵将もいて、
「義元様を、お護りしろ!」
手勢を率いて、俺たちの目の前に人の壁を築く。
「我は松井宗信、義元様は命に代えても護る」
そう言って、立ちはだかる宗信に、
「我こそは槍の又左こと、前田利家なり!」
と、利家が名乗りをあげた。
「利家、お前!」
驚く俺に、利家は背中を向けたまま、
「追放処分の身だが勝手に参陣した」
そう言って、槍を構え、
「いざ、尋常に勝負!」
一騎討ちを挑んだが、
すぐに両軍の兵が入り乱れて、
一対一の勝負にはならなかった。
「うおおおおおッ!」
怒号が響き、血飛沫が飛ぶ戦場。
俺は馬を下りて、泥にまみれて山を走り、
今川義元を捜した。
「桶狭間古戦場公園」は合戦から450年後の2010年に整備され、織田信長今川義元の銅像などがあります。2019年には桶狭間古戦場観光案内所がオープンして、甲冑の試着体験、記念撮影もできます。




