表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付けば奴隷剣闘士  作者: 犬尾剣聖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/42

29話 奴隷商







 奴隷が多く置かれている中で、ウマッハと店主がしばらく会話していた。

 そして唐突にププに何かを話し出す。


 話を聞いたププが、バンブロックの方へやって来た。

 バンブロックは売られると思い覚悟を決める。別れは辛いが、奴隷である自分にはあらがえない。


 ププがバンブロックの前で口を開く。


「ご主人様の言葉を伝えます。この倉庫の中の奴隷で、剣闘士として将来有望そうな者や、現時点で力量が高い者を選べと言っています」


 予想と違う言葉。

 バンブロックは狼狽うろたえる。

 

「え、待て、選べって何をだ」


 そんなバンブロックを見たププが、ため息をつくともう1度繰り返す。


「ロックさん。この中から奴隷剣闘士を選べとご主人様は言ってます」


「選ぶ? 俺が選ぶのか」


「はい、選んでください」


「その後に俺の番って事か……」


「いい加減にして下さい。ロックさんは売られません。剣闘士の力量は、ロックさんの方が分かるとご主人様は判断されたのです。何ひよってるんですか。とっとと選んで下さい――あ、すいません、取り乱しました……」


 いつもと違うププの雰囲気に一時は圧倒されたのだが、バンブロックは自分が売られないと知ると安堵あんどした表情を見せる。

 だが直ぐに表情を変え、奴隷達の檻を見て回りだした。


 しかしここの奴隷環境は劣悪だった。

 むせ返るような悪臭。

 よどんだ空気。


 バンブロック自信の時も酷かったが、女であるププがこの環境に居たのかと思うと、良く堪えたかと感心した。


 こんな環境でも奴隷の数だけは多い。

 奴隷は半獣人が獣人ばかりかと思っていたバンブロックだが、ここの檻にはそれ以外の奴隷も多くいた。


 ホブゴブリンやゴブリンに加えてハーピーやリザードマン。そしてププと同じハーフリング。

 珍しい所ではダークエルフもいた。

 

 しかしどの奴隷も目が死んでいた。

 檻の隅で縮こまって怯えている者。

 明らかに精神が病んでいる者。

 

 バンブロックは感じた。ここで売れ残れば死が待っていると。


 バンブロックはゆっくりと歩いて見て回る。

 ウマッハと護衛のオーク兵は、遠くで眺めているだけだ。この臭いに近付きたくはないのだろう。


 この状況なら会話出来ると判断したバンブロックが口を開く。


「なあププ、良い奴隷が見つからなかったらどうしたら良い?」


 すると突然ププがわざとらしく、檻の中を眺めながら言った。


「ロックさん、お願いがあります」


「俺にお願いって言われてもな、何も出来ないぞ」


 ププはお構いなしに話し出す。


「右奥の檻に、ハーフリングの奴隷がいます」


 バンブロックは横目でチラリと確認する。


「ああ、確認した」


「あのハーフリングを選んで欲しいのです」


 言葉に詰まるバンブロック。


ーーどう見ても剣闘士向きじゃないだろ


 そのハーフリングは、初めて会った時のププの様に痩せ細っていて、とても戦いに向いている雰囲気ではない。

 そもそもハーフリングは、人間の子供ほどの体格である。とてもじゃないが、剣闘士には向かない。


 バンブロックが返答に悩んでいると、ププがさらに話を続ける。


「魔術が使えます。“石弾”と言う魔術です」


 石弾の魔術は使える者が多い。魔力量の消費が少なく、習得までの時間も比較的短いからだ。少なくても人間界では、使える者は多い。

 多いと言っても魔術が使える者自体が少ないので、総数で考えると非常に少ないとなるが。


「取り敢えず見てみるか」


 そう言ってバンブロックは、そのハーフリングの檻の前までやって来た。


 近くで改めて見ても、バンブロックにはどう見ても小汚いガキにしか見えない。

 そこで魔術封じの首輪をしていないのに気が付いた。


「ププ、首輪が……」


「隠しているんです」


「そう言う事か……それで元は兵士だったとか野盗でも良いが、そう言った戦闘経験はあるのか」


 ププはしばらくそのハーフリングと会話する。その姿を見ても、無気力の印象しか伝わってこない。

 しばらくするとププは、バンブロックに話し掛けてきた。


「スタッフスリングが使えるそうです」


「おいププ、それだけかよ。お前、余計な会話してただろ?」


 目が泳ぐププ。


 いくら石弾の魔術が使えるからと言って、剣闘士として成り立つのかと言えば、そんなことはない。

 ハーフリングだと恐らく初戦で魔物に喰われるか、剣闘士に首をねられる。


 しかしププは尚も推してくる。

 同じ種族だからか、もしくは知り合いなのだろう。


ーーここにいたら恐らく衰弱死。かと言って剣闘士に成っても直ぐに殺されるな


 このハーフリングに生き残る道は残っていない。


「ププ、すまんがこのハーフリンーー」


 そこまで言い掛けた所で、檻の中からか細い声が聞こえた。


「賞金稼ぎ……ゴホッ」


 バンブロックは驚いて二度見した。

 ひとつは人族語を発したこと、もうひとつは職業だ。


 バンブロックは慌てて聞き返す。


「何で職業を隠していた。それと人族語は何処で覚えた」


 すると声を出すのも辛そうに返答が帰ってきた。


「ターゲットはここの奴隷商の主人……生まれは人間の地……ゴホッ」


「なるほどね、そりぁ話せないよな」


「ロックさん、どうでしょう?」


 ププも必死だ。


 バンブロックは少し悩んでから口を開く。


「分かった。ただな、ウマッハには正直に職業と魔術を使えると伝えろ。その代わり、それを相手の店主に知られると、値段が釣り上げられるとも伝えろ。上手く行けば破格の値段で買えるとな」


 ププの表情がパッと明るくなった。


「分かりました、直ぐに伝えて来ます!」


「相手の店主にバレたら終わりだから慎重にな」


 ププは拳を握り大きくうなづくと、小走りでウマッハの所へと行った。

 その走る後ろ姿を見ながらバンブロックは思う。


ーー娘が生きていたら、丁度このくらいの歳なんだろうな


 その後バンブロックは獣車に戻され、檻の中で出発を待った。

 バンブロックがウトウトし始めた頃、店からウマッハ達が出て来た。あのボロボロのハーフリングも一緒だ。

 ププがバンブロックに向かって、小さく親指を立てた。


 上手くいったようだ。


 そして獣車の列は、ウマッハ養成所へと帰って行くのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ