34話 食料の調達
広場の外で獣車が止まり、しばらくすると広場の扉が開いた。
最初に入ってきたのは豹獣人のガンプ。
拳を振り上げ、勝利した事を仲間にアピールする。
すると他の剣闘士達も呼応して声を上げた。
早くも皆に打ち解けているようだ。
そして遅れて入ってきたのは、半獣人のフンドルである。
やはり同じ様に拳を振り上げると、歓声が上がる。
しかし3人目であるデン副長が入って来ない。
ーーまさか……
バンブロックはフンドルに駆け寄り、肩を掴んで尋ねた。
「デン副長はどうした!」
するとちょうどそのタイミングで、広場に何者かが入って来た。
デン副長である。
怪我をしている様だが大した傷じゃない。
デン副長はバンブロックを見るや、目の前まで来て敬礼をする。
「初戦、我々が圧倒して勝利しました」
それを聞いた途端、バンブロックは何故か目頭が熱くなる。
「良くやった……」
この一言を口に出すのが精一杯であった。
□ □ □
この日、奴隷達に冬用の毛布と防寒具が配られた。毛布と言っても単なる布でしかない。
本格的な冬の季節到来である。
かと言ってコロシアムは休みにはならない。
その代わり試合数が大きく減る。
雪が振れば開催は中止だし、雪が積もっても除雪しないと開催できない。
自然と剣闘士の役割が、あぶれるのであった。
そうなると剣闘士が無駄飯食いとなる。
冬の間は農作物の収穫が激減する為、タルイモの値段も跳ね上がる。もちろん備蓄はあるらしいが、所詮はグリーンスキンが管理するのだ。足りる訳がない。
そこで出番なのが奴隷達である。
特に試合が減った剣闘士達は、優先的食料の調達や素材の収集に駆り出された。
山や森へ行っての狩りである。
特に冬眠をしない魔物が、狩りのメインとなる。
バンブロック達は、朝早くからその食料調達に出発した。どうやら山方面へ向かうらしい。
バンブロックの遠征班にはフンドルとガンプとデン副長、そしてポポを加えた5人が割り当てられた。
リーダーはもちろんバンブロックである。
バンブロックにしたら、お互いに知れた都合の良いメンバーでもある。
ただしそれだけではない。
オーク兵が8人とゴブリン兵が5人、見張りとして付いて来る。
その他に雑務をこなす雑用奴隷5人が同行する。その中にププもいた。
そしてこの遠征隊には獣車が2台、割り当てられている。
ただし獣車は荷運び用とグリーンスキンが乗る為、奴隷達は徒歩の移動となる。
さらに逃走対策で、手枷を嵌められた上で、奴隷全員は鎖で繋がれていた。
体力のある剣闘士だけなら逃走の可能性もあったかもしれないが、雑用奴隷と繋げられるとその可能性も薄くなる。グリーンスキンも馬鹿じゃないって事だ。
しばらく歩くと徐々に山道となり、標高も上がってくる。
そうなると防寒着を着ているとはいえ、やはり山の寒さは堪える。
特に体力のない雑用奴隷は、歩いて付いて行くだけでも辛そうであった。
バンブロックは何度もププに声を掛けそうになったが、何とか押しとどまる。声を掛けただけでも、体罰が待っているからである。
敵はゴブリン兵を入れた13人。数は多いが倒すことが出来れば、それは脱走のチャンスでもある。しかしこの状況を考えると、かなり難しそうであった。
山道を進んでしばらくすると、ちょっとした広場が見えて来た。そこは小川のすぐ近くにあり、焚き火の跡が幾つも残る場所であった。
ここが今回の狩場の野営地である。
獣車が広場で止まると、真っ先にゴブリン兵は獣車から下りていく。そして奴隷達に向かって何やら怒鳴り始めた。
ププがそれを訳してくれた。
「ここに野営地を作るから、荷物を下ろせと言ってます」
奴隷達はかじかんだ手を擦りながら、荷物を下ろしていく。
そして野営地を作っていくのだが、当然オーク兵やゴブリン兵は何もしない。
バンブロックは初めての事だったが、奴隷は全員が鎖で繋がれている為、作業が極端にやり難い。それでも何とか野営地らしくなってきた。
ある程度の野営地が完成してくると、残りは雑用奴隷に任せて、剣闘士達は狩りに出掛ける事となった。
手枷は無くなったが、今度は足枷を通して剣闘士全員が鎖で繋がれた。
その狩りに同行するのは、オーク兵が8人である。つまりゴブリン兵は全て残し、オーク兵全員が付いて来たのだ。
やはり剣闘士は驚異なのであろう。
山道から外れた獣道に入って行くらしい。
バンブロックが先頭で進む。
一応バンブロックには、ナタを渡されている。それでヤブや枝を払い、獣道を突き進めと言うことだ。
しかしナタがあるとは言え、足枷が邪魔で中々前に進めない。草やツタが足枷に絡みつくのである。
後ろからオーク兵の怒号が聞こえる。
もっと早く進めと言っているのだろう。
バンブロックは、ブツブツと文句を言いながらも獣道を進んで行った。
バンブロック以外の剣闘士4人は、狩った獲物を運ぶソリや解体道具に食料、そしてロープで縛られた5本の槍を担がされていた。
武器はギリギリまで配らない様だ。
どれくらい進んだろうか。
雪がパラパラと降ってきた。
向かい風で顔に雪が当たる。
それも段々と強まっていく。
それでも前へと進む。
次第に周辺にも雪が積もりだし、防寒着も白く染まり出した。
突然バンブロックが手を挙げ、その場にしゃがむ。
後列もそれに倣って姿勢を低くする。
バンブロックは振り向くと、前方に獲物がいることを手の仕草で知らせる。
かなり離れているが、銀色の毛並みの狼が1頭いた。
4人の剣闘士は「了解」の合図として、黙ったまま頷く。
さらにその後ろにいるオーク兵は、しゃがみはしたが、前方で何が起きているか分からない。
そこで豹獣人のガンプが、片言の北方語でオーク兵に知らせた。
ガンプは北方語が少しだけ話せるのだ。
オーク兵から槍の使用許可が下りたが、足枷は着けたままらしい。さらに魔術封じの首輪も、外す許可は下りなかった。
だが雑用奴隷と繋げられた鎖は解かれ、剣闘士だけで鎖を繋ぎ直された。
これで少しは行動範囲が大きくなる。
ガンプがロープに縛られた槍を解き、全員に配る。
種類的にはロングスピアになるだろうか。両手持ちの槍であり、投げるのには余り適さない。その代わりに間合いが広く、相手と距離を空けて攻撃が出来るメリットがある。
ただし子供サイズのポポには、少し大き過ぎると思われた。
余計な荷物はその場に置いて、ロングスピアを握り締めて5人は歩き出す。
静かに歩いているつもりが、鎖の音がジャラジャラと響く。
本来ならば獲物を囲みたいのだが、鎖で繋がれている為にそれが出来ない。
鎖の長さ的には、5人が両手を開いた程度にしか広がれない。
それはお互いに剣を振れば、当たる距離だ。
バンブロックは考える。
どういった戦い方をすれば良いのかと。
何だかんだ言って連続投稿出来てます。
あと1週間ほど連投します。
そこでストック切れですので、書き溜めする予定です。




